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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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第二百六話

御伽学園戦闘病

第二百六話「欲しい花丸」


[ベロニカ視点]


思っていた以上に雑な始まりだった。だがすぐにある人物の元へと向かう、全速力で、おそうじをする為に。片手にはモップが握られている。

だが道中一回振るう事も無く急いで走る。


「うお!なんや!」


横目で礁蔽を捉えたが興味が無い。兵助に会いたいのだ、急襲作戦ではタイミングが悪く戦ている所を見せられなかった。だが今回は違う、直接見せてあげられるのだ。

ただ一つ問題点があるとすれば他の奴が乱入する可能性があるのだ。ベロニカは強いが多人数戦は単純に苦手だ、克服できるものではあるが時間が足りなかった。大会が始まる前までは別の事を鍛えていたからだ。


「…!どこに!」


感じていた霊力反応が消えた。そして遠くに行ってしまった。一度心を落ち着かせ霊力反応を感じ取る。するとその場には兵助を含めた計五人の霊力を感じ取った。

兵助、紫苑、礁蔽、虎子、四葉だ。

どうやって礁蔽が先回りしたのかは不明だ。だがそれ以上に看過できない事がある、四葉と虎子だ。元々兵助と戦いたいと言っていたはずなのに何故当然のように戦っているのか、それが分からない。

妙な苛立ちと焦りを覚える。スピードアップし物凄い勢いで距離を縮めていく。


「なんで…あいつら許さない!」


この時ベロニカは意識していなかったが始めて友人に対して憤怒の感情を抱いていた。寛容で、基本何でも許すベロニカが。だが今気にしている事では無いのだ、一秒でも速く兵助の元まで行かなくてはやられてしまうかもしれない。

残り数百メートル圏内まで近付いた。既に戦闘は終わっているようで二人の敗北を伝える通知が来ていた、当然見ていなかったが。そして住宅街目前、そこで鉢合う。


「お、ベロニカ」


紫苑だ。すぐに退かし更に先を見る。すると兵助と礁蔽が何か話し合っている。すぐさまそちらに行こうとするが視界が揺れ出した。リアトリスだと理解したベロニカはモップを紫苑の方へ向けながら拙いながらも全力で威嚇する。


「邪魔、早く解いて」


「なんだよ怖いな」


そんなやりとりを交わしていると兵助が二人に気付いたようで駆け寄って来た。そしてリアトリスにやられているベロニカを見て体を支える。


「大丈夫?」


「…はい」


「良かった。それで、なんで不意打ちしなかったんだい?というか皆いなくなっちゃったよ?」


「知ってる…でも…何も戦わず棄権だなんて出来ない…死んだ三人の為にも」


「そっか。それじゃあ紫苑とやるかい?」


「…」


「良いからさっさとやろうや、わいらだってあんまし時間無いんやで?わいも時間無いしな」


礁蔽が急かすがベロニカは黙ったままだ。困り果てる三人を放置するようにベロニカはモップを強く握りしめている。このまま長引かせると面倒くさい、一応だがこれは生放送されているのであまりモタモタしたくない。別に見世物になりたいわけでは無いが自分が見ていたら展開が遅いとイライラするのは間違いない。


「どうする?ベロニカ」


兵助がそう訊ねると動きがあった。丁寧にモップを地面に置き、体を起こしながら右手の手袋を口で外す。そして右手で手に持ち、兵助の元に投げ付けた。

三人は当然意味が分かる。決闘だ。それと同時に兵助は意味を理解した、何故ここまでやって来たのか。半年前宿題を出したのだ、「次までにはなんで楽しかったか考えてみると良いだろう」という旨の。

