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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第二章「襲撃」
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第十七話

御伽学園戦闘病

第十七話「原 信次」


チームBが歩き始めて二十分程が経った。だが二十分も経っているにも関わらず何も起こらない、もう少しで浜辺に着いてしまう。


「お姉ちゃんもう浜辺着いちゃうよ」


「こっち方面にはいないのか?」


香奈美の言葉に被せる様に康太が呟く


「いる…」


康太は持ち霊を出して捜索している。全員その場に固まり息すら殺して康太が情報を吐くのを待つ、数十秒後に原が海岸で貝殻を集めていると説明して霊を引っ込めた。

原が戦闘相手だと知った香奈美は陣形と配置を決める。

前列は光輝、康太、水葉。中列は灼、美久、漆。後列に蓮、真澄。最後列には香奈美が一人。[甲]の形だ。

その陣形のまま全員で原がいる浜辺にゆっくりと近付いていく、距離が50m程になったところで原が振り向き話しかけ来る。


「ど〜も君たちの相手は僕です」


「不意打ちはしてこないのか」


「僕にも僕のやり方があってね〜卑怯な勝ち方は出来るだけしないって言うのがあるんですよ。まぁ死ぬかもってなったら泥水すすってでも逃げますけどね」


「じゃあ正々堂々と戦って私たちに勝てる自信があると?」


「いや〜分かりませんね〜そもそもあんたらのチーム編成何も知らないですし」


「そうか、じゃあ私たちが勝つな」


「ん〜?あんたらは僕の能力も知らないんでしょ?そんな状態で勝つことなんてできないでしょ」


「できないじゃない、やれないじゃない、やらなきゃいけないんだよ。生徒会のルールの一つ『何があろうが戦う』これがルールなのでね」


「そうですか…じゃあそろそろやりますか?」


「あぁ」


香奈美がそう言った時には原が光輝の目の前に来ていた。原は即座に足を上げ、回し蹴りを行う。だが光輝も負けずに手を目の前に構えガードした。光輝は身体強化使いだ、そんなちゃちな攻撃では吹っ飛ぶどころかよろめきもしない。

次に原は腹部に拳を撃ち込もうとする、ただ光輝は地面を蹴り反動で体を傾けて交わした。だが原は凄まじい反射神経で光輝が避けたのを見ると一瞬で足を高く振り上げ右に交わした光輝の顔面に蹴りを入れた。光輝はよろめいたと思いきや一瞬で顔を上げ反撃で原の顔面を殴った。


「だいぶ強いな」


「そりゃありがとう」


「蓮!今だ!」


[目雲 蓮]は動きを止めた原に向かって能力を発動した。蓮の能力は目操術、自分の視覚と術を受けた者の視覚を交換するという能力だ。本来なら遊びぐらいにしか使えないが蓮には独自の強みがあった。蓮は生まれつき盲目なのだ、盲目の蓮と視覚を交換するということは対象の目が見えなくなる、その強みを活かしサポートとして最強格になり生徒会までのし上がったのだ。


「かかった!」


蓮はガッツポーズをした。だが原は何も変化がない、むしろ余裕といった表情を浮かべている。何故余裕そうなのかを問うとニコニコしながらポケットから貝を取り出して説明する


「目操術は厄介ですからねぇ。生きてる貝を体の色々なところに入れてあります、そうすれば目操術の対象はばら撒かれている貝になりますから効かないんですね」


香奈美は蓮に術を解き最後方に来るよう促す、蓮は言われた通りに術を解き少し後ろに下がって香奈美の周りへと移動した。

原は再び光輝に攻撃を始める。殴っては蹴り、蹴っては殴り数秒も隙がない原の攻撃に光輝はガードを続けるしかなかった。だがガードを続けるのも限界がある、光輝は限界だと感じガードを自ら解いた。原は光輝がガードを解いた瞬間に顔面を殴った、光輝はよろめいたが何も問題は逆に殴った事で起こった一瞬の隙を見逃さず原の顔面に二発目の拳を撃ち込んだ。


「早すぎて入れねぇ」


「今入っても巻き込まれて何も出来ないから光輝に大きな隙が出来た時に私たちがカバーすればいいの」


「そうだな」


最前列の二人がそう話している後ろで原と光輝が互いに少し距離を取った。光輝は既に少し苦しそうだ、だが原は息切れの一つもしていない。圧倒的な力の差を感じる。


「強い…これが重要幹部か」


「ちなみの僕は重要幹部の中で一番弱いぐらい弱いですよ」


「まじかぁ…じゃあまずお前を殺して俺の強さを証明してやるよ!」


原は光輝の言葉に目もくれず走り出す、原は拳を構えながら途轍もないスピードで近付く。残り2mぐらいしか距離がなくなったところで光輝は体を屈め、足払いをした。原はここで足払いが来るとは予想していなかったのだろう、見事に光輝の足払いに引っかかった。原はつまずきすっ転んで光輝を通り越したが通り越した瞬間に受け身を取り体の向きを180度変え再び拳を振り上げた。光輝はそれに気付き原の方向を向いてガードをしようと構えたが一足遅くもろに顔面パンチをくらった。光輝は衝撃で数メートル吹っ飛ぶ。


