第四百九十九話
御伽学園戦闘病
第四百九十九話「サルサ・リベッチオ」
「魔改造……どんな事をしたいのか一応教えてよ。私は聞いといたほうが色々楽なんだ」
「簡単にいえば身体能力の底上げ、特殊な武具への適正がサルサ本人への強化だ。んで霊はさっき言った通り魂を喰って強くする」
「魂ね、何でその案が出たのかな?」
「俺が喰ったからだ。あん時嫌な気分も強かったがそれに勝る程の高揚を感じた。強くなったって感じれたんだ。これは霊でも例外じゃないはずだ。だが無数に喰って強くなっていくのも無理はあるだろう。だから一人喰えば滅茶苦茶に強くなれるように改造する。
これだけでも俺と並ぶ実力者には成れるって予想してる。どうだよ、お前ら的には」
「私は何も口出しする気ないから~」
するとフロッタは少し考えた末に呈す。
「少し気になる事があるんだ。特殊な武具への適正、これ自体には異議は無いんだけど……肝心の武具をどうするつもり何だい?」
「基本は単純な刀を持たせておく。唯刀で良いだろ。だが本気で戦う時に持たせるのは……お前の力だよ」
そう言いながら神、仮想のマモリビトの方を見る。すると二人は理解した。
「そう言う事か。それなら僕も何の問題も無いと思うよ」
「良いね、私の力を利用するって事」
「そう言う事だ。神の力を使う」
神の力、それはそのまま神の力を模倣した武器の事を言っている。剣、打、槍、波の四つ。特殊な力を持つ武器、これは本来人が持つと強大な力を得る変わりに心身に異常を起こす事が多い。
実際剣は半ニンゲン、半マモリビトの紫苑が触っても体が崩壊仕掛けていた。勿論ラックでも崩壊するだろう。そのレベルの武器なのだ。
それを完全適応させる。
「結構な時間を要するだろうが……俺にとっては些細な時間だろう。どれだけかかろうと百年、俺が生きている内に終わらせる。まぁ一週間もあれば出来る」
「結構強気な事いうね。私の力はそう簡単に…」
その瞬間だった、ラックの手に一本の槍が握られる。別れていないタイプのシンプルな槍、ただし雰囲気は凄いし特殊な物質で出来ているのが見るだけで分かる。少なくともフロッタはそれが何かは理解した上で触ろうとはしなかった。
だがラックは嬉々として触れている。それは当たり前の事である、実験材料でしか無いのだから。
「勝手に触らないでよ~」
「別に良いだろ。結構貸し出してんだろ」
「まぁそうだけどさ、槍はあんまりニンゲンに渡した事無いんだよね~……で、どう?」
「凄いな、神の力って感じだ。剣ほど攻撃性は感じられないがそこら辺の武具なんかよりは何十倍もマシだ。まぁ俺は神殺しの方が良いけどな」
「まぁあれはニンゲンが持てる最大の力って感じだからね。その内体が慣れて神の力の方が扱いやすくなると思うよ」
「俺的にはどっちでも良いからどうでも良い。一番の問題は適性が無くなるのかどうかだ」
「無くならない、マモリビトは私を模倣して少しだけ弱くした存在。見くびらないでよ」
「…それもそうか。んじゃこいつ借りるぜ」
槍をまるで私物かのように扱っている。
「別に良いけど事故起こさないでね、それ強いから」
「分かってる。んでフロッタはどうした、黙って」
「いや~ちょっとその力凶悪だな~って。僕の世界に持ち込まれたら結構嫌だな~とか思ってたりして」
「分かるぜ、俺も俺以外が持ち込んだら多分心底めんどいと感じる。まぁ良いじゃねぇか、俺らにはそれを制圧する力があるんだ。気楽にやってこうぜ」
「それもそうだね。それじゃあそろそろ解散にしよう、ラックも頑張ってね~」
「おう。そんじゃあな、神」
「ばいば~い。またね~」
マモリビトの集会は終わった。
次にラックが眼を覚ましたのは翌日の早朝の事だった。少しばかり眠い目を擦りながら手元に持っている槍を見て恍惚とする。これは本当に凄まじい、今まで見た武具の中でダントツだ。
brilliantや菫を優に超している、流石神の力と言うべきだろう。そんじゃそこらの武具がまるで玩具に見えてくる完成度だ。それに特殊な力も携わっているのだから素晴らしい。
「っと、こんな事してる場合じゃねぇな。さっさとやるか」
まずはこの武器を徹底的に調べ上げる。この武器は明らかに特殊だ。能力者戦争の時に気付いていたのだが武具にはそれぞれ適性がある、人によって上手く扱えるジャンルがあるのだ。
