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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第四百三十六話

御伽学園戦闘病

第四百三十六話「短期」


英雄の力、時が止まったので怜雄はそれすら理解していない。光輝は急いで影の子世界に飛び込んで時間停止を解除した。そして一度目に燦然をくらった時と同じ様にしてララの能力を使い、無理矢理息を多く吸い発動帯の活動を活発にする。当然体力と霊力生成速度が上がって行くので回復も追いつくのだ。

とりあえず完全に問題が無いレベルまで治癒出来た。問題はここからどうするかだ。怜雄が時止めと気付いているのなら発動しながら出なくてはいけないし、気付いていないのなら発動せずに出た方が手の内を明かさないで済む。


「こういう時の事も教えてもらうんだった…」


そう小さな後悔を感じながらも結論を出した。時を止めながら出よう。この時止めという能力は非常に特異であり、何かの拍子で発動したら次は絶対気付かれる。ならばたった一度のチャンスぐらい潰して安全を取るべきだ。治癒は出来たと言っても応急処置に近い、天仁 凱との戦闘も控えているので本当にこれ以上無茶は出来ない。

降霊もそろそろ疲れて来たし目躁術のせいで感覚がおかしくなり始めている。タイムリミットもそう遠くない。


「よし、行くか」


大きく息を吸いながら能力を発動、その後勢いよく飛び出した。幸運な事に燦然は使っていないので安全な位置取りが出来る。正直このまま殴りに行きたいが怜雄ならそれすらも弾いて来そうだし、万が一にでもこの状態で怜雄が動けるのならマズイ事になる。

ひとまずは燦然の範囲外にすぐ移動できる距離にする。時止めを解除し備える。


「…時を飛ばした、または同じく子世界、それか……時を止めているのかな」


やはり当てて来た。だが答えは言わない。とりあえず警戒を表面に押し出しながら待つ。


「それは多分英雄ことソウル・シャンプラーの能力だったはずだ。それを持っていると言う事はベア・キャロット・ツルユだけではなく他の奴らの能力も所持していると考えられるね。

悪いけど短期戦で行かせてもらうよ」


もう長ったらしい戦闘をしている余裕は両者に存在していない。短期戦を望む今たった数手で今出せる本気を出し尽くし、どちらかが倒れるのを待つ、それだけの戦いへと変化する。

まず先に動くのは怜雄だ。物凄い戦闘能力で一気に距離を詰め光輝に殴り掛かった。だが光輝も両手を使って防いだ。多分片手でも大丈夫だったが一応の保険だ。

ただその隙を突かれる。怜雄は右手に燦然握っているので左手で殴った、となると当たり前に右手は動かせる状態。元々刀や剣の扱いは上手いので片手でも充分出来る。

両手を使って実質無防備な光輝に向けて剣を振り上げた。次の瞬間光輝の姿は消え、気配が背後に移動した。振り向きながら剣を振るう。またもや移動、またもや背後。


「同じ手は…」


今度は剣を振りながら更なる移動を警戒する。


「問題無いね、何せこっちは時を止めて動きを見てるんだ」


異常、単純に時止めなんて強力なものは霊力消費が激しいはずだ。それなのに何度も何度も使えている。恐らく見るだけで分かる程の身体能力の向上が関わっているのであろう、それも能力だとしたら恐らく同じ英雄が一人ララのものだろう。

この時点で光輝は英雄の能力を二つも持っている事になる。大変危険な人物、凍漸も芹も意識が無い今戦えるのは自分一人、絶対に負ける訳にはいかない。

少々武士道精神は欠けるが今まで耐えた者のいない戦術を取る事にした。


「悪いね、流石にこれで死んでもらうよ」


次の瞬間自らを巻き込む燦然を無詠唱で発動した。光輝は逃げようとしたのだが何故か逃げ切れない。どうやら怜雄が何度も発動しながら近付いて来ているのだ。

あまりにも馬鹿らしい戦法、だがどんな敵にも有効なのは事実だ。現に光輝も新たな対処法を生まなければ十秒後には死んでいる。どれだけ時を止めようが限界はある。

精々十秒しか止められず、クールタイムも二秒程存在している。それにララの能力ブーストがあってそれだ。少しでも油断したり時間が無くなったら即死、対処は免れない。


「どうすれば…!」


影の子世界に逃げ込んでも良いが出て来たところをやられるかたまたま出る場所が悪くてむしろ不利になる可能性がある。そうなったら絶対に死ぬのであまり良い策とは言えないだろう。そうなるとこの地上で追いかけて来る化物を跳ね除ける必要が出て来た。

あまりに無謀、どう考えても出来るはずがない。何故なら怜雄はずっと光の中にいるのでどうやっても一撃しか入れられない。今までの戦いぶりや他の蟲毒王の状態から見ても堅いのは明白、絶対に一発では倒せない。


「…ん?」


そこで一つの疑問が浮かぶ。それは燦然の仕様、確か能力者戦争、アイトが佐嘉を倒した時の事だ。燦然(ブリリアント)を発動した時に自爆覚悟だったはずだ。その事から分かる、燦然は発動者本人もダメージをくらう。

それなのに怜雄は自由奔放に飛び回り、追尾している。おかしいではないか、まるで怪我の一つも無い様だ。だがそれは性質上おかしい。絶対に仕掛けがある。

思い出す、ニアの話を。そこで聞いたのは完全な能力による攻撃を無効化する技術、体内の霊力を完全に無くせば能力の攻撃は効かなくなるらしい。


「もしかして……」


もしかしたら同じ原理で完全ノーダメージ追尾を可能としているのかもしれない。だが燦然の発動には霊力が必要不可欠、とすると発動する瞬間だけ霊力を戻しているというとんでもない行為をしている仮定になってしまう。ただそれも蟲毒王怜雄ならば可能だと思えてしまう。何ならそうとしか考えられなくなって来た。

