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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第七章「TIS本拠地急襲作戦」
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第百三十一話

御伽学園戦闘病

第百三十一話「表の言葉『放せ』」


流が加入してから一日が経った。皆に優しく教えてもらい構造や軽いルールを把握することが出来た、そして今は全員語 汐に全て任せて訓練を重ねている。

語 汐の強さは重要幹部は皆知っているのであまり心配はしていないが相手はあの薫なので充分敗北して基地になだれ込まれる可能性もある。

なので気は抜けないのだ。


「さて、やろっか。佐須魔が全部回復してくれるから普通に刀使うね。ハンデとして霊は使わない、流の方は好きにやって良いよ。

小手調べって感じだから」


修練場で数人の重要幹部が見守る中重要幹部としての流の初戦闘が始まろうとしていた。相手は基地に侵入した時に一番最初に出会った刀を持っている女、名を[榊原 矢萩(サカキバラヤハギ]と言う。彼女は刀と霊、そして言霊を扱う。

三種類も攻撃方法があるので単純に相手にどの攻撃が来るか考慮させると言う行為が強い。ただ本人自身はそこまで強くないので刀が取り上げらられると結構危なくなる。


「分かった。やろう。僕は本気だ」


流は軽いウォーミングアップを済ませ位置に付く。佐須魔の合図で動き出すことなっている、両者が真剣に睨み合っている中佐須魔は椅子に座って楽しそうに鼻歌を歌っている。他の誰も発声せずただ佐須魔の鼻歌だけが修練場に聞こえている状況だ。


「さ、佐須魔さん?合図は...」


原がそう聞くと佐須魔は歌は止めずに原の口に手を添える。黙れ、と言う意味だと察した原は黙って二人を眺める。


「じゃ、始め~」


唐突に佐須魔が宣言した。だが二人は綺麗に飛び出す、原が何故焦らしたのかと訊ねると佐須魔は楽しそうに二人を見ながら答える。


「二人の心を読んで二人共の丁度良い時にやらせただけ。最高の戦闘、してほしいじゃん」


「そう言う事ですか。今わかりました」


「まぁ良いからあっち見なって」


指を差す先には二人の姿がある。ただ一進一退の攻防を繰り広げているだけに見えるが少し経つとあることに気付いた。

流は避けていない、と言うより交わす気が無い感じだ。矢萩が刀を振っても何故か変な方向に振ってしまい流に当たらない、本人も困惑しているようで逃げの体勢が伺える。


「あれさ、見えてないんだと思うよ。矢萩には」


佐須魔はニタァと笑いながら流の背中の当たりを指差す。原はそこを見てみたが何がいるかは全く分からない、何もいないと言うと佐須魔は少しだけ真顔になってから手に触れる。そして霊力を流し込んだ。

変な感覚に鳥肌が立つ、数秒するとそれも収まり再び佐須魔が流の後方を見る様促す。もう一度見てみると先程とは違って何かがいる様に見える。


「あれは…霊?」


「うん」


「でも流君は下の鳥霊しか持ってないはずじゃ…」


「いるだろ?神話霊以外にも勝手に憑いて来る霊が」


「マジで言ってます?」


「マジだよ、流の母親。[櫻 京香(サクラキョウカ]。あの時に死亡してそのまま守護霊と化した、流にずっと憑いているんだよ

そのせいで記憶が完全に消せなかった。全ての元凶だよ…まぁ元を辿れば僕が全て悪いんだけどね」


原は黙りこくってしまう。一方矢萩と流の二人はとても接戦を繰り広げていた。

流は守護霊が剣を弾いてくれるおかげで全く攻撃を受けない。なので回避なんて考えずに矢萩に詰め寄り殴り蹴りを繰り返す。

矢萩は何が起こっているのか理解できず焦っている。だが冷静に流の攻撃の軌道を見極めて何とか回避を続ける、そしてこれは自分のミスでは無く何らかの者が干渉してきていると言う事に気付いた。そして刀での攻撃をやめて完全に逃げの姿勢に移った。


「矢萩は特定に入った、ここからが本番だよ。矢萩は霊力指数が320、一般能力者の三倍程度だけど俺ら基準では低い方だ。能力にほぼ霊力を消費しない原だって370はあるだろ?だが降霊術と言霊で霊力を多量に消費する、相対的に見ると矢萩は霊力が少ない。

