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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
最終章「終わり」
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第三百八十四話

御伽学園戦闘病

第三百八十四話「突入準備」


アリスの一撃が当たりそうになった瞬間、フレデリックが優樹を連れて空間転移を起こした。アリスはギリギリ範囲外で逃げられてしまう。


「馬鹿してんじゃねぇよ。お前のターゲットは違うだろうが」


移動した先には透、エリ、海斗、要石が待っていた。この場にいないのは佐伯、雷、嶺緒だけである。だが集める必要は無い。その四人はそれぞれ単独行動を取る事になっているからだ。

そしてこの五人でする事、それは至極単純。佐須魔(ボス)を叩く。


「んじゃまあ準備するぞ。あと優樹はちょっと落ち着けよ、焦り過ぎだ」


「悪い。なんか冷静じゃなかったわ。とりあえず俺も準備する」


「倒せるの!?私達で!!」


「静かにしろよ、位置がバレる……そんでどこまでやるかってのは…まぁ…そうだな…削れるだけ削るが目標だな。まぁ勝てるとは思ってない。だからヤバそうだったらさっさと引き上げて他の連中の手の内明かすのが目的だな。あとシウの薙核根の性能も見ておきたい。

こんな所だな。分かったか?エリ」


「おっけー!!」


着々と準備を進めていく。透が何かを渡して、皆がそれをポケットなどに入れて行く。そして五分程様々な物を用意して、準備が終わった。正に決戦、まずは周囲にいるであろう数人のTISメンバーを何処かに放り投げる事からだ。

透の予想では刀迦、來花、リイカの三人は最低でもいるはずだ。三人とも協力で滅茶苦茶に厄介な連中である。特にリイカ、疑似的なセーブ&ロードが出来てしまうので基本何でも対策されてしまう。

だが確実に弱点はあるはずなのだ。幾ら考えても推測の域を出ないものの何の対策もせずに突っ込むよりかは可能性が上がるはずだ。

一本吸いたい気持ちを抑えて問いかける。


「行けるか?お前ら」


「いける!」


「私も行けますよ」


「俺も」


「私もおっけ~」


「よし。そんじゃあ腹括れよ。スタートだ」


次の瞬間フレデリックの空間転移で中央に移動した。本当の中央、薙核根のてっぺんだ。やはり刀迦、來花、リイカの三人だけが残っている。それに当然佐須魔もいる。


「来た」


霊力感知で素早く気付いた刀迦が刀を抜き、跳びあがろうとするが佐須魔がそれを止める。


「駄目だよ。確実に何か作戦があるはずだ、透はそこそこ頭が良い。多分何かしてくるから待ってろ。僕がカウンターを入れる」


そして透達も捉えられた事を察する。


「早いな。まぁ問題ないか。覚悟は出来てるな?エリ」


「うん!!早く!!」


透が能力を発動する。


『潜蟲 神経蝕 五十』


それを全てエリに向けて、特に神経が集中していて最悪ミスしても取り返しが付く手に向けて。そしてエリも能力を発動する。エリの能力は『痛みの転送』である。

発動中に自分が受けた痛みを全て別の人物に指定し、丸々与える事が出来る。使いどころこそ限られるものの上手く刺されば不意打ちも可能、対面での勝負のカウンターとしても有用、結構強い能力だ。

そして神経蝕、物凄い痛みのはずだ。転送の対象はリイカ・カルムただ一人である。だが佐須魔はすぐにその戦法を見抜きとても容易く対策した。


『弐式-弐条.封包翠嵌』


少し過剰かもしれないが封包翠嵌を使っておけば何とかなる。リイカが狙われる事を理解した刀迦がリイカを掴み、放り投げて視界の外に追いやった。これで攻撃される事はそうそう無いし、追いかけようにも三人が立ちはだかる事になる。

