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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第三章「工場地帯」
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第四十二話

御伽学園戦闘病

第四十二話「1/3」


『動け』


その言葉と共に蒼の足は勝手に動き、怪物の攻撃を避けていた。何が起こったか理解できず少し混乱していたが何より避ける事が出来たのは事実、とりあえず状況を整理する。

寸前まで自分がいた位置には大きな口を開けた黒い怪物、その手前にはストッパーを外し気味の悪い笑いをしている神、それだけなのだ。どうやって避けたのかと思考を巡らせている時だった、再び声が聞こええると同時に怪物が奇声を上げ消滅した。その声の主は丁度怪物を挟んでいるせいで見えていなかった同級生、[樹枝(ジュシ) 蒿里(コウリ)]だった。


「[オーディンの槍(グングニール)]」


「蒿里!?何故?」


「いいからちゃんと動け!」


「分かったけどなんで俺は避けられた?」


言霊(ことだま)、ルーズが使ってたやつ。私は色んなの使えるの、そのうちの一つ」


「分かった」


「それよりあんたそのヒビは?」


「あぁ、これは崎田(サキタ)先生の試験薬の副作用。気にしなくてもいいらしい」


「了解。じゃあ霊力は増幅してるのね?」


「うん。普段の倍ぐらいは、あとなんかエンマって人が…」


呪・魚針雷(のろい・ぎょしんらい)


会話を遮り唱えた呪いは魚針雷、空から追尾してくるカジキマグロを大量に降らせるという呪いだ。完全に避ける術はなくカジキを行動不能にするか逃げ続けるかしかない。だが(シン)には自心像もある、避け続けるのは不可能に近いだろう。ならばどうするか、行動不能にするまでだ。

蒿里は念能力を発動した。すると空から降って来るカジキの落下速度が三倍ほどになり追尾なんてせずに石の地面に突き刺さった、本来ならそこから宙を浮きながら追尾してくるはずなのだが動かず、ただ地面に突き刺さったままだ。


「私の念能力の『重力操作』で動けなくしたけど私[オーディンの槍(グングニール)]も使ってて霊力消費の激しい言霊(ことだま)も使っちゃった。ちょっと個人的に霊力使ってたせいで全然足りない。『重力操作』が効くのは長くて五分、そこから私の戦闘での霊力消費も含めて約三分!それまでに決着つけないと勝てなくなる!」


「分かった。だがあの怪物は足も速いしデカいから気を付けろよ」


「分かってる!」


「じゃあ行くぞ」


蒼はさっきまでの絶望感など忘れ(シン)に向かって走り始めた。それに続き蒿里はオーディンの槍(グングニール)(シン)に向かって投擲する。(シン)は二方向からの攻撃に戸惑ったが二人を一気に攻撃するにはどうにかして蒿里の『重力操作』を解除しなければならない、となれば自分に出来ることは『呪・(のろい・ふう)』で蒿里の能力を使用不可にする事だ。


『呪・封』


(シン)がそう唱えると同時に蒿里もまた別の呪文を唱える。


『|佰式-参条.護(ひゃくしき-さんじょう.まもり)』


蒿里が唱えたのは『術式』と呼ばれる能力の一説だ、術式は(ひゃく)~零式、次に壱~最大でも(なな)条、最後に術名を述べると成り立つ能力。一つ一つの式条に別の効果があり佰が一番発動しやすく、零は発動がほぼ不可能に近い。使い手は非常に少なくその分万能かつ強力。

『佰式-参条.護』は術名の通り防御を発動する術式なのだが参条は呪い特化、壱条は物理特化、弐条は霊特化、(よん)条は念能力特化と分かれている、上記の通り参条は呪い特化なので神が放った『呪・封』は無効化されてしまう。

