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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第三章「工場地帯」
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第四十話

御伽学園戦闘病

第四十話「one-sided game」


「エクスカリバー…二回目だな」


「一回目だ」


「そうか…そうだったな」


「行くぞ!!!」


素戔嗚の懐まで走り込んでからエクスカリバーを勢いよく振り下ろす、素戔嗚は刀で受けたが力勝負で負け、浅くはあるが切られてしまった。

だが怯む事はなく剣を振り下ろした状態の英二郎に刀を突き出す。だが刀は英二郎の剣捌きによって弾かれてしまった、今度は右手を突き出し隙だらけになってしまった素戔嗚に対してエクスカリバーを突き刺した。素戔嗚は自分で剣を引き抜き、止血なんてしないで英二郎に対して四連撃をかました。だがその四連撃に対抗するかのように七連撃をぶちかました。素戔嗚は何が起こったか分からないようで困惑しながら(ひざま)く。


「諦めろ。今の僕に君は勝てない」


「クソ…何故だ…」


「僕も"元仲間"を殺したくはない。今降伏してくれればトドメは刺さない。さぁ諦めて刀を渡せ」


「…今諦めて刀を渡せば來花様のところへいけるのか」


「いやここで気絶させる」


「そうか。だが悪いな、俺は飼い犬なんだ。ペットとはどんな状況になろうが、ましてや死のうが飼い主の元へ尻尾を振って走り機嫌を取らなくてはいけないんだ。それがペット、いや弱い者の仕事だ」


「その意見は賛同するよ。でも言葉の重みが違うね、当人の君が言うと」


煽りながら剣を振る、素戔嗚はそれに合わせ踏み込み柄の部分で顎を突き上げた。だが剣を振る手が止まる事はなく素戔嗚の左肩に剣が食い込む。

素戔嗚も手を止めず英二郎に斬り掛かり確実に英二郎を斬った、だが顔を上げてもそこに英二郎の姿はなくただ空気を切っていた。一方英二郎は素戔嗚が切り掛かって来た瞬間に剣を引き抜き、ジャンプをして素戔嗚を飛び越えた後にうなじのあたりに狙いを定め振りかざした。だが気配に気付いたのか振り返り攻撃を凌いだ。ただし長い髪が少しだけ切られてしまう。


「髪が切れてしまったではないか。伸ばしたり手入れをしたりするのは大変なんだぞ」


「じゃあ切れば良いじゃないか、長いと戦闘中もじゃまだろう?」


「これは切らない」


「何故だ?僕がまだ君達の仲間だった時は髪を伸ばしてはいなかっただろう」


「理由なんてどうでも良いだろ」


「まぁ降霊術のせいかな。にしても長く感じるがな」


「だけどいいのか?お前がエクスカリバーの力を使ってから約四分が経った。俺もこの草薙の刀の力を使わせてもらった事があるからわかる、あいつは短期決戦を見たがっている。だとすれば力が使える時間は長くて十分程度、短くて五分と言ったところだろ」


英二郎は思い出したかのように焦り出し走り出した。予想が当たったからかニカっと笑いながら一軒後ろの工場に飛び移ってから今まで絶対しなかった事、背中を向けお得意の身体能力を使って工場を飛び移り逃走を始めた。英二郎も全速力で追いかけ追い付いては剣を振るが見事に避けられ更に差を開かれてしまう。

鬼ごっこを始めてから三十秒が経った、英二郎も焦り始め少しスピードを上げたらなんとか素戔嗚に追いつく事ができそうで剣を構える。すると何故か素戔嗚との差が一気に縮まった、何かおかしいと思いスピードを下げたが遅かった。素戔嗚は刀を抜きながら体の向きを180度変えた。

このままのスピードで英二郎が突っ込んでくると丁度首に当たる位置だ。その事には気付いたが止まる事は出来ず待ち構えている刀が目の前まで迫って来る感覚に襲われる。何が何でも死んでやらんと思い、何でもいいから案がないかと記憶を探り始めた。少し探った頃だった、昔まだ英二郎がTISに所属していた時に佐須魔から聞いた事。

