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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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番外編「黄色いサンタ」

御伽学園戦闘病

番外編「黄色いサンタ」


[TIS本拠地]


「来たか…クリスマスイブ」


十二月二十四日、年末を飾るイベントとしては申し分ない程に大きな日。だが大会に出る者にとってはただ訓練をする日であった。本拠地では非常にピリついた空気が流れていた。

ただ來花はこの日を待ち望んでいた。既に三人はいなくなっている。だがプレゼントを渡したい子は沢山いる。そのために頑張って金をかき集め、プレゼントを集めていた。


「あと二時間…クリスマスになるな」


いつも通り顔には出さなかったが内心ワクワクしていた。何となく食堂にいたのだが、夜食を食べに来た透が話しかけて来る。


「上機嫌だな、何かあるのか」


「いや、何でもない。それより開発は進んでいるかい?」


「ボチボチって感じだ。俺は能力者の研究も兼ねてやってるから五割はクソ姉貴がやってる」


「それなら良かった。佐須魔は兄弟(きょうだい)を良く連れて来ていたからな、最近は少ないが」


「そうだなぁ。クソ姉貴、リイカ、そう言われると少なく感じるな…」


「後一人いるが本人が気付いていないからな」


「あいつに関してはしょうがないだろ、気付けたら怖いわ」


「はは…それもそうだな」


透は食べるのはやめてココアを二杯入れた。そして対面に座り一杯を來花に差し出した。珍しい気遣いにないしん喜びながらも普段通り、不愛想に感謝の言葉を述べ暖かいココアを飲む。


「皆には無茶をさせ過ぎている気がするからな…たまには楽をしてほしいものだ」


そう零した一言に透は怪訝な顔をする。そしてココアを飲み干し、もう一杯欲しくなってキッチンの方へ向かいながら答えた。それはド正論であり、來花にとってあまり言ってほしくなかった言葉だ。


「お前らが巻き込まなければ良かったじゃねぇか。それともお前らだけじゃ弱すぎて無理だったか?」


「……あぁ。無理だった。私達では勝てない、あの怪物達にはな」


すると透は溜息をつきながら再び席につき、愚痴にも近しい相談を持ち掛けた。來花は当然受け入れるのだが。


「出来れば京香が生きていて欲しかった。あの人は凄いんだろ?噂によると神と砕胡のヤバイ念を封じ込めたらしいじゃねぇか」


「もうすこしデリカシーと言うものを持った方が良いと私は思うよ。ただ最後の方に関しては私も驚いたよ、彼女があんなことまで出来るとは到底思っていなかったからな。

恐らくだが私なんかよりもよっぽど強い…精神的にも、能力的にも」


「だからこそ俺が今ここで研究をしている。あんたにとってはどうでも良い事かもしれないが俺にとってはありがたい事だ。過去に戻ったりしてほんの小さな出来事を変えるだけでもここには辿り着けなかった、本当に奇跡なんだ。ここまで最善手を取れたのは…それもこれも…」


そう言いかけたタイミングだ。本当に丁度良く、もう一人食堂にやって来た。[リイカ・カルム]だ。二人を見てビクリと驚いたがそそくさとキッチンの方へ向かう。

そして何とも言えぬ表情で棚からカップ麺を取り出してお湯を注ぎだした。二人はその動作をしっかりと目撃している。すると我慢できなくなったのか口を開いた。


「何よ」


「こんな時間に食べて良いのか、もう大会も遠く無いんだぞ」


「大丈夫よ。私は出ないもの」


「そうなのか」


特に責めたりもしない、來花はこれでもリイカの辛さを分かっているつもりだ。ただ他の誰かがどうにか出来る辛さでは無いのだ。TISで一番重い責任を背負っているのはリイカだ。何かあったりしたら時を戻し、何度もやり直している。

それがどれだけ苦痛で、どれだけ虚無な出来事なのかは到底理解しがたい。だが、寄り添う事ぐらいは出来る。幸い蒿里のようにコミュニケーションを拒んだりはしていない。それだけでも良い、皆そう思っている。


