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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第九章「干支組」
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第二百八十一話

御伽学園戦闘病

第二百八十一話「冷酷無比」


(シン)!こっちに来い!!」


言われた通り木の上の方へ逃げた。するとライトニングは剣を振りかざしながら正面へ移動して来た。あまりにも速い、普通に考えて人が出せるスピードでは無いのだ。

驚く間もなかった。だが実質的に本体である砕胡が致命傷をもらう事は避けなくてはいけない事だ。なのでとっさに神を肉盾にした。


「邪魔だ」


するとライトニングは剣に紅い雷を纏わせ、そのまま斬りつけた。神の体はおおよそ七割が霊力で構成されている。そのためギアルを使っていても中々斬れる事は無く、霊力を無理矢理流し込む事が出来る生身の拳などが一番効くのだ。

なので今回も同じ様にある程度のダメージで収まるだろう、そう考えて砕胡は身を動かさなかった。だが次の瞬間、痺れるような激痛と共に胸部から血が噴き出した。


「紅剣は霊力が多い者への特攻、そして蒼剣は霊力が少ない者への特攻。斬っている最中にも変化させる事が出来る、その特性上不利な対面に持ち込まれることは、断じてあり得ない。私が何故最強なのか、砕胡には分かるだろう」


「能力だな」


「あぁそうだ。あくまでもその力はこの剣に宿されているものであり、私自身のものではない。なら私の能力は何か、隠し必要も無いから言ってやろう。『霊力操作』だ。だがこの操作の意味は体内の霊力では無く、空気中にある霊力"全て"の事を指しているがな」


ライトニングが能力を発動する。その瞬間周囲に蔓延していた霊力が一斉にライトニングの剣へと集中した。そしてライトニングは叫ぶ。


紅剣(こうけん)・ライトニング-紅雷斬(ここうらいざん)


抵抗する間も与えられず、二人の傷口へ侵入していく雷が落ちた。だがその雷はライトニングの剣から発生している故に多少の自傷ダメージはある。

だがそれを踏まえてでも使った方が良いのだ。何故ならその雷はただの雷ではなく、完全に霊力で構成された雷だからだ。本来霊やそれに準ずる妖術などで生成されるものには体力が付属し、威力が落ちる。だがこの雷はロッド術の光線の様に完全に霊力でしか無いもの、そしてライトニングは霊力を操作する事が可能なので不可避の麻痺効果を持つ雷撃なのだ。


「ただこれだけではない。私の剣や雷に触れた者は帯電していく。その結果何が起こるか、霊力の拮抗は勿論私がその霊力を操る事が可能になる」


解放・羽枷(かいほう・はかせ)


「この術はその中では最弱に等しいものだ。だがお前には相当辛いだろう、砕胡。何故ならこれは人の道を外れ、尚且つ神にはなれていぬ者に効くからな。佐須魔の為に作り上げたのだが…他にも数人には使用しても問題は無い。どんな痛みだ?來花によると内側を喰われていく感覚のようだが」


余裕綽々、敵の状態さえも聞き出そうととするほどの圧倒ぶりだ。だが砕胡もこの程度の痛みは(シン)が怪我をするたびに感じているので狼狽える理由にすらならない。

痛みに悶えながらもその心を抑え込み、顔を上げながら返答をした。


「この程度の痛みには慣れている。これのおかげでな」


そう言いながら腕に刻印された忌々しい文様を見せつけた。神と共同体である証だ。


「それよりもお前は、自分の心配をした方が良いぞ。霊力を操作して浮遊しているのは良いがそんな事をしていたら、空気に触れる面積が増えるぞ」


砕胡は急所を作り上ようとする。だがそれを見越していたライトニングは自身の部下であるはずのハンドを霊力操作で持ち上げ、その影に完全に姿を隠した。

だがハンドは対策をしていない。そして意識もある、砕胡は急所を作る事をやめない。ただし少し恐怖する、何故いつも通りの腑抜けた面で死を前にしているのか。


「本当にやめたいですね。あなたの部下は」


何もおかしい事は起こらず、ハンドは盛大に血を吹いて気絶した。そして姿を現わしたライトニングは返り血を浴びながらも構わず突撃した。

そして能力を発動する間も与えずに斬りかかる。だが神のサポートによって何とか砕胡は回避に成功している。そんな時ライトニングは口を開いた。


「私が何故能力取締課の課長を強制的に任せれたのか。課長と言うのは責任が重くどんな者であろうと少し性格が矯正される。私自身自覚は無いのだが、どうやら上の評価として私は"部下を躊躇なく切って行く残虐な能力者"らしい。薫や絵梨花と違い、理性の無い化物だと比喩されているのだ。