それと同時に(シン)の目にはオーディンの槍(グングニール)が突き刺さる。すぐに抜けて蒿里へと逃げ出す様に移動する、目から血が吹き出し奇声を上げる(シン)に向かって蒼は良い気味だと思いながら既に相当ダメージを受けているであろう目を蹴った。(シン)は発狂しながら自心像を出そうとしたが蒿里によって止められてしまった。


『|漆什弐式-伍条.衝刃(しちじゅうにしき-ごじょう.しょうは)』


次の瞬間蒿里の手から縦長の衝撃波が放たれ、(シン)の脇腹を裂いた。あまりの激痛に(シン)は詠唱を中断し脇腹を抑える、蒼は隙だらけの(シン)に近付き裂けている脇腹に追撃のパンチをした。(シン)は再び激痛に苛まれ、前が見えなくなっていた。それに加え自身像の詠唱にも失敗してしたのでその分のダメージも付随する。


「もう許さない!!」


そう叫びながら蒿里達の方を睨んだ。すると祝詞を唱えていないにも関わらず(シン)の自心像である黒い怪物が口を開けながら地面から飛び出してきた。

蒿里はオーディンの槍(グングニール)を蒼に向かって「掴まって!」と言いながら投げた。蒼は槍に掴まり地面から離れる事で怪物の攻撃を避けた。だが蒿里は蒼に槍を届ける事に時間を取られ怪物の口に葬られる。蒼は再び仲間が喰われるのかと半ばトラウマを呼び起された様な感覚に陥ったがその心配はなかった、蒿里は怪物の腹を裂きながら出て来たのだ。だが至る所から血が流れている。


「蒿里!」


「あっぶな!ギリギリで佰式参条間に合った!」


なんとか間に合ったと安堵している二人に再び無詠唱で自心像が襲いかかって来る、蒿里はすぐにオーディンの槍(グングニール)を引き寄せ蒼の無事は確保されたがまた自分の事は後回しにしてしまいまた喰われそうになった。だが何者かに突き飛ばされ喰われることは無かった。それと同時に(シン)の目に何かが突き刺さる、(シン)は三度目の攻撃に我慢できずのた打ち回った。


「じゃじゃーん![クルト・フェアツ]ちゃん登場ー!」


そう言いながら蒿里の傍から髪と目が出現した。それと同時に(シン)の目に刺さっていた何かは抜けて、血が溢れ出した。


「さっき君の目に刺さっていたのはながーくながーくした私の髪の毛だよー」


「あああああああ」


「助かった」


「いやいや~とりあえず私は多少霊力を放出してるパーツにするから攻撃しないでね!」


「了解」


「分かった」


[クルト・フェアツ]の能力は『体のパーツを自由自在に変化させる』この能力で普段は基本的に髪と目以外を接触不可能なパーツにしているから透明人間なのだ。(シン)の目に刺したのは長く鋭利、まるで針のような形状に変化させただけの髪の毛だ。


「無詠唱で自心像を出してきてる…だけど無詠唱の呪いはコストが非常に高いはず…それに加えて自心像だし粘れば勝てるかもしれないけどこっちの粘り勝ちより先に『重力操作』が切れて負ける…やるしかない!」


「分かった。だけど後どれぐらい持つ?」


「あと一分、[オーディンの槍(グングニール)]を一回以上使ったら三十秒も無いぐらい。私はもう何もしないからあんたらで決めて」


「分かった」


「あいあいさー!」


フェアツの声と同時に蒿里は後ろに下がり、蒼は細心の注意を払いながら走り出した。フェアツは透明の体を活かし蒼と同じタイミングで踏み込み音をあやふやにする。

(シン)は立ち上がり無詠唱で蒿里と蒼の足元に怪物を召喚した、蒿里は完全に回避行動に徹しているので普通に避けられる。蒼は怪物の口元を確認した後わざとらしくコケて驚きもせずに喰われた、蒿里もフェアツも何か策があるのだろうと思い自分の事を優先する。フェアツは蒼がいなくなった事によって足音で位置が完全に特定されてしまう。そしてそこら辺一帯を取り囲むように自心像を召喚された。自心像達はぶつかり合うように突進しフェアツは咄嗟に羽を生やして空に飛んだ。

