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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第十二章「再集結」
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第三百五十七話

御伽学園戦闘病

第三百五十七話「終わり、始まり。始まり、終わり」


だが椎奈の帰還によって作戦を変えるつもりは一切無い、全員が納得するほどの奇策、ここで変更してもあまり良い風には動かないだろう。確かに椎奈は強いし便利だ、だがそれは旧生徒会メンバーの戦闘で役立つ、それだけだ。

作戦全体にガツンと影響を与える能力ではない。


「椎奈の言う通りだな、私達もクヨクヨしていられないぞ!もう一週間も無いんだ、エスケープは少し気の毒だがその内話せるようになるだろう。それよりも今は目先の目標を達成するために動くんだ!」


香奈美の一声によって全員の士気がある程度復活した。香奈美は椎奈に何があったかを話すため二人で部屋を出て行った。確かに言う通りで、ここで変に根を詰めても良い事などないに等しい。

体と心を休め、最終決戦に挑むのだ。刀迦もいる、誰もが油断出来ないはずだ。今の内に休む。


「まぁ良い、お前らは作戦会議だ、ここ残れよ」


薫が教師陣に残るよう命令した。他のチームは特段残る理由が無いのでそそくさと出て行く。


「にしても多々良 椎奈か、俺は良く知らないな。フレデリック、知ってるか?」


「いえ、私も存じておりませんでした。ですがあの感じから見て旧生徒会の方々と同世代なんででしょうね、あれじゃないですか北海道のある町に存在している旅館での爆発事故。あそこで学園の生徒が一人亡くなったと耳にした事がありますね、その時に死んでしまった方でしょう。

もしそうだった場合魂が破壊されていないのは驚きましたね」


「確かにな。椎奈の能力は分からないがわざわざ一回分使って降ろしたって事はそこそこ強いんだろうな。ま、今の俺らには何も分かんねぇしよ、とりあえず帰ろうぜ」


「透!!お腹空いた!!」


「へいへい、なんか買ってく、ついでに。お前ら何食いたい」


他の突然変異体(アーツ・ガイル)メンバーにも訊ねる。嶺緒も段々慣れて来たのか大して躊躇う事も無く注文した。だがその中でも相当古株である佐伯のみが注文をしなかった。

どうしたのだろうかとふと目線を向けると少し異様なほどボーっとしていた。どれだけ話しかけても全く返答がなく、立ったまま死んでいるのかと心配になって来た。

するとハッとしたように正気を取り戻した。


「おいあんまボーっとすんなよ。ろくに人が居ないといえども、別にここが安全な訳じゃねぇ。四六時中警戒してろとは言わないが、外にいる時ぐらいちゃんと周囲見ろよ」


「あ…すみません」


いつも通り弱気だ。


「とりあえず何か食いたいとかあるか?」


「いえ、朝ご飯食べたからかあまりお腹が空いていないので僕は結構です。それより能力館でトレーニングして来ますね」


「…ん」


ここ最近妙に活発だ。悪い事では無いが何だか引っかかる、しかもトレーニングと言っているが明らかに外出している時間と肉体の変化が比例していない。

仲間を疑う訳では無いが何をしているのか気になった透は小さく何の力も持たない寄生虫を一匹付けておいた。他の者にはバレないようにいつも通り振る舞いながら佐伯が何処に向かっているのか絶対に逃さないようしっかり霊力探知を行う。


「んじゃ先帰ってろ。フレデリックもな」


「分かりました。行きましょうか、皆さん。エリお嬢様もあまり道草を食わずに行きますよ」


他のメンバーは全員煙草を吸いながらしょうもない話をして帰路についている。ただフレデリックだけは確かに感じ取っていた、明らかな異常を。だが手は出さない、何故ならそれは透の判断に任せる事だからだ。

そもそも片手を失ってしまったフレデリックには唐突な攻撃などを防ぐことは出来ない、なので安全策を取って皆と帰るのだ。それでも心の中にはある感情が育まれつつあった。



「は~二人行ってもうたわ~」


「そうだね。行っちゃったよ。でも刀迦が起こされてるって事は分かったね、どうするんだろ、僕とニアはそれぞれ戦い相手が決まってるし。

教師の誰かがやってくれるのかなぁ」


「分からんな、作戦分からんし。なぁ兵助、どんな作戦なんやろ」


「どうだろうね、誰が発案したのかすら憶えていないし。やっぱり理事長の能力は凄いね、佐須魔のガバガバ記憶封印と違って」


「ほんとにね、だって僕なんて咲と対面しただけで思い出したよ全部」


「そういや全部思い出したんか?」


「うん」


「それなら母親とか式神術の事とか何か憶えてへんのか」


「憶えてはいるよ、勿論。けどね、正直言って良いのか微妙なんだ。どんな方法なのかは分からないけどTISは隠密状態で情報を得る事が出来る、だから言いたくない」


「そう言う事ね。まぁ当たり前の考えだね、阿吽も怖いしねーちょっとだけ」


「そうなんだよ。ま、良いか。とりあえず何かしようよ、暇だ」


「なら少しだけ特訓に付き合ってはくれませんか?私の力でまだ安定していないのが二つあるんですよ」


「僕に出来る事なら何でも言ってよ!」


「ありがたいです。それでその力と言うのが…一つは術式で、もう一つはロッド術です。術式は体との相性があるので無理をするつもりは無いんですが、ロッド術の方があまり安定しないんですよね。

