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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第十章「突然変異体」
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第三百二十七話

御伽学園戦闘病

第三百二十七話「躾」


「いやまぁ、偶然なんだけどよ……基本接触するなって言われてんだよなぁ…まぁ良いか、秘密にしとけばバレねぇだろ」


「久しぶりですね、須野昌さん」


「おう。タルベ久しぶり、こっちはこっちで結構頑張ってるぜ?そっちはどうだよ」


出て来た山羊を一瞬で蹴散らした須野昌が元生徒会メンバーのタルベと会話を始めた。他の者はあまりの早さに硬直している。だが物凄い霊力を感じ取ったファストと兵助は共に基地内へと飛び込んで行った。


「おお!やっぱ速いな」


「そうですね。取締課の方々が協力してくださっているからこそ、今作戦も遂行できているのです」


「そういやなんでお前らここいるんだよ」


「それは私の台詞ですよ、須野昌さん」


「俺か?俺は普通に魂の事知りたいから地獄の門入ってエンマに頼み込んで来ただけだ。結構苦労したけど…戦果はなーんも無しだ!ほんっとしょうもねー」


須野昌は少しだけ髪が伸びている。学ランは流石に着ていないが、やはりマフラーは変わらず装着している。


「香澄さんはまだ戻って来ないんですか?」


「そうなんだよ。あの馬鹿はまぁいずれ戻って来るだろうけどよ、一旦止めだな。もう時間がねぇ」


「…と言う事はまさか…」


「言わなくても分かるだろ。半年後、それだけだ」


そう言って他の者と会話を始める。と言っても現在そこにいるのは菜園時 時子と大和田 佐伯、そして眠っている櫻 咲の二人だけだ。

まずは知っている時子の方から。


「久しぶりっすね、先生」


「そう…ね。授業はサボってばかりだったけど…大丈夫なの?働いたりしてるの?」


「まぁそこら辺は秘密っすねー、香奈美に色々言われてるんで。まぁ大丈夫だとだけ言っておきますよ。逆にそっちは大丈夫なんすか?なんか薫と絵梨花の霊力無いまま結構な時間経ちましたけど、すぐ最近まで菊もいなかったし」


「それが私達も分からないのよ…」


「まぁ薫は仮想世界すっからね。絵梨花は現世のどっかっぽいですけど」


「そうね…まぁでも半年後には帰って来ると思うわよ?あの人達は自分勝手な行動も多いけど、結局はここぞという場面で戻って来るから」


「そうっすかねぇ……俺ちょっと心配なんすよね」


「あら、何が?」


「もし二人が帰って来なかったら、ですよ。万が一にでも片方帰って来なかったらヤバくないっすか?TIS今滅茶苦茶強いですよ、相棒(ラフレシア)に軽く偵察してもらってるんすけど」


「それはちょっと…頑張るしかないわね。大丈夫よ、あなた達も最大限の訓練をして挑んでくれれば良いから……あ!あと伝えておくわね、大会のルールなんだけど…」


「お、何すか何すか」


「今回から恐らく改定されるの。チームメンバーの最低最大の縛りはなくなって、トーナメント制は廃止、それぞれのチームが戦いたい相手を決められるらしいの」


「…それこっちとしてはありがたいっすけど、外の連中が許しますかね?俺らってただ勝つじゃ駄目でしょ?外の連中に多少は媚び売らなきゃいけないのに、そんな一方的なやり方したら…」


「私達もそうは言ったんだけどね、理事長が断固として話を聞き入れてくれないのよ」


「理事長がっすか?」


「そうなの…だからまぁ安心して、何か考えがあるんだと思うわ」


「そうっすね。んじゃ気を付けてくださいよ」


「えぇ、そっちもね」


時子との会話も切り上げ、最後は佐伯だ。急襲作戦時に一応顔を合わせた事はあるので名前ぐらい知っている。


「お前は確か[大和田 佐伯]だよな?」


「あぁ…はい…」


「なんでお前がいるんだ?」


「今回の作戦は僕ら突然変異体(アーツ・ガイル)を引き入れる為の交渉なんです…僕らは基地内の[英 嶺緒]という突然変異体(アーツ・ガイル)の能力者を救出したいんです」