そして霊ってのはある程度霊力が近い者同士じゃないと可視化出来ない。そして守護霊っての霊との霊力差じゃなくて主人と相手の霊力差になるんだよ。ざっと100ぐらいの差に収めると見えるって言われてる。でもさ、今の流って滅茶苦茶霊力が高いんだよ。原は370で見えなかっただろ?だから俺が流し込んだ、流し込んだ総量霊力指数は200だ」


「200!?」


「そう。だから流は絶対にカンストしてるよ、500以上だ。來花と俺、あと薫以外に始めて見たよカンストしてる奴。ホントーに面白い奴だ」


佐須魔は再び二人に視線を向ける。すると状況は変わっていないが僅かに変わっている箇所がある、矢萩が刀を振り出したのだ。だが守護霊に完全に逸らされている。


「だからね、私はそれぐらいじゃ負けないの」


矢萩はそう言いながら押し切り出した。流の攻撃を避けながら守護霊の妨害を無理矢理押し切り、斬りつけようとしている。あまりに強引な戦法だが状況的にこれが一番良いのは事実だ。


「さっすが刀迦の一番弟子って感じだな。全てがゴリ押しだ」


健吾が音を聞いてやって気た。そして佐須魔の隣に座り眺める。


「健吾にだけは言われたくないと思うよ、一番脳筋じゃん」


「そうかもな。だけどゴリ押しが結局一番強いんだよ。わざわざ頭使う必要なんてねぇんだよ、強い奴ってのは。使うとしても意図的に使わねぇんだ、ほらああやって感覚で掴むからな」


そう言って矢萩を見る。すると戦況が全く別になっていた、矢萩が刀で攻撃を続ける。そして流は回避に徹する、たまに反撃しようとするが矢萩の次の攻撃の方がスパンが早くどうしても避けるしかない状況になってしまっている。守護霊は何故刀が受け止めれないか不思議そうに刀を触ろうとしている。


「忘れてた、あんた守護霊いるんだもんね。そいつが刀を掴んだりして変な風に振らせたりしてたんでしょ。

まぁどんな霊でも霊力の全く篭っていないモノには干渉できない。霊の基本的な特徴、あんた考えても無かったでしょ。これ[ギアル]で出来てる刀だって」


[ギアル]とは学園がある島の地下でしか採れない特殊な鉱石だ。その功績は霊力を良く通す、逆に放出はあまりしない。なので降霊の為の刀などに丁度良いのだ、一方霊力の量を調節する為にギアルを使う者もいる。刀迦やライトニングが良い例だ、そして矢萩もその類で武具に降霊はしないが霊力量を調節する為に使っている。

本人の霊力が少なくギアルは霊力を放出しないので霊力貯蔵庫の様な使い方もしている。そして矢萩は刀の軌道を変えられた時から霊力を抜いていた。最終的に貯めていた霊力は全て放出されてしまったが刀は今完全な対人用となったのだ。


「[唯刀 猫(ゆいとうねこ]、師匠と全く同じ形、重さ、彫りの刀。あんたには到底考えられない程刀を打って共に作り上げた形。この世に二本の造形の一本。最強の、一本」


一気に距離を詰める、本来距離を詰めて自ら攻めて行く動きは苦手なはずの矢萩が攻めに出た。それはどう言うことか、答えは一つ、追い込まれている。

流は淡々と交わし隙があれば反撃を放つ。だが矢萩も負けずにガードをしてしっかりと反撃を行う、それを繰り返していた。

ただ圧倒的に矢萩の方が負担がデカいのだ、何故ならスペラとインストキラーの警戒もしなくてはいけないからだ。スペラは下と言えど強力な霊に成っている、なので油断は禁物なのだ。

そしてなによりインストキラーが怖すぎる。インストキラーの成功条件はたった一つで『発動者の現在の霊力が対象の現在の霊力を勝っている』だ。そして流が矢萩より霊力が高いのは流石に理解している、なのでいつインストキラーが飛んできてもおかしくはない。ただギアルの剣で心臓部を護ればまだギリギリ戦える程度にはダメージを抑えられるはずだ。なので常に動作を見てインストキラーを警戒しているのだ。


