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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第七章「TIS本拠地急襲作戦」
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第百四十七話

御伽学園戦闘病

第百四十七話「駕砕 真澄2」


島に来てから数ヶ月が経った。大会が行われ生徒会は壊滅、エスケープチームの兵助も死亡。学園内の雰囲気は地獄そのものだった。

尊敬しこの世で一番強いと思い込んでいた生徒会が手も足も出ずTISに撲殺されてしまったのだ。そして生徒会の残りは薫、崎田、絵梨花のみになってしまう。四人チームだったので高等部だけで数チームに分かれ大会に出たのだが全員殺されてしまった。残り二ヶ月程しか会長としての時間は無いが四年後の為に最大限次の会長を楽にしようと強いメンバーをひたすら勧誘していた。

だが惨状を見た者の大半はそれを断り新メンバーはろくに入って来なかった。だがその中でも物好きはこの機を逃さまいと生徒会に入った。

その中には真澄の唯一の友達であった[多々良(タタラ) 椎奈(シイナ)]、もいた。ただ真澄は招待されていない。

そんなとある日だった。二人で寮に帰っている時の会話だ。


「あたしの能力ってバックラーじゃん?今生徒会にバックラーあたし以外にいなくなてさ、妙に期待されてるんだけどあたしの霊の能力って『霊を中心として半径10m以内の人物の霊力を徐々に回復する』って言うバリバリサポート型の能力だから困ってるんだよね~」


「でも椎奈なら戦えるでしょ。力強いし」


「いやいやあたしはカワイイ担当だから!今の生徒会って女の子も少ないの、絵梨花先輩と崎田先輩、それに香奈美とあたしだけなんだよ!?

みんな可愛いっちゃ可愛いけどやぱりあたしが一番だよねー!」


ムカつく程自信満々に言ってるが実際椎奈は超絶美人だ。スタイルも良く顔も良い、性格も良いし、能力も弱くない、頭も良い、本当に非の打ち所が無いのだ。

そんな椎奈には憧れていたが威圧と言う能力柄同じような立ち位置になることは出来ないだろう。真澄はサポート型でも前線に出なくてはいけない能力だ。椎奈も前線には出なくてはいけないが体を張る必要は無い、その時点で同じ場所に居る事は不可能である。

だが逆に言えば役割が被っていないので真澄が生徒会に入れば同じ任務に向かえる可能性は高いのだ。


「まぁ可愛いよね実際。生徒会でも一番だと思うよ」


「でしょー!!やっぱりあたしが一番だよねー!」


「私も頑張らなくちゃ、生徒会入りたいし」


「えっ!?真澄も生徒会入りたいの!?」


「うん。椎奈と一緒に任務とかしたい」


「それはありがたいけど入らない方が良いよ~今日は無いけど周六とかで訓練あるんだもん。もう卒業しちゃった兆波先輩とかが来るし。まぁ二十歳になったら先生なるらしいけど」


「それって椎奈とかのサポート系の人達もやるの?」


「勿論!まぁ身体強化とかガチガチに戦闘する奴らに比べれば大分楽な訓練だけどね~。でも相当苦しいよ。

でも死ぬほど動いたりするから前より痩せて健康的な体になった!!」


「気を付けてね。正直今にも折れそうな体してるから…」


「それに関してはお互い様でしょ。それより話変わるんだけど杏ちゃんの能力は分かったの?」


真澄と拳は既に使えるようになっていたので数日で断定されたが杏だけは能力が不明だ。身体強化や降霊術ではないのであろうと言う事しか分からない、となると念能力なのだ。だが念能力は非常に見分けるのが難しく正直自分の能力の詳細が分かっていない生徒も沢山いる。