今まで様々な用事が重なり答えを聞けなかった。ただようやく、やって来たのだ、答える時が。


「ごめん、紫苑、礁蔽。先に流を捜しに行ってくれ、僕はここで待ってる」


「…しゃあないなぁ。わーったわ、ほな行くで紫苑」


「はいはい…ったく」


言われた通り二人は離脱した。結構ボロボロになってしまっている住宅街だが別に全力で戦いたいわけでは無い、答えることが出来れば満足なのだ。

モップを広い、ゆっくりと距離を取る。兵助は全く動いていないが構えてはいる。ただ別に見合っていても仕方無い、動き出した。ベロニカは対象を兵助としてお片付けを開始している。


「はやっ!?」


驚きながらも距離を詰めて来たベロニカの手を取って遠くに放り投げる。まだ至近距離からだったので何とかなったが遠くから身を隠し、隠密のように近付かれると厄介だ。

対処できないわけでないが兵助の身体能力だと少々厳しいものがある。常日頃から霊などで無意識に霊力感知を鍛えているわけでも無いので目視でしか分からない。

ただベロニカは速い、本当に速い。前でも信じられない程速かったのに鍛えたのか更に磨きがかかっている。かと言って力が無いわけでもない。足りない物は無いと言っても良いレベルで強いのだ。


「でもやっぱりなぁ…」


だが能力者の戦いはここ半年で一気に変わった。おおよそ流が正式に学園に入学してからだ。

TISの襲撃の際に始まった守護霊の暴走、戦闘病の兆候。

三獄再生による戦闘の激化、覚醒の兆候、生徒会以外での重傷者。

仮想世界への突入、話でしか聞いていなかったものの実体確認、マモリビト、覚醒。

黄泉の国への突入、ロッド、ニアの潜在的な覚醒、TISとの共闘。

地獄の門が開かれた事によ酔って引き起こされた裏切り、関係に更なる亀裂。

急襲作戦での一部の者が覚醒の真髄を掴み、戦闘病を発症、死屍累々。

この八ヶ月間で二つの新戦闘法が生まれた。覚醒に戦闘病だ。だがベロニカはそれを持ち合わせていない、それは兵助も同じだ。なんなら戦闘能力を持っていない。

だがそんな兵助には一つ、長所があった。忍耐の強さだ。激化していく戦闘に人知れず傷心する者は決して少なくなかった。だがその中で兵助は正に能天気に過ごしていたのだ。そこが弱さでもあり強さでもある。


「やっぱそうだよね、婆ちゃん…」


それは祖父[沙汰方 小夜子(サタカタサヨコ]から受け継がれた精神であった。小夜子は回復術を極めた唯一の者だった。霊力回復、物理回復、どちらも物凄い精度を誇っていた。

粒子が残っていればそこから再生できる程だ。だが小夜子はTISであった。その当時の年齢は百三十二歳、本来自身に使用する事が出来ない回復術を当たり前のように自身に回復術をかけて生きながらえた。

そこまで生きた理由は二つあった。四人の子がそれぞれ自我を持つ年齢まで育てる為だった。


「ねぇ…婆ちゃん…なんで僕とタルベだけじゃなかったんだい」


それは孫である兵助、そして親にも、そして姉にも捨てられた[タルベ・カルム]であった。二人は非常に回復術が上手く、それぞれ霊力回復、物理回復の使い手として成長していった。当然互いに苦手なだけであって両方使う事が出来たが。

ただ二人はほどほどに成長すると島に預けられた。それは小夜子の体が限界を迎えていたからだった。能力者戦争でも生き延びた人物は既に死んでいたのだ。


「なんで…佐須魔と智鷹なんか…」


だが振り切る事が出来なかった。本来教えるつもりは無かった、それでもとある事情で家と島にいれなくなった佐須魔を見てやるせない気持ちになったのだ。そして[華方 佐須魔]と[南那嘴 智鷹]と共に暮らした。

その時既に兵助達は島に馴染んでいた。だが佐須魔と智鷹は知り合いですらない、そもそも同じ場所では育てられていなかったので面識も無かった。

後々TISが結成され小夜子も加入した。当時からボス(チダカ)は隠されており小夜子もその気配を感じ取る事は出来なかった。それもそのはず、体は本当に限界を迎えていたのだ。

