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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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第二百七話

御伽学園戦闘病

第二百七話「確認」


「早く行くぞ~」


透が煙草を咥えながらやって来た。そして皆それがどういう意味を成しているのか理解する。すぐにラックが詰め寄った。


「どう言う事だ」


「あ?別に良いだろ。俺らは学園側じゃない、あくまで中立だ。まぁ今はTISに味方しているだけだ、今結んでる契約が終わればいつもに戻る、良いから早く連れて来いよ、蒿里」


「蒿里?嘘だよね?」


兵助の言葉が刺さる。だが今ここでエスケープチームに頼っても仕方ないのだ、どうしようもない、今が何とかなっても先は無くなってしまう。それよりかは自分が辛い思いをした方が良い、いつもそう考えている。それは今回も例外では無く。


「…」


黙って立ち上がった。そして扉の方に歩き、部屋を出た。透もぼちぼち姿を消した。

残された皆は言葉も出なかった。何故わざわざリスクを負ってまで学園に戻って来たのかが分からない。だが一人冷静だった紫苑が溜息をついてから予想を立てた。


「目的は俺らだろうな。俺ら強いから、大会に出したかったんだろう。あの二人が居なかったらどうやっても人数が足りなかった。だから送り込んで誘き寄せたんだ、嵌まったんだよ罠に」


もう何も言わなかった。だが兵助は急いで部屋を出て行った。誰も止めず、誰も追いかけなかった。だが部屋の中は重い空気が流れていた。

そしてタルベがある事に気付く、人数の件だ。


「この大会の仕様として人数調整があるじゃないですか。あれって常に申請時と同じになるんですよ、ですから今エスケープチームの人数は実質五人ですが…申請は七人なので…次、万が一TISと戦う場合七対五になるのでは…」


もう遅い。今出来る事は生徒会を応援する事だ、勝ってくれと。


「とりあえず一旦待機室に戻ってなさい」


時子の指示により部屋を出た。それぞれの待機室に戻り休憩を取る。だが会話なんて無くただただ気まずい空気が流れていた。礁蔽は黙って俯いている。ラックは渋い顔をしながらぶつぶつと独り言を唱えている。流は大人しく座っている。紫苑も同じく座って次の戦いが始まるのを待っている。

するとそこで兵助が帰って来た。雰囲気を察してか何も言わなかったが何だか安心しているようにも見えた。その眼差しが皆の心をほんの少しだけ持ち上げた。

ほんの、少しだが。



[生徒会]


「さて、しっかり時計を付けておくんだぞ」


会長が全員の腕を確認する。そして問題が無い事が分かると一度椅子に腰かけた。あまり時間は無いが出来るだけ心を落ち着かせておきたいのだ。

それぞれ準備は欠かさない。どれだけ強い敵だろうと諦めずに戦う精神を持ち合わせている、それに付いて来れる武器や体が必要なのだ。


「…」


「どうしたんだよ、妙に静かじゃねぇかフェアツ」


そう須野昌が声をかけた。するとフェアツは普段と同じ様に元気になった。恐らくだが緊張しているのだろう。無理も無い、そもそもフェアツはあまり戦闘が得意ではないのだ、即死してもおかしくはない。

だが今更逃げる事も出来ない。須野昌は最低限の優しさとして励ましておく。


「まぁお前なら大丈夫だろ、頑張れよ」


「なんか優しいとキモいね、須野昌」


「は?何だよお前」


「だって女遊び大好きって噂じゃん」


「もうしてねぇよ。それより俺はさっさと香澄を起こさないといけない、あいつ変に頑固だからめんどくせぇんだよな」


「結局駄目だったんだもんね。でも良いんじゃない?香澄本人がそれを望んでるなら」


「やだ、俺が嫌だから起こすんだよ。あいつの意思は考慮しない」


すると灼が乱入してきた。


「じゃあなんでなんで起こさないの~?」


「俺じゃ起こせない。だから面倒だったけど黄泉の国に行った、結局レアリーしか持って来れなかったけどな」


「じゃあ無理でしょ~諦めなよ~」


「…お前には分かんねぇよ。何も考えてない馬鹿にはな」


明らかに馬鹿にされている。灼が反論しようとしたが美玖が間に入って落ち着かせた。こんな大事な時に喧嘩に発展するなんてごめんだ、止める事さえもしたくないがこの二人はこの状況でもやりかねないのでしっかりと止める。

