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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第十二章「再集結」
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第三百四十八話

御伽学園戦闘病

第三百四十八話「TIS Ⅱ」


そこから二人は來花探す旅に出ていた。元々智鷹が小さな頃とある戦闘でお供をした事があり、そこで仲良くなったとは言っていたが今何処にいて何をしているかまでは把握していないらしい。

ただ相当強い霊力を持っているので一日かけて日本中を霊力感知で探せば見つかるだろうとの事だ。二人は別にそこまで長い時間を過ごしたわけでは無いが共に[沙汰方 小夜子]に育てられたからか息が合う。


「結局の所そうなんだよね~能力者には絶対的な力が、非能力者には絶対的な権力がある。それって僕らみたいな革命児が出た瞬間力を持っている方に全てが傾くんだ。だから僕らが力でこの世を制し、王になるっ!!」


「最後のが目的だろ。智鷹の能力は別に弱くないけど強くもないじゃん。それより"式神"持ってる俺の方が強いに決まってんじゃん。リーダーは僕だよ」


「違うよ佐須魔、組織のトップっていうのは基本的に最後まで死んじゃいけないんだ。そうなると戦場に送るのは微妙だろう?ぶっちゃけ二人共運営能力は無いようなものだし、どちらが運営権を握っても大して変わらないと思うんだ。

それなら僕はリーダーになり、存在を隠したい」


「どういう意味があるんだよ、不信感募らせたるだけだろ」


「分かってないな~言っただろ?ボスが死ぬのは最後だって。革命前夜、それかその少し前辺り。僕は戦場に出る、そして死ぬ。そこまでは君と來花で繋ぐんだ。千年単位の差別を覆すと言う事はとんでもないプレッシャーだろう。そこで僕が文字通り命を懸けて鼓舞する。

まぁ、その時のメンバーが全員そんなものを必要としていない化物連中だった場合は話が変わるけど…リスクヘッジは大事だろ?」


「まぁ分かった。その來花って奴も賛同するならそれでいい、どうせ俺がバンバン戦わなきゃいけないのは決定事項だしな」


「そうだね。能力大量に吸収して強くなってもらわなくちゃ、そうしたら教えてあげるよ、僕が抱えている"秘策"を」


「あぁ、頼むぞ」


雑談はそんな所にして智鷹は霊力感知を再会した。佐須魔はやる事も無いので英気を養うためにも昼から寝る事にした。別に眠かったわけでも無いが何となく体が疲れている感じがしたのは、本当に何となくだが。



時刻は夜中の二時、佐須魔は起こされた。


「見つけたよ、北海道の小さな町さ」


「ご苦労さん。それじゃ行こっか」


「うん。将来的には移動が一瞬で終わる能力も手に入れたいよね~」


「そうだな。こうやって一々歩くのも面倒くさい」


二人はある家を離れる。家の玄関口には[榊原]と書かれていた、そして家の中にはたった二つの男女の死体のみが転がっていた。帰って来る子はどんな思いをするのだろうか、それは分からない。だが兵を増やす為だ、二人の心に罪悪感という文字は一切浮かび上がって来なかった。