それを見た透はリイカを諦め本命の佐須魔を攻撃する事にする。だが刀迦と來花を放ったままにしておくと本当に面倒臭い事になる。なので最初から奥の手の一つを使う事にした。


「やってくれ、フレデリック」


「分かりましたよ」


それは礁蔽が前大会で見せた強制テレポートに少し似ているやり方。フレデリックが空間転移で自身だけを移動させ、刀迦來花の中心に立つ。そして範囲をそこそこ広げてから能力を発動した。転移場所は島の奥の奥、島外に行ってしまうとフレデリック自身も失格になる可能性があり、突然変異体(アーツ・ガイル)にはフレデリックが欠かせないのでそれは出来ないのだ。なので最大限距離を離してもらう。

ただ刀迦の速度ならば戻って来るのにそう時間はかからないだろう。それに下手したらフレデリックを倒してからやってくるかもしれない。現在のフレデリックは片手を失っている。それでも相当の実力者ではあるはずだ。ここは信頼して四人は攻撃を開始する。


「さぁ突っ込むぞ!要石!」


「あいよー」


要石が大きな岩を生成した。四人はそれに飛び乗り落下する。地面に付く寸前、飛び降りてそのまま佐須魔に向かって突っ込む。


「ふーん、まぁ良いよ。やってあげる」


『降霊術・唱・猫神』


ライオンが出て来た。情報とは違い相当力を付けているようだ。もしかしたら神格最弱の座は既に他の霊に譲っているかもしれない、そう思う程である。

それでも軌道を変えたりはしない。何故なら透がいるから。


「ワリィな、邪魔だ」


猫神の鼻先をチョンと触れた。次の瞬間猫神が消滅する。


「新しい蟲か。まぁ…ん?」


当然の反応である。初めての感覚、出せないのだ。猫神を出そうとしても出せない。無詠唱なのが良くないのかよ思い詠唱をしてみたがそれでも出てこない。何だか体のギリギリで押し込められているような、何とか出てきそうな感じはするのだがギリギリで出てこない。大変もどかしい。

他の霊ならば出せるのか判断するため別の奴を呼び出す。


『降霊術・唱・人神』


現在の最強神格、初代ロッドこと人神である。


「早くなーい?」


普段の調子で文句を垂れている。どうやら猫神だけが使えなくなってるらしい、新しい蟲を使用されるとどうやらその霊が使えなくなるようだ。万が一にも透が死んでもその効果が続くのだとしたらヤバイ、すぐに人神を戻した。

そして何より恐れるべきは自身に使用された時である。これが霊専用なら良いがもしや人や神にも通用するのだとしたら何が起こるのか分かったもんじゃない。

この不安がある限り迂闊に近付く事は出来ないし戦闘も出来ない。幾ら他のメンバーが強くなったからと言って佐須魔がいないと教師辺りで全滅する可能性だってある。教師を抜けれたとしてもエスケープと言う化物の集まりで確実に全滅する。


「…誘導?」


「どうだろうな」


「……まぁいいや。そんなにやりたいんだったら半分の力で、やってあげるよ。ちなみに今までの手加減は一切無いからね。サルサとの戦闘が短くてイライラしてるんだ」


『第四形態』


計算外、最初は第二形態から来るものだと思っていた。だが好都合でもある。多少被害が大きくなるが別に勝てないわけではない。だが気になるのは第四形態突入前の一言、"今までの手加減"とは何の事だろうか。一応ほぼ全ての戦闘を兵助や薫達から聞いてはいたし、大会での流戦なども見てある程度の実力は知っているつもりだ。

勿論三年近く経過しているので強くなっているのは分かっているのだがその手加減が何を指しているのか良く分からない。ひとまず今は警戒しつつも攻撃をするにつきる、佐須魔は新しい蟲に警戒して逃げの姿勢を普段よりも取るはずだ。


「礫だ要石!」


「おけ!」


大量の礫を佐須魔に向かって放った。だがそんなもの攻撃としてカウントする必要すらない。


『唱・(ラキエル)


