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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第八章「大会」
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第二百三話

御伽学園戦闘病

第二百三話「完封」


[ラック視点]


やはりラックも変な場所に配置された。詳細に書くと葉が落ち切ったエリアだった。普通に考えると冬なのに他のエリアでは葉が散っていないのは不思議、だがそもそも地獄の門がある時点で変な風になるのは当たり前だ。寧ろ特に大した変化も無い学園のある島が異常なだけだ。


「とりま敵探すか。ホントに一秒も無駄にできないからな、精神面的な負担がデカい」


その対象は紫苑だ。大会の少し前に話した大事な事、それが紫苑にとっては重荷になる可能性が高く心配なのだ。だからといって紫苑以上の適任も無い、仕方無かったのだ。


「急襲作戦後も叉儺からの連絡はあった…けど何とも言えなかったんだよな…三人が帰って来た時からの連絡は無かったし…」


するとそこで通知が来て、ほんの少しあとにもう一件通知が来る。流と素戔嗚が勝利した事を記載したものだった。これまでの大会を鑑みても明らかにハイスピードだ。

咲の気配は消えた。ラックは出来ればベロニカや四葉あたりと戦いたい。ただ四葉に対しては蒿里が一番強い、といっても蒿里には真波を任せたい。

"まだ"本気は出せない、もう少しテンションが上がってからだ。


「一番来てほしくない美琴はやってくれたからな。とりあえず適当に探すか」


大会はここも難しい、それぞれ出場チームの出場メンバーを予測、対策しメンバーを選ぶことになる。だがエスケープは最低人数なのでその点は気にしなくても良い。ただ逆に言うと少しでも戦闘する相手を間違えると崩壊しかねないのだ。

その後の事もしっかりと考えなくてはならない。戦う相手も適時選択が良い。


「まぁでもなぁ…今回は基本誰にでも戦える……と言った矢先だが、お前か。嫌なんだけどな」


前方から一人の少年が顔を出した。だがその少年の背格好は正に少女、到底男の子とは思えない。ただそれ以上に霊力反応を感じる事が無い。それもそのはず、霊力を全く持たない突然変異体の一パターン『無霊子』だ。


「躑躅」


「あなたなら、結構戦えるはず」


「いやー二番目に戦いたく無いんだけどなぁ。まぁ何とかなるか」


結構気楽だ。だがこの時ラックは気付いていなかった、躑躅に勝つ事が自身の使命を果たす事なんかより難しい事に。

二人は戦闘体勢に入る。

ラックは身体強化は温存、血流透視も、人術も、呪も全て温存だ。一気に放出しなくてはいけない場面が絶対に来る、それが分かっているから。

躑躅は今より少し距離を取ってから呼びかける。見えない相棒を。


「頼むよメルシー、僕が合わせる」


そして始まった。先に動いたのは当然ラックだ。身体強化など使わずともフィジカルは人間の領域ではない、一瞬で距離を詰めまずは霊であるメルシーにぶん殴った。

特に霊力を集める必要も無く、効いたようだ。ただそこまで痛みはなかったように感じる、その代わり躑躅が痛がっている。紫苑や須野昌、康太など様々なバックラーから話を聞き、ある仮説を立てたが当たっていた。


「やっぱバックラーの霊って本体が肩代わりできるんだな、ダメージ。降霊術は出来ない、オーバーキル以外では。でもバックラーならそれがデフォルトで出来てしまう。

強いな。でもまぁ、降霊術と同じ方法で倒せるな、オーバーキルだ」


温存しておこうと思ったがここで体力を消耗するのも良くない、この一撃で落とせるのなら結果として最小の消費になるだろう。そう考え身体強化をフルパワーで三秒発動した。そしてメルシーを殴った。

だが今度はメルシーが痛がって躑躅は何の反応も見せない。すると躑躅が口を開く。


「小手調べ、終わりです」


身体強化が解けた。それと同時にメルシーが突っ込んで来る、と思うのも束の間姿が消えた。だがこれも紫苑から聞いている、背後にテレポートしてくることを。

振り向きながら殴り掛かった。だがその拳は空気を貫く、背中には何もいなかった。瞬間移動を繰り返しているのかと思い背中を触ってみたが何の感触も無い。


「二つってところか」


一つ目はただのブラフで躑躅の背中にいる。

二つ目が訓練や何かの拍子で能力が強くなったか。

結果はすぐに分かった。少し意識を霊力を感じ取る箇所、首元に集中させた。そして感じ取った、右側にいる。視線を向けるとそこには当然のように何も無い場所に立っているメルシーの姿があった。


「やっぱ進化してんのか。もうテレポートが背後じゃなくてもできる様になってやがる」


正直な事を言うと非常に負けが濃厚になった。何故ならラックはメルシーに対抗する手段が呪しかない。だがラックの呪はとある制約に近しい条件によって霊力消費が普通より多い、呪・封を行うだけでも相当な消費をしてしまうのだ。

そもそもラックの霊力はそこまで多くない。それ故今回の戦いでは是が非でも呪が使えない、TIS戦で大技をぶっ放さなくてはいけないからだ。


「…俺の実力だけで倒すにはちょっと厳しいかもな…今日も力、貸してくれよ」


するとラックは再び身体強化を発動した。だが先程とは打って変わって効力は最低、ほぼ意味が無い状態だ。だが今の目的は単純な強化ではない、身体強化の仕組みを利用するのだ。