納得は行かないが、不満も無いさ。そのおかげで、こうして昔の仲間を斬り殺せるのだからな」


『|紅剣・ライトニング-紅雷斬(こうけん・ライトニング-こうらいざん)』


回避は意味を成さない。なので砕胡は動きを止めて、急所を作る事に集中した。痛み分けだ、それならば次第に追い詰められるのはライトニングのはずである。そう思って。

だがライトニングには急所が作れなかった。普通の場合感触があり、急所を作った事は感覚的に分かるのだ。だがそれすらもない、発動前に無効化された、その表現が一番しっくり来るのだ。

だが実際は違う。発動はしているのだ、霊力はしっかりと消費されている。


「お前如きには到底理解できない事象だろうな。何故ならお前は霊力に目を向け過ぎた結果、体力の事を全くと言っていい程知らないからだ」


「なに?」


「佐須魔や薫、更には透や伽耶などの研究者でさえもこう例える。霊力は(マイナス)であり、体力は(プラス)だと。これは明確じゃ決まりは制定されていないからどちらでも良いのだが、恐らくは霊という言葉が付くからマイナスのイメージでもあるのだろうな。

そして霊力は攻撃に使われる。未だ何故念能力などが痛覚へと結びつき、身体に影響を及ぼすかまでは解明されていないが言える事はある。攻撃の反対である体力は回復だ。

体力とは霊力の生成や意識的な活動の維持だけではなく、体の修復にも必須だ。回復術は恐らくここら辺を主に操る術なのだろう。そして私は疑似的にそれが可能だ。

まず霊力と体力は基本的に2:8の空間を保ちたがる習性を持つ。なので私はまずすぐそこにある霊力を少しだけ伸ばす感覚で周囲に広げる、その後に一気に圧縮する事によって体力が逃げの姿勢を取り始める。そこに傷ついた私が入る事によって体力は私によって吸収され地道だが大胆に瞬時の回復を行うのだ……すまない、時間をかけてゆっくりとしか理解できない字頭の悪い"秀才くん"には少しペースが早すぎたかい?」


実際あまり理解できていないのは事実だ。だが砕胡はその言葉が本当に嫌いだ。ただ自分は昔から人より物覚えが悪く、要領も悪い。なのでそれに対抗する為に何十倍も努力して来ただけだ。

なのに争う事を望まぬ天才と比較され、馬鹿にされるのか。それが理解出来ないだけなのだ。


「いい加減にしろよ、馬鹿女が」


「黙らせたいのなら、力でそうしろ。多少の年齢差はあろうとも、お前ぐらいの年齢ならば"普通"は成人女性より強くても全くおかしくないはずだぞ?」


元仲間と言う事もあってか滅茶苦茶嫌な所を突いて来る。砕胡のコンプレックスがそう言った比較される事そのものだという事ぐらいとうに知っているのだろう。

だが何も言い返せない。幼少期天仁 凱から(シン)へ変化させるために諸々を吸われたのだと言っても負け惜しみにしか聞こえない。だからと言って何か言い返しても事実から目を背けているだけの愚かな人間。正に八方塞がり、だから嫌なのだ。


「いい加減にしろと!!言ってるだろうが…」


「言ったはずだ。帯電すると。最大級をぶつけてやろう、これは佐須魔に対してもそこそこ効いたぞ」


『解放・紫電』


一瞬にして砕胡に襲い掛かる紫の電気達。それは凄まじい力を持ち、体を破壊していく。終わりだ、これは避けられるなどという次元ではない。何故なら視覚で確認した時既に、置き去りにされている。


