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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第七章「TIS本拠地急襲作戦」
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第百八十二話

御伽学園戦闘病

第百八十二話「飛行船(サンタマリア)


(ニューヨークか。たしか…終戦間近に戦ってたよな。ってことは終戦間際の映像なのか…正直始まった頃の情報の方が少なくてそっち見たかったんだけどしょうがないかな)


「早くなーい?僕娘と嫁いるんだよー?いけないよー」


「いや、フロッタには最初から言ってもらう気が無い。ここと周辺の人の警備を頼む。攻め込むのは俺らだけだ、俺ら、四人でだ」


リーダー以外の四人が一瞬動きを止め、その後すぐに問い詰める。だがリーダーはのらりくらりとかわして何も変えようとしない。

意味が分からない。そもそもニューヨークなんて大きい以前に軍事力だってある。すぐに駆け付けられてしまうはずだ。それぐらいは想定しての四人なのだろうが他の四人はそれが理解できないのだ。


「説明してくれ[アイト]、流石にそれだけでは説明が足りないぞ。ここには敵もいないはずだ、話してくれ」


「…出来るわけないさ。悪いが内容的にね」


「それはおかしいだろ!なんで言わない!そう言う術なのか!?」


「だから言えないんだって。分かってくれよ、僕のやり方はいつも変だろう?」


(こいつらがやっていたかは知らないかったけど米国はほぼすべてがこの五人で占領したんだろうな…実に八割を…楽しみだな。でも本当に四人で行ったならどうやって…)


(そう言う事だったんですね)


横からアリスの声が聞こえる。すぐにそちらを見ると同じようにアリスが立っていて映像を目にしていた。途中からなのだが状況はほぼすべてわかるので気にする必要は無い。

ただアリスはここからどう転び、敗戦という終末を辿るのか分かっているようだ。紀太が聞こうとしても返答はない。見ていろ、という意味なのだろう。


「そうなると(わたくし)はフルパワーを全て使い果たしてでも壊しますわ」


「いま何日分溜まってるんだ?」


「丸々一週間分ですわ」


(…?)


(恐らく特殊なタイプの身体強化でその日に使わなかった分を溜めておけるんでしょう。にしてもこの日も戦っていたはずですが…相当タフな方なんですね)


(やっぱアリスも知らない奴なのか?)


(えぇ。現世のマモリビトがこの方達の記録は全て消しましたからね。この映像以外、ただこの映像は消去する際に見落としていただけなのでけど…そもそも映像を記録できるなんて思っていないでしょうね、この[アイト・テレスタシア]は)


すぐに誰の事を指しているかは分かった。何故なら眼鏡男に呼ばれていたからだ、アイトと。そいつは今取り仕切っているリーダーである。

アリスの言いぶりから見てそいつが現世のマモリビトなのだろう。ただ今では姿が変わっている可能性だってあるし何より死んでいる可能性だってある。その詳細が分からないからこそ現世のマモリビトは成り立っているのだろう。

そんなこんなで揉めていると新たに人が部屋に入って来た。


「お父様ーいますかー?」


するとフロッタはすぐに扉の方へ向かう。そして扉を開く。そこにはフェリアが立っていた。


「やっぱりここにいましたか。帰りますよ、ご飯出来てますから」


「わかったー。それじゃお先に帰るねー」


そうしてフロッタは出て行った。ただ明日からのニューヨーク襲撃作戦中はここら周辺を守ってくれという事だけは分かっている。なので心配は無い。


「さて、作戦は話せない。というか無いに近い」


「どういうことでがんすか?」


「まぁやれば分かる。とりあえず今日は寝よう。明日は早い、五時からだ」


「分かったよ…」


眼鏡男は不満そうにしながらも大人しく眠りについた。他三人も適当な位置で適当に眠り始めた。普通ならもう少ししっかりとした寝具などを使ってもおかしくは無いのだが全員床で寝ている。

