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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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第二百二十二話

御伽学園戦闘病

第二百二十二話「破壊神の力」


シヴァから溢れ出す殺気と霊力、だがそれに怯えることは無く、絶対に目線は外さない。ただ一定の距離は保ちつつ指示を出す。


「雑魚や弱い攻撃は漆に任せる、出来るか?」


鳥霊は頷き、飛び立った。佐須魔と同じ高さまで来ると大きく口を開ける。そして香奈美が唱えた。


『妖術・遠天』


美玖とは違い一瞬で装填は終わった。そして放たれる小さな一撃、その弾は当然の如く浮遊しているシヴァの元へ飛んで行く。だが着弾するかと思われた間際で爆発した。

本来そんな挙動はしないはずだ。だが実際に爆発四散、無くなった。すぐにそれがシヴァがやったのだと理解できる。だが理解できるだけで何をしたのかなんて分かるわけが無い。


「通用しない…か。ならば次だ」


『妖術・上反射』


バリアが展開される。そして鳥霊は突っ込んだ、シヴァに向かって。すると遠天が爆発した所で上反射によってシヴァにダメージが行った。

おおよその攻撃方法は分かった。だが破壊神がそれだけとは思えない、あくまでも防御の方法だろう。シヴァの周りには入っただけで超強力な攻撃がされる空間がある。ただ上反射で跳ね返せるので必中などではなく、シヴァが何らかの方法を使って見えない攻撃をしているだけなのだろう。


「漆、小さな動物でも良い。一体だけで良いからあの攻撃範囲に突っ込ませてくれ」


「わ、分かりました…ごめんなさい、行ってください!」


すると一匹のハエが突っ込んでいく。するとはやはり木っ端みじんになった。そこで一つの情報を得るつ、霊ですらないハエにも当たると言う事は本体の二人にもあたる、充分注意しなくてはいけない。

そしてその攻撃の発生源を探さなくてはどうにもならない、何十匹の命が犠牲になっても仕方が無い。何としてでも特定するのだ。佐須魔が所持している神話霊の一角といえども情報が無いと次に繋げることは出来ないだろう。


「佐須魔が動かないのなら私達はどんどん攻めるぞ、ひとまず上反射を使用していればあの地帯は突破できる。だが私の霊一匹でシヴァを討伐するのは不可能に近い、だからまずあの無差別範囲攻撃を攻略する」


本体が動かないのなら目の前にいる強大な霊に集中しても良いだろう、そもそも集中しないと勝てない。上反射は必須だがそれ以上に原因を解明するための術が必要だ。

今分かる事はシヴァが三つ又の槍を持っている事、そして浮遊している事、最後に無差別範囲攻撃空間がシヴァの周りに展開されている事だ。

そして使えるのは大量の小さな動物と鷹一匹、そして香奈美の鳥霊だ。正直解明するのは困難を極める。だが出来ないわけではない、降霊術の霊を相手にするには降霊術の霊が一番やりやすいのだ。


「やれ!」


『妖術・上反射』


まず上反射で無差別範囲を突破する、そこで何発の攻撃が飛んで来ているのかも確認する。中々集中しなくてはいけなかったが何とか捉えることは出来た。

約百程度の攻撃のようだ。剣などの斬撃かただ殴られたような攻撃なのかはまだ分からないが、とりあえずとんでもない数だ。上反射を使わない限り何も抵抗できず死ぬだろう。

そんな中でどうやってシヴァの元へ到達するのか、少し考えてみる。そこで妙案を思いついた。


「漆、鷹を動かせ。鳥霊の真後ろ、何なら乗せてみてもいい、ひとまず鳥霊のすぐそこに移動させろ」


その指示を遠くから聞いていた鳥霊は一度無差別攻撃範囲から離れ、鷹が来るのを待つ。そして漆が命令すると鷹は鳥霊の真上に位置した。

そこで香奈美が指示を出す。


『妖術・上反射』


「鷹を連れて行け!お前の上反射があれば行けるはずだ!」


一気に突っ込む。鋭利なくちばしで風を切り裂き、上反射で無差別攻撃を全て跳ね返す。鷹も問題なく突っ込んでいけている。範囲はシヴァを中心として全方位二メートルだ。

残りほんの数十センチになった所で上反射が壊れかける。だが問題はない。


『妖術・上反射』


先程から霊力の消費は激しいが勝つ為には仕方無い。張られた二枚目のバリア、だがそれは一瞬にしてヒビが入る。どうやら近付いて行くほど攻撃も強力になるようだ。

急いで三枚目を張る。


『妖術・上反射』


勢いよく突っ込む。そしてシヴァの元へ到達した。それと同時に漆が命令する。


「突っ込め!!」


鷹はそのまま突っ込んだ。だが次の瞬間、漆からあり得ない量の血が吹き出す。すぐに何が起こったかを見ようとしたが体に力が入らない。

香奈美は駆け寄り、状態を確認するがどうやら三個の連なっている穴がある。心当たりがある、すぐに顔を上げシヴァの手元を見た。やはりそうだ、持っている三つ又の槍が血で染まっている。


「…鷹はもう姿も無いか……だが霊に対してなら分かるぞ?霊はオーバーキルされると余った分は本体にダメージが行くからな。だがあいつは霊ではない、ただの動物だ。となると何か別のものだな、だが美玖と同じでは無いな。あれは霊にしか通じないし全く同じ個所に、同じ量のダメージだ。

それとは別物…となると無差別攻撃もあの槍が原因か?」


逆に言うとそれ以外には何も見つからない。ひとまず漆は限界だ、急いで時計を操作し棄権させた。


《チーム〈生徒会〉[高田 漆] リタイア > 棄権》


「ありがとう漆、これからも頼むぞ」


漆の姿は消えた。残ったのは香奈美一人、勝利は無理だ。だがこいつの攻略だけは絶対にする。次に、いや数年後に繋げるのだ。ここでは終わらせない、終わらせることは出来ない。


