第四百十一話
御伽学園戦闘病
第四百十一話「第五形態」
能力取締課に加入するにはとある条件が存在している。まずは能力者かつ頭脳、技術の試験に合格する事。次にリミッター取り付けに同意する事である。
取締課はあくまでも警視庁の一課である。そのため飼われている状態、反旗を翻したりした場合に万全の状態だと壊滅してしまう可能性も出てくる。その対策としてリミッターを付けているのだ。
本来課の一員であるハックは解除を許されないのだが死の間際なのでそんな規則に従っている場合ではないと判断した。それにこのリミッターの制限は結構厳しい。霊力を練る力も半減、単純に能力も使いづらくなってしまう。
だがハックのおかげでそんなリミッターを解除する事に成功した。
「ちゃんと呼んでくださいよ」
「わーってる。俺だってそこまで馬鹿じゃない」
「では時間を稼ぎます」
『妖術・遠天』
久しぶりの無制限状態なのでとりあえず遠天で様子を見る。すると先程までの放出威力とは桁違い、佐須魔より少し弱い程度の力が出ている。少なくとも学園側の降霊術士ほぼ全員を超す力があると見受けられる。
佐須魔もそれに驚いており警戒心を更に高めた。リミッターがある事は知っていたのだがここまでとは思っていなかった。だがシヴァの力があれば負けることは無い、そう高を括って妖術を返す。
『妖術・刃牙』
対象は自分自身、一気に突っ込んで殺す。
「それは俺が許さねぇよ」
ハックが前に出た。そして懐から謎の小さな機械を取り出した。佐須魔はそれが何なのか見た事があったので瞬時に下がり、確認を取る事にした。
「どう言う事だ、それは真波が作った人工心臓だろ?」
「四葉の死体から取り出さした物を複製した。俺は機械なら何でも乗っ取れるからな、こいつを今から俺の心臓にぶち込めば死なない無敵人間の完成だ」
「…面倒だね。でもさ、シヴァの超攻撃空間ならどうなんだろうね」
背後から感じる強大な霊力、振り向く間もない。何故ならハンドが対策しているから。
『妖術・上風』
宗太郎の戦闘情報から一瞬にして再現した。大きな風が立ち、ハックを吹っ飛ばした。
「サンキュー!」
「良いから早く呼び出してください!!」
「んじゃ行くぜ!!」
ハックの最終兵器、ライトニング以上の上司には伝えていない。絶対に破棄命令が出されるからだ。こんな時が来るかもしれないと考えて創立当時から改良を重ねて来た。
様々な情報を元にして学習させ結果として普通の人間と何ら変わりない知性を手に入れた機械、ただハックの言う事は絶対に聞くし味方も助ける、そんな都合の良いロボット。
「来い、[MK-Ⅱ]」
空からズドンと振って来た。完全に人型だが何だかんだ機械らしい見た目である。問題があるかないかで言うと無い。
両手には剣を持っており物凄い眼光をしている。
「んじゃやるぞ、ハンド」
「えぇ」
MK-Ⅱさえいればシヴァをも凌げる。それほどまでに強いのだ。二人はMK-Ⅱに合わせる風に動く。
「好きに動け!俺らが合わせる!」
MK-Ⅱはコクリと頷き突っ込んだ。シヴァが超攻撃空間で破壊しようとしたのだがMK-Ⅱは綺麗に跳び本体である佐須魔の喉元を切り裂こうとした。
だが佐須魔も伊達ではなく、逆に蹴られて吹っ飛ばされてしまう。するとMK-Ⅱは学習し再度斬りかかる。佐須魔は同じく反撃を繰り出した、今度は拳だ。
ただ反撃をしてくると学んだMK-Ⅱはそれを左手で受け止め、放り投げた一本の剣をハックに渡した。残った右手と近付いていたハックが同時に剣を振るう。
掴まれているので避けられずそのまま切られた。両肩から物凄い血が出てくる。シヴァに命令を出して殺そうとしたのだがそれはハンドが止めた。
『妖術・戦嵐傷風』
攻撃用ではなく視覚阻害だ。シヴァの周囲は超攻撃空間によって意味を成さないが周囲は影響を受けず嵐のまま、佐須魔の霊力を辿ことも出来ない、霊力で生成されている風なのだから。
