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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第九章「干支組」
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第二百六十八話

御伽学園戦闘病

第二百六十八話「密かな対談」


兵助はひとまず図書館にでも向かおうとしていた。だが道が分からず、マップアプリとにらめっこしながら進む。だが最近まで島で暮らしていたので中々慣れず、戸惑っている。

本来より十五分程遅れてようやく到着した図書館、思っていたより巨大な建物で驚愕してしまう。今まで千代田区にお世話になったことは無いので少しワクワクして来た。


「さて…歴史とかかな…まずは」


一般人より少し多い程度の知識では分からない事だ。まず前提として明記されているとは限らない、それどころか情報一つも掴めないかもしれない。

それでも重要な事だ、しっかりと探す。ただどれかの本に絞っていても見つからないだろう、と言う事で軽く目を通す程度にして大量の本を読み漁る事にした。


「どうやら同じ目的のようだね、引かれ合う。隣、座らせてもらうよ」


二時間程経っただろうか、青年にそう声をかけられた。顔を上げるとそこには知っている顔があった。


「どうも。でも何してるんだい、もう閉館してるよしてるよ」


よく見ると電気が消えてしまっている。そんな事にも気付けていなかったようだ。


「君は!コールディング・シャンプラー!?」


「そう焦らなくていい。今回僕の任務は探し出す事だ、戦闘ではない。言われていない事はやらない主義なんだよ」


警戒して読む手を止めたがシャンプラーも本を漁っているだけで殺意などは全く感じ取れない。次第に緊張もほぐれて来る、そもそもシャンプラー程度なら勝てる可能性だってあるのだ。無駄に恐れる必要は無いだろう。


「何か収穫はあったのかい」


「僕は無いよ。二時間ぐらい読み漁ってるけど…やっぱ能力者事なんか全く記されてないね」


「そうか。ならこの本で終わり……」


言いかけ、言葉を詰まらせる。そして眼光を大きく開き、一言一句逃さぬよう脳裏に焼き付けている。兵助は何か有益な情報があったのかと覗き込む、するとシャンプラーと同じ行動を始めた。

何も言わず、息すらも忘れ言葉を頭に刻み込む。全てを覚ると二人は呼吸を再会した。


「本当に……あった……」


「そうだね……あったよ……」


「さて、目標は達成した。だが少しだけ疲れている。本を棚に返して来い、話をしよう」


「何についてだい」


「今後のTISについてだ。お前は遅かれ早かれ伝わる、どうせ変わらないさ。ならば今の内に話しておく、どうせ見当が付いているだろうしな」


「…分かった」


兵助は机にため込んでいた大量の本を全て棚に返した。その往復だけで五分も使ってしまう。自分で思っている以上に集中してしまっていたらしい、稀に起こるのだが良い点でもあり悪い点でもある。

ひとまず全てを返し、席に戻る。するとシャンプラーは対面するよう席を変えていた。兵助も座る。シャンプラーは早速切り出した。


「これからのTISは変化していく。既に何百人の下、上の者が脱退した。だがこれは本意では無く、危険だからだ。これ以上TISに関わっているとお前達学園側に殺されてしまうからな。

だが大して戦力が落ちたわけでも無い。経済的な負担も無い。そこら辺は説明しないが……これからどうなるかを説明する。TISはある目標を掲げた」


「目標…?」


「その目標とは『佐須魔の神化』だ」


「なにっ!?」


「叉儺の長年の研究によって通常の霊の神化は果たした。まぁ特殊な条件下でしか出来ないせいで量産は無理だがな……そして次に目標にするべきは佐須魔の神化だ。真のボスは未だ姿を見せない、それ故に佐須魔が強くならならなくては負けてしまう。

次第に動き出すだろう。教師も、干支の奴らも。それまでに我々は人の域を踏みにじり、上位存在になる。覚えておけ沙汰方 兵助、お前に神殺しは不可能だと言う事を」


直後出現したゲートに身を投げ、姿を消した。


「神……僕らは…神を殺す力をつけなくてはいけないのか……」


先が見えない。紫苑は恐らくはラックの力で勝った。だが逆に言えば誰かを喰って強化を受けなくては完成した間もない神さえも殺せないという事だ。

あまりにも敵が強大すぎる。もしややるべきなのは対策では無く、敗走の準備なのかもしれない。そう思ってしまう。


「…いやいや、婆ちゃんのためにも引く訳には行かないだろ!」


気合を入れ直し、図書館を出た。鍵がしまっていたので仕方無く窓から飛び出した。


「やっぱ夜でも人はいるもんだね、島に比べると」


歌舞伎町やらよりは少ないが、島に比べると沢山の人がいる。スマホで時間を確認すると日付を越した辺りだった。数時間前まで佐須魔と対峙していたとは信じ難い事だ。

とりあえずオフィスに戻る事にした。だが道中で皆帰っているかもしれないと考え、道を変えようとする。


「おい、兵助」


「あ、ライトニング」


「行くぞ。遅いと思ったらこんなとこで油を売っていたのか」


「ごめんごめん。でも予想より早く見つけられたよ、情報」


「そうか。それは良かった。こちらもいい知らせがあるぞ」


「ほんと!?」


「干支組の所在を割り出した。ただハックは霊力を使い切って凄い事になっているから同行はさせられない、引き続きファストは行ってもらうが……代わりとしてハンドに行ってもらう事にした」


「分かった。というか今からオフィス行くの?」


「何を言っている。私達は全員あそこに住んでいるんだぞ。支給される金が少なすぎて家なんて借りられない。まぁ問題はないさ、上の連中はオフィスに踏み入ろうともしないから好き放題しても基本何も言われないからな」


