第四百九十一話
御伽学園戦闘病
第四百九十一話「旧2」
当時の翔子は完全に陰キャと言う感じでほとんど人と関りが無かった。兆波も名前と誕生日ぐらいしか知らなった程だ。だがその誕生日が偶然にも三人を引き合わせたのだ。
「え?……何、急に…」
「だからちょっと話があるんだよ、別に悪い様にはしないから来てくれよ」
薫、兆波、翔子と言う意味の分からない組み合わせにクラスメイトは釘付けだった。翔子は注目されるのが嫌だったので半ば強制的だったが逃げる様にして付いて行った。
三人は屋上に出て風を感じながら早速チームの話になる。
「それで何…」
「俺と薫、後今外にいる薫の友達でチーム作ろうとしてるんだよ。目的としては生徒会を見据えてる感だして遠征に出る、そして外の世界を知る事だ」
「はぁ…まぁ良いんじゃない?私には関係無いし…」
「関係あるんだよ、チームはやっぱ最低四人だろ、大会見据えてる感も出したいからよ!」
翔子は目を丸くして訊ねる。
「え…?もしかして私に入れって言ってるの…?」
「そう言うこった。別に悪い話でもねぇだろ?お前暇そうだし…」
「え、普通に嫌」
二人に衝撃が走る。そんな事を言われるとは思っていなかったからだ。
「な、何でだよ!」
「だってあんたら二人と知らない奴一人のチームとか信頼出来る訳無いじゃん……多分私じゃなくても大体の子が同じ事言うと思うけど…」
そう言われると確かにそうだ。二人はまだしも外にいる奴がメンバーとなると流石に不安なのだろう。だがそれでもピンと来るのが翔子ぐらいしかいなかったので何とか粘ってみる。
「というか何で私なの」
その質問には兆波が答えた。
「誕生日が俺と同じだからだ。薫も一日違いで近いだろ?こう…運命を感じるだろ」
真剣に言っている。流石に馬鹿過ぎるからか翔子はクスりと笑ってしまった。そこを兆波が突く。
「翔子が笑ってる所とか初めて見たな、いっつも外見てボーっとするか勉強してるかだもんな」
「私だって笑うけど…」
「とりあえず加入するって事で…」
「嫌」
「何でだよ!」
「せめてもう一人連れて来てからにしなさいよ…一人いない状態で大して面識も無い男三人のチームになんて入れる訳ないでしょ」
「そこを何とか!ほら薫も!」
「何とか頼むぜ翔子、兆波が外の世界を見たがってるんだ!」
「だからそれ私に利点無いじゃない……あと私先輩だから敬語使いなさいよ」
「俺の方が強いから嫌だ」
あまりに非常識なので翔子は神経を疑ったがとりあえず話にならないので去ろうとするが二人がドアの前に立って退こうとしない。
「流石に鬱陶しい!邪魔よ」
苛立った翔子は能力を使って二人をかいくぐろうとした。今まででは能力を使えば道をスルスルと抜けて行けたし、通せんぼなどされても問題は無かった。だがこの二人に至っては違う、気配と感覚だけで翔子の腕をそれぞれが掴んだ。
初めての事だったので驚きながらも能力を解除する。
「ちょっと放してよ」
「駄目だ、逃げようたってそうは行かないぞ」
「俺も逃がさねぇぞ、能力どんだけ持ってると思ってんだ」
だがその時二人は翔子の変化に気付く。少しだけ口角が上がっている。
「何笑ってんだよ」
「いや…能力使ってる状態で完全に捕らえられたの初めてだったから…ちょっとだけ興奮してる」
「当たり前だろ、それぐらいの速度なら簡単に捕まえられる。もっと強い奴らと戦った事あるからな、俺は」
「凄いわねあんた……ちょっとだけ、本当にちょっとだけなら興味、湧いてきたかも」
目を輝かせ大喜びする。まだ加入するとは言っていないにも関わらず、だ。
「よっしゃ!折角なら全員で昼飯…」
その時昼休み終了のチャイムが鳴る。少し長話をし過ぎた。
「……お腹空いたな…」
「そうね…」
「そうだな…」
「……なぁ二人共、俺に良い案がある」
「薫、多分俺も同じ事考えてた」
「え?何するの」
「授業抜けて飯食いに行こうぜ!」
「俺は行くぞ!翔子も一緒に行こうぜ!」
だが翔子は露骨に嫌そうな顔をする。
「怒られるでしょ…」
「別に大丈夫だ、俺に連行されたって言えば何とかなるからな。大体の奴はそれで乗り切ってる」