やはり黑焦狐さんのような奉霊が必要なのでしょうか……」


「そう言えばニアは奉霊いないよね?アリスも」


「はい。私達は既に直接の血ではなく、アリスが完全な突然変異、私は母さんが実質的な突然変異だったので力を得ているだけ。ほぼ関係無いんですよ、そもそも姫という立ち位置じゃないので、初代さんは可愛がってくれますけど」


「僕そこらへん良く分からないから…まぁとりあえず奉霊は無理って認識で良い?」


「それで大丈夫です。なので私は自分の口で詠唱し、放つ必要があります。ですが霊力量に限界がありまして…私の現在の霊力量は最新型で測って678でした、ブレはあるでしょからおおよそ680としておきます。

そしてロッド術には人体の限界を考慮しているのか人が放つ場合最大使用霊力は大体300なんですよ、奉霊がいれば無制限にできるんですけどね…」


「でもそれはアリスも同じなんじゃないの?」


「そうですね。ですがアリスは最初からロッド術をメインウエポンをして使ってきません。アリスの体は改造されていて力が青天井で入って来ます、なので今もトレーニングをしているのでしょう。追いつけないです、絶対に。

なので私はロッド術を使うのです。となると半端な出力では全く意味が無いんです。結局の所もっともっと、出来る限りの力を出したいんですよ」


「…今のニアって身体能力なんぼなもんだっけ」


「えーっと…ちょっと表しづらいですね…」


「確かに…えーっと……どうすれば良いんだろう…」


「拳とやったらどうなるんや?」


「恐らく私が負けます。能力を使って良い場合は勝てるでしょうね、十中八九。まぁここでは身体能力を知りたいはずなので…大体シミュレーションしてみたら……拳さんの両手を機能停止するぐらいには追い込んで、ほぼ瀕死状態にしてから負けますかね。大体の予想ですが」


「うんうん…大体予想が付くね、それぐらいなら。でもさ、やっぱりそのぐらいの力なら術式だけで良い気がするんだけど……ロッドの術って菊さんが使ってるやつでしょ?あれって相当な隙が出来るはずだからアリス相手だと有効打に成り得ない気がするんだ」


「いえ、唱えながら殴り合えば良いのでそこは問題ではないです」


「あー…出来るの?それ」


「出来ます、自信満々に言えますね!」


「それなら僕に一つ策があるよ。僕だって地獄で何もしていなかった訳じゃない、沢山の人と会って来た。ニア、地下、行こっか」


「地下ですか?地上ではなく?」


「うん、地下。地下で良い。別に戦闘する訳じゃないから、ある事を話す。少しだけ長くなるし、軽く霊力操作とかの状態もチェックしたいから時間かかるよ、二人共良いよね?」


「わいは大丈夫やでーちょい眠いから寝るわー」


「僕も良いよ。ちょっと薫の所行って来る」


「じゃあ先に僕らが地下行くね」


「了解」


二人は地下へ向かってしまった。どんな話をするのか、別に興味も無いし知る必要も無い。全員が理解している、記憶を消去してあと言う事は各々の戦術をむやみやたらと知らない方が良いのだ。佐須魔の能力で見透かされる事を嫌い、互いを信じてその場で戦う。それが今回のやり方なのだ。

分かっている、最後の最後で大きな賭けに出たと。だが成功すれば大変良く差さるだろう、楽しみだ。これがどう言った結果に繋がるのか。



「さぁ始まるよ、最後の戦い、かな?」


「ほんとに終わるんですかー?」


「ですかー?


「さぁ?私が弄ったのはラック、紫苑、真波、薫、佐須魔とかそこら辺だけだもん。んーまぁその遺品とかがどう繋がって来るのかは楽しみだよね~なんせ私の最初の世界であり、最高傑作なんだから」


「サイコウケッサクはわたしたちー!」


「…です!」


「いやー?違うよ。別に君達は最高傑作じゃない。ただ可愛いから手元に置いているだけ、弱くは無いけどね」


膝に抱えられる双子鬼は少しだけむすっとしてご機嫌斜めのご様子だ。


「二人はどっちが勝つと思う?TISと薫達」


「わたしはTIS!」


「私も…TISかな」


「うん、偉いね。二人共しっかり覚えている、順当に強い方を選んだね。偉い偉い」


双子鬼の頭を撫でながら神はニタリと口角を上げた。


「だけどね、現実はそう甘くないんだよ。天命というものが、この世にはあるのさ。私にも分からないよ、結果はね。全部見よう、多分他の住人も見ているはずさ。一部の者はそれなりの感情移入をしながら見ているはずだ。

ゆっくりと、楽しもう。映画感覚で、娯楽としてね」


笑みはより一層と、燦燦と鳴り響いた。



第三百五十七話「終わり、始まり。始まり、終わり」


帰還者

華方 薫


高田 漆

和也 蒼

葉月 半田

麻布 康太

穂鍋 光輝

拓蓮 灼

葛木 須野昌 ―― ――

駕砕 拳

フルシェ・レアリー・コンピット・ブライアント

姫乃 水葉

姫乃 香奈美

多々良 椎奈


兎波 生良


櫻 流

ニア・フェリエンツ

管凪 礁蔽


杉田 素戔嗚

樹枝 蒿里


内二名行方不明、計十八名が帰還。

生徒会、旧生徒会、能力取締課、干支組、突然変異体(アーツ・ガイル)、教師、エスケープチーム、全勢力を以て大会にて念願のTISとの決着を、ここに掲げる。


第十二章「再集結」 終

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