第五十話
2023 11/14 改変
2023 11/14 台詞名前消去
御伽学園戦闘病
第五十話「熱気」
「行きますよ!」
その声と同時に陽は能力を発動した。するとドーム内の温度が急激に跳ね上がった。
流はあまりの熱に滝の様に汗を流し始める。だがそれだけでは止まらず陽は流に向かって能力を発動した。陽の能力は温度の調節、人に対して使用するとどうなるかは容易に想像できる。体の中が焼けるような熱さで満たされ始めた。
「大丈夫ですよ怪我は治るらしいですから、内臓の数個ぐらい焼けても何とかなりますよ」
流はあまりの熱さに悶絶し言葉を発する事すらも出来ない。ただ速攻で決着をつけなくては絶対に負ける。
そんな事を思っている時間さえも無駄だと感じ陽に向かって走り始めた。だが陽は微笑み「この能力は重ねがけ出来るんですよ」と呟いてから流の体内の温度を再度上昇させた。
あまりの熱に耐えきれず倒れ込む、陽はチャンスを見逃さず流の頭を蹴る、蹴られた流は鼻血を出しながら吹っ飛ぶ。
「私達念能力使いは能力無しでも戦えるように中学生になってからキツイキツイ訓練をするの。でもあなたはちょっと前に出てきた…ぽっと出の雑魚。あなたみたいな敗北も知らないような人には負けない!」
その言葉を聞いた流は何とも言えない怒りに巻かれた。さっさと立ち上がり今までとは比べ物にならないスピードで陽との距離を詰め、怒りに満ち溢れた顔を近づけて話し出す。
「訂正してくれないか。ぽっと出の雑魚と言うのは事実だ、だけど敗北は知ってる。僕はその敗北を乗り越えるためになら死んでも良い、君には分からないだろう?仲間が裏切った時の感情とそいつを殺してやろうと考えた時の高揚感を」
陽は嫌な雰囲気に当てられ後ろに引いた。だが流は追いかける様に走り出す。すると陽が再び能力を発動した。だが流は止まらない、流の動きが止まるだろうと油断していた陽は攻撃を避ける事が出来ず、流の蹴りをもろにくらって後方に吹っ飛んだ。
それだけでは終わらず追い討ちのため走り出す。陽は流石にヤバいと感じ今までよりも高出力の熱を流の体の中に発生させた。流石に熱すぎたのか顔をしかめ苦しんだが、足を止める事なく走り続けた。
「なんで!?」
動揺しながらも次の行動を取る、立ち上がって流と追いかけっこ状態へと持ち込んだ。幸い足の速さは大差が無いのでどうにか逃げることが出来る。じきに流は熱に侵されヘロヘロになっていった。
陽は今やらなくては攻撃のチャンスは無いと察知し今までの六倍、自身の霊力の実に五割を使用して流本体に熱を発生させた。流は信じられない程の熱に耐えきれずその場にうずくまって、胃に残っていた物を全て吐いた。陽は勝ちを確信し残りの霊力を出し切る勢いで能力を発動する。周囲の温度は更に上昇し流は限界を迎え倒れた。
陽は息を切らしながらしっかりと気絶しているのを確認してドームの外の出ようと端まで移動した。
だがドームからは出る事が出来ない。おかしいなと思い、上空を見上げながら訊ねる。
「出れないんだけど!」
女に向かって言葉を放った。その数秒後陽の脳内に直接声が聞こえる。
ちゃーんと見てみなよ
頭に?を浮かべながらドームの壁をじっくりと観察してみる。しかし壁は反射すると言う所以外に気になる点は無くどうすれば出られるのか模索していると壁の模様に動きがあった。
凝視してみると何が起こったか気付ことになる。その動きとはドームの壁が動いた訳ではなかった、ドームに反射して映った流だったのだ。
それに気付いた陽は振り向き熱を発生させようとしたが流はニヤリと笑いながら言う。
「なんとか耐えれて良かったよ。僕の勝ちだ、君の霊力は今僕の霊力を下回った!」
続けて唱える。
『インストキラー』
その声がドーム内に響くと共に陽は体から血を吹き出し倒れた。
おーい起きてー
男の声に反応して陽は目を覚ます。そこは真っ白であり真っ黒であり真っ赤とも言える不思議な世界、常に何かがうごめている。陽はそれを目にすると同時に負けたのかと推測を立てた。だがここに来た以上勝ってやる、そう思いながら目を覚ます。
おっ!起きた。久しぶり
(お久しぶりです)
いやはや二度も君と会うとは思わなかったよ
(はぁ…)
まぁそんあことは置いといて、君は流君に負けた。だけど僕は同じ目標の為に争っているのを見るのが凄く好きなんだ
(それで?)
だから僕は君にもっと戦ってほしい、君はその右目の包帯が[不要物]なんでしょ?
(…まぁそうですね)
じゃあ僕が覚醒に導いてあげよう、二度目の覚醒だ。だけど今回は戦闘で使うって事を忘れないでよ
(ちょっと!私覚醒は分かりますけどどういう力を得る事が出来るのかは分かりませんよ?)
じゃあこのまま負けるかい?
その言葉に対して陽は即答する。
(勝ちます、ニアちゃんの為に)
いい決断だ!じゃあ現世に返す。くれぐれも自爆しないようにね
陽は決意を固め、頷いた。それと同時に視界が暗転する。そしてゆっくりと目を開く。立ち上がると流はインストキラーを当てたのにも関わらず立っている事に驚くがすぐにインストキラーを発動しようとする。だがその時陽が言葉を口にした。
覚醒
その瞬間陽の右目に巻かれていた包帯が粒子になって消滅し、『覚醒』が起こった。
第五十話「熱気」