それなのにたった数ヶ月で分かる訳も無いだろう。


「まだ分かってないのよね。あんまり凶暴な能力でも困るし、別に分かんなくて良いけどね」


「それもそっか。と言うか明日から任務だよ~結構長期だって。めんどくさい~」


「どんな事やるの?」


「ちょっとした能力者が関連してる事件が起きたからそれの捜査だって。能力取締課?って奴は他の仕事が忙しいって。仕事できないなら立ち上げな!!って感じなんだけど」


ド正論である。そもそも外の事件などを管理するのに戦闘役が一人もいない、そして全員適度に協調性は無い。仕事が回るわけが無いと言うのは明白だ。

だがまだ試験的な組織なので大抵の事件は今まで通り御伽学園の者が解決しなくてはいけないのだ。


「とりあえず二ヶ月ぐらいはこっち戻れないっぽい~寂しくて泣いたりしないでね!」


「泣かないわよ。そもそも他にも友達ぐらい…いない…」


「ここ来て結構経つんだからそろそろ友達作ったらどう?なんなら紹介しようか?」


「いや大丈夫。友達はその内作るよ…まぁなってくれる人なんていないだろうけど」


「えー!?可愛いし性格悪いわけでも無いじゃん!一人や二人出来るでしょ!!」


「目つきが悪いせいで人が寄ってこないのよ…」


「あー…頑張れ」


椎奈でさえもアドバイスが浮かんでこなかった。それも良さの一つなのだがやはり中学一年生、恐い者には寄り付かないだろう。

だが椎奈だけは友達になってくれた。何を評価してくれたのか、何を見てくれているのか、なんで友達なのか、そんなのは分からないが一人の友人だ。ずっと大切にしよう、そう思っている。


「それじゃ!また明日の朝はまだいるから!バイバイ!」


「うん。また明日」


二人は部屋が違うので寮に付いたところで別れた。そのまま杏がいるであろう部屋に向かう、ドアノブに手を掛け扉を開く。

すると杏は変に慌てて何かを隠すようにして布団にくるまって潜った。何をしていたのか気になって聞いてみるがはぐらかしてくる。


「別に怒ったりしないから。何してたの?」


粘って聞き続けていいると渋々布団をどけた。すると衝撃の姿が目に映る、滅茶苦茶メイクしてる。


「…な、なんでメイク??しかも凄い上手いし…私より上手いでしょ…」


「いやなんか…今日お友達が教えてくれて…やってみた...」


「きょ、今日始めたの!?」


あまりの完成度に大きな声を出してしまう。その声に怯えた杏に謝ってからどういう物を使ったのか教えてもらったが真澄が使っているのしか使っていないと言う。真澄のメイクはド直球ナチュラルだ、杏もその系統のメイクをしていたのだが何だか放つ雰囲気が違う。


「凄いね杏、才能あるよ」


「ほんと!?」


「うん。凄く上手い、友達に自慢したくなるぐらい」


「お姉ちゃん友達いるの!?」


何気ない一言が胸に刺さりとても辛い。だがその感情も押し込みながら一人だけいると何とか反抗する。


「いるんだ。どんな子なの?」


「生徒会に入ってて凄く可愛い子、今の杏も負けちゃうぐらい」


「えぇ!!会いたい!会いたい!」


「また今度ね。とりあえず私お風呂入って来るわ。今日ご飯何にする?」


「美味しい物!」


「分かった。じゃあ待っててね」


荷物を置いてお風呂に入る。体を洗い、髪を洗い、トリートメントやら諸々を済ませてから湯船に浸かる。天井を見上げながら考える。


「あれが杏の能力だったりするのかなぁ…」


何も考えずに発言したが少しして考えてみると実際あり得る気がしてくる。


「今までは片鱗も見せなかった、だけど今日にメイクと言う事を知って興味を持ってやっただけであんなのになる?杏はまだ携帯も持ってないのよ?どうやって調べるの?直感的に分かったって言ってもしっかり綺麗にあのメイク道具の順番通りに下地塗ってからファンデ塗るとかする?いや、絶対やらないでしょ。やっぱおかしい…」


その後三十分間程湯船に浸かってから風呂を出て髪を乾かしたり、肌のケアを全て終わらせてから部屋に戻った。すると部屋では何故か椎奈が杏にメイクをしてもらっている。


「…え?何事?」


「杏に渡さなくちゃいけないと思ってたもの渡すの忘れててさ。来てみたら杏ちゃんが出て来たんだけどすっごいメイク上手いから教えてもらおうと思ったの!!にしても上手いね!!外でも練習してたの?」


