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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第二章「襲撃」
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第二十五話

御伽学園戦闘病

第二十五話「目覚め」


流がどこに行くと聞くと蒿里は適当に最初の部屋に行くと言う。小走りで部屋に向かいながら蒿里はさっき何があったかをゆっくりと丁寧に話し始めた。流は静かに蒿里の話しを聞いていた。


「薫先生も言ってた僕の暴走って何なんだろう…」


「分からない、分からないけどあの時の流はいつもの流じゃなかった」


「僕も記憶がないんだ。ラックと水葉さんと一緒に棘に刺されてから…」


「あの時の流も周りの霊圧は100%だった。あれが出来るのは[翔馬 來花]とか[佐須魔]レベルじゃないと出来ないはずなんだけど…」


それを聞いた流は自分が強いのかと喜ぶが蒿里はやんわりと否定する、流は少ししょんぼりとしてしばし気まずい空気が続く。黙ったまま歩みを進めていると後ろからラックが呼びながら近付いて来る。


「おい!お前らTISの誰かと会ったか?」


「TIS?いなかったよ」


ラックは「じゃあ兵助がいる部屋にいるだろう」と言う。二人はクアーリーを倒したのだからもう居ないだろうと言うがここはTISの基地かつ兵助と言う強い駒をそう簡単に渡すわけが無いと説明した。二人は納得し警戒する事にする。

そしてラックがどこに向かっているのか聞くので流が最初の部屋と答えるとラックはそこが正しいだろうと肯定した。


「あそこが実験施設だ、多分兵助でもなにかやっていたんじゃないか」


「とりあえずもう少しだよ」


少しだけ警戒心が薄れてきた頃、最初の部屋に着いた。

だがそこにいる三人は違和感を覚える。その違和感の理由を探るため部屋を見渡してみるとラックが気付く。


「壁の機械が一個を除いて停止しているな、しかも部屋の明かりが点いていなかったはずなのに部屋が明るくなってるな」


「水葉とかが来た時に点けたんじゃないの?」


「水葉や他のやつらもここに来るのは初めてのはずだ、初めて来たのに薄暗い中電気のスイッチを押せると思うか」


「それも…そうだね」


「とりあえず誰もいないっぽいしあの装置見てみようよ」


三人がゆっくりと周りを観察しつつ唯一稼働している装置の前まで歩く。装置は何かを凍らせる様な機械でその装置の周辺は冷風が漂っている、蒿里が何を冷凍しているのかを見てみようと蓋を開けようと取手に手をかける。ほんの数ミリ蓋を開けた瞬間、蒿里は腕に冷たい感覚を覚える。冷たくなった部分を見てみると、血管が浮き出てくるほど細く、血が通っているのかすらもわからない程真っ白い手が蒿里の右腕をがっしりと掴んでいた。

その手を見た蒿里は腕を振り払い、ラックの近くまで行った。


「何が入っていた」


「そ…そんなことより!誰かの腕が!私の右腕を掴んでた!」


「何!?」


蒿里が立っていた場所を見てみるとそこには背丈が女性にしては高く、緑の長い髪を後ろで縛り、前髪で右目を隠し、白のブラウスと黒のジーパンの上に白衣を羽織っている女がいた。ラックが誰か聞くと丁寧にも自己紹介をする。


「ん〜?私で〜すか〜?私は〜[霧島(キリシマ) 伽耶(カヤ)]って言いま〜す。(ジョウ)の中で一番を争うぐらい強いんですよ〜」


「そうか、ところでその冷凍されているのは何だ」


「あ〜これは〜あなた達の〜お仲間ですよ〜」


「痛い思いをしたくないならそこを退いて兵助を渡せ」


「それは無理ですね〜佐須魔さんに逃げるなって言われてるんですよ〜」


ラックは蒿里と流に戦えるか聞く。蒿里は問題ないが流はスペラの応答がない。だが肉弾戦とインストキラーは使えるので全然戦えると答える。それを聞いたラックが戦闘体勢に入った瞬間戦闘する意思があると判断した伽耶が先手を取る。


「じゃあ行きますよ〜。ぽ〜い」


そう言い伽耶は白衣のポケットから出した何かをラック達がいる方に向かって投げた。伽耶はニカっと笑いながら下がって行く、そして投擲物からはモクモクと煙が出て来る。その煙が部屋を満たした。ラックはその煙が何かを匂いで察知し、流と蒿里の口と鼻を塞いだ。


