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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第三章「工場地帯」
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第四十四話

御伽学園戦闘病

第四十四話「逆転 形勢」


「…(シン)は負けたみたいだ。すまないが一瞬で片付けさせてもらう」


來花はコトリバコを取り出し作動させようとした。すると來花の周りだけ途轍もない強さの風が吹いた。不意の出来事だったのでコトリバコを落としてしまった。そのコトリバコは何処からともなく現れた(タカ)の霊が足で掴んだ。その霊は空を飛びながら宗太郎(ソウタロウ)の元まで向かっていった。


「いい子いい子」


「宗太郎…確か上級の鳥霊と風を操る。だったよな」


「正解。まぁとりあえずコトリバコ没収したから一瞬で僕達を倒すなんて出来ないよ」


「良い事教えてやろう。三獄は一人を除いて複数持ち、手数は多いんだ。コトリバコが無くともなんとでもなる」


『呪・自心像』

呪・剣進(のろい・けんしん)


自心像に続いて放った呪いは三本の剣が頭上から現れ対象に向かってスピードを付けて突撃してくる、という呪いだ。

自心像は『呪・剣進』で現れた三本の剣を手に取って剣の速度を落とし、一本の剣を咥え残りの二本を手に取ると言うわけのわからない戦闘体勢に入った。

流はスペラを呼び出し宗太郎の鷹と同時に攻撃するよう命令した。宗太郎は味方に追い風になるような風を発生させた。二匹の霊は自心像を無視し本体を攻撃しようと特攻を仕掛けたが來花まであとほんの少しという所で自心像がジャンプし、進路を塞ぎながら剣を振り翳かざした。二人は間一髪で撤退命令を出し何とか回避する事に成功する。

流石に剣で斬られたらただの鳥霊の二匹は動けなくなる。絶対に剣で斬られてはならない、そう考え回避は絶対に行うように努める。そして來花本体に攻撃するよう指示を出す、自心像は完全に動きを合わせて進路を塞いできた。危ないので二人は再び撤退命令を出す。


「どうするの流先輩!らちが開かないよ?」


「いや、このまま続けてくれ。絶対にチャンスは(まわ)ってくるはずだ。それまで待ち続けよう」


「分かりました」


「私は何すればいい?」


指示をソワソワしながら待つファルに少し考えてから來花が浮遊している高さまで跳べるか訊ねる。ファルは「出来なくはない」と言うあいまいな答えを返した。流はその言葉を出来る、と受け取って指示を出す。


「じゃあ頑張って自心像を避けながら來花に攻撃してくれ。宗太郎は僕と一緒に霊で攻撃する。そうすればどっちかの攻撃は当たるはずだ」


「了解!」


「はい!」


「行くよスペラ!」


ファルは高速で走り出した。スペラと鷹は勢いを付けつつファルと同時攻撃になる様に飛んでいる。その様子を見た自心像は少し悩んだ末ファルを放置し、霊達を止めに来た。霊達の目の前に自心像が飛び出すがスペラと鷹は止まらず自心像を避けて來花に突撃した。向かってくる二匹の霊とファルを見てため息をつきながら致し方なく最強格の呪いを放った。


呪術・羅針盤(ジュジュツ・ラシンバン)


すると來花の足元を中心に巨大な羅針盤の針のようなものが現れた。それを見たファルは踵を返し全速力で逃げ帰った。流と宗太郎もすぐに霊を戻そうとしたがもう遅い。針はゆっくりと勢いを付け始めて回転しだした。そして霊力のこもった鋭い針でスペラと鷹を何度も切り裂こうとする。だが二匹とも引き裂かれる前に限界を迎え、体へと還っていった。ファルはギリギリ致命傷になるのは避けたが左足のふくらはぎに結構深い傷を負った。


「いったぁ!…とりあえず私はまだ動けるよ!!」


「やばいね…霊が使えないかぁ」


「僕…何も出来ない」


情けなくそう言った流に二人は驚愕する。


「僕の念能力はあいつには通じない…霊力に圧倒的な差がある…」


「使えないものはしょうがないですね。ファル!私達でどうにかするよ!流先輩は作戦立てて!」


「ごめんね!頼んだよ!」


二人は流を置いて來花の元へと向かう。だが二人は立ちはだかる自心像に苦戦している。戦っている二人を見ながら何も出来ない無力さを痛感しながらどうすればいいかと考えてみる、一つだけいい考えがあった。だがそれは体に大きな負荷をかける事になってしまう。下手をしたら死んでしまうかもしれない方法だ、だがここで足を止めていてもどうにもならないだろう。

