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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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第二百十七話

御伽学園戦闘病

第二百十七話「2012年夏、某日TIS本拠地秘密部屋にて」


既に夏が到来した、冷房を付けていないと少し苦しいぐらいの夏だ。そんな日、夏休みという事なのかは分からないが智鷹から連絡が入る。

來花、佐須魔、語 汐の三人だ。それは超端的な招集だった。


『遊ぼー』


三人はすぐにおかしいルートを通り智鷹の秘密部屋に向かった。ノックをして名前を言ってから扉を開く、するとそこには自動雀卓を囲んでいる三獄の姿があった。

語 汐も空いている席に座り、早速麻雀を始めた。皆雑談しながらゲームをするのが好きなので当然雑談が始まる。最初は智鷹からだった。


「そういや傷治ったんだよね~でも回復術使ってもあんまり回復しなかったのは今伽耶に調べさせてるんだ~」


「怪我?何かあったんですか」


語 汐が慣れた手つきで牌を出しながらそう訊ねた。すると佐須魔が説明する。


「ちょっと前、ホントに一ヶ月ぐらい前だね。そこで智鷹やらかしたんだよね、本土で。隠密能力者がいたから戦闘仕掛けちゃったの。しかも結局負けたんだよね。

それでその時の傷が何故だか治らなかったって話。まぁある程度は治ったけどね」


「そんな事が…」


「あの子は才能がある、私が回収したかった所に…智鷹がやってくれてな」


「ごめんね~でもさ、あいつは強いよ。一旦仲間じゃなくても敵にならないだけマシでしょ」


「何言ってんの?僕が滅茶苦茶に値切って交渉した結果だよ?ちょっとは労いの言葉でも欲しいものだね」


すると智鷹は黙って何も言わなくなった。皆こういう所が駄目人間の要因なんだろうなと感じながらも別に突っ込みもしない、ただ会話を広げるだけだ。


「松雷 傀聖、結局彼の能力は何なのだ?」


「念能力だね~、複数持ち。武器を作り出す、硬貨を爆発させる。この二つ。使い方が結構上手くてね、流石天才って感じだよ。僕でも最初はあんな事出来なかったからね。とりあえず中立でいてくれるだけでありがたいよ」


夏に起こった戦闘事件の際佐須魔が傀聖に交渉して中立に立ってもらう事を約束した。傀聖は契約内容によっては仲間になっても良いと言ったが無茶な無い様だったのでそれを拒否、ひとまず中立という感じだ。

ただ一つ問題として約束であり、契約ですらないので傀聖の気分によっては敵に回るかもしれない。学園側に付くならまだしも、突然変異体(アーツ・ガイル)や能力取締課に入られると非常に厄介な事になるだろう。だから大会までそう遠くは無い夏なので放置しておくのだ。


「そうなんですね。私は到底強い人間に見えませんよ」


そう言いながら語 汐は壁に貼ってある傀聖の写真を眺める。視線を追って何を見ているのか分かった智鷹は照れながらやめて欲しいと視線を逸らそうとする。

何故ならそこには大量の人の写真が貼ってあるのだ、銃弾の様な穴が空いている。


「あれマジで撤去してくんない?すげぇキモいんだけど」


「え~ウザイ奴とかイライラしたら写真に対してバーンってするだけだからぁ、気にしないで」


「それがキモいんだって、せめて僕のは撤去してよ…というかなんで五発も撃ってんだよ」


五個の穴が空いた佐須魔の写真を見ながらドン引きする。智鷹は鼻歌を歌いながら麻雀の方に集中する。こういう所がモテない要因なんだろうなと思いながらも別の話をする事にした。

大会が近いのでメンバーの事だ。


「今のメンバーじゃ厳しいんだよねぇ。やっぱあの脱退組はみんな強かったからね…どうしようねぇ」


「私のせいだ、すまない」


「謝罪は求めてないよ、今はどうするか解決策を探したいんだ。時間が無い」


「そうか、分かった。だが実際あの五人が抜けたのは痛かったな…」


「誰でしたっけ、覚えてないんですけど」


三獄は全員「マジかこいつ」と言いたげな顔をして語 汐の方をちらりと見た。その後來花が五人の名前を読み上げる。


「アリス、紀太、譽、英二郎、サーニャ…いやライトニングだな」


確かにこの五人は全員強い。特にアリスと譽、この二人は相当強いしあまり反発したりしないので大きな損失だ。ただ言う事を効かない場面になると本当に面倒くさかったので多少運営が楽になったのは事実であり反省すべき点だ。

現在のTISにはあまり手を焼く人物がいない、蒿里ぐらいだ。だが突出した者が数人いてもあまり意味は無い、大会のルール上全員が満遍なく強い方が結局の所勝率は上がる。

それなのに他の重要幹部は香奈美にさえ勝てるか分からない者が数人いる、そこは不安点だが覚醒を残している人物だっているし最悪佐須魔達が助けに入ればよい話だ。だからと言って怠慢を許す理由にはならないが。


「だけどアリスと紀太はまだ戻って来てくれるかもしれないからね、譽は何処に居るかさえも分からないから。仕方無いけどね」


パチンと牌を出す。


「あ、それアガリ(ロン)です」


語 汐があがった。佐須魔はしょんぼりしながらもさっさと次の局に移り、話も変わる。


「一つ聞いておきたいんですけど、結局TISって何を目的にしてるんですか?未だに知らされてないんですけど」


「うーん…聞かせて良いかなぁ?」


二人に聞くと速攻で首を横に振った。


「駄目だって、でもまぁその内分かるから大丈夫だよ」


「そうですか」


TISは未だに目標を公にしてない。だがそれでも佐須魔の強大な力に安心して滞在する者が多い、そして何より革命で何か良い方向に世界情勢が傾く事を何処かで確信しているからだ。

