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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第一章「始まり」
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第五話

御伽学園戦闘病

第五話「兄妹」


『ぶっ潰れろ』


その瞬間小屋の柱が崩れ屋根が落ちて来る。ラックが落ちて来る屋根を吹き飛ばし怪我はしないで済んだ、だが敵がいるのは確かだ。


言霊(ことだま)か!」


初っ端(しょっぱな)からめんどくさいのが来たようだな」


二人は戦闘体制に入る。そして襲い掛かろうとする二人をニアが引き止める、二人は何故止めるのか聞くがニアは無視して男と会話をしようとするが男は話を聞かずに『目が見えなくなる』と叫ぶ。その瞬間その場にいたニア以外のメンバーの視界が真っ暗になった。

流や蒿里は驚く、素戔嗚とラックは冷静だ。


「お前俺と交代で生徒会に入ったって言う言霊使いか」


「あぁそうだ」


男は再び言霊を発する、今度は『重力増加』と唱えた。先程と同じくしてニア以外に100kg近くの重さが付与された。蒿里と流は床を舐めるような体勢になり息をするのでも精一杯といった所だった、素戔嗚も少し苦しそうにしている。

その時ニアが叫ぶ


「兄さんやめてください!」


ニアは確かに兄さんと言った。よく見てみると白髪だし目も赤い、もしや本当に兄妹なのではと思うや否や二人は喧嘩を始める。


「ニア!生徒会の奴らと一緒に大会で優勝して自由になろうって言っただろう!」


「昔はそう言ったけど今は違うの、今はこの人たち、このチームで優勝して皆と自由になるの!」


「なぜだ…なぜ俺よりこいつらみたいな問題児を選ぶんだ」


「そんなこと言わないで!この人たちは良い人なの、ちょっと問題児だけど…優しいし!私のことをちゃんと思ってくれてるの!」


「ニア…お前は洗脳されているんだ。こっちにきてくれ、一緒に行こう」


男がニアに手を差し伸べようとした時だった、水を差すかのようにラックがこれは何キロぐらいの重さかを問いかける。男は何故平然と喋れているかを驚きながら聞くがラックは「肺活量舐めんな」と答えになっていない答えを返す。

そして返答したのだからこちらの質問にも答えろというと男は以外にも答える


「まぁお前らは今から殺すから教えてやってもいい、質問にも答えてもらったしな。まぁ大体…体感的には100kgぐらいにはあるんじゃねぇか?」


「じゃあ大丈夫だな、十分動ける」


ラックはそう言って再び戦闘体制へと入った。素戔嗚はラックの戯言に何を言っているんだと息を切らして喋る。男もラックが可笑しくて流達の反応の方が正しいと呟く。

それを聞いたラックがこんなのハンデにもなってないと煽ると男の殺意が増し戦闘が始まった。

戦闘開始と同時に『五感が停止する』と男が唱えた。ラックは聴覚すらも使う事が出来なくなってしまった、だが男は反動からか鼻血を流していた。


「流と同じ念能力だが流石にデメリットがあるのか」


そう冷静に分析するラックを見て男はより一層怒りを露わにした。だがそれより目が見えないはずなのに鼻血が出ている事に気付いているラックに少し恐怖をも覚える。

そしてラックは無反応だった、男がラックに向かって叫ぶとニアが呆れたように


「五感が停止してるんだから聞こえてないでしょ」


そう言われた男はハッとしたように確かにと納得する。それと同時に後ろにいた蒿里が苦しいながら息を使って爆笑し始めた、男はますます怒りを強めたがラックとの戦闘に集中しようとラックの方を見る。

ラックは男に向かって一直線で走り込む、何か違和感を感じながらもラックの顔に当たるように拳を突き立てる。だが目が見えていないはずのラックはしゃがんで避けた、その後ラックは足払いをして男を転ばせる。流達はいつのまにか視界が元に戻っていた。ただ重力は直っていなかったので助太刀は出来ない。


「お前の負けだ」


ラックは転んだ男の頭に対してかかと落としをしようとした。男は一瞬の判断で『飛べ』と叫んだ、その瞬間ラックは体勢を少しも変える事なく20m程度宙に浮いた。ラックは視界が戻っていないのか少しも動かずそのまま落下している。


「ラックさん!」


「お前の負けだ!」


「いや…ラックの勝ちだ」


素戔嗚が口角を上げながら言う、男は鼻で笑いながら上空を見てみる。するとある事に気づく、このまま落下してきたら自分の頭に直撃する。ただ気付いた時には遅かった。ラックは(かかと)を男の顔面に当てた。男は「落ちて来るスピード早すぎだろ」と言い鼻から血を吹き出しながら倒れた。