結局佐須魔に能力を意志を受け渡し死亡した。それがタルベ、いやタルベの姉であるTIS重要幹部[リイカ・カルム]からの伝言だった。


「でも、今ここに立ってるのはあの二人がいたからだ。だって礁蔽がエスケープチームを立ち上げて僕を引き抜いて、一か八かで蒿里と素戔嗚に加入を持ち掛けたからここまでやってこれたんだ。

あの二人がいなかったら前大会には出れず、そこで終わっていただろう。だが終わらなかった。四人が加入し二人が抜けた。寂しいけど嬉しいんだ、婆ちゃんの意志が…嘘じゃなかったって知れて」


唐突にフラッシュバックした祖母の顔から連想された思い出、それに一区切りを付けた。もしかしたらこの為に、自分はベロニカにあんな事を言ったのかもしれない。そうも思えてしまう程度には頭がスッキリして、思考がクリアになっていた。

だがそれは区切りを付けたからではない事に、今はまだ、気付けないだろう。


「行きます!!」


ベロニカは律儀にもそう叫びながら走り出す。その顔は妙に真剣で、兵助の心を燃やす。ワクワクはしないから戦闘病ではないのだろう。ならばこの高鳴りは何が原因なのか分からない。

全てがスローモーションに見えた。そして適当な思考から繋がって行く結論。最初は「戦闘病」だった。だがドンドンと繋がって行く思考、ようやくだ、ようやく分かった。


「僕が、おかしいのか」


冷静そのもの。


「僕は、戦闘病じゃない」


もう分かっていた、最初から分かっていた。戦闘病では無く、戦闘能力を持つわけでもなかった。だが強くなりたいと思っていた。コンプレックスなどからではない、意識もしていなかっただろう。

誰も気付かない所で強くなっていた。常人並みになる為に。


「ごめんね。あんな事言ったけど僕は弱いんだ。君が思っている以上に弱い。これでも頑張ってたらしい、本当にごめん。だから本気で行くね。多分勝てないけど!」


兵助の動きが変わった。明らかに速いのだ。何とも言えない、まるで時が飛び飛びになっているような感じなのだ。恐らくだが急に高速で動き始めたので霊力が追いついていない。

霊力が置いて行かれている。そしてそれが人型を保っているのでまるで飛び飛びになっているように見えるだけだ。脳では理解できる、だが目では理解できない。


「なんで…!」


「本当に分かってない?君が遅いんだよ」


これは嘲笑でもブラフでもない、本当にベロニカが遅くなっているのだ。訳が分からない。物理法則が吹っ飛んでいる。だが翔子の能力みたいな感じでは無く体の制御は出来る。それに兵助もしっかりと視認できている。

その時、この空間の異常性に気付いた。


「霊力濃度が、濃すぎる」


「大正解、花丸だよ」


原因は兵助ではない、勿論ベロニカでも無い。原因はたった一つの物体、草薙の剣だった。何分も前に破壊された草薙の剣が今更暴れ出したのだ。

溜まりに溜まっていた霊力が溢れ出した。とんでもない量でこの島全体の霊力濃度が九割九分と言う訳の分からない状態になっているのだ。

だが本来と違って息が出来る。到底理解は追いつかないだろう。だが事実である事に変わりは無い。そして何故か動きが遅くなっている。


「皆から聞いたんだ。流が守護霊に憑依された時、流の周りだけが濃度十割になったそうなんだ。その時は気付かなかったんだけどさ、当時の流にしては速すぎたそうなんだよ。

でも僕は思った。多分霊力濃度が濃すぎる場合は何らかの異常が発生し、その空気に触れている者は速くなるんだろうって。でも実践する事は出来なかったよ。まぁ予想はしていたけどね」


「でも…貴方は!」


「そうさ。僕は動ける。そりゃそうだよ、回復術ってのは高度な霊力操作が必須条件だ。紫苑よりも何段も精確な霊力操作がね。そしてここでは霊力が全てだ。霊力操作は感覚的にでも霊力が何たるかを理解していないといけない…婆ちゃんが言ってた事だ」