「少し耐えてくれ!」


二人を抱えドアへと向かう、ドアの前まで行くとドアノブに手をかけた。だがラックがドアノブを回そうとしても回らない。蒿里と流がもがき始めた、ラックが呟く。


「これは塩素だ…中毒を起こして動けなくなる…気を付けろよ」


ラックは二人を離した。二人は息を吸う。今は症状がないが直ぐにでも中毒症状が出るだろう、二人ともそれを理解しながら呼吸をした。


「細かくは伝えない…ただ兵助を起こせ…これはただのガスじゃない。霊力を感じるから兵助の能力が意味を成す!」


流と蒿里は頷き兵助が入っているコールドスリープ装置に向かって走り始める。機械までもう少しというところで流の足が痺れ始めた、蒿里は足をついて立ち止まった流を心配する様な動作をする。流は首を横に振った後頷いた。

蒿里は流を置いて装置の方に向かう、もう手が届くぐらいの場所まで行った時蒿里の顔面に蹴りが入った。その蹴りは今にも折れそうな足から想像できない程の力が籠っている蹴りだった。蒿里は他の装置にぶつかる、ぶつかった装置は壊れて途轍もなく冷たい風が蒿里を襲う。蒿里はその寒さから震え始めた。装置が壊れた事で位置がバレたのだろう、震えている蒿里の場所を的確に当てた伽耶が殴りかかってきた。蒿里はなんとかガードをするしか出来なかった、ガードをしている蒿里に高笑いを上げながら連続で蹴りをいれた。蒿里は寒さと痛みと手の痺れを感じながらただガードを続ける。

笑いながら蒿里を蹴っている伽耶が蒿里を蹴るのをやめた。伽耶は向きを変え凄い力で煙の中に拳を打ち放った。その拳はただ煙を掻き分けるだけではなく不意を突こうとしていた流の拳とぶつかり合った、流はぶつかり合った拳を下げる事なく伽耶の右腕を封じた。伽耶は流の方に気を取られていて背中がガラ空きだった、その隙を突いたラックが伽耶の後ろまで音を殺して走り込む。ラックが背中を蹴ろうとしたが伽耶が流の拳と自分の拳を張り合うのをやめ、ラックの蹴りを蹴りで相殺した。流とラックの猛攻を避ける事に徹底する。


「蒿里!早く起こせ!」


ラックが叫んだ、蒿里はハッと思い出したかの様に装置の取手に手をかけた、伽耶は蒿里を止めようとしたがラックと流が無理矢理攻撃を続けて蒿里の邪魔をしない様に妨害をした。

蒿里は手の痺れで力が入らないながら重い、重い蓋をゆっくりと開けた。開けた瞬間部屋中に冷気が漂った。装置の中には兵助が安らかに眠っていり。蒿里は兵助を装置から出してなんとか起こそうとした、揺さぶったりビンタをしたりしたが中々起きない。蒿里は痺れを切らして頭突きをした。すると兵助はゆっくりと目を覚ました。


「ん?…ここは」


「いいから私を回復して!」


「あ…あぁ」


「早く!」


「はいはい」


兵助は蒿里に触れると能力を発動した。蒿里は息を一気に吸った。手足の痺れも取れて完全に回復した。


「流!ラック!どいて!」


蒿里の声を聞いて二人が伽耶から離れた。離れてから一秒も経たないうちに伽耶の体に三叉の槍が刺さる、そして数秒刺さった後グングニールは蒿里の手元に戻った。


「私がやるから二人はこっちに!」


「頼んだ!」


流とラックは兵助がいる場所に向かい、蒿里はグングニールを構えながら伽耶の近くへと向かい交代する。蒿里はグングニールを投げ、伽耶は再び槍に襲われた。グングニールは直ぐに蒿里の手元に戻り蒿里は再び投げる構えになった。


「兵助!流も一緒に回復を」


「この新しいメンバーは後で聞く、とりあえず僕の場所まで来て」


ラックと流が兵助の直ぐそこまで行った、兵助は流とラックに触れ回復をかける。先程の蒿里の様に二人は大きく息を吸い、呼吸ができる幸せを噛み締めた。


「流!あんたは兵助の能力を受けながらインストキラーを!兵助はひたすら流を回復し続けて!」


「蒿里が言うならやってあげよう」


「よろしく」


ラックは蒿里と共に伽耶を攻撃し続けた。伽耶は流の能力が何か知らなかったため蒿里とラックの攻撃を出来るだけ交わすことに専念した。

兵助が流に触れる、兵助が頷いた。流も兵助の方を向き頷いた。そして強く念じながら言い放つ。


『インストキラー』


強く念じた瞬間伽耶の身体の至る所から血が吹き出した。同じく流も血を吹き出したが兵助の回復のおかげで直ぐに傷口が塞がる。


「僕の、勝ちだ」


流がそう言うと瞬間伽耶は白眼を向き倒れた。倒れたと同時に煙は消え、手や足の痺れも全て無くなった。ひとまず回復させるため身を寄せる、兵助はラックと蒿里に触れると能力を発動した。ラックと蒿里の傷ついた部分などが全て治り息も普段通りに戻った。