「終わりですかね」


原が光輝の方を見て呟いた。だが光輝はその言葉に反応してゆっくりと顔を上げる。その顔は鼻血が出ておでこも盛大に切れているせいで血まみれだ。


「誰が…終わりだって?」


「妙にしぶといな〜まぁこれで本当に終わりだけど」


原は相当な距離があったにも関わらず光輝の目の前に一瞬で移動して踵を光輝の頭に振りかざす、光輝は避けることが出来なかった。だが振り下ろされたその踵は光輝には当たらず庇った水葉の腕に当たった。

原は水葉を払いのける為片方の足を振り下げようとした瞬間原の体は硬直した。


「動かない!?」


「私の能力の『威圧』よ。動けないでしょう」


「…だが無理するなよ僕には結構体力使うだろ?」


「水葉!光輝を後衛に連れてこい!」


水葉はその指示を聞くとすぐに倒れている光輝をお姫様抱っこして全速力で後衛に連れて行った。

後衛に着くと光輝を下ろし直ぐに前衛に戻る、水葉が前衛に戻ったところで真澄は能力を解いた。原は困った様に頭をポリポリと掻きながら呟く


「こりゃめんどいチーム引いたな〜」


香奈美が「一気に畳み掛ける」と灼、美久、水葉に降霊術をしろと指示を出す。


『降霊術・面・狐』


『降霊術・面・黒狐』


『降霊術・神話霊・朱雀』


半霊の狐と真っ黒な狐、そして(あか)く煌めいている朱雀が召喚された。灼と美久は霊で攻撃、水葉は霊と一緒に自分でも原を攻撃と指示が出る。

水葉は指示を聞き終わると一人で原に突っ込む、続いて水葉を追うようにして三匹の霊も原の方に突っ込んだ。水葉は素早く原の腹部に蹴りを入れると直ぐに後ろに距離を取る。原は反撃しようと足を振り上げたが水葉はいない、それどころか三匹の中の一匹、美久の半霊が原の右足を噛みちぎる様な動きをした。すると原は何も身体的な傷はないのに右足を抑えた。

その動作をした瞬間に水葉はまた近づき目にも止まらぬ速さで原の顔面を蹴った。原は何が起こったのか理解できず蹴られた顔を抑えている、水葉が追撃をしようと踵落としを仕掛けた。だがこれは悪手だった。

原は二度同じ手はくらわまいと左に避ける。水葉は避けた方向を見ることは出来たが足を動かす程余裕はない、水葉の踵は砂に埋まってしまった。原は砂から足を引き抜こうとする水葉の腹を蹴る、水葉は受け身を取ることができずに3m程後ろによろめいた。そのよろめく動作は隙だらけだ、今度は原が追撃をしようと拳を振り上げる。だがその拳は攻撃から護るため水葉を優しく包み込んだ朱雀の羽に当たった。

原は水葉を庇った朱雀をどかそうと蹴ろうとしたが原は後方から霊が近づいて来ている事に気づいていなかった、水葉の持ち霊の黒狐に右足の脹脛(ふくらはぎ)の一部を噛みちぎられてしまった。


「いってえええ」


「いいぞ!そのままやってしまえ!」


「クソ!」


霊を引き剥がそうとしている原の隙を突き水葉は朱雀の羽から飛び出して今までとは比べ物にならない強さの蹴りを後頭部にくらわせた。だが原はそんな蹴りに狼狽えず逆に回し蹴りを水葉にくらわせた。水葉は波が到達する所まで吹っ飛んだ。


「水葉!」


「ほーら実際はあんなに弱い、僕の足元にも及びません」


「…黒狐も引っ込んだ!こりゃ無理だ!」


灼は一度朱雀を戻した。それを見た美久も一人じゃ勝てないと半霊を引っ込めた。香奈美は二人に一度後列まで戻るよう命じる、二人が下がろうと後ろを向いた瞬間二人の間を誰かが通り抜ける。誰が通り抜けたのかと振り向くとそこには原と取っ組み合っている光輝がいた