怪物達はそれを追うように口から黒い怪物を出しフェアツを追いかけ回す。だが怪物達はフェアツに追いつく事が出来なかった。


「一人殺した!一人殺した!」


そう言って煽ってはしゃいでいた神の視界には地面を突き破って出てきた蒼で一杯になる。


「誰が殺されたんだろうな」


そう言って足を振り上げ長い足を利用して頭頂部に踵を落とした、(シン)は強い衝撃に狼狽し少しだけフラフラした後うつ伏せになって倒れ込んだ。そして悔しそうに叫びながら今出せる自心像を総動員して蒼に攻撃を仕掛けた。


「蒿里!オーディンの槍(グングニール)!」


「でも…」


「いいから!」


蒿里は蒼を信じて[オーディンの槍(グングニール)]を投げた、蒼はそれに掴まって攻撃を避ける。怪物達の中には自ら追ってくるモノ、はたまた口から一回り小さい怪物を出して追うモノもいた。怪物達の勢いは凄まじく蒿里の元まで逃げ帰った蒼と槍に追いつき口を開いて二人まとめて喰おうとした。その瞬間、三人の耳に聞いた事のある声が届く。


「ストライクシュート」


(シン)の後頭部を力強く蹴り上げる。(シン)は予想外の衝撃と霊力の欠如によって意識を失った。それと同時に怪物達は消失する。

そして(シン)の後頭部を蹴ったのは誰か、確認するために(シン)がいる場所に目線を向けてみるとそこには血塗れの須野昌が弱々しく立っていた。


「あ、須野昌は何してたの」


「喰われた」


「雑魚じゃん!!」


「うっせぇな。先に蒼が喰われて時間稼ぎのために喰われたんだよ」


「じゃあなんで今そこにいるの?」


「それは僕が説明する。まず僕が自ら喰われにいった怪物の歯には血が着いていたんだ、でも僕は喰われた時に血を出していない。でも足を喰われた怪物とは明らかに大きさが違った。だったら須野昌を喰ったのはこの怪物なんじゃ?だったらまだ須野昌が残っているかも、と思って入ってみたらホントにいたから本気の力で怪物と地面を突き破って、気を引いて須野昌に気付かないように飛び出した。それで須野昌にやってもらった、って訳」


「おーギャンブル」


「まぁ賭けるしか勝ち目なかったでしょ」


「それもそうだね。じゃあこいつどうしようか…」


そう(シン)に向かって指を差した時空から佐須魔が降りてきて(シン)を担いだ。


「佐須魔!?」


「マージか」


全員諦め気味で戦闘体勢に入るが佐須魔は戦闘意欲など見せずただ四人を褒めた。


「いやーすごいね、四人がかりとは言えよく(シン)に勝ったな」


「ありがとよ、でお前は戦うのか」


「いやいや、今回は本当に見てるだけだから。じゃそう言う事でー」


そう言いながら(シン)を謎のゲートに放り込み自分は空に浮いてどこかに行ってしまった。


「なんだ…よかった…」


「ホントにねー」


「じゃあどうしようか?私はもうまともに戦えるほど霊力ない」


「僕ももう無い」


「俺は多少あるが正直体がボロボロでな…」


「私はまだまだいけるよー!」


「じゃあフェアツは素戔嗚の所に行って。私達は紫苑と礁蔽、後英二郎を探す」


「了解」


「分かった。行くぞ」


そうして三人と一人に分かれて別行動を始めた。

(シン)との戦いは勝利した、その日の三分の一の戦いは終わりを告げられた。



クルト・フェアツ

能力/念能力

体のパーツを自由自在に変える事が出来る

強さ/状況と変化のさせ方によるが生徒会中堅


第四十二話「1/3」

2023 10/20 改変

2023 10/20 台詞名前消去

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