「今日始めた!」


数秒の沈黙の後聞き間違えかと思いもう一度訊ねる。だが杏は同じく「今日始めた」と答える。信じられず真澄の方を向いて聞く。


「ほんと…?」


「本当」


「え…?これってさ…能力だったり…」


「私もお風呂入ってる時全く同じ事考えてた」


再び沈黙が訪れる。すると杏が「これで良いかな…」と言って鏡に顔を移した。とんでもねぇ完成度に口が閉じない。

真澄も二回目、しかも人にやっているのだ。なのに完成度が増している、流石におかしいと思う。


「やっぱそうだよね…」


「そうね…でもまだ断言するには早い気がするわ」


「そうだよね!ちょっと実験台連れて来る!!ちょっとだけ待ってて!」


そう言いながら部屋を飛び出して行った。その一分後、部屋の外から椎奈の声ともう一人の声が聞こえる。どうやら嫌がっているが無理矢理連れてきているようだ。そして扉が開く、すると椎奈は一人の同級生を連れていた。


「だから寝かせてくれよ!お前だって明日同じ任務だろう!」


香奈美だ。すっげぇ嫌そうにしながらやって来た。椎奈が無理矢理座らせる。


「自分で言うのもあれだが私は元が良い、メイクなんて超軽くても良いんだ。むしろ...」


「はいはいもっと女の子しようね~。私がいなくなったら香奈美が生徒会長候補なんだから、もっともーっと可愛くなれば完璧超人になれるよ!」


「いやお前が生徒会長に成ればいいだろう…私は会長になんてなりたく...」


「うるさい。とりあえずメイクしてもらって!」


もう無理矢理だ。有無を言わせぬその態度、だがそこも可愛く見える。やはり椎奈は一番可愛い、そう思いながらボーっとしているといつのまにかメイクが終わっていた。

経った時間は三十分、まぁ普通の時間だ。だがあまりにも完璧、駄目な点なんか見つからない程に美しくなっている。素材◎の香奈美に杏のメイクを組み合わせたらまぁそうなるだろう。


「すごい…かわいい」


あんなに嫌がっていた香奈美でさえも自分の顔にうっとりとしている。元の素材の良さは断固として消さない、なのにも関わらず大人っぽさ、可愛さ、色気がヒシヒシと感じ取れるメイク。最強だ。


「これは…本当に能力なんじゃないかしら…」


「うん。多分そうだね!念能力って誤認が多いけど流石にこれだと思うよ」


「私もそう思うぞ。流石に初日でこれは念能力と考えるしかないだろう…それで私は帰って良いか?メイク落としてから」


「うん!!ありがと!!」


「椎奈も早く寝ろよ。明日はいつもより少し早いんだからな」


「はーい」


香奈美はメイクを落としてから部屋を出て行ってしまった。


「それじゃあ私も帰るね!!杏ちゃんは凄かったよ!!またやってね!!それじゃあまた明日!!」


「また明日」


「バイバイ!」


椎奈も部屋を出て行った。その後は二人で話しながら真澄がメイクを落とすやり方を教えていた。その日はとっても楽しい日であった、今まで何か分かってほしくないとさえ思っていた。だがふたを開けるとこんなにも楽しく、笑顔になれる能力であった。

その日真澄の価値観の"一部"がひっくり返された。その一部とは能力の拒絶、と言う部分であった。今までは兵助、杏、拳、椎奈、そして自分以外の能力者は何処か怖がって拒絶していた。

だが実際は皆同じ人間だと言うのは変わらず皆能力が無ければ少し前までの自分の様に外で楽しく暮らせていたのだろう。

そう考えると嫌悪感や恐怖は消え失せて行った。そうして[駕砕 真澄]は健常者から能力(イジョウ)者へと化したのだ。



それから二年が経った。ほんの少しの事件や些細な喧嘩はありつつも特に目立った出来事も無く中等部一年生へとなった。

毎日能力の訓練は欠かさずとても効果が強くなっていた。その時には既にあまり念能力に耐性が無い者は恐怖で完全に硬直するぐらいには強くなっていた。だがまだ生徒会にはなれずそろそろ焦り出した頃だ。