「俺の体感では軽いだけで重さがプラスされてんだから当たり前だろ」


そう言って綺麗に着地した。ニアはすぐに男に駆け寄る。応急手当をするから医療セットを持って来るから蒿里は回復術をかけておけと言って瓦礫(がれき)の山へと入っていった。蒿里は男に回復術をかけ始めた、血は止まったがまだ完治はしていない。


「この男のことはラックが来てからにしよう」


そう素戔嗚が提案すると同時にラックが応急セットを持って走ってくる、そのままノンストップで消毒をし、包帯を頭に巻いた。消毒をした時男は少しビクッと反応したが目は覚まさなかった。


「じゃあラックさんもきたので兄の事を説明しますね」


「頼む」


「兄の名前は[ルーズ・フェリエンツ]。私たちは三年違いの兄妹で高等部一年では基本的に生徒会に入れないので加入できてすごく喜んでいました。私たちは元々外で暮らしていたらしいですが私が小さい時に無意識に能力を発動していたらしいです。

それを知った親はすぐさまこの島に私たちを送り込こんだ、と聞きました。兄さんは親のことを少しだけ、本当に少しだけ顔を覚えているそうですが私は何も覚えていません。

中学生まで島にある施設で育ててもらいました。中学生になってからは学園の寮で兄さんと同部屋で暮らしていました。兄さんはいつも親の話になると怖い顔をして、私に何も話してくれません。なにか言うとしても「あいつらはクズだ」としか言いませんでした。そんな環境だったのもあって私の事をすごく心配してくれていました、学校のことよりも私のことを優先してくれたりしてましたね。中学生になってからは互いに少し距離が出来たんです、多分ですが私が大会を見てこのチームに入るために能力の特訓をしていたからあまり交流する時間がなかったんでしょう。

そして一年前家出している時に紫苑さんに拾われ加入しました。ですが兄はこのチームが問題児集団として有名でしたし次の大会にも出る事を察していたんでしょう。ですからここまで怒っていたんでしょうね…」


素戔嗚がルーズを誉める。ニアもいい兄だと言うことは分かっているが少し過干渉気味なところがあって、と俯く。ラックはそんなニアに今なら抜けて生徒会に入るルートだって取れるぞと言うがこのチームにいたいと即答する。それを聞いたのかルーズが目を覚ましニアに声をかける


「起きたんですね兄さん」


すると素戔嗚が棒読みで瓦礫の山を「片付けなきゃなー」と蒿里と流、ラックを連れて瓦礫の方へ歩き出す。ニアと兄の二人にしてあげる、ニアは頭を下げて兄と会話を始めた。少し沈黙が続いた後ルーズから口を開く。


「お前は…あいつらと一緒にいて(たの)しいのか?あいつらといる方が(らく)なのか?」


「何か誤解しているのかもしれませんが楽しいや楽ということではないんです。会った時から、いえ大会を見た時からこの人たちとなら一緒にやっていきたい。大会に出たいと思ったんです」


「そうか…今思うと俺も無理強いをしすぎてしまった。すまない」


「いえ兄さんが私のことを一番に考えてくれていることは私が一番分かっています」


その後は家事の事やメンバーのいいところ等を存分に話し合った。そしてある程度区切りがついたところでルーズが立ち上がる


「じゃあ俺はそろそろ行く。この傷は俺が山から落ちたってことにするから、それでニア達はいなかったって伝えるよ。バレたらやばいけど可愛い妹のためだ、なんとかなるだろ。だけど注意しろよ、あいつらは今回本気で来るかもしれん」


「分かりました」


「次戦う時は正々堂々戦おう、不意打ちは無しでだ。次に戦うのは多分大会だろう。それまで努力して強くなるんだ、じゃあな!」


行ってしまいそうになったルーズにニアが一言かける


「うん!お兄ちゃん!」


ルーズは山を走って降りていった。その目は(うる)んで顔を赤くし少しだけ泣いていた、ニアはルーズが見えなくなるまでじっとルーズを見つめていた。

ルーズが完全に見えなくなるとメンバーの所へと向かった。ニアが二人きりにしてくれる事を感謝してみんなと一緒に瓦礫を退け始めた。

数分間作業を続け瓦礫を片付け終わった頃唐突に流がキョロキョロと辺りを見ている。ラックが何かあったのかと聞くと流は


「なにか聴こえる」


と言ってまだキョロキョロとしている。どんな音か聞くと鳥の声がすると、ラックは一つだけ心当たりがあったので「スズメの鳴き声か?」と聞くと流は何故当たったのか驚きながらスズメの鳴き声だと頷く。

