第百九十七話
コピペミスがあったので再upです。
場所は終盤の
~そう信じて進展を待つ。
という所からです。ご迷惑をかけますがこれからも何卒よろしくお願いします。
御伽学園戦闘病
第百九十七話「待機室」
「さーて今回出る面子を決めて行くよ~」
玉座の間に集められたのは智鷹、神以外の重要幹部と三獄であった。玉座に座っている三獄を前に重要幹部はそれぞれ好きな体勢で話を聞く。
すると佐須魔が開口一番衝撃の言葉を放った。
「ボスと神、そして砕胡は出場出来ないから」
ボスはまだ分かる。未だ全員には姿や声を晒している訳ではない、恐らく革命時に公になるはずだ。そして砕胡と神だ。天仁 凱の魂を収める為に砕胡はボロボロになった。まだ完全には復活できていないのだ。神に至っては体を形成しきれていない、最低でもあと一年はかかるはずだ。
だが逆に言ってしまうとその三人以外は全員参加権があると言う事になる。まず確定しているメンバーを発表された。
「俺と來花は確定ね。三人いなくなったから結構空きあるよ、出たい人は挙手~」
そう言うと数人が手を挙げた。矢萩、健吾、原、叉儺の四人だ。リイカ以外は全員手を挙げた事となる。だがそれ以外には誰もいない。最低人数の七人にも届いていない。
「うーん…三人が抜けっちゃったから人数が足りないな…どうしよっかな~…あ!そうじゃん!あいつ呼び戻そうぜ!」
全員納得した。すると佐須魔は『阿吽』である人物へと招集をかけた。『すぐには帰ることは出来ないが大会には間に合う』と返答が返って来たので七人が決まった。
[華方 佐須魔][翔馬 來花][榊原 矢萩][西条 健吾][原 信次][桐生 叉儺]、そして[山武 遠呂智]に決定した。急襲作戦にて貴重な重要幹部を二名失う事となった。
だが何とでもなってしまうのだ。残念だがTISは強すぎる、学園側が勝つ手立ては無いに近い。少なくとも"あいつ"が対TIS勢力に付かない限り。
「とりあえず大丈夫。傀聖君は中立だからね、あいつが敵にならない限り僕らの勝ちは近い。
だが言っておこう、ラック・ツルユの魂は何があろうと手に入れろ、あいつの能力が欲しい。
更に言おう、死ぬ覚悟で喰え、最悪俺が喰った奴の魂を喰ってやる。今回の目的は勿論殲滅もあるさ、だがそれよりもあいつの魂を手に入れるんだ!」
目標が定まった。誰もが楽勝だと感じていた、來花以外は。少し寂し気に俯き、何かを考え始めた。佐須魔がどうしたのか訊ねるとテンションが低い声色で呟いた。
「私は、勝てるだろうか」
「勝てる勝てる。僕だって勝てるよ」
「違うんだ。佐須魔は手数的に負けることは無いだろうが私の手数は少ない。呪と干支神しかいないのだ、彼にとってこの二つを対処する事ぐらい簡単だろう…不安が拭えないのだよ」
「そっか~じゃあやめる?」
「いや、出るよ。そろそろ終わらせたいんだ、流と咲のためにも」
「咲ちゃんが聞いたら「父親面しないでください」とか言ってきそうだけどね~」
ニヤニヤしながら完璧に煽る言いぐさだ。すると來花は溜息をつき、説教をしようとする。だがそこで重要幹部の一人が遮った。矢萩だ。
「私は負けると思う、その場合回復はしてくれるの」
「勿論するよ~これ以上失うのは厳しいからね~まぁ、譽とかアリスが帰って来てくれるなら別だけども。今から育成するのは間に合わない。みんなで頑張ろうか、信頼してるからね」
そうして四チームの申請は完了した。これから二週間程度は準備期間となる、死が目前に迫ってきているので恐怖を感じる者も少なくは無かった。
だがほぼ全員の覚悟は既に決まっている。もう引くことは出来ない、決戦だ。中には今回で終わるとは思っていない奴もいる。だが出場する者は今日、ここで全てを終わらせると決めているのだ。
2012年 12月31日
世間は大晦日、能力者は地獄。
時刻は十九時、ゴールデンタイムが幕を開けたその時地獄も共に幕を開けた。大会は全世界へと中継される、能力者同士が殺し合いをしているのを見るなんて大半の健常者にとっては面白くて仕方ないからだ。
まずは出場者に配布する物の説明からだ。
[エスケープチーム]
「ひっさびさやな…ここ」
そこは大会用の島のすぐ側にある小島だ。待合室のような場所になっていてすぐにでも大会の島に移動できるようになっている。そして配布された物とは小さな時計ののような物だった。
「これは何?」
流がそう訊ねるとラックが説明を始めた。
「これはその戦闘の戦況などを報告してくれる便利な機械だ。誰が出場しているか、誰がいつ戦闘不能になったか、残っている人物とか色々書いてくれてある。そして棄権が出来る、やばそうだったらすぐに起動して棄権しろ。棄権したプレイヤーに攻撃した時点で失格だ。
