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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第七章「TIS本拠地急襲作戦」
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第百八十一話 

御伽学園戦闘病

第百八十一話「武具庫」


[アリス]

一時協力体制に入っているアリスと紀太は同時に突入した。当然他の者と同じようにランダムテレポートでバラバラになった。アリスは食堂に飛ばされた。

一年半程前まではここにいたので少しだけ懐かしくも感じる。ただそんな事に浸っている暇は無い、ニアの霊力を感じる。ワクワクしながら移動を始めた。

ただ先にやるべきことは武具庫でとある武具を手に入れる事だ。それには百年前、能力者戦争時の映像が込められている物だ。


「うーん…でも今日は少しバグが起こってますね。道が変わってる…まぁ行けるでしょう」


全くと言っていい程重く受け取らず軽い足取りでルンルンで歩き出す。食堂を出て、廊下へと向かう。ルートはあまり覚えていないのだが大まかには分かる。

最悪の場合どうせ紀太が来るので紀太に任せればいい。そう思いながら適当に進んでいると少し遠くから誰かが直進で近付いて来ている。


「お、来ましたね」


その直後壁が破壊され、面を着けている紀太が飛び出してきた。そしてすぐに面を外しアリスに駆け寄る。


「大丈夫か?」


「私は大丈夫ですよ…それにしても壊してきましたね」


穴の空いた壁を見る。その穴は非常に遠くから続いていて壁や部屋はぶっ壊され直通になっている。


「まぁ最短だから…」


「それで、バグが起こっているので案内をして貰っても良いですか?私覚えてないので」


そう命令されると紀太はとても嬉しそうにしながら再び面を身に着けた。そして唱える。


『降霊』


それだけだ。対象も、何を降ろすかも言っていない。降霊術系で術を唱えるのはその霊が呼ばれていたり何をすればいいかを明確にするために言っているだけである。

なので紀太の様に短縮する事も可能だがその場合は精度や予想外の行動などが起こる可能性が高い。それでも紀太は降霊だけしか言わないのだ。

それが紀太の能力だからこそ、出来る技だ。


「……こっちだ」


紀太の左眼は変化している。まるで猫の様な柄になっていて動きもおかしい。まるで紀太とは別の意識の者が動かしているような感じだ。

だが二人にとってはそれが日常なので特に気にする事も無く廊下を進む。

道中で曲がっている道や霊力濃度が九割の空間、大穴など様々なバグを見た。二人がTIS本拠地にいた頃にもそんなバグは見た事無かった。恐らく大量の突入以外にも何か原因があるのだろう。


「とりあえずここら辺のはず…」


するとそこには一つの扉があった。[重要幹部以下立ち入り禁止]と書かれた扉が。二人は躊躇う事も無く手をかけた。だが開かない、紀太は困惑しながら何度かガチャガチャしている。


「鍵も壊せませんか?」


「いや…虎降ろしてるからそんな事ないはずなんだけど…」


「…?少し私がやってみますね」


そう言いながら紀太を退かし今度はアリスが扉を開こうとする。だが紀太の時と同じように鍵がかかっているようで開かない。一度本気で力を入れて見る事にした。

ちなみにアリスの握力は360kg以上である。これも改造を施し青天井になったのが功を奏しているのだ。だがその360kgの握力をもってしても扉は開かれなかった。


「これは…何か術がかかってるようですね。恐らく術式でしょう。まぁ私も使えるんですけどね」


「え!?使えるの!?」


「はい。使えるに決まってますよ。と言っても基礎的な術だけですけどね。この鍵の術は分かりません。何かの能力を応用しているとかなら別ですが…一回殴ってみますか、少し離れてくださいね」