「へー。やっぱそう言う所は普通の能力者の扱いと同じなんだねー」


「…あぁ、そうだ。さぁ着くぞ」


夜間警備員に通行券を見せ、エレベーターに乗り込む。久しぶりに見たライトニングは少しだけ大きくなっているような気がする。


「伸びた?身長」


「……まぁな。これ以上伸びても困るだけなんだがな…」


「まぁ僕よりデカいしね。何センチだっけ」


「180はある。最近は忙しすぎて測ろうとも思ってないな、あとで測ってもらおう」


「なんだかんだ言いつつ凄いデカいね。島のみんなって結構栄養不足だったりで身長低い子多いじゃん、特に本土で生まれた子とか。でもライトニングってデカいよね」


「遺伝だ遺伝。うろ覚えだが親がデカかったはずだ」


「僕ももうちょっと欲しいなー後5センチあれば夢の180突入だよ」


「まぁお前はこれ以上伸びないだろうな。コールドスリープなんてしていたから成長が止まっている」


「…え?」


「さぁ着くぞ」


扉が開く。するとそこにはハンド、ファストと仕事をしている乾枝の姿があった。


「おかえり、兵助君。何か良い情報はあったかい?」


「あぁ。頼まれ事は終わったよ、それでハックは…」


探り出してくれた事に感謝を伝える為視線を向ける。するとハックは椅子の上でだらんと力を抜き、生気の無い顔でボーっとしていた。霊力を使用し過ぎて体が動かないのだろう。

お礼は後にして、何処で見つかったのか聞く。すると乾枝が口を開いた。


「伊豆、それは合っている。そして工場地帯付近なのも合っている、だが少々厄介な所にいる。海の中だ、何らかの術か能力を使用して海の中に拠点を作っているらしい。

ただ海に飛び込んで行っている所までしか捉えていない。だから手探りになってしまう」


「いや、充分だ。ハンドさんが来てくれるんですよね?」


「あ…はい…」


「それなら大丈夫ですよ。手で海中を探索して貰えば良いですから」


「あのー……申し訳ないんですが……私の手は塩を浴びると死んでしまうのですが……」


「え?塩?なんでですか?」


「企業秘密です…ただ無理なものは無理なので別の方法を探してください…私は眠たいので寝ます……」


恐らく明日から出動し、ハンドは激務になるだろう。そのため誰も文句は言わなかった。それよりも乾枝と兵助だけでも良いので手段を探さなくてはいけない。


「あれ、ファストちゃんは何処に?」


「ファストは個別の任務があるとかで出払ってますよ」


「分かった。じゃあ僕らだけでも作戦を立てようか」


「済まないが私も別の仕事がある。今回のリイカ襲撃の際の始末書も書かなくてはいけない、一足先に寝させてもらう」


「おやすみ、ライトニング」


ハックは実質的に寝ているようなものだ。となると二人しかいない、パラライズは今日は帰って来ないとホワイトボードに記されていたので来てもファストだけだ。


「さぁ、練ろうか。彼らは厄介だよ、特に[神龍宮(シンリュウグウ) 桃季(トウキ)]と[シウ・ルフテッド]はね」


「大丈夫ですよ乾枝先輩。僕には、策がありますから」


「聞かせてもらいましょう」


「彼らの仲間には[兎波 生良]君がいますよね。紫苑が工場地帯で連れて来たって子」


「はい」


「なのであの子を利用します。といっても元々引き渡す予定では無く、無理を通して渡して上げたのですから今無理矢理恩を作り上げその場で返して貰っても何も文句は無いでしょう」


「…成立しますかね。それ。私が思うにシウは頭が切れる男だ、一筋縄では行かないことぐらい分かっているのですが…それ以上に厄介なのは桃季の方なんですよ。

彼女の干支辰は非常に強力で、そこら辺の神話霊を蹴散らす程度には強いんですよ。私は長期遠征の際に一度だけ見た事がありますから、その実力については保証しますよ。

そして一番の問題点、彼女クソが付く程バカ、クソバカなんですよ」


「へ?」


「少女というのもあるのですが…恐らく小学校にも通っていないようでして…シウと干支鳥の青年で勉強"は"教えているので学力自体にそこまで問題は無いのですが……学校で学ぶもう一つの事、協調性です。

彼女は悪く言えば自己中、良く言えば元気な子なので……私でも手に負えるか分からないんですよ」


「ふむ……でも学力に問題が無いのなら何とか成る気もしますけどね…話は理解出来ると言う事でしょう?」


「そうですね。ただ一度接触した際に異様な警戒心を抱いている様に見受けたので……心の壁を作られてしまう気がしますね。干支組を引き入れる為には桃季を説得する事が必須条件です。シウや他のメンバーはそこまで問題ではない、私はそう考えます」


「話を聞く限り何か問題があるような気がしますね。過去に何か…」


「捨て子、それに加えて能力の操作が下手だったために右眼球粉砕、完全に傷は治っていない。そのせいか知らないけどね、精神面が凄く貧弱。だから強く見せてる」


ファストが帰って来ると同時にそう伝えた。


「おかえり。その情報、本当?」


「うん」


「それなら良い事考えた。先程の言った策、確実なものになりましたよ。とりあえず寝ようか、みんな」


「おっけー」


「分かりました」


ハックにも毛布をかけて、三人も仮眠室で眠る事にした。出動は明日だ。まずは第一段階、基地の捜索からだ。



第二百六十八話「密かな対談」

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