「そんなことしても無駄だよ、僕だって新しいやり方を覚えた。進化してるんだよ、お前らと違って」


流はそう言い放ちスペラを召喚した。だが刀の霊力は無なので動向を伺いつつ流への攻撃の手は休めない。


「だから無駄だと言っただろ、お前は刀から霊力を抜いた時点で負けてたんだよ」


スペラが舞う、そして何をする気付いた佐須魔は周りで観戦していた重要幹部の足元にゲートを生成しすぐに自分の元へ転送した、そしてその後広域化を自分達にだけかかるように発生させる。


『|佰式-弐条.護(ヒャクシキ-ニジョウ.マモリ)』

『|佰式-肆条.護(ヒャクシキ-ヨンジョウ.マモリ)』


霊、念能力に対する護り特化の術式を発動した。すると範囲に入っていた全員が護られることなる。

そして当人である流はある事をしていた。


「簡単な話さ、流し櫻を少し変えただけだ。そう、インストキラーに」


その瞬間矢萩が吹っ飛ぶ、三百六十度全体から衝撃波をくらい壁に打ち付けられた。流はスペラに還って来るよう指示を出してから佐須魔の方を見た。


「ハハ!よくやるねそんな事!下手したら自分がインストキラーを...」


「それは無い。あれはただスペラにインストキラーを打ちそのまま羽根に霊力を流し込んで舞わせているだけだ」


「…マジで?」


「本当だ」


「流君のインストキラーをいとも容易く絶えちゃうって事でしょ?スペラも上ぐらいあるんじゃない?」


「知らない、階級なんてどうでもいい。僕が欲すのは力だけだ。それじゃ良いか?部屋に戻りたい」


「うん。ありがとう、ある程度分かった。矢萩は僕が治しておく…ってもういないじゃん」


既に姿を消していた。そして打ち付けられてからピクリとも動かない矢萩の元に駆け寄りどうなっているかを確認する、そして驚愕した。


「うっそだろ…これ守護霊と流君二人の霊力合わせた全力パワーじゃん…」


すぐに他のメンバーも駆け寄って状態を見る。すると確かにそれほどの霊力だ、矢萩が何故動けなくなっているかも理解できた。


「なぁ佐須魔、妾思ったのだがこれは流坊の術による損傷で機能が停止しているのではなく過多な霊力供給のせいで体が動いていないんじゃないのか?」


矢萩は意識がある、目も開いているし息も出来ている。だが過呼吸でろくに息が出来ていなさそうなのだ。何故そんな事になっているのか、簡単に言えばキャパオーバーしてしまったのだ。

霊力とは指数500までならどんな人間に流し込まれても変な感じ程度で済むのだがそれ以上を元々500以下の者が流し込まれてしまうと体が追い付かず異常(バグ)が起こるのだ。それが今の矢萩と言う訳になる。


「スペラ出して、インストキラー全力で撃って、それでもピンピンしてるのか…思ってたよりヤバイ怪物が出来上がって来てる説が出て来たぞ…」


佐須魔が珍しく心から笑っていない所謂苦笑いを浮かべている。その様子に他のメンバーも少し恐怖と焦りを覚える、そして何かあった時様に鍛えておかなければいけないと再確認させられて。


一方流は自分の部屋に戻ろうとしていた。すると重要幹部の部屋が連なっている廊下に差し掛かると奥に一人の人物が立っているのが目に入った。流は構わず進む、そして横を通り抜けようとしたその時思い切り肩を掴まれた。無理矢理振り向かされて顔を見る。

そいつは今にも泣きだしそうな勢いで訊ねる。


「なんでここに来たの」


蒿里だ。なんで来てしまったのか、こんな地獄に。最近の出来事で一杯一杯だった蒿里の心に更に負荷がかかりもう黙ってはいられなかったのだ。だが流は冷たい声でこう言い返してから手を退け自分の部屋に戻って行った、蒿里はその態度や声色、表情、眼を見て絶望した。このままだと全てが終わってしまうと。


「蒿里、放せ」


その言葉はもう二度と、聞く事は無いだろう



第百三十一話「表の言葉『放せ』」

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