その事に違和感を覚えた紀太がアリスに訊ねてみると思いもよらない返答が帰って来る。


「わざとでしょう。推測の域ではあるのですが睡眠を取りすぎると何かマズいのでしょう。勿論急襲対策というのもあるのかもしれませんがそもそもここはバレない筈です。地下ですから」


どうやらフロッタが出て行くときに階段を上る音が外に響いていた事で地下だと判断したらしい。そうなるとアリスが言っている通り睡眠があまり良くない方向に傾くのではないかという結論に至った。

そしてこのまま何時間も過ごすのかと思ったその時、視界が暗転する。そして時計を確認すると朝の四時半になっていた。どうやら関係の無い部分は飛ばされる新設設計らしい。


「…丁度良い時間だな」


アイトが目を覚ました。そして数分後他の三人も起床した。そしてそれぞれ朝のルーティーンを済ませて五時ピッタリに部屋の机に集まった。

するとアイトが地図を広げて中身がほぼ無い作戦会議を始める。


「まず潜入方法だが[(ゴン)]の人術を使う。何を使うかは…まぁいいか。とりあえず中央部まで吹っ飛んでから[アーリア・エント・セラピック]、お前の力で全てぶっ飛ばす。

今回はしょうがない。全て吹っ飛ばせ、もう住民に構ってられない。死ぬ奴は死ぬ、それだけだ」


「分かりましたわ。心を鬼にして破壊に尽くしますわ」


「おいらもわかったでがんす!」


「俺は何をすればいいんだ」


「[ラック]は好きにやれ。多分今回は俺らで制御できるレベルじゃないからよ」


(ラック!?よく考えたら眼鏡だし…)


(いえ、背が高すぎます。私達が知っている[ラック]は173㎝とかでしたがこの[ラック]は190㎝近くはあります。恐らく同姓同名なだけでしょう。まぁ能力を見れば大体は分かるはずです)


「了解、《サンタマリア》ぶっ放す」


「頼むぜ。俺らには今情報が無い。今あの街がどうなっているかは何も分からない。だから奇襲で壊すしかないんだ。気を付けろよ、俺はお前らを救えない」


「いつものことでがんす!」


「そうですわ」


「自分の身は自分で守る、死んだ場合は自己責任、最初にそう言ったのはお前だろう」


「ま、そうか。そんじゃ行こうぜ、最高の破壊をしよう」


全員笑っていた。だがそれは戦闘病(くるいやまい)ではない、仲間と共に自分の地位を確立していく感覚が心地よいのだ。その気持ちに憑りつかれ、狂い病は発症した。だがこの笑いは狂い病ではない。

ただの笑みだ。


「行こう、頼むぜ厳」


「分かっているでがんす!」


そう言いながら厳は短剣を手にした。それはアリスと紀太が霊力を流し、今見ている映像の世界へと入るために使用した短剣だった。そしてアイトは剣を背負い、扉を開いた。他の二人は何も持たずに出て行く。アリスと紀太も付いていく事にした。そして外に出る。外は広大な平原であった。

いや、元は街があったのだろう。この戦争で焼け果て、何らかの能力で植生が変化しとんでもないレベルの成長速度で平原と化したの。


(…ここは…)


(…来た事ありますね)


(ってことはあそこに拠点があったのか)


(そう言う事になりますね。今回の件が終わったら行ってみましょうか、久しぶりに旅行もしたいですし)


(色々ルート探してみるよ…というかこいつらどうやってニューヨークまで行くの?ここテキサスの最南でしょ?)