けど能力の詳細とかは流石に無いからな、気を付けてくれ」
「ありがとう。でもこれ壊れそうじゃない?」
「それを守るのも個人の役目だ、これが壊れたら正直助けにも入れないし戦況が目視や音でしか把握できなくなるからな。と言ってもこれギアル製っぽいから霊力は流しても大丈夫そうだ。
身体強化持ちに気を付けた方が良いな」
触ってみると分かるが結構硬い、そう簡単には壊れないだろうと思いながら全員腕に装着した。そして自分の情報を入力しておく。エスケープチームに属していると打ち込んでから名前を入れるだけのようだ。
そして準備は完了した。後は進行を待つだけとなった。
「始めて出たけど変な感じだな」
紫苑がそう言った。確かにそうである。沢山の人物の命がかかっているのにも関わらず皆呑気に、留まっている。進行もはっちゃけているように感じる、自分たちは遊びで使われる動物ぐらいにしか思われていないのだろうと分かりたくも無いのに分かってしまう。
だが関係ない。今は第一戦の組み分けを待つのみだ。
ただ蒿里だけが気にかかる。妙に霊力を放出しているのだ。
「なんで霊力放出してるの?」
兵助が聞く、すると蒿里は焦ったように放出を止めた。
「ぼーっとしてた?」
「うん。ごめんね、これからどうなるか想像してて…頑張ろうね…」
「うん!一緒に勝ってみんなで外で暮らそうね」
その時蒿里は目的を思い出した。本来エスケープは皆で安静に外で暮らす事を目的にしていたはずだ、と。だが最近の騒動でその事が頭から抜けていた。
再度思い出す事になると何だか寂しくなって来る。何故なら叶う事はないからだ。蒿里は悟っていた、佐須魔に勝つのは不可能だと。まず渡り合うには薫やライトニング程度の力が欲しいが今大会にはそこまでの実力者はいないのだ。
覚醒や異常な反応が出ればまた別だがあまり期待は出来ない。精々足掻いて死ぬ、心のフチではそれが最善策だと思っている。するとラックはそれを見透かしているような発言を飛ばす。
「俺は足掻かない、死ぬなら潔く死ね、蒿里」
「え…」
「顔に出過ぎだ。気を付けろ」
ラックは何か小さな入れ物に入った飲み物を口に含み、飲み込んだ。
「何飲んどるんや?」
「酒だ、百…七だったかな。百七年物だ、久々に飲んだ」
「は!?なんで今なんや!?」
「最後になるかもしれないんだ、良いだろちょっとだし。俺酒に関しては物理的に耐性があるからよ」
「ほんならええけど…酔って変な行動とかせんといてや……ところでそれ美味いんか?」
「まぁ…よく分からん。旧友に譲ってもらった物だからな、正直味は好きじゃない寄りだ」
「ほんまか、じゃあ飲ませてくれや」
「駄目だ。お前は酔って地獄の門を開く、分かってるのか?島の扉は中央だぞ、どうなるかわからん」
「なんでや!飲ませてくれや!」
「お前は飲めてビールだろ!駄目だ!」
そんなこんなでエスケープチームは楽しく待機所で待つ事となった。
[中等部]
「さて、皆さん精一杯頑張りましょう。万が一エスケープチームか生徒会と当たった場合は各々の判断に任せます」
「任せてよ咲ちゃん!」
「頼みますよ、虎子さん…それにしても真波さんはまだでしょうか」
「真波は多分直前で飛んで来るよ、大事な時はいつもそうだから」
美琴はこの中で一番真波と仲が良い。だからこそ分かるのだろう。ただ不安だ、八人パーティーで申請しているので相手が九人パーティーだった場合一人減らされて八体八になってしまう。
その場にいなかろうが申請したメンバーの数対相手の最高人数での戦いになる。なので圧倒的に不利になってしまうのだ。ただあんなにズバッと自分の意見を切り通して来た真波は美琴も他の者も始めて見た。絶対に来てくれるだろう、そう信じて進展を待つ。
すると三分ほどして組み分けが発表される事となった。
「決まり…ました…」
咲は唖然としている。皆も待合室に置いてあったテレビで確認する、全体で見れば最高なのだろうが中等部にとっては最悪だ。トーナメント表は右からこう書かれていた。
エスケープチーム 中等部 生徒会 TIS
即ち第一戦はエスケープチーム VS 中等部となるわけだ。仮想世界での戦闘の焼き直し、全員見違えるほどに強くなった。今回ばかしはどうなるか分からない、何より兵助が居るので瀕死状態まで持って行く事だってできる。
これが開戦の狼煙となるかどうかは当人達次第だ。だが一つだけ言える、殺し合いはこの試合でも起きる、と。
第百九十七話「待機室」




