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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第四百五十九話

御伽学園戦闘病

第四百五十九話「香澄」


「須野昌、須野昌」


肩を掴まれ、ぐらんぐらんと揺らされ目を覚ます。すぐに周囲を確認したが何も無い、ただの真っ白な世界。察した、死んだのだろう。

だがおかしい事がある、エンマがいない。ここに来たならばエンマか、せめて仮想のマモリビト辺りがいるはずだ。それなのにここにいるのは香澄と須野昌の二人、とりあえず待ってみる事にした。

その間暇なので何が起こったのか状況を整理する事とする。


「あの知らない伽藍経典、一瞬だけ間を置いてすぐに爆発?みたいなのが起こった感じだったんだよね」


「頑なに使ってなかったのにここで急に切って来たな……もう分からないかもしれないけど、何でだ?」


「…多分だけど単純に威力と範囲の問題なんじゃないかな……今の僕らって相当硬くて、爆発一回じゃ簡単に防がれる事が多いでしょ?それに加えてあれ範囲凄そうだったから、無駄に障害物だけ消し飛ばしてダメージはほとんどない。それだけじゃなく"知らない伽藍経典を控えている"って言うプレッシャーにもなるから使わなかった、これが答えだと僕は思うよ」


「まぁ順当にそんな所だろうな。ただまぁここで切ってくれたなら俺の仕事は終わりだ。後は流に任せるだけだな、多分勝てるだろ今のあいつなら」


「行けるだろうね。僕もあそこまで強くなるなんて思ってなかったよ。最初はラックと素戔嗚に助けられてばかりだったからね」


「ルーズが殺されたと勘違いして仕掛けて時か。あん時俺蒼、フェアツ、英二郎と四人で工場地帯行ってたからなぁ、文面でしか知らないんだよなぁ。だからホントに最初の流とか知らないわ」


「可能性の塊って感じではあったけど、正直ここまでとはね……やっぱり血と才能は大事だね」


「当たり前だろ、良く考えてみろよTISも学園側(こっち)も強い奴らは大体良い血族かありふれる様な才能持ちしかいないだろ?佐須魔と薫はレジェストの血族、來花と流も遠いけど同じ血族……んーいやそうでもないか?智鷹とか絵梨花とかは普通か…」


「と言うよりこっち側に関してはエスケープの皆がヤバ過ぎるだけでしょ」


「それもそうだな」


そんな話をしているとヒョイとエンマが顔を出した。


「でも君達も相当強いと思うよ~。ただ相手が悪かっただけ、偵察だったからって言われたらそれまでだけどね」


「おっ、来たか。んで俺ら死んだんだろ?これどっちが黄泉に行くんだ?」


「待ちなよ、話が進み過ぎだ。まず君達は死んだ、確かに死んださ。だがそれはまだ確実なものではない、片方だけならまだ紡ぐ事が可能だ」


一気に話が変わる。そんな事考慮にすら入れていなかったからだ。


「ちょっと待てよ!どっちかなのか?」


「どちらか片方だね。まぁどっちも方法は違うんだけど、どちらにせよどちらかだ。

だけどもう時間が無い。僕が神と話してる間に時間を浪費しちゃった。今すぐに決めてくれ、そうじゃないと魂が黄泉にまで行ってしまう」


時間は無いと言われた。互いが互いを起こせと言うに決まっているのでエンマは先に希望した願いを受け入れると心の中で決めていた。

そして先に指を差したのは須野昌だ。勿論香澄に向けている。エンマは言い訳や文句の一つを言わせる間もなく香澄を現世に送り返した。

須野昌はその場に残る事となる。


「とりあえず大丈夫だね」


「それなら安心だ。にしてもどうやったんだよ?死んだのは事実なんだろ?」


「簡単に言えば降霊かな。香澄って君の霊力を媒介として霊ではないけど霊に近い生物となって再誕した。だから降霊も出来るって考えたんだよ。

君の体に憑りつかせた。無理矢理だから多分君の体は形を保てないし、崩壊して完全に香澄の者になってしまうだろうね……でもそれで良いんだろ?願っていたはずだ、復活は」


「お見通しか、別に良いけどよ…お前に見られると気ぃワリィわ」


「そんな事言わないでよ……それじゃあそろそろ時間だね。これから君は消える、無に行く事も無く、地獄でもない。君達が黄泉の国を知る前に信じていた"死"と同じ状態に陥る。覚悟は出来ているかい?」


「出来てなかったらあそこには立ってねぇよ」


両目を閉じ、放り投げた。


「君は結構頑張ったよ。ただ報われない事も多かったはずだ。だからこそ僕が最後の言葉を送ってあげよう…」


「良いからさっさとやれ。気持ち悪い、父親かよ」


半分笑いながら言い放った。エンマも少し呆れながら須野昌を消した。



丁度そのタイミング、現世では香澄が目を覚ました。地面に横たわっており、周囲には何も無かった。霊力感知を行っても來花の霊力は存在しない。どうやらいなくなったようだ。好都合ではあるのでひとまずは誰かと合流する事にした。

走って走って走る。とりあえず一番近い霊力が目前、声を出し接触する。そいつは光輝と拳だった。二人はまだどうするか悩んでおり、誰かが近付いて来ているから止まっていたらしい。