クラスメイトが変わる。なんとその時のクラスメイトはとんでもない面子だけだった。

[和也 蒼][中谷 莉子][姫乃 香奈美][駕砕 真澄][多々良 椎奈][拓士 影][浜北 美玖][タルベ・カルム][樹枝 蒿里]そう、後に生徒会に入る者、既に生徒会に入っている者達全員、そして蒿里が集められていたのだ。

その教室には何とも言い難き空気が流れる。一方的にイチャついている莉子と蒼、黙って座っている香奈美、ヤバイ面子ばかりのクラスメイトに驚き小さな声で話し合う真澄と椎奈、鬱屈とした表情を浮かべずっと下を向いている影、霊の面を触って微笑んでいる美玖、ピシッと姿勢良く先生が来るのを待っているタルベ、楽しそうに色々な人に絡みに行く蒿里。

全員一般生徒とは何処か雰囲気が違う。まるでオーラを放っているようだ。そんなクラスに先生が入って来る。

御伽学園は教師が足らない。だが理事長の考えで二十歳になってからしか教師にはさせなかった。なのでその年に新しく教師になったのは薫だけだ。兵助は数年間に死亡。薫と並んでいた飛び級転校生[サーニャ・ロゼリア]もとい[name ライトニング]は能力取締課に送られた。

なので学園で教師をやろうとしていたのは薫だけになったのだ。

そして学園では教師が足りないのだ。なので基本的には分身を作れる元が超大量の生徒を相手にしているのだがその年だけは一つのクラスだけ担任が付いた。


「さーてこれから一年間が楽しみだな、三年一組のお前ら」


入って来たのは他の誰でもない。その年に教師になった男[華方 薫]である。薫は教卓に荷物を置いてから不慣れな手つきで黒板に名前を書いた。


「[華方 薫]、半年以上住んでる奴なら全員知ってるだろうが一応自己紹介をしておく。まぁ一言でいえば最強だ。これはイキりではない。事実だ」


誰も反応出来ない。何故ならそのクラスの人物の大半は生徒会に加入していてもう一方は全員薫の実力を大会で見た事があるからだ。確かに過ちを犯し紗里奈が死亡、魂を喰った事も周知の事実だ。だがそれ以上に強いのを誰もが知っている。


「このクラスは明らかに人数が少ないと思う。たった九人だ。だが見てわかるだろう、全員が精鋭だ。今中等部では同じような事が全学年で行われている。

他の学年は元が担任だがこのクラスだけは俺が頭を下げて担任にして貰った。何故なら今中等部三年生、お前らは大会に出る事になるからだ」


そう。現在中等部三年生の者達は高等部三年の時に丁度大会が行われる。その時に同じく大会に出るであろう下級生を引っ張って行かなくてはならない。

なので地獄を肉眼で見て絶望もした薫が担任をするのだ。


「そんじゃとりあえず自己紹介するか。蒼から」


「は、はい…[和也 蒼]です…一応生徒会入ってます…」


次々と名乗って行く。正直皆名前ぐらい知っているので流し半分なのだ。


「[中谷 莉子]、蒼君の彼女です!」


「え…ちが…彼女じゃ…」


「彼女だよね」


圧をかけて蒼を怯えさせる。そして無理矢理頷かせた。


「そんな感じだから!みんなよろしく!」


「[樹枝 蒿里]!みんなと違って生徒会は入るつもりないけど一年間よろしく!」


「[タルベ・カルム]です。皆さん今年もよろしくお願いします」


「[浜北 美玖]、この中なら一番弱いだろうから頑張って追いつく」


「[拓士 影]…」


「[駕砕 真澄]、よろしくね」


「[多々良 椎奈]ですっ!!よろしくね~!!」


「[姫乃 香奈美]だ。知っているとは思うが現在鳥神に一番近しい上の鳥霊を扱っている。よろしく頼むぞ」


「はーいおっけー。まぁお前ら全員面識は無くとも顔と名前、能力は知ってるだろうからな。全員結構有名だし、俺には敵わないけど。

まぁ一つ言っておこう。二年生に抜かされんなよ?」


蒼、影を除いた全員「はぁ?」と聞こえてくるような顔をする。三年生は豊作だ。量より質の三年生である。だが二年生は三年生に実力は負けるが、同じ様に特別クラス、一組に振り分けられた人数が十人。そして原石の様な奴らばっかりだ。