「あーはいはい、そう言う事か。んじゃお前殺すわ、悪く思うなよ」


須野昌は急激に態度を変え、拳を振り上げた。すぐにタルベと時子が止めに入ろうとするが、騒ぎで目を覚ました咲がそれを止めた。だが須野昌も一旦攻撃の手を止める。そこで咲が訊ねた。


「お久しぶり…というのはどうでも良いですね。何故、殺すのですか」


「それはな、こいつが…」


その瞬間、須野昌は地面に叩きつけられた。二人のペットによって頭を抑えつけられたのだ。それは本来青年がやるべきなのだが、薫に殺されて回復期間に入っているので仕方無く双子鬼がやっている。

両者物凄い殺意を放ち、言葉を発さずとも何を言いたいかを伝わらせた。須野昌が手をヒラヒラと、降伏するようなジェスチャーを行うと拘束を解き、何処かに行ってしまった。

その場にいた四人はあまりの殺気に恐れ戦き、言葉が出なかった。


「悪いな、言えねぇわ。守秘義務的なあれがあんだ。だからここで、お前を殺す。理由は聞くなよ、もっかい見たくはねぇだろ、あの殺気」


そう言いながら再度攻撃をしようとすると、また双子鬼が頭を抑えつけた。そして赤い方が口を開いた。


「だから今のお前が干渉する事がダメなの!」


「ダメなんです!」


「…んー!」


再度手を挙げ、拘束を解除してもらった。まだもう少しだけ話すつもりだったのだが、双子鬼がそのまま須野昌を連行してしまった。数秒後、タイミングが悪くファストが兵助、翔子、兆波の三人を連れて戻って来た。

とりあえずタルベが全てを説明する。


「僕も話したかったのにー入れ違いかー」


「んー…運悪いわねぇ…香奈美とかどんな感じなのか聞きたかったのに」


「まぁしょうがないな。とりあえず俺はもっかい突入する、タルベ、もう戦闘しても大丈夫なんだよな?」


「はい。大丈夫ですよ。ただ、理事長の指示を聞く限りは基本的に撤退方針を取っているようですが……何か聞いていませんか?」


「分からないな。少なくとも俺は何も無い…まぁ俺が何を考えて仕方無いから、とりあえず行って来るわ!翔子はそこで待ってた方が良いぞ!兵助もな!」


兆波が二人は待機するよう言い終わる頃には、もう姿は見えなくなっていた。あまりに一瞬に様々な出来事が起こり過ぎたからか、翔子は少し疲弊している。

休むよう兵助が促すと、それに甘えるようにして翔子は少しだけ寝る事にした。


「お疲れ」


丁度翔子が寝たタイミングで躑躅を抱えた四葉が帰還した。


「お!躑躅!怪我してるっぽいからとりあえずこっちへ!」


「はいはい。私も軽く怪我してるから、治して」


「分かった。とりあえずそこ座ってね」


二人の回復をちゃっちゃと済ませると、立て続けに帰って来た。ハンドが虎子とベロニカを連れている。回復をさせながら、ハンドが状況を説明した。

ここにいる皆は大体把握しているが、中にいる者はそうは行かないだろう。


「私は皆さんへ『阿吽』を行います。集中するので緊急出ない限り話しかけないよう新たに帰還した人にも伝えてください」


「分かりました。よろしくお願いします」


兵助が伝える係を任せられた。ハンドは名指しはしなかったものの、明らかに兵助の事をガン見しながらそう言っていた。恐らくは釘を刺したのだろう、理事長は絶対に兵助を前線には出したがらなかった。

現在の指揮官は理事長である。なのでその意向に従うため、少々身勝手ながらも兵助を実質的にここに留めさせる役目を与えたのだ。非常にシンプルだが、責任感が強くなって来た最近の兵助を相手にするにはとても簡潔で的確なやり方だ。流石取締課の最年長としか言いようがない。ハック、パラライズ、ファスト、この三人を従えるためにはこう言った工夫も必要だったのだろう。