「良いのか?早くしないとタルベは俺が殺すぞ」


そんな時透が口を挟んだ。流石に行き過ぎた発言だったので來花が止めようとするがリイカが見下し、微笑みながら言い返す。


「出来るものならね」


それ以上会話は続かなかった。ただシーフード味のカップヌードルを美味しそうに食べているリイカを眺めながら、謎の時間が続いた。そして食べ終わったリイカが食堂を出て行くと同時に透も出て行った。

來花はカップを片付け、準備に取り掛かる。皆起きているかもしれないがひとまずプレゼントを渡すのだ。そう決意を固め自室へ戻った。


「さて、最初はやはりあの二人からだな」


二つのプレゼントを抱え、ルンルンで玉座の間に向かった。扉を開くと佐須魔が玉座に座って猫神を撫でていた。そして來花がやって来たのを見て吹き出した。


「な、何でサンタ帽被ってんの…」


プルプルと震えながら猫神を少し横に避け立ち上がった。


「良いだろう、サンタだ」


「似合ってるよ…面白いけど…」


直後、來花がプレゼントの一つを差し出した。佐須魔は嬉しそうに紐を解き、中身を見る。その動作はあまりにも幼稚で、外見も相まってまるで本当の子供のようにも見えた。

そして佐須魔は中身を見て嬉しそうに目を輝かせた。


「ギアル!!」


「こんな時も戦闘の物品で済まないな…佐須魔の欲しい物が思い浮かばなかったから御伽島の地下基地でチマチマと集めていたんだ」


「ありがと!普通に嬉しい!」


とても嬉しそうだ。その様子を見ていると渡した來花さえも嬉しくなって来る。そして咄嗟に頭を撫でてしまった。佐須魔は何故急に撫でて来たのか分からず頭に?を浮かべている。

來花は謝り、ほんの少し距離を取った。


「もう僕も二十…一だっけ?まだ二十だっけ?」


「まだ二十だ。来年二十一だ」


「そっか。ようやく成人だってさ、相当長くやって来たね…これからもよろしく」


「あぁ。よろしく」


二人が握手を交わした所で久しぶりに聞いた肉声が響いた。


「僕にもちょ~だい」


唐突に現れた智鷹に驚く。そして誰にも聞かれていない事を確認してからもう一つ抱えていたプレゼントを渡した。佐須魔のに比べると少し小さめで、長方形だ。

不思議そうに開封した。すると中にはトリートメントだった。佐須魔にはそれがどんな物なのか分からなかったが心を観て大変喜んでいる事は分かった。


「え!え!え!?良いの!?これたっかいやつだよ!?」


佐須魔より一歳年上のはずなのにも関わらず、佐須魔以上に目を輝かして喜んでいる。その様子を見た來花は自然と笑みが零れた。智鷹はそんな事気にせず嬉しそうにしている。


「でも大丈夫なの?これ二万ぐらいするじゃん!」


「良いんだ。最近はあまり話せていなかったからな、せめてもの思いだ」


「やったぁ!!佐須魔!ギアルちょっと頂戴!!」


「嫌だね!!もう変な武具は作らせないよ~だ、もうギアルも少ないんだ!」


「ケチ~」


楽しそうにじゃれている二人を見て何だか心が安らいだ気がした。ここ最近は非常に辛い事があったので仕方があるまい。流の件や砕胡と神の件、他にも小さな不幸の積み重ねなどあまり良い年では無かった。