ラックは素戔嗚と小さい声で会話を始めた。そして数十秒話した後流をその場に正座させ謎の祝詞を唱え出す。


降霊術・儀・契(こうれいじゅつ・ぎ・けい)


読み上げが終わると流の体に何かが入ってきた感覚がする、そして素戔嗚が成功だと笑った。ラックは早速召喚させようと言った。


「とりあえずこれをつけて『降霊術・面・鳥(こうれいじゅつ・めん・ちょう)』と言え」


と流に言いながらバックから鳥のお面を出した。

流は何が起こるのか検討がついているがとりあえず従い面を着け唱える


『降霊術・面・鳥』


その瞬間流の体からスズメが飛び出してきた。素戔嗚は何故スズメなのかをラックに聞きラックは朝に助けようとしたスズメだろうと言いスズメを撫でた。


「降霊術の霊ってこういう風にパートナーになるの?」


「ほぼそうだが一部ではわざと怨念がこもるように殺して霊にして無理矢理契約する輩もいるらしい」


蒿里は何故か関係のない素戔嗚に対してサイテーと言い素戔嗚は何故我に言うのだ!とツッコむ。

そんな会話をしているといつの間にかご飯を作っていたらしくニアが「ご飯出来ました」と全員を呼ぶ。今日はカレーだった。流はスズメを出したままにしている、スズメはカレーを物珍しそうに見ていた。食べるかと差し出すと刺激的な匂いに暴れ回る。

全員食べ終わり片付けも終わった。流は一つ気になった事があったので質問してみた。


「聞いておきたいんだけど、皆は何歳で何学年なの?」


「そういや言ってなかったな。俺が二十歳で高二だ」


流はラックが留年している事にどう反応していいか分からず言葉が詰まった。その微妙な空気感を壊すように今度は蒿里が言う


「私は十七歳で高三!」


続いて素戔嗚とニアも答える


「我は十六で高二だ」


「私は十四歳で中学二年生です」


「紫苑と礁蔽はお前と同じだ」


ある程度歳の話をした後にラックが次に目指す場所の話を始める。ラックは海を目指すと高々と説明する。だが全員?を浮かべ素戔嗚は遂に狂ったかと可哀想な奴を見る目で見ている、ラックは弁明するように早口で


「海岸には俺の第二の家がある、そこは俺が勝手に使った家だ。そして絶対に見つからない場所にある」


と説明し皆納得する。ラックは弁明が終わると夜に出発するのでそれまで休憩と言い椅子を出しリラックスし始めた。流はスズメと戯れている。素戔嗚もポチと遊んでいる。

何時間か経ち日が暮れ暗くなった。ラックがそろそろだなと立ち上がり椅子をしまう、それを見た素戔嗚と流は霊に還ってくるよう志時を出す。


「今からはできるだけ静かな声で暗い道を歩く」


そう言いながら歩き出した。足音を一つも立てずに下山し、蒿里と合流した山の(ふもと)の林まで着く。ラックは普段より警戒を強めながら歩いている。

林を抜けて住宅街に差し掛かった時、唐突にラックが後ろを振り向く。そして生存確認だ返事をしろと点呼を取る。流、素戔嗚、ニアは返事をしたが最後尾の蒿里の声が聞こえない、蒿里の前にいた素戔嗚に蒿里はどうしたと聞き確認をしてもらう。後ろを向いた瞬間素戔嗚が叫ぶ


「いない!」


ニアが懐中電灯をつけ素戔嗚の後方を照らす。するとそこには何か黒い陰のようなものに蒿里の手と思われるものが吸い込まれている場面が映った。素戔嗚は咄嗟に手を掴んで引きずり出そうとしたが間に合わない。


「敵襲だ!」


その声を聞いたメンバーは戦闘体制へと入った



ルーズ・フェリエンツ

能力/念能力

言葉にした事が実現する『言霊(ことだま)』。行う事のスケールが大きいほどデメリットが強くなる。反動で死んでしまうかもしれないレベルの言霊は直感でやってはダメだと分かる

強さ/生徒会上位


第五話「兄妹」

2023 4/9 改変

2023 5/22 台詞名前消去

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