そしてそれがどうやって決まっているか、それは能力発動帯だと大体の予想は付いていた。故に能力発動帯をいじくるのは確定している。ただそうなると問題が出る。どう改造すれば良いのか分からないのだ。
まずこの神の力の適正を持っている人物の発動帯を解析してみないと始まらない。サルサのを弄って総当たりのようにやってみても良いのだが結果として時間がかかるだろうし、何よりミスって死んだりしたら終わりだ。
「さて、誰か良い実験体……いやいる訳無いよな、普通に考えて」
少し考えれば分かる事、これは神の力なのだからそこら辺のニンゲンが扱える代物ではない。適正持ちなんているわけが無いのだ。そうなるとやはりサルサ本体を使って実験をする必要があるだろう。だがそれはどうしても抵抗感がある。ミスしないとも限らない、どれだけ自分の腕に自信があっても保険は必要だ。
そこでラックは考えた。考えに考え抜いた末出した結論、それはまるで馬鹿の思考であった。
「……いるじゃねぇか、適正ある奴」
その適性がある奴、それは自分自身、そうラック・ツルユだ。現に握っても何の異常も起こっていないし、普通に扱える。
リスクは目に見えているがマモリビトの身体能力があれば何とかなる気もする。
「……やるか」
ラックは意を決して、自分自身の喉元に指を突き立てた。全く緊張もしないし、何も感じない。ただ取り出せるか分からないというだけ、不安も無い。
ただただ冷静に、指を突っ込んだ。発動帯をまさぐる、嫌な音を立てながら何か特殊な感触の物体を見つけ出した。確信したラックはそれを引き抜く。
血と共に出て来たのはまるでDNAのように二重らせんを描いているのだが霊力を少しずつ放っており、それを触れた瞬間手の力が抜ける程の脱力感に見舞われる。自分の手に重い内臓が乗っているかのようだ。
「きめぇな」
そう冷静に呟いて机の上に発動帯を置く。
地味に初めて見るので結構面白い。
「これが発動帯……ここに能力の情報が刻まれ、体力が霊力に……ってやべぇ!体力が溢れ…ないか。怪我塞ぐためにむしろもっと欲しいぐらいだったな」
妙に冷静でいられる。
「あぁこれが適正か…」
レジェストの知識か、またはマモリビトに成ったので直感で分かるようになったのか、構造が良く理解出来る。そして簡単に武具適性を担っている部分を見つけ出した。
数時間は良く観察した。様々な手段を行使して大体の動きや成り立ちは理解出来た。これならもう大丈夫だろう。
「よし」
そう言いながら元あった首に突っ込み、体力で勝手に治るのを待った。
それだけで一日使う事になったが充分価値はあっただろう。それにもうこんな危険な事をする必要は無い。あとはサルサの発動帯を弄るだけなのだから。
「さぁ、やるか」
発動帯を改造すると言うのはそこまで難しい話でも無かった。案外簡単に改造は終わる、二週間の時を以て。想定よりは長かったが充分早い期間で終わった。
魂も問題は無い。あとは安全に戻るかどうかを試すだけ。リヨンは発動帯を移植するだけで良いので簡単、それより先にサルサだ。
「…やるぞ、おっさん」
改造した発動帯をゆっくりと首元に植えこんで行く。肉に付着させ、そのまま息を戻させる。すると体力が巡り、発動帯で霊力を作り出す。
さっさと経過を見たいのでラックの霊力を流し込んで目覚めを早くする。三十分が経過した、予測ではここら辺で起きるはずだ。そう思いながら気長に待っていると物音がした。
すぐにそちらに目を向けるとサルサが驚いたような顔をしてラックの方を見つめていた。そして口を開く。分かるはずも無いのに。
「何してんだアイト…」
「アイトじゃねぇよもう、ラック・ツルユだ。あとその質問に答えるつもりは甚だ存在していない。お前はこれからこいつを持って戦ってもらう」
そう言いながら槍を投げ渡す。受け取ったサルサはあまりの出来の良さに驚きながら詳細を訊ねる。
「そいつには特殊な力が宿ってる。簡単に言えば、幻術だ」
ラックは嫌な笑みを浮かべていた、とても、楽しそうに。
「そう、この刀は偽物だ。幻術。分からなかっただろう、佐須魔」
首元を貫く一本の槍。槍、幻術。
第四百九十九話「サルサ・リベッチオ」