シヴァは動けない。そしてあまりの猛攻に他の霊を呼び出している暇も無いし佐須魔自身が攻撃するのも難しい。何とか手を動かそうとするとMK-Ⅱがそこに向けて剣を突き出して来る。まるで動きを予測しているようだ。
するとそこである事に気付く、MK-Ⅱは機械かつ学習機能を持っているのは見て取れる。ならば長期戦にすればするほど不利になるのではないだろうか。そしてそれはハックも理解しているはずだ。そうなると必然的に油断する。
「良い事思いついた!」
佐須魔が一気に動き出す。ハックには目も向けずMK-Ⅱの方に攻撃を集中する。ハックは剣を一本持っており、攻撃をやめたわけでも無い。
それなのに何故MK-Ⅱに一点集中なのだろうか。しかも攻撃が激しくなった訳でもない。そもそもMK-Ⅱの猛攻によってろくな反撃も出来ていないのだ。それにどんどん学習しているので時間は無くなる一方だ。
「警戒しろよMK-Ⅱ!何か変だ!」
明らかにおかしいと感じたハックはそう指示を出してから一旦下がった。恐らく佐須魔は何か企んでいる。何処かで真意を見抜き阻止しなくてはいけない。
まだファスト、傀聖、ライトニングの三人は起きていない。ベベロンは何処かに行ってしまったし絡新婦とルフテッドは別で足止めをしてくれている。ここでMK-Ⅱを含めた三人の内誰かが欠けるのはあまりにもマズイ。
「MK-Ⅱ!一旦下がれ!学習は充分だろ!!」
そこを待っていた。
「そこだよ、そこ」
次の瞬間、佐須魔が唱える。
『肆式-弐条.両盡耿』
光が満ちる。ハンドとハックは避ける術がない。そう思ったがMK-Ⅱが二人を放り投げようとするが他にも三人転がっていることに気付く。それではいけないと考えたMK-Ⅱは発動者本人を叩き途中で解除させるように仕向ける事にした。
学習しているとはいえ余裕は大体二秒、一撃入れられるかも怪しいラインだ。ただ決めてもらわなくては困るのだ。ハックとハンドもMK-Ⅱを信じ最低限のダメージになるよう心がける。
「ここで二人が来ないのは、良くないよね」
佐須魔は呼び出す。
『唱・打』
そのまま振り上げ、振り下ろした。衝撃と雷、最短距離しか走ることの出来ないMK-Ⅱにとっては最悪の状態。だが逃げられない、止まれない。
「君達では実力不足だった。それだけの話だね」
MK-Ⅱに衝撃が当たりそうになる。だが次の瞬間そこにはハンドがいた。
「ハンド!!」
当然打の攻撃はハンドに当たった。
「行きなさい!!」
MK-Ⅱは更に速度を上げて走る。だが第二波が飛んで来た。これは避けられない、無理だと感じたが再度ハンドが間に入り体で受け止めた。
あまりに無謀、ハックよりは明らかに強いハンドは自ら盾になったのだ。正直理解が出来ない。
「ヤバイ!」
第三波は間に合わない。両盡耿も間に合わない。避ける術がない。
次の瞬間一本の剣が佐須魔の喉を掻っ切った。そして破壊した、第五形態を。そこにも大した能力は無いのだが発動帯が壊されていくほど能力の発動や霊力を練るのが難しくなる。実質的に弱くなっていくのだ。
だが一人は始末出来た。
「ハンド!!」
ハックが駆け寄り状態を確認するが辛うじて息をしている程度、もう霊力を使っている余裕は無くナメクジは姿を消した。すると当然嵐が明ける。となると出て来るだろう、破壊神シヴァが。
このままではハックとMK-Ⅱだけで相手しなくてはいけない。それは無理だ。ハックはどちらかを足止めする力が無い。ハンドか他の者の助けが無くては何も出来ないのだ。
「やれ、シヴァ」
シヴァが近付こうとしたその瞬間、鉄の音が鳴り響く。カーンカーンと甲高く。
「休憩終了、ハンドを見とけハック。次は俺がやる。ライトニングとファストを起こせ」
「頼む!」
「しぶといね、傀聖」
「そりゃ俺は強いからな。んで覚悟は出来てるんだろうな?俺の仲間を殺した恨みをぶつけるぞ」
「来いよ」
『百掩』
「再始動だ」
第四百十一話「第五形態」