紀太はすぐに相当な距離を取った。アリスは今出せる最大限の力を込めて、扉をぶん殴った。まるで銃声のような音が響いた。すぐに扉を確認するがビクともしていない。

正直お手上げ状態なのだがそこが武具庫なのは知っている。なんとかしてこじ開け、侵入してなくてはならない。


「さて…困りましたね。紀太さん、どうにかできませんか?」


「やる!絶対何とかしてみる!」


とりあえずアリスが指示を出せば紀太は命をかけてでも全うする。ひとまず様々なモノを降ろして試してみる。だが一向に扉が開く気配は無い。

至る所で戦闘が行われているしいつここが巻き込まれるかは分からない。なんならアリスと紀太を狙う者だって出てくる可能性は十二分にある。

面倒くさい事になるのは避けたいので出来るだけ早めに扉は開きたい。だが全く開かないのだ。


「…」


アリスは唐突に地面をぶん殴った。すると地面は抉れ、鉄の床が露わになる。そこである方法を思いついた。急に壊し始めたアリスに少し怯えている紀太にその行動の意味を説明する。


「これ、地面から行きましょう。もぐらみたいに穴を掘って」


「いけるのかな…?扉とか壁も無理なら地面も対策されてそうだけど…」


「あ、行けました」


一瞬で土をかきわけ、地面を貫いた。扉の向こう側から声が聞こえて来る。紀太は何もできなかったとしょんぼりしながら穴に入り、武具庫へと侵入した。

中は凄いものだった。大きな部屋全体に飾り切れない程の大量の神話武具、TIS独自の武具、何処かも貰ったり奪ったりした武具、その三種類とその他、計四種類が綺麗に分けられていた。

今用があるのは何処かで奪った物だ。そのゾーンまで向かい、お目当ての武具を探す。紀太は一年半見ない内に増えた武具に感心している。


「すげぇ![ロンギヌスの槍]とか[トライデント]とか沢山ある!これ西遊記の[如意棒]じゃん!確か二トンもあるんだよな…アリスなら持てるんじゃ…」


「紀太さん、早く探してください。あと二トンぐらい余裕です。私を何だと思ってるんですか」


「ごめん。そんでどんな見た目なの?戦争時の映像が入ってるってのは知ってるけど」


「短剣ですね。全く錆びていないらしいので紀太さんも使えるかもしれませんよ」


「そりゃ良いな」


「神話の武具ではないので独自の部分と奪った部分の中間ぐらいに…ありましたね」


すぐにそちらに視線を向けるとそこには言っていた通り全く錆びておらず、異常なほど光を反射している短剣があった。それは他の武具よりも丁寧に飾られており取り出すのが少々面倒くさい。

なのでアリスはショーケースをぶん殴って壊した。そしてその短剣を取り出す。軽く見てから本物だと断定し一息つく。


「とりあえず良かったです。それでは、見ましょうか」


「ちょっと待って!」


「いやです」


全く聞く気はないようですぐにでも短剣の特性を発動し記憶を見ようとする。だが紀太が無理矢理取り上げた。するとアリスは少し不機嫌そうにしながらも紀太がしたい事を待つ。

すると紀太は息を整え、まず自分が記憶を見る事にした。何かマズイものをアリスに見せるわけにはいかないし何より本物か分からない。それで害があるものだったら絶対にアリスに見せるわけにはいかない。謂わば毒味と同じようなものだ。

そしてゆっくりと短剣に霊力を込め、地面に座り込んだ。すると紀太の視界は暗転する。

そしてまるでVRゴーグルをつけているかのように全方位を見ることが出来る映像へと飛ばされた。


(は?…喋れねえし…やっぱ映像的なあれか)


言葉は当然発せない。ゆっくりと周囲を見渡してみるとそこは何処かの基地の様な場所だった。ただ普通に現世にある場所のようで誰もいない。

ただ武具や生活用品が置かれているにも関わらず妙に汚い。本当に隠れ家的な奴なのだろう。

何も起こらないまま三分が経った。次第に少し遠くから声が聞こえて来た。数人の声だ。


「今日も何とか勝ちだな」


「まぁ私の能力が強いからだな」


そう粋がっている青年の声をかき消すようにして女の声が入る。恐らく高校生ぐらいの年齢の声だ。


「いえ、(わたくし)のおかげですわ。貴方は何もしていなかったではありませんか」


「は?お前の方が何もしていなかったように思えるが?」


それを仲裁するような野太い男の声。


「まぁまぁ。やめておこうでがんす」


「そうですわね。(わたくし)はこんな馬鹿男と話すほど低い身分ではありませんの」


貶しはしているが心の底からの嫌悪感は全く感じない。仲間内の戯れなのだろう。そしてリーダーであろう者が紀太がいる部屋の扉を開いた。


(やばい!)