生き返った香澄に驚きながらも事情を聞き、『阿吽』で皆に伝えた。


「須野昌の体を使ってるって事で良いんだな?」


「そう言う事だと思う…これもあるし」


そう言いながら目覚めた時傍に落ちていた最後の薬、霊力増強薬を見せた。それだけで須野昌と言う事は証明出来るので二人共疑う事はしなかった。


「とりあえず全部伽藍経典が露出した時点で流に任せれば良いんだな…俺達はどうするか…」


正直な事を言うとやる事が無い。三人も固まっていると大抵の敵は危険だと感じ逃げるだろう。そして霊力感知で分かった事なのだが何故だか中央に集まりつつある。

だからと言ってむやみにそこへ突っ込んでも絶対に良い事は無い。十割十分袋叩きにされて終わりだ。敵は常に自分達の二回り程強いと考えると行きたくはない。


「と言うか後半組は思ってたよりすぐ終わったな」


拳の何気ない一言。確かにそうだ。残っているのはタルベとレアリー、漆だけだ。漆は開始してすぐに霊力反応を無くしてから誰とも連絡が付かない。死亡通知は来ていないので生きてはいるのだろうが単独行動をしたいという無言の伝達なのだろう。

そうなると後はサポートの二人、何をしているのか良く把握出来ていない。霊力感知もそろそろブレ始めて来る、周囲に強い霊力が充満し過ぎて精確に判別出来ないのだ。


「とりあえず生存者だけでも確認しておこうよ」


「それもそうだな……えーっと……俺、拳、香澄、蒼、香奈美、水葉、レアリー、タルベ、漆の計九人か」


「大分減ったな。俺らも早めに殴りに行った方が良いんじゃねか?」


「いや、駄目だ。少なくとも蒼と合流する。多分蒼も同じ考えのはずだ。三人も固まっていればこんだけヤバイ霊力だらけでも見つけられるだろ」


「そうか。じゃあ漆とタルベとレアリーはどうすんだよ」


「タルベとレアリーはペアで動いているらしいからな…漆は単独行動。香奈美は刀迦、水葉は霊力反応が無いんだよな…『阿吽』での返答も全く無いしな。正直合流出来るのは蒼だけだと考えた方が良さそうだな」


「よし分かった。んじゃ俺らもさっさと蒼探そうぜ、あいつらに休憩の時間はやらねぇ」


「そうだね、行こう」


三人は霊力感知を行いながら蒼を探し始めた。『阿吽』も交えつつ、互いに距離を詰めていく。その最中新たな戦闘は一回も発生していないようだった。


「あ!いたぞ!」


拳が指を差し、距離を詰める。


「ようやく見つけた!」


蒼も近付いてきた。


「本当に香澄だ……おかえり」


「うん、ただいま?なのかな…とりあえずいいよそんな事。今は作戦を考えよう。

多分だけど合流できるのはこの四人だけだ。他は単独行動かペアだからね。四人もいる。出来る事は凄く多いと思うんだ、何か案とかある?」


すると真っ先に蒼が提案した。


「タルベは佐須魔の元に向かってる。僕はね、大体何をしたいのか分かるんだ。そしてその行動は恐らく"勝利"に直結していると思う。

だから僕はこの四人でタルベとレアリーをサポートしたい」


「サポートと言っても曖昧だな、具体案てきなのは…」


「ある。道を切り開くんだ。今TISは中央に集まっている、理由までは分からないけどね。ただその中でも脅威であるはずの刀迦が足止めされている。

だったら僕らで気を引いて足止めぐらいなら出来る気がするんだ。それぞれ元来の目的は遂行しているはずだ。あとは自由行動に近い、だけど出来る事って無いんじゃないかな。だから盾になろう、僕ら全員で」


死にに行こう、そう言っているのと大差はない。だが蒼の真剣な眼差しからは冗談だなんて気持ちは微塵も伝わってこない。それに今ここで戦闘歴があり、そもそもの戦闘に長けているのは蒼だ。しっかりと状況を把握出来ているに違いない。それに今の光輝の力があれば災厄やアリスなども止められるはず、行く他無いだろう。


「もう刀迦と蒿里以外は集まっていると考えて良い。譽、原、アリス、素戔嗚、佐伯、智鷹、來花、佐須魔、災厄。僕らが重点的に戦うのはやっぱり重要幹部の五人、そして災厄になるはずだ。佐伯は能力が封じられてるらしいし敵じゃないけどアリスと譽が怖い。

どうやってぶつかるか、ここで決めよう。しっかり考えてね」


三分の長考とも言えない時間、全員が結論を出した。まずは共有だ。


「それじゃあ言い出しっぺの僕から。と言っても僕は余った奴とやるよ、『覚醒能力』のおかげで何とでもなる」


「じゃあ次は俺だ。俺はアリスとやりあう。もう砕胡との戦いで頭使ったせいで痛ぇ、ただ殴り合うだけならアリスが一番だろ」


「それじゃあ僕だね。僕は原とやるよ。あいつは霊を持ってないから、この中で唯一霊を使える僕が適任だと思うんだ」


「最後は俺か。俺はだな…譽と素戔嗚を同時に戦う」


三人が何とも言えない目を向ける。光輝は相当疲労しているはずで、二人を同時に相手する力が残っているかも疑問が浮かぶからだ。


「まぁそうなるよな。でもあくまで足止めが目標なら影の子世界もあるし、清水もある。手数が多い二人を受け流すのは俺が良いだろ」


「確かにそうだね。それじゃあ僕は災厄を止めるよ。だけど勝てるとは思わないでよ、僕だってリイカとの戦闘で神経すり減らしたんだから」


それだけでも戦果としては上出来すぎるのだ。それに加えて足止めもしてくれるのだから誰も文句を言わないだろう。

ならば行こう。四人の最後の仕事を果たすため、いざ、島の中央へ。



第四百五十九話「香澄」

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