英二郎は御伽学園に潜入捜査を命じられ万が一正体がバレて手足が使えなくなった時どうすればいいかと言った物だった。「手足が使えなくなったら口を使え、舌を噛み切るんだ。でも安心しろすぐに助けに行ってやる」この言葉を思い出した。そこからインスピレーションを受けた。一か八かで口を大きく開く。

素戔嗚は何をまさかと驚きの表情を浮かべるが体勢は変えず刀を構えていた、残り数センチの場所まで迫る。英二郎はもう止まろうともせずただ口を開いて少しだけ顔の高さを下げ、刀に向かって突撃した。素戔嗚は勝ったと思い少し力を抜いてしまった。その少しの油断が負け筋を生んだ、刀は素戔嗚の手から離れ、英二郎に付いて行った。少しずつスピードを下げ完全に停止してから素戔嗚の方を向く、その口には素戔嗚の刀が咥えられていた。


「マジかよ」


「いやーTISに入っていて良かったのかもしれないな、これも佐須魔のおかげだよ」


「咄嗟に刀を口で咥えるか?普通」


「僕は一時期だったが元TISの重要幹部No.1だ、常人なわけがないだろう」


「それは俺への侮辱か」


「いやいやとんでもない。到底敵わないよ現No.1さん」


そう言いながら刀を投げ捨てた。素戔嗚は拾おうとしたが間に合わず耳の奥に残る金属音を響かせながら地面へと落下した。だが工場から飛び降りて刀を取りに行く事はせず、英二郎の方を睨み何も持っていない状態で体勢を変える。


「霊は出さないのか」


「刀剣だけで勝負するとそちらが言ったんだろう」


「そう言うところは変わっていないんだな」


「そんなことよりもそんな焦っていたんだエクスカリバーを使える時間は五分だろう?」


「そうだ。だが君の負けはもう確定している」


「それはどうだろうな」


「行くぞ!」


残り二十秒

エクスカリバーを振るが素戔嗚はそれを全て交わしそれどころか英二郎の裏を取った、直ぐに振り返ったがそこには素戔嗚の姿はなく再び後ろを取られていた。英二郎はなぜ裏を取られるか理解できずただ闇雲に剣を振り回す。


「少しは考えたらどうだ」


「何故だ…」


「残り十秒だぞ」


残り十秒

英二郎は冷や汗をかきながら素戔嗚がいた場所を斬り、移動しては斬りを繰り返していたが一向に当たる気配はなく本当にヤバい状況になってしまった。素戔嗚は淡々と移動して避け、移動して避け、残り五秒が過ぎるのを今か今かと待ち望んでいた。

五秒で剣を触れる回数は五回、そのうちに当てなくては!と思いながら一発目を外してしまった。


残り四秒

今度は裏をかいて素戔嗚の方を攻撃するように見せてから次に移動してきそうな場所に剣を振ってみた、だが一瞬当たったように見えたがそれは残像で本体に当たる事はなかった。


残り三秒

次は一瞬待ち、動きが止まった瞬間に攻撃をしようと貴重な二秒を使って一瞬待ち素戔嗚の動きが止まった瞬間剣を振ったがその場に残ったのは身に着けている和服の(すそ)だけだった。


残り一秒

本当にやばいと思い神経を研ぎ澄まそうとしたが背中がさーっと冷えて行き集中することができなかった。最後の攻撃は小さな風切り音を聞き取り何処に移動したか特定しようと耳を澄ませる。微かな風切り音で自分の真後ろにいると確信し一瞬で振り向いて敵の顔の高さになるよう剣を突き出した。

だがその剣は素戔嗚の顔に当たらなかった。すれすれ、右頬の一寸先を通り抜けたのだ。


「焦ったな英二郎」


「あぁ…ハハ…」


素戔嗚はニヤリと笑い、全力で煽るような声色で叫び始めた。


「お前は俺に負けた。時間をオーバーしてしまった。お前がろくに剣で戦えない以上もう刀剣で戦う必要はないよな?じゃあ始めようか、one-sided gameを」



第四十話「one-sided game」

2023 10/20 改変

2023 10/20 台詞名前消去

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