だが長年時を共にして来た二人の笑顔が見れただけで良かった、そう思えた。


「それじゃあ他の子にも渡して来るよ」


二人は聞いていない無さそうだったがとりあえず部屋を出た。再び自室に戻り、先に上の子達二人に渡すプレゼントと、もう一人のプレゼントを持ち部屋を出た。

まず向かう先は個人部屋の一室だ。シャンプラーは基本的に自室にいる。今夜も同じだろう。ノックをして扉を開けてもらった。


「メリークリスマス」


「あ…はい…」


普段そんな事はしない來花が楽しそうにそう言ったので少し困惑している。だが腕に抱えているプレゼントを目にしてどういう事なのか理解した。

それと同時に遠慮する。


「僕はもう子供じゃ無いんですから…」


「いや、私にとっては子供だ。貰ってくれ」


「はぁ…まぁありがとうございます」


受け取り、中身を覗く。すると今までの態度とは一変し嬉しそうに中身を取り出した。


「おぉ!!ブータンシボリアゲハの標本!!超レアな蝶だったから持ってなかったんですよ!ありがとうございます!」


シャンプラーは蝶の標本集めが趣味だ。部屋の中も悪趣味と言うと悪いが大量の蝶が飾ってあるのだ。ただ來花は全くと言っていい程気にせず、むしろ良い趣味だと思っている。

それ故一年前から頑張って集めたのだ。このレアな蝶の標本は中々無い、しかも盗んだりはしていないので本当に苦労した。何なら一番苦労した。


「さて、次は伽耶の所に行って来るよ」


「ありがとうございました!」


お次は伽耶だ。研究室にこもりっぱなしだ、ただそれが仕事なので心配はしているが文句は言わない。ただ最近肌が白すぎて心配が強くなっている。


「伽耶、いるか」


「は~い、ちゃんと消毒してくださいね~」


許可が降りた。しっかりと何段もの消毒部屋を通り、研究室に入った。クリスマスでも特に変わらず研究を進めている、透も一緒に進めている様だ。

そこに二つ分のプレゼントを置いた。二人はそれに気付き早速手に取る。消毒も済ませてあるので特に敏感になる事も無く中身を開けた。


「ん、良いじゃん」


先に開けたのは透だった。中身は煙草だった、一カートンの。透は本拠地内では基本何かを明かすことは無かった。それ故普段吸っている煙草ぐらいしか思いつかなかったのだ。だが本人は「下手な物よりありがてぇわ」と言いながら早速吸おうとし、伽耶に首を絞められていた。

そして作業を中断して伽耶が包みを剥がした。


「…お?…おぉ?…おぉぉぉ!!!」


本当に珍しく大きな声を出している。それほどまでに嬉しかったのだろう、透が覗くとそこにはガチの研究などで使われる非常に高価な顕微鏡が入っていた。

稀に外に出て来る伽耶が「顕微鏡が欲しいですね~」と呟いているのを小耳に挟んでいたのであまり悩む事無くそれを購入したのだ。結構痛手な出費ではあったが半分経費で落としたので問題ない。


「やった~!」


今の所全員喜んでくれている。だがここからが難関だ、ここまでは結構感情を表に出してくれる大人だったから良い。だが重要幹部は非常に性格に難があるのでそこが怖い。

ただもう止まれないのだ。一旦部屋に戻り、三個の小さめのプレゼントを手に取って個室を回る。今渡すのは原、叉儺、健吾だ。この三人は大抵自室にいるので適当に回れば渡す事が出来るだろう。

まずは一番近い原からだ。ドアをノックし、反応を待つ。だが全く反応が無かった。だが耳を立てると寝息は聞こえて来る。良い事を思いついた。


「たまには良いだろう…」


ゆっくりとロックを解除し、部屋の中に侵入した。本来は扉のロックを外す事は不可能なのだが原は三獄を信頼しているという事でロック番号を教えているのだ。

そして忍び足で枕元へと近付く。スヤスヤと寝ている原の側にゆっくりとプレゼントを置いた。そして小声で「メリークリスマス」とだけ言って部屋を出て行った。

ちなみに中身はスマホだ。最近落として破壊し一日中落ち込んでいるのを見たからだ。そしてお金が無く変えていなかったので良い機会だと感じプレゼントしたのだ。気に入ってくれるだろう。


「次は、健吾だな。多分まだ起きているはずだ」


扉を叩く。すると何も言わずに扉が開かれた。どうやら來花だとは思っていなくてほんの少し驚いていた。ただすぐに馴染んだのか用を訊ねる。


「メリークリスマス」


「…俺二十二だぞ」


「私からしたら子供だ。良いから受け取ってくれ」


「まぁいらないなんて言ってないがな。ありがたくいただきますよ」


包装を剥がすとそこには電子タバコ入っていた。健吾は最近電子も気になっていたのでありがたい。それよりも來花のサーチ力に驚愕する。

なんせ他の者とは違って健吾は一切口に出していないからだ。それでも表情や小さな仕草で察し、プレゼントとして用意したのだ。その算段も怖いし財力も怖い。だが非常にありがたい。