薫は自分の事を指差しながらそう言った。確かに兆波は申し訳なさそうにそんな言い訳をして事なきを得ている場面が何度かあった。嘘だと思っていたが本当に連れて行かれているとは思っていなかったし、本当にそうならば通用しそうな言い訳ではある。
薫は良い意味でも悪い意味でも名が広まっているので教師達もお手上げ状態なのだ。理事長の言う事は聞くが肝心の当人が無関心寄りなのでやりたい放題、連れて行かれたならば仕方無いと判断されるだろう。
「まぁ…そう言う事なら」
普段は絶対にしない翔子だったが二人に呑まれて付いて行く事にした。それが良い行いだとは言えないだろうが、少なくとも三人、いや四人にとって大きな分岐点である事実に変えようは無いだろう。三人が集まったのは、その日からだった。
二日後。
三人、と言ってもよそよそしかったのは翔子だけだが、全員少しずつ打ち解けて行き話題も困らないレベルには仲を深める事が出来た。
そこで聞いたのは翔子の過去の事だった。どうやら島に来る前に両親を事故で無くしており、その後に能力が発症。何とか一人で島行きのチケットにまでこぎつけてやって来たらしい。
だが外の世界では単なる性格で一人ぼっち、島に来ても変化は無く今までボッチだったらしい。
「にしても以外ね、兆波が温室育ちって」
「分かるぜ、俺もてっきり外から来たと思ってた」
「それ良く言われるんだよな、自分でも何でかは知らない」
「何か…こう…風格を感じる」
「そうか?まぁ悪い事ではないか!俺もこれからはガンガン鍛えて強くなって、将来的には今の生徒会員をボッコボコにしてやりたい」
「出来るの?そんな事」
「出来るさ、出来ない事ってのはあんまり無いんだぜ?」
「そう言う物かしらね…まぁ私はそこには参入しないから、精々三人で仲良く戦ってなさい。あくまで外に行く手伝い、穴埋め要員って事忘れないでよね」
「わーってるわーってる。でもその能力は確かに強い、翔子も軽く鍛えて損は無いと思うぜ?……それにこれからは全員が最低限の力を付けないといけなくなっちまったからな…」
普段より圧倒的に小さい声でそう言った。明らかに違う態度に少し違和感を覚え、追及しようとした所で薫の形態が鳴る。電話に出るとそれは最後の一人からだった。
どうやら到着したようだ。
「おっ!来たのか!それにしても凄いよな、一人来るからっていう理由で理事長が港開けるなんてよ」
「それぐらいにはスゲェ奴なんだよ、ほら二人共行くぞ」
その日は理事長に許可を貰って学校を休みにしてもらっていた。三人は早速港まで走る。翔子の能力を使えばあっという間だ。
港が見えてくる。そこには小さいが綺麗な船、そして操縦士のおっさんと青年が立っていた。
「よぉ!兵助!」
薫が手を振りながら声をかける。すると青年は手を小さく振り返し、微笑みながら呼びかける。
「久しぶり、薫」
二人も駆け寄り、とりあえず面識が出来た。
「マジで久しぶりだな!……とりあえず大丈夫か?」
「うん、大丈夫そうだ……って今日はそんな話をしに来たんじゃないだろ」
「そうだったな!ほらこいつが最後の一人、[沙汰方 兵助]だ!現代の回復術使いでトップレベルの技術を持ってる奴だ!」
そう紹介されたが兵助は自分からも名乗っておく。
「[沙汰方 兵助]です。薫が言っている通り能力は『回復術』さ、飛んだ腕ぐらいならすぐに治せるぐらいには練度があるよ。よろしくね」
差し出した手を握りながら兆波が自己紹介をする。
「[兆波 凪斗]だ。能力は身体強化、これから頼むぜ、兵助」
「うん、よろしく」
次は翔子だ。
「私は[時也 翔子]、能力は『スロー』っていって私が選んだ物以外の速度を遅くする能力。よろしく」
「凄い能力だね。これからよろしく、翔子」
とても感じの良い男だ。
「どうだよ翔子、こいつらなら別に良いだろ?」
「そうね、警戒する必要も無かったわ」
「褒めてくれてるのかな?ありがとう。それで薫…この四人で、って事だよね?」
「あぁそうだ!俺ら四人で一つのチーム!目標は兆波が外の世界を見る事、名前は……そうだ、こうしよう」
薫が軽く息を吸ってから言い放つ。
「エスケープチームだ!」
第四百九十一話「旧2」