「話にもならないな、砕胡」


気絶し、木から転げ落ちた。すぐに神が受け止める為に飛び降りた。だが次の瞬間視界に入ったのは切断された自身の下半身だった。


「うおおおお!!!」


二人で落下、そのまま降って来るライトニングにやられて終わりか。そうも悟ったその時、一人と実質一人分の二つは掴まれ、引っ張られた。結果ライトニングの攻撃を避け、引き寄せられる事となった。

そこまで速度が出ていたわけでも無い。だがその者がやったとしたら相当速くなっている。正体は触手である、そうシャンプラーだ。


「危ないですね。帰りますよ、勝ち目無いので」


良い判断だ。ここで無理に突っ込んだりする力も度胸も無いので重要幹部には上がれないが、上のトップ三位には常に入り込んでいるのだ。その慎重さと、稀に見せる大体ば行動によって引き起こされる困惑。そして触手の立体起動による俊敏性、ファストがいない現在だと追いつける者は、誰一人としていないのだ。


「それでは後ほど」


そう意味深な言葉を残して、シャンプラーは飛んで行った。ライトニングが追い変えようとすると兵助げ全力で引き留めた。


「何してるの!?なんでハンドを盾なんかにしたんだ!」


すると何故怒られているのか本当に分かっていない様子を見せる。


「何故…?すまない、少し意味が分からない。こういった場合先に死ぬのは上司では無く部下だろう?」


「そう言う事じゃないよ!!部下とか上司とか関係無いって言ってるの!!」


「そ、そうか…すまない。肝に銘じておこう。ならば一つ聞きたいのだが、何故唯唯禍の霊を盾にしたのだ?」


「そういう話はしてないから…あと別に死んでもいい前提じゃないし…やっぱ伊達にTISやってた訳じゃないんだな…」


「…?それは誉め言葉なのだろうか…?」


「もういいや……とりあえず回復はさせておいた。ファストと桃季と鶏太、それに生良も帰って来てない。急いで回収して…」


ライトニングに命じようとした時だった。ニアが気絶してる皆を放り投げた。


「回収してきましたよ。それじゃあ私は別の用があるので、失礼します」


呼び止める隙も無く、ニアは姿を消した。仕方無いので皆の回復を済ませ、一つ気になっていた点を追及する事にした。ただしライトニングはたまたま通りかかっただけだったので任務に戻るため行ってしまったが。


「シャンプラーは確かに言った「それでは後ほど」って。これって今日、それか日付が変わる辺りにでももう一回来るって事じゃないかな。だとしたら次で決めなきゃ僕の霊力が無くなって全滅だ」


「どうすんのよ!!シャンプラーってやつめっちゃ強かったわよ!!」


「…僕らの目的は干支蛇を手に入れる事だ。そこで一つ思った事がある、なんで砕胡達は攻撃をしかけてきたのかって事だ。シウの事が筒抜けになっていたとしても別にわざわざ攻撃を仕掛けるまでの事じゃないと思うんだ、別にTISだって干支蛇の居場所は知りたいだろうしね。

そこで辿り着いたんだけど…もしかしたらTISって干支蛇の居場所知ってるんじゃないかな…」


「確かにありそうですね。ただその場合僕達に勝ち目はあるんですか?シウさんの為に必要なのは分かりますが…見え透いた罠に特攻するようなものじゃ…」


「そうだ。だけどね、やらなくちゃいけない時ってのがあるんだよ。薫や絵梨花がいない時点で僕らは多少の運任せは必然的な事になってしまう。だからここでその運ゲーを当てて、楽に勝利を収めようって話なのさ」


「うーん……まぁ分かりましたけど…」


「だけどね、流石にそれだけじゃ不安なのも分かる。だから今までのTISの行動を見て僕は少し有力な説を立てたのさ。簡潔に答えだけ言おう、これも盗聴されている可能性があるからね。

僕は干支蛇を[翔馬 來花]が所持している霊である[口黄大蛇]だ、そう考える」



第二百八十一話「冷酷無比」

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