「さぁ行くぞ、少しでも無力化するんだ」


「了解」


直後最速で飛び立つ、香奈美は上反射を唱え壊れそうになったら再び唱える。計二回の詠唱で突破する事が出来た。そしてそのまま突っ込もうとしたその時、シヴァに動きがある。

槍を持っている右手がほんの一瞬、動いた。


「還れ!!」


危機一髪、間に合ったようだ。本当にギリギリ、というかほぼアウトのタイミングだが還って来る事に成功した。だが右の翼の羽毛が少し斬られていしまっている。

すると香奈美の右手に激痛が走る。ふと視線を移すと勿論血が流れている。そして槍の先端と思しき小さな穴が出来ていた。


「攻撃されたら即死だな…中々厳しいが、まだ何とでもなる」


再び降霊術を行い、呼び出す。そして突っ込ませた。すると今度は明らかな動きがあった。槍を掲げる。


「一度戻れ!」


香奈美の側に引き返す。そして何が起こるか警戒し、見守る。だがいつまでたっても何も起こらない。そしてシヴァは腕を下げ、先程と同じ体勢になった。

恐らく変化はある。だが見えない事だ、これ以上ない程のプレッシャーをかけられる。顔色一つ変えていない破壊神に対し香奈美は畏怖を覚えているのだ。ただ負ける気は一切ない。


「賭けだな、実力差があるならば仕方あるまい。行け!」


鳥霊は再び飛び立ち、突っ込んだ。当然上反射は使用しているのだが何も反射されない。どうやら先程槍を掲げ変化した事と言うのは無差別範囲攻撃の解除だったらしい。

そうなると一つ仮説が立てられる。シヴァは普通の降霊術士にとっての霊力のように、何か数値がありその分しか術を使用できないのではないかと。

そう言った制限が無いのであればずっと撃っていれば良いはずだ。だがこのタイミングでそれを解除したと言う事は完全に対策したとシヴァも理解したからだろう。


「そう言う事か、やはり神話霊は少し特殊なのが多いな。少なくとも耐久戦はしないとの事か…良いだろう、私もやってやる」


そうは言ったがムキになるわけではない。あくまでも耐久戦をせず、攻撃だけで勝ちに行くというそのやり方に乗っただけだ。そもそも香奈美は耐久戦が苦手である。

だがここに来てある疑問が浮かぶ、無差別範囲攻撃だけではなく別の強力な攻撃も出来るのではないかと。少し身長になってしまいそうだったが気合を入れ直す。


「日和っても何も意味は無いだろう、一気に駒を進めよう。頼むぞ」


一気に決める。ここで。


妖術・戦嵐傷風(ようじゅつ・せんらんしょうふう)


佐須魔とシヴァ、そして本体の香奈美を巻き込んだ強烈な竜巻が発生した。物凄い勢いで様々な物が突撃して来る。だが香奈美は鳥霊に守ってもらおうなんてしない。既に指示は出している、突撃だ。

少しでもかく乱させ、あの槍を落とす。


「行け!!」


その直後鳥霊は今まで一番の速さと力を誇る特攻を見せた。向かう先は槍、シヴァ本体に攻撃するのはまだ速い。まずは攻撃方法を暴く、または無効化だ。

だがそろそろ限界だ。動く、怪物が。


妖術・貫刃(ようじゅつ・がんば)

妖術・斬爪(ようじゅつ・せっそう)


すると佐須魔の爪が伸び、まるで牙の様に鋭くなる。そして風なんてものともせず鴉を切り裂いた。オーバーキルだったようで香奈美にもダメージが飛んで来る。

ただ痛い程度で立っていられるレベルだ。だがそれより問題なのは鴉がやられた。香奈美は体術は全くできないし、他の霊と契約しているわけでも無い。完全に何も出来なくなったのだ。


「動くのか…お前も…」


「そりゃあ動くよ、別に言ってないだろ戦わないなんて」


風が一気に晴れ、傷一つ無い佐須魔の姿が現れた。流石に負けると思い時計を操作しようとしたが佐須魔が唱える。


妖術・水銃弾(ようじゅつ・すいじゅうだん)


すると遠天のように水の水滴が飛び、香奈美の時計を破壊した。それと同時に右手首に痛みが走る。そこを抑えながら苦しんでいると佐須魔が語り掛て来た。


「これで分かっただろう、君は弱者だ。そもそも僕らの正義には大前提があった、弱者は悪だ。君は悪、それで良いだろう」


「駄目に…決まっているだろうが……クソ野郎が」


「なんでお前なんかが僕を敵視するんだ…いや違うな。何故殺そうとする。敵わないと知りながら」


「それは私が…正義だからだ!!」


「……汚らしい正義もあったもんだ。君はまだ経験が少ないようだね、深い絶望、一番身近な者の死、人の解放、この三つは最低でも体験してくれ。そうでなければ、僕は何処まで行っても止まらないさ。それじゃあな、そこそこやったよ。次は革命の時だ、サーニャとでも来るんだな」


玖什玖式(きゅうじゅうきゅうしき)-壱条(いちじょう).閃閃(せんせん)


佐須魔の人差し指から放たれた小さな光はそのまま香奈美の脳天を貫いた。そして脳に電流を流す事によって一瞬にして死亡させた、そして来る通知。


《チーム〈生徒会〉[姫乃 香奈美] 死亡 > 華方 佐須魔》


それに続く様にしてあの二人の決着も届くのだった。


「そうか…お疲れ様」


同時に二か所で、決着がついた。



第二百二十二話「破壊神の力」

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