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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第四百三十五話

御伽学園戦闘病

第四百三十五話「落としてでも」


光輝の周辺がいきなり危険になった事を察知した二人は何らかの能力を解放、または特殊な応用で実質的に新たな力を得たのだと理解する。次に警戒すべきは二個目、即行で攻撃を仕掛けてこないので一個目はカウンター系と読み取れる。ならばそれだけを解放するはずがない。

それに今までは必ず二個ずつ使用解放をしていたはずだ。ここでいきなりテンプレートを崩す理由は無い気がする。


「芹」


「分かった。私先行く」


「頼むよ」


まずは鎧などにも変形出来る芹が偵察する。怜雄はすぐにでも救助出来る位置で燦然を握っている。一方光輝は全力集中で胡桃の能力を持続させる。正直これをここまで完璧なタイミングで使うとは思ってもみなかったので全然練習出来ていないのだ。それ故まず維持で精一杯、身体強化などで底上げされているので戦っていく内に慣れて行くのだろうがこの二人相手に悠長な適合が出来るはずもない。

策はあるのでバレないように立ち回り、嵌めれば良い。芹が一人で来る所から分かる通り二人はまだ警戒中、即ち作戦までは見透かせていない。


「…行くぞ」


今にも切り放れてしまいそうな掠れた声でそう呟き、光輝は距離を詰めた。その時嫌な空間は移動していない。どうやら設置型らしい、それならば問題はほとんど無い。

むしろ範囲外に出てまで近付いて来てくれた事が喜ばしい。すぐさま大剣をスイングした。だが光輝は軽くジャンプして刀身に乗り、そのまま殴った。

先程よりも明らかに速くなっている。ただ力自体はそこまで変わっておらず芹は軽く血が出た程度で済んだ。ただこんな綺麗にぶち込まれたのは久しぶりだったので狼狽え、一旦後退した。


「大丈夫かい」


「ダイジョブ。それよりもあいつ…」


「そうだね、少しだけ()てられている。まぁ降霊したまま十三割、初めてだろうし仕方無いよ。戦闘病が前面に出てこなかっただけでも儲けものだよ」


「それもそうね」


霊力濃度が十割を超えると霊の動きは活発になる。そしてそれは降霊中の何かでも同様だ、当然人間も。それに光輝は降霊自体も不慣れ、しっかり正気を保ちながら考えて動けている時点で相当凄い。怜雄でも少し感心する程だ。

とにかく今の光輝は何をしてくるか分からない。自分で作った謎の空間から抜け出して何かの能力を使うわけでも無く生身で殴り掛かった、一連の行動はハッキリ言って意味が分からない。本人なりに上手く言っているつもりなのだろうが恐らく一時的に頭がおかしくなっているのだ。


「でもチャンスだ。二人で行こう」


「了解」


怜雄も共に戦う事にした。こうなると芹は鎧や盾、槍や斧など頑丈な物かリーチを活かす武器に変えてサポートに徹する。それは怜雄が強いのでわざわざ出しゃばって戦う必要が無かったからだ。そう、今までは。

穂鍋 光輝は違う。今までの常識を覆すような動きばかり、仲間も巻き込まないし一人で完璧に仕事を熟している。ここまで良いようにされているのは初めてだろう。だが本人達はそんな事に全く気付けていない。それも必然、何故なら光輝はそう思考が傾くように戦っているのだから。

先程胡桃の能力範囲から飛び出したのにはちゃんとした理由がある。一言で表すと思考誘導である。一時的な霊力濃度の上限突破、確かに一瞬だけ我を忘れそうになっていた。だがソウルやララに扱かれまくったあの日々と、魂までも死んでいった仲間の事を思い出すとそうは行かない。

気の持ちようではあるが、確かに今の光輝には十数人の強者の面影が見守り、応援している様にも感じる。それほどまでの風格、なのに二人は少し調子に乗ってしまった。


「させねぇ」


再度効果範囲に戻った。だが二人は追う。そもそもリスクを取って効果範囲外に出た時点で大した能力ではないはずだ。仮に強い能力だとしてもこんな範囲が決まっている能力相手に負ける気はしない。

とりあえず警戒するべきは清水と能力の反射、それ以外は今の所大丈夫そうだ。そう考えながら範囲内に入り、二人が同時に剣を振り下ろした。


「馬鹿が」


胡桃の能力範囲内、どうなるかなんて容易に分かる。エネルギーは全て弾に変換され、暴れ回る。同時に二個、そして光輝も思い切り殴り掛かった。結果として三個、範囲内を飛び回る。

蟲毒王の二人は能力の全容を把握した。そしてこのまま範囲外に飛び出せば何の意味も無い貧弱な能力だと言う事も。それに出てから燦然を使えば光輝は絶対に死ぬはずだ。


「芹、出るよ」


怜雄は後ろに跳んで出たが芹は一瞬だけ行動が遅れた。するとその一瞬を付くようにしてエネルギー弾が右胸の辺りを貫いた。想像以上の威力、瞬時に鎧を装備しながら離脱した。

軽く状態を見たがただ貫かれただけ、活動維持には何の影響も無さそうだ。この程度の力しか無いのなら正直注意する必要も無さそうだ。


「弱い…私やる」


「別に良いけど…負けないよね」


「負ける訳ないじゃん」


芹が再度前に出た。すると光輝は三回殴る、計五個のエネルギー弾。意味が分からない、蟲毒王にとっては威力が低く感じるが光輝ならば二個でもくらったら動けなくなるぐらいのダメージだ。それは本人が良く理解しているはずで、注意が必要なのだ。それなのに、それなのにエネルギー弾の方にすら目を向けず芹がどう出て来るか窺っている。