「やっぱ凄いな…あんたは」


「まぁな。生きている年月が違うのだよ」


「そりゃ言えてる。まぁありがとうございます、他の奴らにも渡してるのか?」


「あぁ。まだ半分ぐらいしか渡せていないがな」


「また皆の反応聞かせてくれ、コミュニケーションの要素にする」


「分かった。これからも頼むぞ、信頼しているからな」


「おう」


お次が叉灘だ。ここが最初の難関である。叉儺は本当に気が変わりやすい、なので用意したプレゼントが気に行ってくれない可能性も高い。

だが安牌は取らなかった。逆に一番賭けに出た。


「いるか?」


「良いぞ~」


凄く眠そうな声だ。扉が開かれたので部屋の中を見てみるといつもの叉儺だった。叉儺の寝間着は裸だ、裸で狐神にくっつきながら寝ると言うちょっとヤバイ習性を持っているのだ。

だがまだ寝ていない。恐らく丁度寝る所だったのだろう。ひとまず冷えるので毛布を巻かせる。そしてプレゼントを手渡した。すると眠い目を擦りながら嬉しそうにしている。


「見て良いのか~?」

  

「良いぞ」


ワクワクしながら中身を確認する。この時來花はドキドキしていた。一番ガッカリされる可能性があるのはこの子だからだ。だが次の瞬間安堵の顔に変化した。

中身は面だ、狐の面。狐神を扱うレベルの降霊術士なら必要は無い、意図的に使用する際以外。その意図的に使用する場面が叉儺にとっては基本なのだ。

なので面が必要なのだが普通の奴だと三回程度使用するだけで壊れてしまうのだ、それは狐神が強いからであって耐久性が低いからとかではない。叉儺の霊力操作が力技なだけだ。

だがこの面は耐久性が凄い、何故ならギアルを所々に埋め、霊力が流れてもそっちに集中して異変は起こらない設計だからだ。これも頑張って自作したのだ。


「…ぬぅ?」


少なくとも落ち込んではいない様だが不思議そうな顔をしている。どうやら何か普通の面とは違うと言う事を理解したらしい。そして直後、裏面を触れる事で理解した。

ギアルは裏面から見るとほんの少し浮き出ているように見えるのだ。それと同時に叉儺は驚愕する。


「これは…妾が何度もやろうとして失敗してきた面では無いか…どうやって貴様が!?」


「私が頑張ったのもあるが、それ以上に伽耶が頑張ってくれた。感謝するならあの子にだな」


「分かったのじゃ!今から行って来るのじゃ!」


そう言いながら部屋を飛び出しそうになったが掴んで引き留め、服を着させてから出した。その後來花もロックがかかっているか確認して退室した。

そして最後の四つを持ちながら病室へと向かった。未だ完治しておらず、歩く事もままならない砕胡と神の元に。


「おーい、いるか」


返事は無い。だが中で何かを書いているような音が聞こえたので、ロックのかかっていない部屋というのもありそのまま入った。するとようやく気付いたようで机から目を離し、來花の方を向く。


「何だ」


「こんな時まで勉強か、偉いな。というわけでメリークリスマス」


サンタ帽を見た砕胡はいつものように険しい顔をしながら体を震わせている。だがゆっくりと手を伸ばし、しっかりと受け取った。そして神の方へ目線を向けるといびきをかきながら爆睡している。

