第四百七十七話
御伽学園戦闘病
第四百七十七話「第六形態」
佐須魔はもう止まらない。
シヴァを呼び出して時間を稼ぎ、その間に体力での回復を試みる。水葉と蒼はそれを良しとせず、止めに入ろうとするのだがシヴァが邪魔すぎる。
超攻撃空間が展開されている異常むやみに近付けない。二人共一瞬で細切れにされて魂ごと終了だ。水葉はまだしも蒼は絶対に無理だ、莉子が体の中にいる以上絶対にそんな死に方は出来ない。
「無理だよね」
「…うん、ちょっと無理。僕だけじゃなくて莉子も死ぬから…」
「分かった。ちょっと考えよう。どうすれば倒せるか」
思い出しても真っ向から戦ってシヴァに勝った奴はいない気がする。大体佐須魔が引っ込めるか超攻撃空間に入って殺されるかの二択だ。
遠距離からの攻撃も全て無効化、直接攻撃なんてもってのほか。八方塞がりと言う言葉が良く似合う。
「上反射で何とか出来るレベルでもない、我々奉霊はあれに突っ込みたくはないな。なぁ、稟」
「そうだね、自分も近付きたくはないかな」
「あんたらでも無理なら誰が出来るの」
「分からない。我々も所詮は霊でしかないからな、どうしようも無い事などある。釣るしかないと言うのが結論だな」
「…でも動く気無さそうだよ?」
「そうだな。だったらここは捨てて新たな機を待つ他無いだろう」
「やってる事は同じ。それよりも漆が削ってくれてチャンスが来てる。仕掛けるならもうここしかない」
「…そう言うのなら仕方無いな…稟、やれるか?」
「尻尾ですか……出来なくは無いですけど…多分出来ても猶予一秒も無いですし、二度は無いと思いますけど……こんな所で使って良いんですか?」
「大丈夫だ。失敗はしないし、仮にしたとしてもこの白煙が責任を取って後を継ぐ」
「そう言うのなら仕方無いですね…貸してください」
「あぁ」
すると白煙は自身の羽から羽根を一本むしり、差し出した。そして水葉にも髪の毛を一本だけ渡すよう言った。何をするのかは分からないが悪用されるとは思えないのでさっさと手渡した。
稟はその二つを飲み込んだ。
「さぁ、行きますよ。水葉さん、ちゃんと見ておいてください」
詳細は説明しない、見れば分かる。そして水葉の反射神経があれば問題は無いだろう。稟はそう考えて動き出した。
普通よりは勿論大きいのだが霊の中では小さめの稟、精々靴ぐらいのサイズなのだが非常に素早く一瞬にしてシヴァの傍まで走り込んだ。
その時点で超攻撃空間には入っている筈なのだが全くの無傷、何が起こったのか分からないが水葉は理解する。超攻撃空間に穴が出来た様に見えたのだ。
すぐさま刀を持って突撃する。
「便利で強いね、その力」
一閃。
超攻撃空間と共にシヴァは佐須魔の中へと還って行った。あれほどまでに苦戦させられていた破壊神シヴァがたったの二十三秒、水葉と稟によって討伐された。
蒼もようやく楽に動けるようになったので水葉と合わせて佐須魔に向かう。想定よりも早く突破されたので回復が追いついていない佐須魔は多少負傷しているものの仕方が無いので戦う事とした。
「そうなれば先に潰すのは勿論、こいつだろ?」
『壱式-壱条.筅』
対象は稟。見ていた分かったのだが稟には特殊な術が使えるようだ。稟が触れている攻撃が事前に体の一部を喰った者にとっては無力となる。蒼が動かなかったのはそう言う事だろう、いくら莉子がいるとしてもあそこで一緒に突っ込まないのは有り得ない判断だ。
ひとまず稟を潰さなくては両盡耿や他の術、攻撃が無効化される可能性がある。今一番警戒すべきなのは当然水葉なので無効化されると厄介だ。
『妖術・上反射』
水葉が唱えた。対象は稟、まず前提として契約をしていないので普通は不可能なはずなのだが発動する。
「やっぱり、その共有能力って魂を喰った時の劣化版でしょ、ほんの少しだけ魂が共有される」
「マジで面倒だね。効果がある間は実質的に契約している状態ってことだもん」
