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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第四百八話

御伽学園戦闘病

第四百八話「一撃」


第二形態を破壊出来たのは相当嬉しい。恐らく主要な能力は全て第六以上に保存しているだろうが身体強化がどんどん無くなって行くはずだし、変な能力も消す事が出来る。少しずつで良い、弱者が強者を討つ方法などそれしかないのだから。

ゆっくりと距離を取り権威(オーソリティ)から放たれるであろう次の攻撃を見て対処法を考える。先程は攻撃に専念していたため何も見えなかった。後方で見ていた三人に聞いても何も分からなかったらしい。やはり言霊とほぼ同一と考えるのが妥当だろうか。


「気を付けろよ、あれは神殺しの一種だからな。私達も良く分かっていない」


「俺は今神だぞ、百掩の中ならな」


「だから気を付けろと言っているんだ。神への特効があるかもしれない」


「そうだな、まぁ問題無い。あったら俺はどうしようもなく死ぬからな」


「…それもそうか。じゃあ行くぞ。せめて第五形態までは破壊する」


「了解」


だが傀聖の硬貨はあと十円しかない。ライトニングも紅雷斬を三回程しか撃てない、もう紫電を放つのは難しいだろう。完全にフィジカルで削るタイミングが来るはずだ。そこをどうするかが大きな問題の内の一つである。

だがそれで終わった訳では無い。問題は山積み、まだまだある。そもそも能力全てを使い切っても第三形態を破壊出来るとも限らない。とにかく権威(オーソリティ)が未知数過ぎる。


「まぁやるしかないな。合わせろよ、傀聖」


「はいはい」


傀聖は両手に剣を持つ。ライトニングは一瞬にして距離を詰めた。傀聖も同時タイミングで距離を詰める、だがライトニングとは違う背後からだ。挟むような形。

だが佐須魔の頭上に浮かぶ権威(オーソリティ)からほんの少しの霊力が出て来たと思った瞬間佐須魔が口を開く。


『退けと言ったはずだろ。退いてろ三下』


体が言う事を聞かない。勝手に後退してしまった。だがそれはライトニングのみ、傀聖はそのまま剣を振るって攻撃を成功させた。

分かった事がある。権威(オーソリティ)は発した言葉通りにしか動かない。三下、それは下っ端などを意味する言葉、傀聖は一時的に神と成っている。過程は多少違うものの同じ道を通過した神、それの何処が格下なのだろうか。そう言った理由故に傀聖には効かなかったのだ。そしてそれは佐須魔も知らなかった。互いに心の奥底で軽く困惑している状況なのだ。ただ攻撃を行い、受けて理解した。


「…そういう事ね」


「…あぁ、そういう事だな」


佐須魔はイキってカッコつけた言葉を言ったら敵が対象から外れる場合があると言う事だ。ここは泥臭く全員が含まれるような言葉を放っておくのが無難だろう。


「お前カッコつけるもんな」


「悪いね、特に何も考えず思った事を言っているだけなのさ」


「ウゼェ…というかそんな余裕綽々で良いのかよ、俺はすぐそこだぜ」


今度は左手の剣を振るった。だが佐須魔は余裕で弾く。


「んじゃこれならどうだよ」


少しだけ距離を取ってから残った一本を佐須魔に向かって投げた。特に何もせず適当に弾こうとしたその瞬間、燦然を手にした傀聖が突っ込んで来る。

すると権威(オーソリティ)から霊力が放たれ佐須魔が使用した。


『来るんじゃない』


近付く事は出来なかった。ただこれは効果も全て付属している、当然燦然(ブリリアント)本来の力を使う事も出来るのだ。


『brilliant』


満ち満ちる光、だが佐須魔はそれに対抗するべくして唱えた。


『弐式-弐条.封包翠嵌』


最強の回避術、だがそれを対策出来なくてどうやって勝とうか。しっかり考えているに決まっている。

ある武器を作り出した。それは菫、またの名を唯刀・真打と言う。怜雄が使っていた武器であり、アイト・テレスタシアも使っていた。これには怜雄の意思と能力、それだけではなくアイトの意思と能力も籠っている。

アイトの能力はコピー、たった三回。だがそれはあくまでアイトのコピー回数、傀聖のコピー回数はまだ三回、コピーするのは呪術・封である。


『呪術・封』


だがこれは桃季のものではない。京香と來花が作り出した方の呪術・封である。佐須魔は完全に忘れていた、この術の事を。これはあまりに強すぎたり禍々しいものに蓋をする術、結界を作り出して他の者から知覚出来なくしたり出来る。

だがこれに何の意味があるのか、答えは簡単、封包翠嵌のカワセミを空中で止める。この結界は簡単に言えば勝手に効果が変わる代物、傀聖が邪魔だと感じたら幽閉する事だって可能なのだ。