決意を固め、一歩踏み出した。


「スペラ僕死ぬかもしれないけど我慢してね。足手纏いは嫌いなんだ…」


そして放った。


『インストキラー』


來花は驚き『呪・封』を流にかけてインストキラーを止めようとした。だがその視線の先には血を吹き出しながら倒れる流の姿があった。何のためにインストキラーを撃ったのかという疑問が浮かび上がる。それは自心像と戦っている二人も同様で一度後ろへと引き、流に近付いて声をかけようとした瞬間だ。後ろに体を引っ張られた。自身像に引っ張られたと思い後ろを振り返るとそこには自身像では無く礁蔽がいた。そして礁蔽は二人とラックを掴み戦闘から逃げ出すためか全速力で走り出している。


「なにすんの!」


「離せ!」


「今はダメや!ああやってぶっ倒れると制御ができなくなるってラックが言ってたんや!だから一旦わいらは撤退や、自分で走れ!あとコトリバコは捨てろ!!」


「どういうこと?」


「まぁいいや。とりあえず僕達は引いた方がいいらしい」


二人は礁蔽が手を放すとしっかりと受け身を取って着地し、そのまま走り始めた。そして宗太郎は先輩の指示に従ってコトリバコを後方に投げ捨てた。


「…自心像コトリバコを取り戻してこい」


頷いてから礁蔽達の方を向かって物凄いスピードで追いかける。そして流と二人だけになった來花は危機感を覚えたのか今までとは桁違いの霊力を使って唱える。


『呪・剣進』


その剣達は流に向かって解き放たれる、二秒もかからず流の元へと到着したはずだ。だが剣は消滅した。


「呪いが完全に分解された、と言うことは周辺の霊力は十割か。こんな事が出来るのは佐須魔だけ…いやもう一人いたな。こんな所にいたのか…」


流はゆっくりと立ち上がる。その目は黒く真っ黒なのにも関わらず目をつむりたくなるような光を放っている様に映る。血にまみれ、入れ替って暴走を始めた流には敵味方など関係ない。ただ邪魔をしようとしてくる奴を皆殺しにするだけだ。


「インストキラー」


そう呟くと先ほどまでは通じなかったインストキラーがいとも容易く通用した。來花は即死急のダメージを受ける。だがなんとかして墜落する事は避け、体勢を整えようと高度を上げつつ前方を確認する。

なんとそこには拳を振り上げた流がいた。何故地上から数十メートル離れているのに身体強化も無い流が来ているかを考える暇は無く、ただその拳を受けないよう後ろに下がるしかなかった。それと同時に流は再び呟く。


「インストキラー」


來花はあまりに急な攻撃に身構えていなかった。それ故の唐突な激痛に意識を失いかけた。その隙を突くように流はまたインストキラーを撃とうとする。だが來花は焦って対抗した。


『呪・封』


だがその呪いさえも流は打ち消してしまった。來花は何も出来ずに再びインストキラーをくらい、浮遊する余裕が無くなったのか大穴へと落ちていった。流はトドメをさすために大穴へと自ら落下して行く。下水道のコンクリートに叩きつけられ呼吸が乱れる、普段よりもゆっくりと息を吸いながら空を見上げると追撃をする為に落下してきている流の姿が見えた。

來花は一筋の希望にかけて手を広げ流が来るのを待つ、流がすぐそこまで迫ってきたところで手を引き、抱きしめた。流は言葉を発さずに困惑し攻撃を止めた。


「もうやめよう…私も君を攻撃したくない…体も中身も。分かるだろう、君なら」


そう落ち着いた声で言うと流は何か安心したようにコクリと目を閉じ眠り始めた。それを見た來花は一息ついてからそっと流を置く。それに続くようにして自心像がコトリバコを持ってきた。労いの言葉をかけながらコトリバコを手に取って懐に入れた瞬間だった、少し前までコトリバコを保管していた小部屋の鉄扉が開いた。


「いやー今までわいは踏み台として使われる事しかなかったけど、人を踏み台にするのも案外心地良いもんやなぁ」


扉を開けたのは礁蔽だった、來花はすぐに戦闘体勢に移ろうとしたが既に遅かった、礁蔽の後ろからもの凄い勢いで剣を突き立て、飛び出した英二郎に腹部を刺されてしまう。


「お久しぶりですね」


「英二郎?何故私を…」


「あなたが死んだせいでTISの重要幹部が五人抜けて、別の人が二人死にました。僕は脱退した重要幹部の一人というだけです」


「そうか…じゃあうせてくれ。私はもう帰りたいんだ」


「すまないがそれは出来ない」


「…」


「僕はお前に復讐をしに来た、それだけだ」


「分かった。しょうがないな…やろうか」


英二郎は剣を來花に突き立てる。一方來花はコトリバコを取り出した。

そうして元TIS重要幹部、[木ノ傘 英二郎]の半分は八つ当たりで出来ている少し長い復讐が幕を開けた。



第四十四話「逆転 形勢」

2023 10/21 改変

2023 10/21 台詞名前消去

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