第四百三十七話
御伽学園戦闘病
第四百三十七話「恩師の力」
「それはちと気が早すぎるぞ」
「どうかな、確かめるか?」
「そうさせてもらおうか。だが気を付けろよ、霊力濃度が増すぞ」
「問題は無い、慣れた」
「そうか。それでは行かせてもらおう、来い!お前達!!」
その瞬間霊力濃度が爆上がりし、霊達が飛び出してくる。八岐大蛇、牛頭馬頭、牛鬼、鵺、八咫烏、天邪鬼、計七匹の神話霊。
それだけでも相当厳しいのにも関わらず天仁 凱には四匹の虫型と本人の呪も余っている。それに可能性としては他の霊達が来るやもしれぬ、未知数と言うのが正しく、長期戦にするほど不利になっていくのは明白。だが数が多すぎて短期戦も厳しいだろう。
消耗は出来る限り抑えながら一匹一匹確実に駆除していく事にした。霊を全部倒しても両手が無くなっていない場合勝ちはほぼ確定する。
そのためには他の者達の能力の使用解禁さえ厭わない。光輝の役目はあくまでも天仁 凱を殺す事であり、生き残る事では無い。
「行くぞ」
だがまずは偵察。
『妖術・刃牙』
刃牙だけ使って身体強化はフルパワー、ララの呼吸促進も使って霊力体力の生成力を極限まで高める。これだけ情報が無い段階で子世界に入りたくはない、数も多いので目躁術は命取り。清水と胡桃の能力は有効だろう、勿論ソウルの能力も。
一応手数は多いので上手く立ち回れば勝てるはずだ。
「退いてな、まずは俺がやってやらぁ」
鵺が前に出る。
「私が手助けしよう」
そして八咫烏は飛び上がった。言葉の通りサポートをするタイプの霊なのだろう。幸いなのは他の奴らに攻撃の意思が見えない事にある。実質的にタイマンならやり方は幾らでもある。まだ目躁術は早いが。
鵺が一歩一歩と近付いて来る。だがそこである思考が光輝を支配した。何故一匹なのか、他の霊達も共に戦えば良いでは無いか、と。こいつらに知性が無いとは考えられない、それに天仁 凱の下部なのだから最低限の連携は取れるよう躾られているはずだ。
そうなるとそれなりの理由がある。そして一番に思い浮かぶとしたらやはり、敵味方区別無しの全体攻撃と言った所だろう。気付いた瞬間後退して避けようとしたが壁に当たる。
透明、だが結界とは違う。明確に霊力で出来ていると分かる。
「無駄だ、逃げようとするな」
それが八咫烏の能力なのだと理解する。丁度光輝と鵺を取り囲むようにしてクルクルと回っている。恐らく軌道上に結界に似た何かを作る能力なのだろう。
そうすると範囲攻撃でも他の霊がそこまで距離を取らない理由が理解出来る。そして八咫烏は上空を飛んでいる事から空の方にも蓋のような物が作られて逃げ出せなくなっているのだろう。
まさに八方塞がりと言った所だろうか。だが対処法はある。
『妖術・上反射』
この結界モドキには分かりやすすぎる弱点がある、それは霊力でしか生成されていない点だ。シウが強いとされる理由の一つは体力や他の物質なども無意識的に混ぜているおかげでこの対策が有効でないからである。
上反射、大きさを少し変える。大きくするのだ。出来うる限り結界モドキにぶつける。
「やっぱりシウの結界ってクソ万能何だな」
次の瞬間反射によって八咫烏に物凄いダメージが向かった。だが八咫烏もそんな弱点ぐらい把握している。何処まで鍛えても変えようのなかった仕様、なので前提を改善するのではなく反撃された後の対策を作っていた。
この八咫烏の生まれは沢山の花が咲き誇る山であった。霊として強くなっていく内に天仁 凱に目をつけられ、力で屈服させられた。その後二人で自身の特性の弱さを語り合い、どう克服するか試行錯誤していった。
天仁 凱は呪という新たな能力を作り猛威を奮っていた。その姿が酷く勇ましく、煌びやかに映った。次第に八咫烏も他の霊と同じ様に役に立ちたいと考え必死に様々な能力者や霊から情報を引き出しこの術を作り上げた。
名の由来は天仁 凱と出逢った場所、故郷である山からだ。あそこは年柄年中花が咲き続ける。今となっては禿山となってしまったが、あの栄光を思い出すだけで体が震え立つ。慰霊として、こう名付けた。
『独術・咲良』
効果はとても単純、絶対的な反射である。だが普通の反射とは訳が違う、とんでもない威力を放ちながら自身の発動中の能力の効果を底上げするというおまけ付きである。
