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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第七章「TIS本拠地急襲作戦」
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第百四十六話

御伽学園戦闘病

第百四十六話「駕砕 真澄1」


1994年3月7日に誕生した。元々母方の家系は能力者だったのだが母だけは能力を発症しなかった。そして真澄の祖父と祖母に当たる人物は能力が身体強化で気付いていなかった。そして祖父母は子供の時に能力者戦争を体験していたので能力者だと言う事を何としてでも隠していた。だが真澄の母は能力者の家系だと言う事を知らなかったのだ。

そしてそれだけでない。真澄達の父親に当たる人物は能力者だったのにそれを隠して生活している所謂[非所属]と言う者だった。

隠している能力者の遺伝子と本当に知らない能力者遺伝子が交わったらどうなるか、答えは一つ。能力者が生まれる、母の様に能力が発症しないケースは完全に運らしく三人にはその遺伝子が伝わることは無かった。

そして事が起こったのは普通に真澄が産まれてから普通に暮らし始めて杏、拳も無事に産まれて真澄が十三歳になった時の事だった。普段は共働きであまり姿を見せない母だったがその日はたまたな休んでいたのだ。だが


「きゃあああ!!」


と言う母の悲鳴が下校中の真澄の耳に入り込んで来る。帰宅していた真澄は急いで家に駆けこんで様子を見る。するとそこには家の壁を破壊しているまだ小学五年生の拳とそれに驚き腰を抜かしている母親がいた。

真澄もいまいち状況が掴めていなかった。拳は別に体格が良い訳でも無く普通の小学六年生のはずだ。なのにも関わらず家の壁に大穴を開けていたのだ。

騒ぎを聞きつけた小学六年生の杏も階段を駆け下りて現場を見に来た。そして壁がぶっ壊れている事に衝撃を受けたのか硬直した。その杏を見た真澄は正気に戻りすぐに穴の元へ向かう。


「これは拳が壊したの…?」


「うん」


拳はなんだか不機嫌そうだ。だがそんな事に構っている余裕は無い。今までずっと一緒に暮らして来た、両親が仕事で忙しいので母に代わって二人の世話をしていた、そんな昔から知っている拳がこんなにも殺意を剥き出しにしながら壁を破壊したのだ。

正直なところ恐怖が勝っていたであろう。


「な、なんで!!人じゃない!!!能力者よ!!!!」


だがその恐怖は怒りに塗り替えられた。母のその悲鳴、自分の息子を完全に人として見ていない。"能力者"と言う一つの差別対象としてしか見る事が出来なくなったのだろうと伝わって来る発言、その発言で一気に母えの怒りに変わったのだ。


「真澄!!すぐに警察に!!」


そう言った時だった。母の顔を拳が殴った、血が溢れ出し人生で初めて体験したであろう痛みに理解が追い付かず頭に?を浮かべている母親を他所に拳は壁に八つ当たりを始めた。

その時真澄も多少だが何があったのかが分かった。恐らく拳の逆鱗に触れてしまい拳は何とか怒りを物にぶつけたのだろう、だが先の発言に耐えられず顔面をぶん殴ったのであろう。


「拳!落ち着いて!」


何とか収めようとするが全く聞いてくれない。とりあえず警察に報告するよう言ってから杏を二回に避難させた。

その後拳の元へ寄って何があったのかを訊ねる。すると拳は半泣きになりながら一から話してくれた。


「ただ能力者の事がテレビでやってたからその話になったんだよ…そんで俺は能力者でも違くても仲良くする方が良いって思ってたんだ。

だけど母さんはそれをバカにするような感じで言ってから能力者の事をバカにし始めたんだよ。段々許せなくなって来て…我慢できなくなって壁をぶっ壊した」


「…」


その時真澄は察した。拳は能力者なのだろうと、恐らく自分では能力を持っている事を知っていたのであろうが能力者の待遇を知っていたので今後も皆と暮らす為隠して来ていたのだろう。

だが遂に我慢出来なくなって力を解放してしまったのだ。衝動的な事だったとは言え一瞬だろうと葛藤があったであろう、だが能力者を優先して自分の大切な家庭を破壊した。

本来ならば激怒しボコボコにしておかしくない、だが真澄は責める所か褒めた、信じられない程に褒めちぎった。

その時は自分が能力者である事など考えた事も無かったし知りもしなかった。なら何故褒めたのか、拳が成長してくれたからだ。

今も傍若無人の化身と言っても差し支えは無いが昔はもっと酷かった。だが不意特定多数の能力者の事を慮って決断したのだ。その事が心の底から嬉しく思い拳を褒めてあげたのだ。


「褒めるのかよ…」


どうやら拳は罵倒が飛んで来ると思っていたようで拍子抜けと言った表情を浮かべながら心の底では怒りをまだ燃やしている。


「な!なんで真澄まで能力者を!!」


その瞬間真澄の感情も爆発した。今までの事が起爆剤になった訳では無い、この数分で拳への対応や差別、その態度にあまりに許せない対応の数々。それが一気に爆発したのだ。

だが真澄には手を出すほどの度胸も力も無い。なので説教をしようとした時、見知らぬ感覚を覚えた。体の中心から何かがにじみ出て行くような感覚、それは感情では無い。その時初めて自覚した。自分も能力者なのだと。