「想定より時間かかったね~」


「そうだな。まさか丸三日歩く事になるとは…しかもまだ札幌だから歩かなくちゃいけないのか…」


「ほんっと、ちょっと無茶してでも飛行機とか使うべきだったね~。まぁ折角来たんだし、とりあえず観光しよ観光。僕海鮮食べたーい」


「別に良いけどよ、金ないだろ金」


すると智鷹は財布を取り出した。


「ん?それお前のじゃなくね?」


「僕の能力、知ってるだろ?」


「あーそう言う事か。まぁ良いや、じゃあ食い行こう」


「レッツゴー!」


呑気だがそれも良い、これからが非常に大変な事ぐらい理解している。それまでにもっと仲を深め、互いの事を知っておくべきなのだ。幸い気が合うので問題は無さそうである。

ひとまず美味しそうな海鮮の店に入り、注文を済ませた。


「そう言えば來花ってどういう奴なんだ?見た目とか」


「えーっと今は三十代?ぐらいで金髪でちょっとだけ白いメッシュみたいなのがあって……あと眼鏡かけてるね!あ、あと和服」


「…へー、あいつみたいな感じか?」


そう言って佐須魔は少し遠くのテーブル席に女性と座っている男を指差した。智鷹がそちらに視線を向けると同時にクスリと笑った。


「あ、あいつだよ……來花あいつ…」


「凄い偶然だな。まぁでもなんか女の人といるし、一旦やめとくか」


「そうだね、確か奥さんだよ。ここだけの話しだけど降霊術士で滅茶苦茶強いらしいよ」


「結婚してるのかよ…」


「あぁしてるが、何か問題でもあったか」


背後から声がした。智鷹は位置的に姿が見えているので笑いを堪えるのに必死のようだ。佐須魔はクルッと振り返る。


「どうしたんだ智鷹、こんな子供を連れて」


「事情は後で説明するさ。とりあえず今日は良いよ、奥さんと…」


「いや駄目だ、何処から連れて来た」


「まさか僕が誘拐でもしたと思ってる感じ~?」


「やりかねん」


「ひっど~昔からの仲じゃ~ん。こいつは[佐須魔]だ、まぁ積もる話もある事だし、話したいのなら移動したいな~」


「良いだろう。とりあえず京香に伝えて来る」


「あ、僕達まだ食べてないからゆっくりでも良いよ~」


あまりにマイペースな智鷹に少しイラっとしているようだが、それでも大人の対応を見せつけている。自分だったら絶対キレているが、こいつはそこそこしっかりしていそうだと佐須魔は感心する。これなら仲間にしても問題なさそうだ。

ただ仲間になってTIS設立に協力してくれるのかが一番の問題である。奥さんもいる、年齢的に子供が欲しいならそろそろだろう。そんな状況で危険な組織に加入出来るかと訊ねられた時常人なら首を横に振って終わるだろう。

少し緊張しながら海鮮丼を平らげた。


「いや~久しぶりにいくら丼なんて食べたよ~絶品絶品」


「僕の海鮮丼も結構美味かったぞ、また来ようぜ。俺もいくら丼食いたい」


「…良いね。また来よう。それじゃあ…」


店内を見渡したが來花と奥さんはいなくなっていた。どうやら先に行ってしまったらしい、ひとまず会計を済ませ店を出る。そこまで遠くに行ってしまうと入れ違いなどになる可能性があるので大人しく店のすぐ側で待機していた。

五分程して來花が戻って来た。


「すまないな、ちょっと遠出中だから説明するのに時間がかかってしまった」


「まぁ後日でも問題は無いぞ、別に」


「いや今日してくれ。君の眼は尋常じゃない、見過ごせと言うのも少々無理がある様に感じる」


「そうかい。んじゃ場所を変えよう、個室か誰もいない所だ」


「分かった、付いて来い」


個室のカフェに案内される。そこで來花と智鷹はコーヒー、佐須魔は烏龍茶を頼んで早速話しをする事にした。


「さて、ここなら良いだろう。まずは軽く自己紹介をしてくれると助かる、それと智鷹とどういう仲なんだ?」


「[華方 佐須魔]、智鷹とは三日前に知り合った。こいつの育ての親の[沙汰方 小夜子]に最近まで育てられていた、でも死んだ。その時に僕は婆ちゃんの魂を喰って…」


「見たのか、まさか」


「そのまさかだ」


來花は頭を抱え、智鷹を睨む。


「いやいやそこ僕関係無いから!婆ちゃんが僕に頼れって言ったらしくてさ~」


「言う通りだ。喰った事に関しては無関係だから責めないでくれ。そして僕は悲惨な時代が要約された記憶を流し込まれ、こう思った。平和と非能力者が全員いなくなる事じゃないか、ってな」


「一理あるが、それは不可能だ。戦争の時の記憶を知ってしまったのなら分かるだろう、アイト・テレスタシアとその仲間達の功績を。あれでも成し得なかった事だ、君がしようとしている事は」