だがそれと同時にデメリットも健在、自分の能力を反射、または無効化された際にしか使用出来ない。それに相当緻密な霊力操作が必要であるので無効化されそうだと感じたらすぐに操作を始めなくては間に合わなくなったりもする。
結局は弱点は残ったままだが、これでも良いだろう、天仁 凱はそう言ってくれた。なので八咫烏は何百年もこのままだった、これで良いと信じて。
「でもそれってよ、これで良いじゃねぇか」
展開する、フラッグの能力。それもそうなのだ、フラッグの反射は本当に何でも跳ね返す事が出来る、何なら攻撃していない無機物を対象にも出来てしまう。それほどまでの上位互換、八咫烏は知っていた。だがそれでもこの大好きな術しか使うつもりはない。
これでよいのだ、何故ならこうして気を引かれている内に鵺が手はずを整えたのだから。
「こっち見とけよ、馬鹿人間」
次の瞬間大きな音と地響きを轟かせながら降る雷鳴、光輝目がけて一閃。避ける術など、存在しえない。
「見くびっていたぞ、人間。お前は弱い」
まだ終わらない、強力な鵺の直接攻撃だけではなく、何回も何回も雷が当たる。体に電気が流れるせいでろくに動けず辛うじて身体強化とララの能力が使えている状況だ。逆に言うと他の能力は解けたし、現在使えない。
このまま何も出来ずにころされるかもしれれない。そう思うと怒りが湧いてくる。こんなしょうもないやられ方をするぐらいならば、そう思い光輝は動く。
身体強化と呼吸促進を解き、影の子世界に飛び込んだ。だがそれは逆効果、鵺の雷から逃れる手段は無いのだ。次の瞬間子世界にも関わらず電流をもらった。
だが直撃するよりは圧倒的にダメージが少ない。そこから考えるに影に向けて攻撃したのだろう、本人は昔素戔嗚に刀を突き刺された事もあったらしいしそこまで変な事ではない。
「まずは鵺か」
優先順位は鵺、八咫烏、他の霊へと移り変わった。ひとまずあのフィールドから出る必要はない、どうせ完全追尾ならばフィールドの外に出ても何の意味も無い。ただ注意すべきは全体攻撃らしきものを未だに出していない所だ。
「ヤバそうだったら…使って離脱だな…よし」
今も攻撃は続いており、電流を流されている。万が一にでもライトニングのような効力を持っている電気だとすると早めに仕掛けた方が良いし、チンタラしていると体勢を整えられるかもしれない。
少しだけ位置を変えて飛び出す事にした。フィールドからは出ない、他の霊と天仁 凱本人がいるからだ。
「悪いな、待たせた」
そう言いながら背後を取り、飛び出した。だが鵺は振り返る事もせず笑いながら言い放った。
「いや、こちらこそ」
その真意、気付けるはずもない。全てが遅い。蟲毒王までは良かったのだ、だが光輝は霊との戦いの基礎というものを身に付けていなかった。
基礎の基礎、霊に時間を与えるな、という点さえも。何故与えていけないのか、強力な霊となるとそいつだけの独特な術や戦闘法を持っていたりする。時間を与えると本領発揮、使われて独壇場へと持ち込まれるのだ。
そう、今このタイミングのように。
『穂鍋 光輝』
名を呼ばれた直後、体が浮いたような感覚がした。似ている感覚、影の子世界に入る時と酷似している。
「俺の家へようこそ、だなぁ」
一対一の空間。周囲には電流、どこもかしこも電流。四方八方、地面さえ電流が流れており痛い。すぐにでも子世界に逃げ出そうとしたが出来ない。
「知らない様だが子世界から子世界に飛ぶのは相当難しい、お前如きが使える技術じゃないんだぜ」
ただただ知識が足りなかった、知識と手札が。
「お前の負けだ、穂鍋 光輝。よくやったとは、思っておくぜ」
とんでもない量の雷を周囲に落としながら鵺が突っ込んで来た。なので光輝はやむなく解放する事とした。
「そうか、負けはお前だ」
次の瞬間姿が消える。感知、上だ。浮遊している訳では無い、しっかりと落下している。それなのにずっと空中、どうやら瞬間移動のようだ。
だがそれだけではない。託された力。
『人術・螺舌鳥悶』
ベア・キャロット・ツルユの『空間転移』。
佐嘉 正義の『人術』。
その全てを今、使用解放。
第四百三十七話「恩師の力」