そこまで言われれば否が応でも分かってしまう。兵助は感覚的、またはぶっ飛んだ理論に基づいて霊力を理解している。だからほぼ全てが霊力で構成されている空間でも動けるのだろう。

他の物体は視覚では分からない程小さな違いがある。だが兵助にだけは無かった。当たり前の様に動いているのだ。そしてそのままベロニカをぶん殴った。


「ごめんね。綺麗な体に傷は付けたくないけど、負けられないんだ」


「気にしないで、元々気にしないから」


「良くないけど…それは良かった」


もう構う必要は無い。全力でベロニカを倒すだけだ。幸い運は味方している、速度はどうやっても兵助の方が速いのだ。ただほんの一瞬でも油断したら低速度の世界へ投げ込まれるだろう。

普段の回復でも多少集中はするがその何十倍も集中しなくてはいけない、神経をすり減らしながら。


「もうちょっと速ければ何とかなるのに!!」


明らかに怒りを表にしている。ベロニカにしては珍しい事だ。それは普段関りの無い兵助でも分かった。明らかに表情が違う、血眼になって兵助を倒そうとしているのだ。

その様子を見て何か違う、そう感じた。あの時言った言葉に意味は無かったのかもしれないが今意味を付けてしまえばいい、ベロニカに、しっかり笑ってほしかったと。


「それで、笑えるのかい」


「え?」


「僕は言ったはずさ。なんで楽しかったのかって。僕は許さないよ、戦闘病とか」


「…分かった」


実は戦闘病だと答える気でいた。だが今駄目だと言われた。ならば何としてでも笑ってみせる、今までろくに笑った事が無いが今なら出来る気がするのだ。

モップ片手に、遅い体にイライラしながらも距離を詰めようとする。だが兵助は動きが速いので捉えることは出来ない。このままだと負ける。絶対に負けたくない、笑いたい。だから、どんな方法でも良い。


「行けるはず」


モップをぶん投げた。すると思ってもみなかった動きを取る。曲がったのだ。まるでモップ自身に意識があるかのように、兵助に向かって飛んで行ったのだ。

流石にそんな動きをすると予想していなかった兵助は逃げの体勢に入る。どうせ遅いだろうと思っていたからだ。だがこの予想も外れた。

何とモップはいつもと同じ速さで移動している。その事に気付いた時には既に遅かった。とんでもない激痛と共にモップが地面に落ちた音がした。

腕を確認すると明らかに折れている。自分に対して回復術は行えないので面倒くさい。ひとまず今は物に身を隠すのが良い、ベロニカは攻撃方法を見つけた。しかもそれは兵助にとって回避不可能と言っていい程に強い攻撃方法だ。現在優位に立てているのは霊力濃度の関係だ、逆に言えば普通の状態で動けるモップに対しては何の優位性も持たない。

勝てないのだ。


「…どうしよっかな」


「逃げないで!!」


ベロニカが新しいモップを生成し、次の攻撃を行った。再びモップを投擲、身を隠していた街路樹を叩き割った。すぐそこで強い衝撃が走ったのを感じた兵助は驚く。


「ひえー怖いね」


特に焦っている様子も無い。だが普通に危ないので逃げる、今度は適当な家の中にダイブした。逃げたは良いもののあまり余裕は無い。霊力濃度は時間が経つにつれ低くなっていく傾向にある。しかも今回は異常な霊力濃度空間なのだ、急激に薄くなってもおかしくはない。

対策は、無い。速攻で決めるぐらいだ。だがこの戦いの目的は勝利ではない、ベロニカを正解に導く事だ。そのための準備は出来ているのだ、後はベロニカ自身が何とかするだけである。ただこのままだと無理そうだ、ヒントぐらいは与えても良いだろう。