三年生を主に担当すると言えども二年生の指導を疎かにするわけでは無い。なので薫は三年生が抜かされてもおかしくはないと言うのだ。


「一応一年生もいるんだがな。個性が強すぎてな…あんましいないから読み上げとくか。一年だけ」


そう言いながら一つの表を見て読み上げて行った。[目雲 蓮][姫乃 水葉][駕砕 拳][ルーズ・フェリエンツ][管凪 礁蔽][空十字 紫苑]そして[櫻 流]の総勢七名だ。皆一人を除いて噂を聞いている。だがその除いた一人だけは誰も聞いた事が無かったので率先して香奈美が訊ねる。


「その[櫻 流]と言う生徒だけ聞いた事が無いのですが、どう言った奴なんですか?」


「俺も分からん」


「は?」


「流は丁度先日外から島に来るって連絡が来たんだよ。だけどその船の出向の時の騒ぎとかいない奴探す為に向かうのあるだろ?あれが今回はサーニャ…じゃないな能力取締課の[name ライトニング]と同じく取締課の[name ハンド]だったらしいんだ。

そんで昨日の二十一時に急に連絡が入って[櫻 流]って奴は絶対に特別クラスに入れろ、って言ってきたんだよ。詳細は言ってくれなかった。正直俺は嫌なんだよなぁ…拳とか紫苑とか礁蔽とか…もう手一杯っちゃ手一杯なんだよ」


「そうですか。まぁ頑張ってください」


「そんな事は置いておこう。早速今日から授業を始める、んで今日は全部体育だ。んで一、二、三年生合同だ、一組だけのな」


特別クラスは全て一組だ。と言う事は中等部の精鋭が全員集められると言う事になる。進級早々大きなイベントだ。


「んでお前らに特別にこれを渡す」


薫は全員の机に向かってある物を投げた。綺麗に机に落ちて来たその物とは"ジャージ"だった。何の変哲も無いように感じるそのジャージ、元々ジャージは配られる。なのにわざわざ二次配布をする必要があるのだろうか?そう思っていると薫が説明を始めた。


「それはちょっと特殊なんだ。今の生徒会長居るだろ?[大井 崎田]って言うポンコツ」


そのポンコツと言う部分でその時生徒会に入っていた者達は全員頷いた。


「そいつの能力は霊力と体力を使用する事で何でも生成できるんだ。それで全員分作った。ただのジャージじゃない、持ってみろクッソ軽い」


言われるがまま手に取ってみると本当に軽い。包んでいるビニールの方が重いのではないかと思う程に。


「そんだけ軽くても変な素材とかな訳じゃない。単純に軽いんだよ、二着ずつ入ってるだろ?一つが夏要素の通気性良い奴、もう一つが冬用の通気性悪い奴だ。

どっちも長袖だけど夏場は気にすんな。俺が学生の時に試作で作ってもらったことあったから言えるけど普通に涼しいぞ」


そう。そのジャージは完全に訓練や戦闘に向いているジャージだ。よく見ると色が少し違うだけで薫も同じ物を身に着けている。


「そんじゃあ行くぜお前ら。今日は学園私有地で授業を行う。まずは校庭に集まるぞ。それじゃあすぐ準備しろ、俺は先に行ってる。そのジャージは着てこい」


薫は部屋を出て行った。他の皆も話す前に行動し始めた。女子は女子更衣室に男子は男子更衣室に駆け込んでさっさと着替え校庭に出た。

椎奈が一番最後であった。そこには明らかに強い奴らが立っていた。一年、二年、三年全員が集まっている。薫は目視で確認した後その場にいる兆波、翔子に報告してから。全員に届く声で言う。


「そんじゃあ行くぜ!!身構えとけお前ら!!」


言うのが遅い。最後の"ら"が聞こえる時には既に瞬間移動していた。

そこは学園私有地、二人一組、完全ランダムな組み分けで学園私有地内に完全ランダムで飛ばされた。そう、一組全員。そして薫、翔子、兆波がそれぞれ一人のチームも含んでの模擬戦が唐突に始まった。

これが今日の"最初"の授業、バトルロイヤルである。



第百四十七話「駕砕 真澄2」

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