すると砕胡が中身を見る為袋を丁寧に取り外しながら愚痴を言う。


「あいつはあまりにも能天気だ。僕は今回出れないからこうやって勉強を進めている。なのにあいつは何もしていない…ほぼ治っていて動けるはずなのに…」


「すまない。あれは私が最初に何とかすれば良かった話だ。こんな聖夜に言うのも何だがこれからも、どうか辛い役目を背負ってくれ」


「今更逃げるつまりは無いし、逃げても監視するだろ。まぁ良いさ、決まった事……」


喋っていた口が止まる。そして目を輝かせながら中身を取り出した。砕胡は上手く掴めない性格だが好きな物ぐらい容易に分かる。金だ、金銭だ。

プレゼントという形体としてあまりよろしくない物ではありそうだが、好きな物がそれしか分からなかったのだ。計十万円、少ない金を絞り出して包んだ、封筒に。


「十万、ありがたい…これで参考書買える」


嬉しそうにお金の使い道を考えている砕胡の後ろでしょぼんとしている。それに気付いたのかすぐに振り返り、感謝の言葉を送った。するろいつもの來花に戻り、神の枕元にプレゼントを置いてから部屋を出て行った。

その際砕胡には中身を教えておいた。


「武具だ。砕胡が触ったらどうなるか分からないから気を付けろよ」


そしてあと二人だ。まずは楽そうなリイカの元に行く。少し前まで食堂で夜食を食べていたのでどうせ部屋で何かしているのだろう。自室をノックする。すると返事は無かったが扉が開いた。

目線の先ではリイカが掃除をしていた。どうやら毎日掃除をしているらしい。そしてサンタ帽を被っているのを見てプレゼントを私に来たのだと察し、すぐに駆け寄る。


「何くれるの?」


「これだ」


そう言って一番小さなプレゼントを手渡した。するともう嬉しそうにしている。どうせ一度見てから時を戻したのだろう。意図は分からないが。

そして倒れて来る本棚を容易に片手で止め、包装を剥がす。


「?」


パッと見は何か分からない。だがすぐに分かった、ブレスレットだ。リイカの私服にマッチしている黄金の、少し大きなブレスレットだ。

何の為かはすぐに理解できる。左手の手首だ。リイカは左手の手首に傷がある。だがこれは自傷行為をしたわけでは無く、來花が暴れた時に出来た傷だ。どうしても治らないのだ。


「こう言う事ね!」


そう言いながら早速着けてみた。似合っている、その事を伝えるとリイカは嬉しそうに感謝し、掃除を再開すると言って部屋から押し出した。

どうにか感謝はしてもらった。正直失敗すると思っていたからだ。あの傷の事を当人はコンプレックスだとも感じてしまっている。だが何とか気に入ってもらえて安心だ。

そして最後、矢萩だ。


「矢萩」


名前を呼び、修練場へと入った。すると相変わらず刀を振るっている。そこに近付き、プレゼントを渡そうとしたが首元に刀を突き付けられた。


「邪魔!」


珍しく大きな声を上げた。その事に驚いてしまった來花はおずおずと部屋を出て行った。そしてしょんぼりしながら廊下を歩いていると、隣の空き部屋から銃を地面に叩きつける音が聞こえた。

すぐに中に入るとやはり智鷹がいた。そして佐須魔もいる。二人は何も言わずにゲートに入って行った。付いて行くと出た先は智鷹の部屋だった。どう足掻いてもゲート以外では行く事が出来ない秘密の部屋だ。

すると二人が声を出した。


「お疲れ様、それ砥石でしょ。僕が渡しておくよ」


そう言って矢萩へのプレゼントを預かった。そして床に座る。何が起こるのか分からなかったがひとまず同じように座る。すると佐須魔が指を鳴らした。

その瞬間、二本の酒瓶が現れた。日本酒とワインのようだ、ブドウの。


「本当にお疲れ、僕が二十歳になったから酒を飲む。まぁ体に変化はないから前から飲んでたけどね」


「は?」


來花が佐須魔の目を見つめる。だが佐須魔は目を逸らし、酒を注いだ。そして智鷹と來花の二人に渡した。その後自分の分を注ぐ。


「何年目だっけ…忘れちゃった…まぁでも今日はTIS結成の日だ、一緒に飲もう」


先程の発言は後々叱る事にして、今は楽しく飲む事にした。もう大会も間近だ、これぐらい誰も何も言わないだろう。三人がカップを持ち上げ、こつんとぶつけながら同時に言った。


「乾杯」



番外編「黄色いサンタ」

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