仲裁をしていると全員の時計に通知が来た。


《第二戦 生徒会 VS TIS が 始まります 両チーム の メンバー は 部屋を出てください》


呼び出しがかかったのだ。すぐに喧嘩はやめ、急いで部屋を出る。その間会話は全く無かった、緊張もあったがそれ以上に喋ると情報を渡す事になる。

後ろに歩いているのだ、TISが。佐須魔の鼻歌が聞こえる。そして抑えきれない程強いな霊力が溢れ出しているのだ。既に数名は帰りたいと思っていた。ただ後ろから聞こえて来た佐須魔の声で火が点く。


「まぁちゃちゃっと終わらせてラック殺すよ~」


まるで自分達が雑魚処理と言わんばかりだ。全員物申したかったが流石に怖い、恐怖が勝ってしまった。水葉以外は。

歩みを止め振り向き、言い放つ。


「本気で行く、殺すから」


すると佐須魔が何か言い返そうとする。だが矢萩が遮って言い返した。


「私の方が強いから、あんま調子乗んないで」


水葉は呆れて再び歩みを進める。そしてファストが待っている部屋にやって来た。当然ファストはTISの敵なのでとんでもない目つきで睨んでいる。

だが誰も態度を変えず、始めるのを待つ。三分程経った時だ、ファストの時計に通知が来た。そして生徒会メンバーに呼びかける。


「行くよ、触ってね」


七人が触れると扉が開き、姿が消えた。とんでもない速度で七人を配置し部屋に戻って来る。そしてTISの八人が触れようとしたその時、少し遅れて最後の一人がやって来た。


「遅れた」


遠呂智だ。ファストは怪訝な顔をしてから軽く説明しておく。


「蒿里と素戔嗚はエスケープチームって判定だから全員島に行く。早く掴まってクソ共」


「お口が悪いね~」


一番最初に佐須魔が触れた。それに続くようにして全員が触れる。その瞬間全員の姿が消えて、ファストが数秒で帰って来た。島に配置された計十六人は第一戦と同じく軽くウォーミングアップを済ませた。

そして合図が来るのを待つ。三十秒後通知が来る。


《三秒後に開始します》


一秒毎に高い機械音が鳴り、カウントダウンが終わったその時、島中で鳴った機械音に続いて各地で即、戦闘の音が聞こえ始めた。そうして始まる。


《第二戦開始》



[拳視点]


「探検できねぇのかよ!!」


もう少し探索できるとばかり思っていた。だが人数の問題なので仕方無いのだ、各地で既に戦闘が始まっている。それに比べれば不意打ちをしたりしてこないだけマシに感じる。

奴はそう言う所だけ妙にしっかりしているのだ。だが相性が本当に悪い、拳は手加減が出来ないのだ。


「さて、やりましょうか」


相手は原だ。能力的に手加減しなくてはいけない。ただ調子が乗っている訳でも無いので少々難しいだろう。ひとまず誰か対策出来る人が助けに来るまで何とかするだけだ。

倒すことは出来なくとも時間を稼ぐことは出来る。原は結構厄介な相手なので引き留めて置くだけでも相当アドバンテージだ。ただ一つ問題点がある、原は殺しに来る。

時間を稼げれば良い拳と違い、原は本気でやっているのだ。そこで何か策に嵌まり倒されたら元も子もない。普通なら嵌まらない作戦でも拳はまんまと嵌まってしまう。そこが一番不安点である。


「よし!!行くぞぉ!!!」


身体強化をフルパワーで発動した。初っ端から全力を出すとは思っていなかった。と言うか原に対してなら身体強化を使わない方が良いまである、ある程度弱めて攻撃しなくては回復されてしまうからだ。

なのにも関わらず拳はそんな事無視してぶっ飛ばそうとそしている。何か戦法なのかもしれないが拳の事だから考えるだけ無駄だろう。


「じゃあ僕も」


原も戦闘体勢に入る。そして拳が動き出すと同時に始まった、地味でありながらも大胆な幕開けが。



第二百七話「確認」

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