「とりあえず僕らは回復に徹しよう。恐らくここからは撤退してくる者が複数出てくるはずだ、ファストが連れて来る中には致命傷を負っている者もいるはずだ。タルベも時子先生もある程度の霊力消費を抑える様、お願いしますね」


「分かっていますよ、兵助」


「大丈夫。私も分かってるから」


一応の確認を済ませた所で咲がしっかりと立ち上がった。先程まではまだフラフラしていたのだ。


「何か…引っかかると思っていたのですが…ようやく分かりました……」


「咲ちゃん!ダメだって!」


四葉が寝かせようとするが、無理にでも腕を振り払い、話しかける。申し訳ないがハンドにも連絡を一時中断してもらい、話を聞いてもらう。まだ顔が蒼いがそんな事気にしない。


「ずっと考えていたのです…何故重要幹部は待機していたのか。あれはやはり加入する四人の試験だと判断するのが妥当でしょう、來花に関しては出しゃばっただけです、私が保証します」


その言葉はあまりにも重かった。來花を殺す為に誰よりも來花に詳しくなった咲にそう言われると何も言い返せない。ひとまずこの場にいるものだけでもその思考は受け入れる事にした。


「そして主力部隊が佐須魔と交戦しだした辺りで待機していた者が急激に動き出した理由、それは単純に試験が終わった、又は"第二段階"に入ったと考えべきです」


「第二段階?それはどういう…」


「私は基地内に入って常に違和感がありました。ここ本拠地は確か、上のトップ何割かの能力者は滞在を許可されているはずです。ですが感じたのは重要幹部とシャンプラーに伽耶のみでした。

恐らくはTISも本気を出して来るのでしょう、裏切り者が居た場合大会の時にでもとんでもない妨害が出来てしまうはずです、武具を全て破壊しておくなど。他にもあります、下の下っ端は仲間ではありますが主な目的としては集金。なんだかんだTISに入っている者は多かったですからね…なのでもう金を集める必要は無くなった、なりふり構っていられないのですよ。TISも。

そして話を戻すとそのなりふり構っていられない状況でたった一段階の試験で加入を許すのか、という点です。私はそうは思いません、何段階かに分けて総合的な実力を測ったりすると思うんです。なのでここは第二段階、最悪のケースを追う場合はそう考えても良いでしょう。

そして私は常に最悪のケースを考えるようにと様々な人に教えられて来たのでそっちのルートで考えますね……」


「うん、それでいい。教えた通りだ」


「第二段階は他の重要幹部がいる中で発生しています。特別変な試験でなければ殺した数や特定の人物を殺す事が目的でしょう。数であれば大した問題ではありません。

一番の問題は特定の人物の場合です。全体への『阿吽』の数で明らかに戦闘数が減少しているのが分かります、結界の展開もほぼ無いと言って良いです。

なので現在は戦闘を避けている者が少数ながら存在していると言う事になります。するとどうでしょう、それは試験を行っている四人だとパッと思い浮かぶはずです。

更に踏み込みましょう。何故戦闘が起こっていないのか、それは恐らく…基地内にいる者が獲物(ターゲット)では…」


そこまで言いかけた所だった。入口付近で警備を任されていた生良が吹っ飛んできた。すぐにそちらを見るとそこには、一人の男が突っ立っていた。

巨大なハンマーを手にしている。


「やはり…そうでしたか…後方支援部隊の中にいるはずです。兵助さんとタルベさんは生良さんの回復をお願いします。現在戦えるのは私、四葉さん、佐伯さん、ハンドさんのみです。

相手は[松雷 傀聖]、唯一の新加入希望者です。能力は『武器の生成』と『硬貨の爆発』です。軽く戦った感じでも相当なセンスがあるので、協力していきましょう」


傘牽もあまり良い状態とは言えないし、他のメンバーの霊力だってそう残っている訳では無い。万全なのは佐伯のみなのだ。それでもやるしかない、現在ここに残っている後方支援部隊のメンバーは[沙汰方 兵助][菜園時 時子][タルベ・カルム][大和田 佐伯]の四人。

まずするべきは、誰が目的かだ。



第三百二十七話「躾」

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