そして封包翠嵌が来ないと思う。ただ遅かった。

光に包まれる。久しぶりの感覚だ。


「…問題あるか無いかで言われた場合、無いね」


「は?」


「リセットだ、リイカ」



『brilliant』


満ち満ちる光、だが佐須魔はそれに対抗するべくして唱えた。


『弐式-弐条.封包…』


「この時を待っていた!」


紫雷未だ効果中、言わなかったのはこの時のためだ。


『紅剣・ライトニング-紅雷斬』


先程と違う挙動、何かがおかしいと感じた佐須魔は再度口を開く。


「リイカ」



『brilliant』


満ち満ちる光、だが佐須魔はそれに対抗するべくして唱えた。


『弐式-弐条.封包…』


「"だから言っただろう?待っていたと"」


その時佐須魔は知った。ライトニングはこちら側なのだと、そして知る、まだいる。


「まぁな、しゃあねぇから合わせてやったよ、ライトニング」


傀聖はまだ分かる、神なのだから。だが問題はライトニング、どうして知覚しているのだ、ニンゲンは分からないはずだ。


「どうやらリイカの能力は魂と同じで一度でも知覚したら永劫分かってしまうらしいな。現に私も傀聖も気が狂いそうだった、よくリイカはおかしくなっていないな。百掩が発動されてから…もう数えていない、少なくとも五百回近くは巻き戻されているが」


「そうだね、あいつ心配性だから緻密に計算して最善な道を作り出すのさ。だから今君達はこうやって不意打ちをして僕を倒せると思っているかもしれないけど、無理だよ。リイカが意識を取り戻している時点で僕らの勝ちは確実、無理なのさ」


「強すぎる力で捻じ伏せれば妥協しても大打撃にはなるだろ」


「そんな考えで戦って教えた憶えは無いよ傀聖」


「そりゃお前らの教えとかもう忘れたからな」


「言うようになったね、ここで死ぬのに」


「戯言を聞く必要は無い。お前の考えは正しい、妥協でも苦しい力を振りかざすんだ。そうすれば確実にやってくれる、あいつらが」


「おう、分かってる」


二人は再度動き出した。今度はファストもサポートをする。だがリイカの巻き戻しが何回も起こり、佐須魔は心を読めるので全く攻撃が当たらない。攻撃をされても最大限の反撃をする事で巻き戻しを発生させ何とかリセットは出来ているがこのままでは全てにおいて対策を施され佐須魔が一方的に攻撃出来てしまう。

もう時間は無いのかもしれない。

二人はアイコンタクトを交わし、ある決断をした。ライトニングの霊力は紅雷斬二回分、羽枷が使える程も残っていない。傀聖も十円玉だけ。あまりに不利だ。

なので行う強行突破。


『紅剣・ライトニング-紅雷斬』


傀聖は怜雄の力で少し先の未来を決定した。紅雷斬が当たり、完全な隙が出来るように。

決めた通り佐須魔が移動した位置に雷が落ち、隙が出来た。

そこで二回目のコピーを使った傀聖が唱える。


『降霊術・神話霊・ガネーシャ』


薫のガネーシャである。今足りないのは絶対的な力、(レジュメント)は一旦放ってある、あれを使っているとまともに動けなくなるのも時間の問題だからだ。実際両手が大分ヤバイ状況になっている。今にも千切れてしまいそうだ。


「やれガネーシャ、潰せ」


コピーといえども完全コピー、劣化ではない。本家と同じく凄まじいパワーを持ち合わせている。だが佐須魔もそれを悟っておりしっかりと攻撃を避ける。ただ先程よりは余裕が無さそうだ。

確かにリイカの巻き戻し回数が極端に減った。何があったのかまでは分からいがラッキーだ、一気に攻め立てる。


「行くぞ傀聖!」


「おう!!」


菫と紅剣・ライトニング、同時攻撃が弱いわけが無い。ここで決める。ガネーシャが攻撃し、ファスト含めた三人は避けた結果向かうであろう右側で待ち構えて攻撃をした。

佐須魔は抵抗などしなかった、まるで予測していなかったかのように焦った様子を見せ無茶苦茶な防御をしようとしたが通じない。ファストの蹴りによって隙を生み、二人が首元に攻撃した。そこはしっかりと能力発動帯、一気に破壊する。

一瞬にして第三形態、第四形態を破壊する事に成功した。そこまでは良かった。だが佐須魔はずっと危険視していたのだ、たった一人の少年を潰す為にわざと隙を見せ、誘導した。


「さぁやって、智鷹」


遠距離からのスナイプ、銃声は聞こえた。瞬時に飛び出す一人の少年、ファストは間に合わない。既に弾丸はライトニングの首元を狙い、数メートルの距離まで来ている。

反応できたのは一人だけ、完全に反射で飛び出したせいで何の術も無い。これが狙いだったのかと気付くや否や頭に強い衝撃と痛みが走った。


「パラライズ!!!」


ハンドが即座に手を出し救い出そうとした。だが佐須魔が容赦なく唱える、まるで鎮魂歌のように。


定石(じょうせき)遷移(せんい) (かぞ)(つくろ)(もの)()せ〉


《神》


今までは名を呼ばなかった。式神とは詠唱で効果が大きく変わる。だが気にするほどの戦いでもなかったのだ。ただ今回は少しばかり本気で行かなくてはいけない。なので使った。智鷹が収拾した情報の中に書いてあった詠唱の定石、それを見て第一に思ったのはラック・レジェストの才能が測り知れない事であった。

それ故に目指した、いや越えようと思った。結果として佐須魔は越えた、今まで一番の式神使いへと。だが最強ならば保険は常に持つべきなのだ。この詠唱のような保険を。


「次だ、死ね」


《チーム〈能力取締課〉[name パラライズ] 死亡 > 南那嘴 智鷹》



第四百八話「一撃」

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