契約は大半の霊と行う儀式に近しい術。魂と魂を通わせる事によって術を発動出来るようになる、そして稟の術によって食す事で魂と魂を通わせ、本来は稟しか発揮されない無効化が発動するのだ。結局はやっている事が同じ、なので出来ると考えた。
実際にその予測は当たり上反射が展開されている。筅は止められない、回転し出して上反射が全て佐須魔に返している。だがこれは受けるしかない、ここで能力を全て停止なんてさせたら一瞬で斬られて終わりだ。
「まぁ仕方無いよね、僕のミスだもん。受けるけどさ…その後どうなるか分からないよ?」
筅が終わったその瞬間、佐須魔は放つ。
『肆式-弐条.両盡耿』
すぐに稟が蒼と椎奈の髪も食べて無効化させる。だがそれこそが目的なのだ、これが契約と同じ効果をもたらすと言うのなら必然的に発生するはずだ、オーバーダメージが。
それが誰に向くのかまでは分からないがやる価値はある。両盡耿で視界を奪い、その隙に撃つ。
『参式-壱条.騎弦星己』
稟を囲むようにして蟲神、人神、猫神が陣取った。
「ごめん稟!」
「いえ、仕方が無いので気にしないでください!」
何をするのか悟った稟は人神を励まし、他の皆とのリンクを解くかどうか迷っている。絶対に研仙鳥碧も発動するだろうが、ここで解除すると両盡耿で大ダメージを受けてしまう。丁度良いタイミングで解除しても絶対にくらう、無理だ。
迷っていると椎奈が叫んだ。
「リンク解除して!」
すぐさまリンクを解除した、あとは他の皆に任せよう。
『参式-弐条.研仙鳥碧』
山が降って、稟を押しつぶした。幸いな事に騎弦星己に巻き込まれていた砂餠鮫が全力で地面に引きずり込み、端っこの端っこに引っ張ってくれたのでダメージは少なくて済んだ。だがもう動けない状態ではあるので任せるしかないだろう。
研仙鳥碧が終わると同時に両盡耿も解除された。佐須魔はある一定のダメージは与えたのでもう一度同じことをすれば絶対に勝てると確信していた。
なのでこのまま続けようと唱え始めた。
『肆式…』
だがその時、水葉が眼前に迫り、斬る。
見事に発動帯を斬った。
「何…?」
体は相当ボロボロになっているにも関わらず何故だか動けている。
「霊力を補充しなくて良いから体力での回復が早い。あとはまぁ、体力操作」
聞いた事も無い、見当はつくがそんな事が本当に出来るとはにわかに信じた難い。霊力と体力は同等に扱われる事が多いが実際は性質からして大きくかけ離れたエネルギーなのだ。
それを操るなんて考えは普通出てこないし、そう簡単に出来る技術でもない。霊力操作だって相当な練度と才能がいるはずだ、佐須魔ですら出来ない体力操作が出来た理由、それは明白だった。
水葉の背後、少し先。そこに立っている一匹の白い鴉。
「お前か、白煙!」
「その程度の技術を扱えなくして何が奉霊最強だ、お前は少し我々を舐めすぎだ。やれ、迅隼」
「アイヨ分かった!!」
來花は丁に任せ迅隼も駆け付けている。そして血が噴き出す佐須魔の喉元に突っ込んだ。そのまま出来る限り霊力発動帯を奪う。
「これで…」
体力操作が思ったより上手くいかず結構なダメージを受けてしまった椎奈と蒼はまず体勢を立て直しながら見守っている。
「……想像よりも君らは強いね。でも流石にちょっと僕を甘く見過ぎだ」
佐須魔はビクともしていない。明らかに第六形態は破壊されたにも関わらず、何の躊躇いも無く最適解を踏んで行く。
「かませにでもなって死んでくれ」
戦闘病全開の笑みを浮かべながら、呼び出す。
騎弦星己のためにしか使われていなかった新たなる神格。
『降霊術・唱・蟲神』
佐須魔が"作った"最高傑作の生物、サポートに特化した害悪蟲。名を蟲神。
意気揚々と現れたそいつに一撃、くらわせたのはその場にいる誰でも無かった。
「ちゃんとやってよ!」
「分かってる!!うるっさいから黙ってて!!」
譲渡。桃季だって理解していた、本来これは自分に渡された力ではないのだと。一時的に預かっていてほしかったのだろう。この時のために。
「蟲には蟲ぶつけんのよ!!」
干支組の待機室にて透が残した蟲の主導権を譲り受けた後葉金 エリ、復活。
第四百七十七話「第六形態」