(人術が何だかと言っていましたが…私が知っている範囲で複数人の移動に優れている人術は知りませんが…)


二人が何をするのか見守っていると厳が霊力を使用して術を発動した。まず座り込んでから手と足を合わせ霊力がしっかりと流れるようにする。

その後体全体に流れる霊力を全て一点に集める、顔だ。次第に顔の色が赤に変わって行く。そして赤紫になって来た所で唱えた。


人術・厳・転送(じんじゅつ・ごん・てんそう)


その瞬間四人の姿が消えた、と同時にアリス紀太も飛ばされた。そこはニューヨークの完全な中央、その上空数百メートルだった。このままだと落下死だが当然そんな事にはならない。

ラックと呼ばれた男が能力を発動した。


《サンタマリア》


サンタマリア、コロンブスが乗船していた非常に大きな船である。そしてラックの能力は『召喚』その名の通り特定のモノだけ呼び出せるのだ。

その術で呼び出したサンタマリアが進むのは海ではない、空だ。周囲数百メートル全体の風を切り裂き、その場に現れた。木製で巨大な帆を身に着け、プロペラや何か空に飛べる原理があるわけでもないに浮遊している巨体。ラックが呼び出せるモノの中でも最強格、サンタマリアである。


「適当に着地しろ!」


アイトの指示なんて聞かなくとも何度もやっている事なので問題はない。ひとまず甲板に着地した。普通なら床を突き破ってもおかしくない程のエネルギーはあったのだがビクともしないどころか普通に動き始めた。

四人を乗せたその空中要塞はニューヨークの街に大きな影と、不安をもたらした。だがそれだけではない、ニューヨークはその瞬間最悪の舞台へと変貌した。



ここから始まる。そう思った時だった。アリスと紀太の世界は元に戻った。仮想世界に戻って来たのだ。二人は唐突な帰還に驚き、すぐにでも再開するため霊力を流すが変化はない。

困っているとアリスは一つの提案をして来た。


「一旦これは終わりにしましょうか。帰ってからでも見ることは出来ます。私の方が強いので私が持っておきますね。それでは別行動に移りましょうか、紀太さんは好きに動いて大丈夫です。私はニアちゃんの所へ行きます。それでは」


紀太の返事を聞く事も無く穴から出て行ってしまった。綺麗な肩透かしをくらった紀太は武具を眺め、自分に合っていそうな物を見つけたら回収する事にした。

その後は適当に歩き、玉座の間を目指す。久しぶりに佐須魔との対話をしなくてはいけないと思ったからだ、武具を持ち去るという連絡も。

一方アリスは普通は壊せない壁にドンドン風穴を空けながら進む。ニアの霊力がするところまで一直線で。そこは玉座の間のはずだ。適当な道で進んでいる紀太とは比べ物にならない速さで進んでいく。

そして走り始めてから一分、玉座の間に到着した。扉を開き、中の様子を確認する。だが誰もいなかった、とんでもない霊力は多数感じるのだが誰もいない。


「…?黄粉のような別世界に飛んでいるのでしょうか」


部屋の中をくまなく探していると中心に少し歪みがある事に気付いた。そこからは霊力残滓を感じた、ニアの。目を輝かせなが力を込め、拳を突き出す。

するとグニョメのような何か柔らかいものが曲がったような音がして真っ暗な空間が現れた。


「やはりそうですか。失礼します」


そしてその真っ暗な空間に飛び込んだ。中は本当に真っ暗で何もないかのように見えたが霊力を感じ取ることが出来る。多数の怪物が放つオーラ、一つの空間で話し合っている。

そこからニアの霊力を感じ取ることが出来た。凄まじい速度でそちらへと向かう。すると先の方に何かが見えて来た、光だ。蛍光灯の光、そしてその光を漏らす、教室の窓。


「平山の空間ですか。御伽学園の教師と三獄ですか…ニアちゃんもいますね!」


光が見えてから二秒後ガラスの元まで到着した。ただ中は見えない。真っ暗なのだ。ただ問題はない、ニアも同じ方法で入ったのだ。ぶち破れば良いだけである。そう思った時横のガラスが割れている事に気付いた。

少し中を除いてみるとニアが立って話していた。我慢できなくなったアリスはニアの元へ駆け寄り抱き着いた。そして会議にも乱入する。


「見ました。過去の映像。素晴らしかったですよ。」



第百八十二話「飛行船(サンタマリア)

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