「一つ教えてあげるよ!普通に戦闘する気持ちじゃ駄目だよ!もっと殺す気で!殺意を込めて!」


それは明らかに戦闘病への誘導だ。だが兵助が言うには間違いないのだろう、そう信じ殺意を込める。


「じゃあ、殺します」


この戦いは後五秒で終わる、たった五秒で。


「死ね!」


殺意を込め、思い切り振り絞りぶん投げた。するとモップは今まで以上に荒唐無稽な様を見せた。まるで兵助をロックオンしているかの様にジグザグと、家の扉を突き破り、直後ガラスを突き破り、再びガラスを突き破り、飛び出してきた。兵助と共に。

だが飛び出したと言う事は体勢を帰ることが出来ないと言う事、避けられないのだ。モップは槍の様に、兵助の心臓スレスレを見事に貫いた。

すると兵助は少し笑いながらベロニカの方を向き、微笑みながら言った。


「エクセレント、花丸あげちゃう」


意味が分かった瞬間、心が跳ねた。自分では自覚していなかったが笑っていたらしい。

ぎこちない笑いではあった。だがそれでも良いのだ。しっかりと笑っているのだから。


「いったた…流石に胸部貫くモップは見た事無いな…」


「ごめんなさい…」


「いや、良いんだよ。これが終われば回復は挟めるから、急いでタルベの所行かなくちゃいけないけど…モップってどっちだい?霊力か物理か」


「物理…」


「それなら全然大丈夫だね。それじゃあ、一旦終わってくれるかな。普通に辛いから」


「分かりました…」


申し訳なさそうにしている。ベロニカは普段誰にもそんな態度は見せなかった。だが兵助に対しては全くそんな事無かった、既に心を開いている。兵助自身もその事は感じ取ってはいたものの別に特段態度を変えたりはしない、むしろその事に対して全く触れないので気付いていないのかと不安にもさせる。

ただひとまず、今は棄権をする。


「えーっと…これ…どうやって」


焦っているのかベロニカは上手く時計を操作できていない。すると兵助が覗き込み、サササッと棄権ボタンまで移動した。


「後は君が押して」


「分かりました。ありがとうございます」


そしてベロニカは言われた通りボタンを押した。するとその瞬間、時計に三件の通知が届いた。


《チーム〈中等部〉[マーガレット・ベロニカ] リタイア > 棄権》


《チーム〈中等部〉 の 残り人数が 0 となったため 第一戦 中等部 VS エスケープチーム の戦闘を 終了します》


《勝者 〈エスケープチーム〉》


直後島にいた全員が待機島へと移動した。ファストによって持って行かれたのだ。全員治療室にいる、まず重傷者から回復させ、全員を回復した。

咲は何も出来なかった事を悔やんでいたが大会の仕組みなので仕方無いと励まされる。そして目を覚ました流にも励まされた。その間もファストは流の方を睨んでいた。

するとタルベと共に回復を行っている時子が口を開く。


「死者は三名、鹿野 真波は完全死。小田町 美琴は黄泉行き。佐須 陽は…ちょっと分からないの。でも…多分完全死だわ」


学園側同士でここまで死者が出るとは予想していなかった。だがそれより衝撃的な事がある、素戔嗚だ。その場に素戔嗚の姿が無いのだ。

目を覚まし、その事についてラックが言及した。するとファストが溜息をつきながら呟いた。


「ゲートで行ったよ、先に」


それだけでもどう言う事か分かってしまう。素戔嗚は裏切ったのだ、再び、TISに行ってしまったのだ。すぐに礁蔽が二人に詰める、当然出戻りの二人に。

すると流は本当に分からない様子なのだが蒿里は黙り込んで何も言わない。その様子で察してしまったメンバーは追及する。ただ一向に口を開こうとはしない。


「回収来たぞ~早く来てくれ、めんどい」


そう言いながら部屋の扉を開けた。そいつは本来ここにはいないはずの人物だ。だが言動とそこにいると言う事で分かる、やって来た男[霧島 透]はTISに加担しているのだと。


第一戦《勝者 〈エスケープチーム〉》



第二百六話「欲しい花丸」

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