だが今はそんな事どうでも良い、とんでもない圧をかけながら説教を始めようとした。だが一人の男が介入して来る。


「兵助が言ってたからマークしてたけどホントに怪物じゃねぇか。良い人材だな」


青髪の青年、薫だ。そして薫は半田を連れていた、言われずとも二人に触れ能力を使用不可にさせた半田は今からどうするのか薫に訊ねる。


「とりあえずそのままにしててくれ。上にもう一人いるからそいつも回収して島に行くか」


「誰ですか!?島に連れてくって...」


「落ち着け。別に攫おうとかそういう話じゃない。中一なら知ってるだろ?能力者しかいない島、そこにお前ら三兄弟を連れて行く。な、良いだろ?」


横目で母親に聞く。すると母親は言葉すら発さず必死に首を縦に振った。その動作を見た二人は更に怒りが増し殴り掛かろうとしたがもっと先に薫が動いた。

顔を超至近距離まで近づけてからその当時の真澄の威圧並みの圧を醸し出しながら問い詰める。


「お前の父親、母親だって能力者だぞ?ついでにお前の旦那だって能力者だ、どう言う事だよ。なんで子供を捨てるんだ」


「し、知らない!!!能力者なんて...」


「分かった。もういい、真澄?だったかな。妹を連れてこい」


杏を連れて来るよう命じられた真澄は言われた通りに二回に向かおうとした。その際ふと聞こえて来た、薫が「佐須魔は間違ってないのかもな…」と俯きながら呟き掌を強く握りしめている所を。

ひとまず杏を連れて来た。すると薫はすぐにゲートを生成して後で話をすると言ってから三人を送り込んだ。


「何が起こってるの…」


ゲートの先は生徒会室だった。困惑している杏に軽く説明する。そして話していると見知らぬ人達が部屋に入って来た。絵梨花と崎田、そして紗里奈の三人である。入って来た三人は誰だこいつらみたいな顔をして固まっている。

そんな所に薫がゲートで戻って来た。


「え、薫、こいつら誰?」


絵梨花がそう訊ねると薫は事の顛末を説明した。後片付けは当時ライトニングがおらずハック、パラライズ、ハンドの三人だけで構成されていた能力取締課に任せるらしい。


「とりあえずめんどいから諸々は翔子に任せるわ。俺は兵助の所行って来る」


「わ、分かった」


気まずそうにしながらも三人は椅子に座った。そして少し怯えている駕兄妹を落ち着かせる。軽い雑談をしていると新たに二人部屋に入って来た。

全てを丸投げされた翔子とずっと真澄をマークしていた兵助だ。


「やっぱり能力者だったんだね」


真澄は驚きすぐにどう言う事か問い詰める。何を隠そう二人には少々関係があったからだ、兵助はとある任務で普通の学校で数ヶ月間過ごしたことがあるのだ。

そこは御伽学園と同じ中高一貫校でたまたま同じ委員会になっただけだが話したことがあったわけだ。その時兵助は超微弱な霊力を感じ取り薫にマークしておくよう伝えていたのだ。

そして能力を使えるようになって島に来たので何故兵助が居るのか分からず驚いているのだ。


「とりあえずこの人に説明聞いてね。僕はちょっとだけそこの女の子達と話さなくちゃいけないから」


兵助も全て翔子に任せて先に生徒会室いる三人と真剣な顔で話し始めた。その時真澄は不安に駆られていて不安定だったからなのかもしれないがその兵助の横顔がとてもとても魅力的に映った。

見惚れていると翔子が声をかける。


「それじゃ、ここの説明するからね。ちゃんとついて来てねー」


顔は笑っているが目の奥が完全に死んでいる。まぁ当たり前である、その時の翔子は教師になる為一日十八時間勉強をしているのにも関わらずそんな仕事を押し付けられたからだ。

だが教師になる前にそう言った事も体験しておくことも大事だ、何より休憩になると思って引き受けた。

その後は時間をかけて三人に島や学園、生徒会などの事を事細かに説明していった。急な引取だったので寮は空き部屋を貸すことになった。

真澄と杏は同部屋、拳は別棟で暮らす事となる。まだまだ不安な事はあるが中学一年生、まだ大事な時期ではない。その内に島に来れたのが幸いだと思うべきだと思い込む事にした。

そして未だ不安が拭えず半泣きの杏の横で眠る事にしたのだった。

だがこれは序章に過ぎない。今からが最悪の日々である。杏や拳の方が不安だろうと思い自分の気持ちを押し込んでまで支えようとしてしまった。それが引き金となって真澄の心は内側から壊れて行くのだ。



第百四十六話「駕砕 真澄1」

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