一年半前、大量に脱退者が出たが何とか立て直している。今付いて来ている者は大層な理由が無いといなくなりはしないだろう、そこから搾取するわけでは無いがお金は頂いている。

ならばそれ相応の目標を明かさなくてはいけないが、未だに告げていない。良く考えるとあまりにも酷い状態だがそれで良いのだ。


「まぁ安心してくれ、皆が死んだら能力は吸い取ってあげるから」


「遠慮しておこう」


「僕も大丈夫~銃乱射するの結構楽しいし」


最悪零式で復活させれば問題は無い。だがあと二回しか使えないので決して命の在庫が潤沢などとは言えないだろう。それでも全員命をかけて戦っている、だから文句は付けないのだ。


「これからは厳しい戦いが続くだろう。万が一にでも今回でマモリビトを手に入れる事が出来ないかった場合は再び大会に出る事になるだろう。それは覚悟していてくれよ、その場合はもう智鷹も出すから」


「え?そうなの?」


「そうだよ。ずっと隠れ蓑って訳にもいかないだろう?一応ボスなんだから。まぁ馬鹿だから何か喋る時は台本用意するし大丈夫だよ」


「やった~!じゃあついでにギアル頂戴!」


「駄目だ。いい加減無駄使いするのやめてくれ。大体武具庫行きだろ」


実際使える武具の方が少ない。智鷹曰く失敗作は無く、形が崩れてもそれは何処かで使えるはず、らしく全てが武具庫行きだ。ギアルを無駄使いしているとはいえども人の物を壊すのは気が引ける。

ただたまに使える場面が来るときもあるので何とも言えないのだ。


「まぁいいや。とりあえず今日はこれで終わりだ」


そう言いながら佐須魔が牌を倒す。


「国士十三面、智鷹の直撃。64000」


「え~負けちゃった~」


適当に払い、席を立つ。片づけは語 汐がやって他の三人は適当に話を続ける。そこである話題が出た。それはあまりにも無謀な話で、初めて聞いた語 汐が耳を疑う程だ。

話し始めたのは佐須魔だった。


「神殺しの武具は集まってるかい?」


「まぁね~でもブリリアントだけ見つからないんだよね~他は位置自体は分かるんだけど」


「そうか。今何個あるんだっけ」


「五個中二個だよ、[オーソリティ]と[ジャミング]だけだね。一応これだけでも戦えはするけど…勝てはしないだろうね」


「まぁね。あいつに勝つには僕が第八形態…」


「私が内喰」


「僕は碧眼のその先」


「そう。それが必要だ。それに神殺しの武具を最低でも四つが必要だ。出来ればブリリアントが欲しいんだけどね」


「見つからないのなら仕方無いだろう。それより私は[(すみれ)]が気になっているがな」


「あれね、僕も気になってはいるんだけど日本の何処にあるかあんまり分からないんだよね、なんか霊力反応が分散してる感がある」


「ほんとそれ~全然分かんない~」


智鷹は寝っ転がって文句を垂れている。そんな三人に語 汐が首を突っ込む。片づけを終え聞こえて来た話が物騒だったからだ。


「神殺し?そんな事するんですか?無茶じゃ…」


「殺しはしないさ、瀕死にして言う事を聞かせる。革命にはそれが必須だ」


そう言っても納得できず渋い顔する。そして「自分はやりませんよ」とだけ言って部屋を出て行ってしまった。その様子に少し呆れながらも仕方無いと頷く。

神は仮想のマモリビトだ、そいつを殺すのは不可能に近い。それは拠点が仮想世界にあるTISメンバーだからこそ分かる事だ。強いなんてレベルではない、恐らく存在が消される。

しかも何か異常な事が起こり追い詰めても最悪この世界を消されて終わりだろう。この世界はあの神が作った一つの世界、別に一個ぐらい消しても大した問題は無いはずだ。

そこも考慮して神殺しの武具は作られている。だがその世界削除の対策をどれでするのかが不明なのだ。その件は智鷹に任せているのだが二年ほど進展が無い。


「いい加減仕事してほしいけどね。金だって有限なんだよ」


「知ってるよ。ただ僕は思うんだよ、神は殺せるものではないと。本来象徴的なものであったはずの神が存在している、それを知った時僕は文字通り心が踊ったよ。

だけどそいつが全ての元凶で、あんなクズだと知って僕の心は一度死んだ。それでもここまでやっていけているのは皆がいたからだ。僕はこの日常のままでいいんじゃないかとさえ考えている、だからせめて僕のペースでやらせてくれ。良いだろう?」


「勿論、そこに文句は無いさ。だけどね、人だっていずれは朽ち果てるんだよ。僕らは命を引き延ばせても、上や下の者まで寿命を延ばせるほどニンゲンは強く作られていない。そこだけは常に考えて欲しいと言ってるだけだよ」


「私も戦闘はしたくない。だがやらなくてはいけないんだな…流と京香が動き出した以上、私も」


「そうだね。心が痛むと思うが鬼になってくれ、今だけは。僕らの目的が果たされた時、全人類は幸福になるさ。そうなんだろう、智鷹」


「うん。だって、死は救済、だからね」


最初は智鷹の思想からだった。だがそれはここまで膨れ上がり、力を付けた。今や正義はこちら側だ、ただ植物の様に生きていても変わらない。

強靭な意志と牙を持ち、襲い掛かるしか変えようは無いのだ。だがそれは百年前に同じ事が起こっている。その時は敗北したが今回はそうはならないはずだ、何故なら


「僕が神になるよ」


佐須魔は力を持っているから。



第二百十七話「2012年夏、某日TIS本拠地秘密部屋にて」

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