だが問題は無い、大剣に変えてから一気に距離を詰める。恐らく攻撃するとエネルギー弾に変えられてしまうので無理矢理体を押し付けて、範囲から押し出す。


「そう言うのは無理だ」


突っ込んで来る芹を清水で華麗にかわした。


「なら!」


一度大剣を振り回してエネルギー弾を一個作り出した。その後タックルを仕掛ける。ぶつかった瞬間にエネルギー弾が生成される。ほぼ密着状態、避ける暇が無い。瞬時に清水でかわそうとしたのだが間に合わず右手に痛みが走る。確認しなくても肉が抉れているのが分かる。

それだけではない、芹に意識を向け過ぎたせいでエネルギー弾を避けられず背中から胴体へ貫通した。一気に芹が優勢になる。いや最初からそうだったのかもしれない。


「一旦逃げ…」


「駄目だよ」


背後で物凄い圧を感じる。すぐに振り返り殴り掛かったがエネルギー弾に変わってしまう。背後に立った怜雄は瞬時に離脱した。現在六個の弾、今の子の瞬間にどちらかに当たってもおかしくない。この空間では攻撃で跳ね除けてもエネルギー弾が生成されるだけ、避けるか体で受けるしかない。

そんな状況で胴体には穴、右腕は損傷、疲れも出て来た。相当不利、光輝は覚悟を決めた。この一手で芹を落とせなかった時点で負けを認めようと。


「行くぞ!!!」


声を張り上げ突っ込む。その様子に異変を感じた芹は仕掛けに来たと分かり受けて立つ。このままのらりくらりとやり過ごしていても何も発展しないからだ。横やりが入るよりは多少のリスクを取ってここで終わらせるが吉であろう、そう判断した。

だがこれが間違いだった。


「死ね!!」


光輝は範囲内にも関わらず全力で殴り掛かって来た。当然エネルギー弾と化す、計七個。


「そんなの通用しないって…」


次の瞬間両者にぶつかるエネルギー弾、流石に数が多くて対処が間に合わなかった。計五個。


「まだまだ!!」


再度殴り掛かってエネルギー弾を増やした。計六個。

ここでようやく気付いた。光輝は道連れにしようとしているのだと。急に馬鹿の戦法になった事に僅かな怒りを覚えながらも応えてやることにした。


「なら私はこうするだけ」


剣を鎧に変えて自分の身を守る。鎧ならば三回はエネルギー弾の直撃を耐えられるはずだ。その間光輝は二回程くらうだろう、そうなれば流石に倒れるはずだ。そこにトドメを入れて芹の勝ち、これで良いだろう。

不動。


「楽しいなギャンブルってやつは」


笑みを浮かべる。戦闘病が少しずつ出て来ているようだ。


「そうね」


直後二人の胴体にエネルギー弾が当たる。光輝は二個目の穴が出来たが芹は無傷。計四個。


「まだ行けるぜ…」


「哀れね、充分強いのに格上相手に挑んで最終的にはボロボロになりながら負ける。誰の助けも来ず一人で死ぬ。可哀想」


煽りではない、本当に憐れんでいる目だ。


「それ、すっげぇ煽りに聞こえるからやめてくれ」


「そう、残念ね。でもこれで…」


当たる。光輝の心臓すれすれを貫く。芹の鎧ももう限界。計二個。


「クソが…」


体勢が崩れる。片膝を地面に付け、まるで頭を垂れているかのようなポーズだ。


「私が最後に…」


危ないので鎧は着たまま、手で葬ってやろうとしたその時の事だった。


『妖術…』


すぐに距離を取る。まだ抵抗する力が残っているようだ。大した男だ。


「いい加減諦め…」


油断、敗北は常に油断からだ。

当たる、両者の左手を貫くエネルギー弾。光輝の左腕は吹っ飛んだ。だが最初からそれぐらいの覚悟はしているし、これもしっかり計画の内だ。

力を振り絞って立ち上がり、殴り掛かる。芹は鎧が割れたので盾に変え、防ごうとする。だが光輝は止まらない、タックルでも仕掛けて来ているのかと思う程の剣幕と速度だ。


「ありがとよ、まんまと引っかかってくれて」


走りながらそう呟いた。その時の光輝の顔には確かに笑みがあったが戦闘病のそれではない。ただ完璧に作戦を遂行出来た事が喜ばしいのだ。ずっと申し訳ないと感じていた胡桃に恩を返せた気分だったのだ。

ただ感謝を表に出した、純粋なる笑み。


「俺の勝ちだ」


芹の首元がエネルギー弾で貫かれた。おかしい、既にエネルギー弾は尽きていたはずだ。生成された所も捉えていない。


「懐かしいな。こんな気分だったのかよ、流」


そう、それは初めて流と戦った際に敗北を喫した時にやられた事。ずっとずっと物理的や見える範囲でエネルギー弾を生成し、見えない所で強力な一発を作っておく。そして最後は意識を誘導し、当てる。

そのエネルギー弾は戦嵐傷風がまとめられた物、今までのダメージなんて関係ない。首元を貫かれれば隙は生まれる、それが能力者でも息を必要とする生物でなくとも。

胡桃の能力を解除し、思い切り殴り飛ばした。


「…どうだよ」


芹は気を失っているようだ。


「負けないでって言ったのに…まぁ良いか、やるね光輝君」


「まぁな…」


だが致命傷と言える程の傷。左腕は無い。

怜雄は容赦などしない。これで終わりだ。


「だが君は既に敗北しているよ」


不意打ち、そこら一帯が一瞬にして光に包まれた。


『燦然』


フルパワー、避ける術は、ある。

ソウル・シャンプラーの『時止め』。

ララ・シャンプラーの『呼吸促進』。

英雄が二人の力、現代にて同時に、解放。



第四百三十五話「落としてでも」

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