ただ多少は強くなるので優位に持って行く事は楽にになる。すぐに動き出した、あまり長い時間はかけていられない。


「それが無意味な事に気付かないんですか」


戯言だ、気に留める必要も無い。メルシーに蹴りをお見舞いした。普通のバックラーならオーバーキルだ、躑躅にもダメージがいくはずである。

だがオーバーキルでも無かったようだ。メルシー自身もピンピンしている。不自然には感じたがもう一回全力で蹴る、だが虚しくも意味は無いようだ。


「どう言う事だ!?」


困惑、ただ策は練る。でも解決策が見えてこない、まずなんでメルシーがピンピンしているかが分からないからだ。とりあえずそこを解明しなくてはどうにもならない。

本体である躑躅は全くと言って何の動作もしていない。ただラックの方を見つめているだけだ。そしてメルシーも何もせず止まっている。それが不気味で何とも言えない気持ちになる。


「僕は弱いですよ、メルシーだってそこまで力が無いからその能力を活かしきれていない。だけど知識で勝つ、あなたは僕と生きてる年数が違う、そう感じた。それと同時に知識量も半端じゃない、だからそれを利用するだけ!」


その発言はヒントになり得た。だがラックは気付けなかった。自分のミスに。

特に意味も無く、温存必須の霊力を使用して無意味な攻撃を続ける。このままでは無駄に消費してしまう。二人共戦闘の意思は無いようにも思える。なので一旦身体強化を解いて殴り掛かった。

すると何か、ほんの少し、小さな変化があったようにも感じることが出来た。ただこれも何なのか分からない、恐らく第六感で感じた事なのだろう。


「…!」


先程の違和感には気付けなかった。だが別の方法で試す事にした、躑躅は言った「知識で勝つ」と。ならばどうにかして嗅ぎつける、確かにラックの知識量はおかしい。特に能力に関する事となれば。

たった一つの分野、無霊子だけで暴く事が出来るはずだ、躑躅の戦法を。


「霊力の感じから俺が身体強化を発動したのは分かっただろう」


「はい」


「やっぱな。となると呪も使用した事、分かってるよな」


その瞬間躑躅の目の前に小さな影が出来た。すぐさま上を向くがただの鳥だった。だがそれが命取り、暴かれた戦法、ブラフもブラフ、両者によって引き起こされたブラフ合戦はラックが勝利した。

刹那躑躅の体にとんでもない激痛が走る。そして血も出て来た。一瞬の油断を突かれたのだ。だがラックはメルシーを殴っている。その時躑躅も気付く、策が突破されて事に。


「まずな、無霊子は絶対に他者の能力が使用したことに気付けない。霊力が無いんだから霊力反応も何もねぇんだよ。だけどお前は俺が身体強化を使用したことに対して既に知っていると答えた。その直後に発動していない呪を警戒して鳥の影を発見、空を仰いだ。

となればやっぱり感じ取ってはいなかったんだろうな。でも身体強化の件に対しては相当自身がある様に見えたぜ?迷いも無く言ったからな」


絶望、躑躅の道は途絶えた。


「恐らくだが予想だったんだろうな、俺が何か言って身体強化を発動したと悟った。だから分かってたんだろう。

そんでお前は知識があった、なら知ってるよな、身体強化時の霊力移動」


霊力は普段体内を不規則に動き回っている。だが何処にあるかも分からない能力発動帯を使用して、能力を発動した場合ある一定の場所へ霊力が集められ、攻撃が放たれる。

ただ中には発動者自身に使用する能力もある、良い例が身体強化だ。そんな能力は放出しない、既に能力発動帯を通った霊力、として体内でうごめき合う。

そして身体強化は無意識で体の中央に霊力を集め、意識すると普段よりも簡単に霊力を一点に集中させることが出来る。ラックはこれを頻繁に使用していた、拳に霊力を集めて放てば霊に対する威力が上がるからだ。

だが無霊子に対して霊力を増やした場合は逆に威力が下がる、それどころか無効になる。そもそも霊力が関係する攻撃は相手の霊力が少ないと威力が下がるのだ。そして無効になる攻撃を全て躑躅が受ける、それだけだったのだ。


「そっち目線結構運が絡んでるよな。でもこっちからすると身体強化を使ってるか使ってないかなんて決められる、だから身体強化を解いてぶん殴った。

そうすれば普通の、霊力全くなしのパンチがお前に飛んでくだろ?全部受け持ってるんだからな」


やはり勝てなかった。圧倒的な知識と戦闘センス、そして自身の足りない戦闘センスによって。

だがやりようはある。第一の手が潰されたのなら第二の手を使用すればよい。躑躅は仮想世界の時まで全くと言っていい程戦闘を行ってこなかった。無霊子だからろくに何も出来ないだろうと。

ただ誘われ、紫苑と戦闘を行い相棒の姿を見て、名前を与え、熱がついた。その後は必死に文献を読み漁り、様々な事を友達と試した。

その結果ある事を知れた、相棒の『本当の能力』だ。そんな大それた発見ではない。だが強くなった、何も実らなかった長い期間を得て。


「一つ、教えておきましょう。僕の相棒、メルシーの能力は変わっていない。ただ僕が引き出せていなかっただけなんだ、本当の力を。

これが完成、覚醒をしない普通(デフォルト)での完成」


その瞬間メルシーが姿を消した。今度こそ背後かと思い振り返ってたが違う、むしり真反対だった。ラックが見ていた方向に瞬間移動してきた。

振り返りながら横目で見る事よって察しが付いた。本当の能力、今までのはただの思い込みだったのだろう。

メルシーの能力は『背後に瞬間移動』から『瞬間移動』へと変化したのだ。

ただそれが第二の手ではない。瞬時に頭をフル稼働し思いついた最強の策、それを行使する、強制的に。



第二百三話「完封」

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