すぐに隠れようとしたが四人は全く気付いていないようだ。


(あ…良かった)


安心しながら適当な位置でその四人の話を聞く。リーダーのような男は金髪の青年だった。とても整った顔立ちをしていて何処か溢れる勇敢さがある。

そして仲裁をしていた男は結構な大男で顔も怖いがなんだかんだほがらかな雰囲気が滲み出ている。

次に女。百年前とは思えない程フリッフリのゴスロリを身に着けている。ただ顔は良い。が口調から性格が悪そうな事は伝わって来る。

最後にその女と喧嘩をしていた男だ。恐らく海外だと思われるのにも関わらず和服だ。眼鏡をかけていて慎重が高い、190前後はありそうだ。

その四人はその隠れ家でダラダラと休憩を始めた。話を聞いているとその日の戦いは何とか勝利で終わったらしい。ただ祝杯などあげていると奇襲を仕掛けられるかもしれないので大人しく籠って居るしかないようだ。


「とりあえずここら一帯は占領できそうだな。ただ無能力者にも優しくするよう伝えるのが本当に面倒だな…」


「そうでがんすな。あいつら強いわりに頭がいっちゃってるでがんす」


「仕方無いでしょう、(くる)(やまい)なんですから」


(狂い病?…多分戦闘病の事か。にしてもこいつら霊力が多いな。全員軽く見積もって400はありそうだ。でもどの教材や文献にもこんな奴らは見た事無いな…フィクサー的なあれだったのか?)


そんな憶測を立てながらも一つ一つの情報を見逃さないように努める。


「日本いきてえな~」


リーダーが急に力を抜き、ヘロヘロとしながらそう呟いた。すると眼鏡の青年も同意する。


「そうですね。私も行きたいです。そろそろ新しい服が欲しい」


「でもな~あっちやばいからさ~ロッドがいるじゃん?今誰だっけ」


「確か[雅羅?姫]ですわね。ただロッドの術を作ったのなんてほんの数年前、大した脅威にはなりませんから。(わたくし)達が出向かなくては敗北するのでは?」


「いや、奉霊いるし大丈夫だろ。なんか今黑焦狐とか白煙とか他の奉霊も大量にいるらしいぜ。その内なんか起こる、絶対」


「まぁ(わたくし)達には関係無い事ですわ…いえありましたね」


紅茶をいれながら扉の方を向く。するとその直後ノック音が響いた。全員一応警戒はするものの声ですぐに誰か分かる。


「おーい、僕だよー[フロッタ・アルデンテ]」


「入って良いぞ~」


すると扉を開けて入って来た。その四人に並ぶ戦争の怪物、[フロッタ・アルデンテ]が。


「こっちも勝ったよ。ひとまず捕虜は任せてある。僕の部隊の奴らは聞き分け良いから殺したりはしないはずだよ、安心して」


(エンマ!?こいつら関りあったのか…でもエンマの事も全く知らないし見とくか)


「助かった。んじゃ五人集まったし、次の作戦の事を説明する」


そうリーダーが言った瞬間全員の雰囲気がガラリと変わった。姿勢を正し、リーダーの方を向く。そしてリーダーは説明を始める。まず机に地図を広げ、そこに全員を集める。

次に指をある場所に差した。


「次の目標はここだ」


全員が唾を飲み込み、緊張が走った。次の目的地、その名もニューヨーク。



第百八十一話

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