「もう戦えないだろ!死にたくないなら下がれ!僕も人殺しをしたいわけじゃない!」


「悪いな…『何があろうが戦う』会長から聞いただろ?」


「…そこまで死にたいならやってやるよ」


「あぁ、全力でやり合おうぜ」


「じゃあ死ね」


光輝の首に爪を突き立てる、だが光輝は避けるどころか自分から前に進み喉に食い込ませた。

原は予想外すぎる行動に驚き一度距離を取った、後ろに引いた時に原には一瞬の隙が出来る。それは光輝が入り込んで攻撃できる程度の時間は充分にあった、だが光輝はその隙に反応せず立ち尽くす。


「なぜ隙が出来たのに攻撃をしなかった」


「すぐ終わっちゃつまらねぇからよぉ!」


「そうか、じゃあ俺もじわじわと殺してやるよ!」


原と光輝は同時に足を振り上げたせいで蹴りと蹴りがぶつかり合った、その力で一瞬風が生じる。二人ともとんでもない力でぶつかり合ったのだ。

足と足がぶつかり合ったまま数秒睨み合い二人とも同時に足を下ろす。下ろすと同時に原が光輝に一歩近付く、だが光輝は原から離れた。原は離れた分ぐんぐんと詰めるが光輝はどんどん離れる。そんなことをして三十秒が経つ


「逃げるんじゃねぇよ!」


「だから言ったよなすぐに終わっちゃつまらないって」


「うるせぇ」


光輝はさらに原から離れる、遂に原は近づくのを止めた。そして光輝ではなく残りのメンバーの方を向く。そして最前列で待機している康太に向かって走り出した。だが康太は避けようとしない、いや避ける必要が無いの方が適切だろう。原が近づいていたのは康太ではない、康太の持ち霊だったのだ。康太の持ち霊の能力は霊が視界に入るとその者は霊を戻すまで霊を目で追ってしまう能力だ。発動するのは難しいが原はその策に嵌ったのだ。


「原の背中の方に行け!」


康太がそう指示を出すと霊は原の背中側に行った。すると原はその霊の方向を吸い寄せられるように向く、原は霊から底知れない恐怖を覚え常に視界に入れない脳がおかしくなってしまうと心の中で謎の思考が反響し霊を追ってしまうのだ。

原は康太達に背中を見せ、隙だらけだった。もちろん康太は蹴ったり殴ったりする、だが原はそんなのお構いなしに康太の霊を凝視していた。

だが康太は自分の霊のことを細部まで知り尽くしていなかった。この霊は対象の霊力が多ければ多い程出ていられる時間が短くなるのだ。原は途轍もなく強い、一分近く拘束した所で康太の持ち霊はフッと康太の中に還っていった。


「なぜ戻ってきた!?」


「分からんが拘束が解けたという事だ!逃げろ康太!」


既に遅かった、康太は拘束から解き放たれた原に顔面を蹴られ宙を舞った。康太は地面に強く叩きつけられて気を失ってしまった。

それを見た光輝が雄叫びを上げながら原に向かって走り出す、そして背後から殴ろうとしたが原は光輝の方を見ることをせず当たり前かの様に光輝の拳を交わした。


「な…なに」


「殺気が出過ぎだ」


空振った光輝の腕を掴み240度曲げた。光輝は痛みで声が出せず原はさらに曲げようとしたところで光輝がすねをを蹴ったので原は手を離し後ろに引く、カウンターをくらわせたは良いものの右腕の骨は確実に折れた。だが光輝は後ろに下がらず攻撃続ける


「『何があろうと戦う』…戦わなきゃ行けないんだ!」


「右腕が使えないのに何が出来るというんだ」


原は光輝の目の前に移動して腹部に拳を撃ち込んだ。光輝は苦しそうにするが一貫して後ろには下がらなかった。光輝は殴られたまま力を顔に集中させデコを原の顔面に打ち付けた。

原は衝撃でふらふらとしている、すかさず光輝は右足を高く上げ原の右肩に踵を落とした。原は痛そうに右肩を抑えている、ただその行動も隙だらけだ。光輝は左手で原の前髪を掴みさっきより強い頭突きをかました。

流石に痛かったのか原は怒ったような低い声で言う


「そろそろ本気をだしてやろうか…」


「は?本気?」


「何勘違いをしているんだ、俺の能力は身体強化じゃないぞ。だから能力は使っていない」


「じゃあ…今までのは…」


「お遊びだ」



穂鍋(ホナベ) 光輝(コウキ)

能力/身体強化

身体強化を施し物理で戦う

強さ/生徒会中位


第十七話「原 信次」

2023 4/26 改変

2023 6/22 台詞名前消去

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