手に取った斧を振り下ろす。すると物凄いパワーで地面を削り、そこに追撃の雷が放たれた。初めて見る武具だが相当力が強い。礫も一瞬で粉々になってしまった。

近距離であれをくらったら普通に死ぬ。出来る限り距離を取る戦い方を強いられるがそれだと折角のアドバンテージが活かせない。だからと言って突っ込んでもやられそうだ。正直知らない武具を持っている相手に突っ込むのは馬鹿のやる事である。死亡リスクも無茶苦茶に高い、それに使い手は佐須魔だ。

だがそんな無茶な一面も突破出来る男がいる。


「行けるか?海斗」


「良いですよ、やってやりましょう。その代わり死んでも文句言わないでくださいね」


「保証はしない」


「はいはい。それじゃ行きます」


海斗が走り出した。佐須魔はそれに向かって再度(ラキエル)を振り上げ、思い切り振り下ろした。まるで英二郎のエクスカリバーのように物凄い斬撃、その後に果てしないレベルの雷。真面目に耳が痛い、鼓膜が張り裂けそうである。

だが一番耳を痛めるであろう海斗は何の気なしに突っ込んでいる。優樹がおかしいと感じ透に訊くと雷が引いてから答えてくれた。


「あいつ難聴なんだよ、たまーに聞き返して来るだろ?そう言うこった」


「知らなかったな。でも何で普通に聞き取れてるんだ?この雷も全然くらわないレベルなら日常生活でも…」


「ほぼ口を見てる。だからあいつボソボソ喋る奴の事とか口元隠してる奴の言葉全然理解できてないぜ?」


「なぁそれってマズくないか?だって佐須魔が心を読んでその事知られたりしたら…」


優樹の発言、それは良い所を突く意見であった。だが問題はない。透が全くサポートをせずに一人で突っ込ませるのには理由がある。くらっていいのだ、攻撃をくらう事こそが海斗の役目。避ける必要など微塵も無い。

そして佐須魔が普通に唱える。


『漆什弐式-伍条.衝刃』


大体口の動きで分かる。衝刃をくらって分かる事なんてたかが知れているので普通に避ける。海斗の身体能力は決して低くない、だが高いとも言えない微妙なライン。だがそこに重なる優樹の完全記憶、完璧な走り方や体の使い方を教わったので問題ない。

衝刃をしっかりと避け、目前まで迫った。すると佐須魔は楽しそうにニヤリと口角を上げ、そのまま唱える。


『弐式-参条.鏡辿』


内臓が壊れて行く。海斗はここで使わなくては死ぬと判断し能力を発動した。正に折衷案、最悪と最高の丁度半分の事象を引き起こす。この場合では最悪が死、最高が何らかの要因によっての即時完治と追撃が無くなる事。その丁度真ん中、おおよそ死にはしないが治りもしない、下手な行動をしたら死ぬレベルだろう。

くらった瞬間に後方に引く。一旦仕事は終わりだ。


「よし、よくやった。一旦休んでろ。何かあったら他の奴に『阿吽』して伝えて死ぬか助けてもらえ」


「分かってますよ」


「さて、んじゃ俺がやる。優樹はまだ待ってろ、要石はもう言わなくてもちゃんとサポートしろよ」


「あいー」


「了解」


唱えてから動き出す。


『潜蟲 憶蝕(オクショク) 三』


突然変異体(アーツ・ガイル)が完全に学園の元に付いてから生み出した潜蟲の一種。他の種と比べると能力っぽさが強いものとなっている。効果は単純、宿主の記憶を徐々に喰っていく代わりにその宿主の"全て"の力が大幅に上がるというものだ。謂わば諸刃の剣である。

透はそれを三匹も付けた。狙いは透ける、テンプレのテンプレ、短期決戦である。



第三百八十四話「突入準備」

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