その予測が当たっているのならば燦然を出す瞬間以外は霊力を纏っていないと言う事になるはずだ。そしてその時間は必然的に長くなる。


「だったら……」


全く動じず追いかけてくる様子から見て既に『転』を発動している状態なのだろう。そうなると霊力を含んだ攻撃は怜雄への回復となってしまう。

だが裏を返せば完全なフィジカルだけの攻撃は特効性が強くなるはずなのだ。生身での攻撃、最初ソウルとララに教え込まれた事だ。こんな時に役立つとは思っていなかったが本当にありがたい。


「能力まで貰って、戦闘の全てを上書きしてくれて…本当感謝しか無いな……勝ちますよ、必ず」


覚悟は決めた。先程までは背を向けて逃げていたが反転し、向かい合う。


「来いよ!!」


一気に怜雄のスピードが上がる。物凄い光と圧。効果範囲ギリギリの所で時止めを発動した。すぐに光の中に入って行く。時間は十秒、出来れば時止め中に殴っておきたい。

だが中々見つからない。燦然は効果範囲がデカく霊力の塊なので感知でも見つけられない。急いで走り回って探すが無い、姿が見えない。

残り五秒。

もう逃げ出す事も出来なくなった。最悪の場合は影の子世界に飛び込むしかないのだが燦然の光のせいでそれも不可能、本格的にマズイ。


「五…」


飛んだ片腕は何とか治癒出来たが次に強い衝撃を受けたら再度吹っ飛ぶ程の強度しか残っていない。燦然なんてくらったらもう駄目だ、それに片腕が飛んでいる時点で生命活動も停止するはずだ。


「四…」


探す、ただひたすらに。


「三…」


焦る。だが見つけた、眩い光の中に刀身の先を。もう時間は無い、勢いを付けて殴り掛かった。そう、確認すらせず。


残り二秒、その拳は何も殴る事が出来なかった。強いて言うのなら光、ただそれだけ。


「は?」


怜雄は分かっていた、光輝が時を止めて勝負を仕掛けて来るだろうと。なので下がった、燦然だけを置いて、光を発生させて。燦然の光は発動者ではなく剣を媒介としている故発動だけしておけばそこに放置してもとりあえずは一連の流れを終えるのだ。

残り一秒。

何も無い空間を殴り、次の体勢を整える時間も無い。

過ぎる、死。


「タイムオーバーだよ、光輝」


怜雄の声が聞こえたと同時に体が崩壊していく。


「仕方無い、僕は人外、君は人間。反体力を使えるとはいえ不正確何だろう、速い僕に使える練度じゃなかったんだ。何も気負う必要は…」


光輝の絶叫の中独り言のように慰めの言葉を口にしていたその時だった。

目の前から光を裂きながら、涙を流し顔をグチャグチャにしながら、光輝が殴り掛かって来た。おかしい、やはり左手は取れているし、他の場所もボロボロなのでくらってはいるはずだ。なのに、何故向かってこれるのだろうか。

怜雄は理解した。体全体を見て傷が異常に少ない場所が二つある、右腕全体と、能力発動帯(くびもと)だ。ララ・シャンプラーの能力で回復力を底上げしながら喉元と最後の綱である右腕を守り、他の全てを捨てでも賭けに出た。

いや、言い方が違う。光輝は賭けてなどいない。声が聞こえた時点でその行動を起こし、正確に位置を当てた。これも二人の扱きによって研ぎ澄まされた五感(ちょうかく)によるものだ。

勝因、それは努力であった。


「俺の勝ちだあああ!!!!」


絶叫しながら怜雄の顔面をぶん殴った。霊力の無い怜雄に霊力を全て無くした単純なパンチはあまりにも効く。物凄い速度で吹っ飛び、一瞬にして怜雄は気を失った。

そして光輝は怜雄の髪と額に出来た影から子世界へと飛び込んだ。


「……」


言葉も出ないし、息すらも難しい。回復維持で使用していた体力すらも切ってしまったため右腕も吹っ飛んだ。もうボロボロ、だが発動帯は元気ピンピン。少しだけ時間をかけてでも戦える状態に回復しよう。


「…よし」


大体五分、やはり強度は落ちてしまうが両手を取り戻した。


「今から天仁 凱か…」


まだ手札は余っているとはいえども正直厳しい。滅茶苦茶に痛かったので辛いのだ。だがそんな時、本当に偶然『阿吽』が届いた。戦い抜いたのだろう。尊敬している先輩"だった"人からだ。たったの一言。それなのに物凄く勇気付けられた。


「まだやらなきゃ……」


立ち上がり、子世界を出る。するとそこには天仁 凱と四匹の虫型がいた。

戦闘体勢に入るがすぐに攻撃してくる様子はない。


「落ち着け。思っていた以上にお前は強いようだ。こいつらが油断していたというのもあるが……手札の切り方が上手いな」


「どうも…」


「だがあれだけの攻撃をくらってまだ立てるとは、大した精神力だ」


「違う。やらなきゃって思わせてくれた人がいた…」


流れる通知。


「あぁ、そう言う事か」


天仁 凱も全てを察した。


「だがそれでも立ち上がったのはお前の力、わしは認める。だからここで今申し込む、一対一で、他の誰の介入も無く、我々の力のみで戦おう」


「その力に霊や他の奴の能力は入ってるよな」


「当たり前だ。そうでないとわしの(バカ)達が退屈だろう」


すると光輝は少しだけ口角を上げてから言い放った。


「この勝負、取った」


嘘か実か、判明するには、ただ少し早い。



第四百三十六話「短期」

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