「とりあえず素戔嗚がヤバいから早く行く!」


「素戔嗚が?」


「とりあえず行くよ!」


そう言って蒿里は先陣を切り部屋から飛び出した。その後にラック、兵助、流と続き廊下を走り出した。全速力で走って一分程経ち戦闘部屋に着いた。蒿里がドアを開くとラックが部屋を出た時から何も変わっていない、ニアが広域化をして、翔子が素戔嗚の時間をスローにして、薫が回復をかけるそのままだった。だが水葉は起きていた。


「よし!兵助!早く素戔嗚を!」


「…薫だ」


「いいから早く!」


「分かった」


「翔子!時間を戻せ!」


翔子は指示通り素戔嗚の時間を元に戻し、素戔嗚から離れた。兵助は直ぐに素戔嗚に触れ回復術をかけた。すると素戔嗚の腹部はみるみる元に戻って行く、完全に治ると素戔嗚は目を覚ました。


「兵…助?」


「よっ」


素戔嗚が起きた事に安堵する。ただ止まっている暇は無い、薫はチームBを回復させると言って部屋を出た。兵助は走りながら色々な事を説明してもらう。最初の部屋に入った時ラックと蒿里、流は気づいた。伽耶がいなくなっている。だがそんな事に構っている暇はない、その事を報告せず階段を駆け上がり始めた。全員が地上まで上がった。


「よし、ポメお前は家に戻ってろ」


「きゃん」


ポメはラックの家の中に入って行った。


「終わったら莉子がここに来るらしいから翔子と水葉、蒿里、流、素戔嗚はここに残ってろ。他全員でチームBのところまで向かう!その後チームAの方も見に行く!」


「分かった。ラック達も気を付けてね」


命じられたメンバーはその場に待機して、回復に向かうメンバーは再び走り出した。


「にしても薫変わってないな」


「いやぁ兵助も変わってないな」


「まぁコールドスリープされてたからな」


「お前らなんか関わりあるのか」


ラックが聞くと薫は呼び方を注意してから同級生だと説明する。他の事を話しているとニアが最後方でフラフラしながら走っている、兵助は少し心配になる。


「無理しないでね、お嬢さん」


兵助はニアをお嬢様抱っこして走り続ける。ニアは頬を少し赤らめながら息を整えていた。


「俺の教え子に手だすなよ」


兵助は薫が教師になった事を驚き祝福する。薫が少し照れていると現場に着く。前方には水葉と香奈美を除くチームBが全員倒れていた。すぐに近寄りニアに能力を発動する様言う。ニアは行きますと言ってから広域化を発動した。兵助は驚いた様に


「広域化かぁ」


と呟く。そして兵助は一番怪我がでかい光輝に触れて回復を始めた。ニアの広域化のおかげで全員に回復がかかる、数十秒回復をかけていると一斉に全員が目を覚ました。


「…兵助先輩」


「…まさか真澄か?」


「うん」


「おぉ!数年ででっかくなったな〜」


「うん」


兵助は真澄の頭を撫でながら懐かしそうに真澄を見ていた。


「真澄は兵助のこと大好きだもんな〜」


薫がニヤニヤしながらからかうとさっきの可愛い真澄の面影はなく般若の様な顔で薫を睨んでいる。薫はそんなこと気にせず全員に「チームAのところに行く。莉子がそのうち来るだろうから待機していろ」と伝える。そして薫はラックとニア、兵助を連れてチームAのいる南方向へ再び走り出した。


「にしても真澄先輩、兵助先輩を…」


「それ以上言ったら手と足の爪全部剥がすわよ」


真澄は光輝に威圧をかけた。光輝は青ざめ冷や汗をかき小さい声で謝った。

そんな微笑ましいやりとりをしている時間は午前十時を回っていた。


午前10時 チームAは壊滅した



沙汰方(サタカタ) 兵助(ヘイスケ)

能力/念能力

粒子レベルに残っている生命体を回復できる(霊力攻撃の場合)。軽い傷なら回復できる(物理攻撃の場合)。

強さ/ありえない回復力


第二十五話「目覚め」

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