「知っている。だからお前と共にある組織を作りたいんだ。TIS、名付け親は智鷹だ」


「……それは、どんな目標を掲げる組織なんだ」


「革命を起こす。全ての能力者のために、僕らが救われる為に」


それは子供の戯言なんかではない。霊力操作も知らない子供故の爆裂とも言える霊力放出、來花はその時点で勝てないと悟った。華方と言う姓の時点である程度察してはいたがやはりラック・レジェストの血筋だろう。となれば同類、親戚だ。

そしてそれぐらいは伝えられているはずだ。それを知って尚頼って来たと言う事は本気なのだろう。現代の能力者で最強と言われるとそこそこの数が挙がってしまう、それはそれぞれやれる事が違うからだ。

降霊術なら櫻 京香。呪なら來花。念能力ならフレデリック。身体強化なら当時まだ子供の兆波などが出てくるだろう。そしてその時代で頭一つ抜けているのは京香と來花である。

そんな來花に頼り革命を起こすと言う事は果てしない重圧を受ける事になる。それでもやるのだろうか、この子供は。ほんの少しだった、子供の頃に誰もが感じたであろう好奇心が蘇った。


「ここでの回答は控えさせてもらうが……良い返事を期待しておくと良い。智鷹、携帯番号を交換しようか」


「おっ!良いね~」


「とりあえず君達は私の家付近にある旅館に泊って欲しい。あまり離れて欲しくない、学園は多少なりとも動き出すだろう、佐須魔の捜索に」


「いや、それは無いよ」


「何故だ?」


「華方の血筋は僕の兄を除いて全員殺した」


その瞬間、場が固まった。そしてすぐに來花が声を荒らげ追及した。


「声がデカい。言った通りだ、僕が全員殺したんだ」


「何でだ…智鷹…」


「違うよ、これも。佐須魔は全てを破壊した後に婆ちゃんに拾われたんだ」


「…は?ならまだ何も知らない子が人を…」


「そう言う事になるね、僕も詳しくは知らないよ、聞く気にもならない」


「……あぁもう……君はもう引き返せないんだろ、だからそんな無謀な目標を掲げ、死に場所を探している……同じような人物を見た事があるんだ。それならばまだやり直せ…」


顔を上げ目を合わせた。言葉が詰まる。それは智鷹も同じだった。


「続けろよ、真面目に聞く気は微塵も無いけど」


「…いやすまない、失言も良い所だった…謝ろう、すまなかった」


「いや、別に良いんだ。俺が聞きたいのは協力してくれるかどうか、それ以外には正直まだ興味がない」


「そうか……大体の事情は把握した。とりあえず二人は私の家の近くにある宿に泊ってくれ、代金は私が持つ。ひとまず今日は解散しよう、考える時間をくれ…」


「あぁ良いさ。行くぞ、智鷹、さっさと飲めよ」


「あぁごめんごめん。今行くよ」


取り残された來花はただ一人でうな垂れていた。するとゆっくりと抱き着かれる。


「最初から聞いてたけど、別に良いよ?協力してあげても。私も好きじゃないから、能力」


「……そうか…だが私はとても揺らいでいる。あの二人に協力した場合君にも厄災が降りかかるのではないかと、そう考えてしまうんだ」


「私は強いよ。神格を全員手中に納めてる。そんな私でも心配なの?」


「違うんだ。あいつは怪物なんだ、私達とは次元が違う。このまま放っておいても、飼いならそうとしても、どう足掻いても別次元の存在へと近付いて行くだろう。

何かが引っかかる、だがそれが分からない。どうしてこうも、私は無知なのか…」


「その馬鹿さ加減をカバーするために力を得たんでしょ。元々頭良くないんだから変に考えても答えは出ないよ、どうせ」


「それもそうだな……行こう。返答はまた、会って考えるさ。まだ時間はある、折角ここまで来たのだから楽しもう、二人で」


「うん。そうしよ」


夫婦円満。だがこれがいつまで続くのか、それすらも何も分からない。來花は常に闇の道を歩いてる、いつ踏み外しうっかり死ぬかも分からない。それを京香が支えてくれている。

この生活を崩したくない、心の中で我先にと叫ばれた言葉であった。



第三百四十八話「TIS Ⅱ」

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