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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第一章「始まり」
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第十三話

御伽学園戦闘病

第十三話「謎の力」


流はスペラも鳴き声で目を覚ます、天井を見てもう野宿生活は終わったんだと実感した。今日からは物理攻撃の最低限の基礎を学ぶ、どれだけ長くてもあと二日間、マスターするのは無理だろうが出来るだけ頑張ろう。そう思い気合を入れた。

軽くシャワーを浴びて制服に着替え他の身支度を終えてから靴を履き基地へと歩き出す。

外は六時で多少日は昇っている、少し肌寒い感じはするがちょうどいい温度だ。朝の匂いを堪能しながら基地の前まで歩いた。基地の前まで着いた流は皆が言っていたパスワードを思い出し口に出す


「52536753」


自分でも開けた事に少し興奮しながら現れたエレベーターに乗り込む、数秒してドアが開いた。部屋の中では四人全員が寝ている。みんなの寝相などを見てから


「初めてラックが寝てるとこ見たなぁ」


と呟くとラックは「そうかい」と言って目を開きムクリと起き上がった。寝起きのラックに訓練はいつからやるのかを聞くと素戔嗚が起きてたら三人で学園に行ってそこでするから待ってろと言われたので大人しく待っている事にした。十分程待っているとニアが眠そうに目を覚ます


「おはようございます〜」


ラックはまだ寝てて良いと言ったがニアは「皆さん朝早いんですから」と言って朝食を作りに行ってしまった。

しばしの沈黙が流れる、唐突にラックが流に質問をする


「お前は重要幹部と戦って勝てる自信はあるか」


「はっきり言うと無い。あんなに強かった生徒会の人も怖気付くぐらいなんだ、正直怖い」


「それじゃあもう一つ。紫苑と礁蔽、兵助を助ける気はあるか」


「勿論!礁蔽君も紫苑も兵助さんも絶対に助ける」


ラックは「それならいい」と言いながら流の頭をクシャクシャと撫でた、そして話を続ける


「今回の戦いは良くて二人意識が保てて戦闘が終われば良い方だ、助けると言う意気込みがないと速攻で負けると思えよ」


「よくて…二人…」


「誰と戦うかにもよるが確実に三人は意識を保てない。それほど高レベルな戦いだ、その為に物理の基礎を今日から数日だが学ぶんだ」


そう話をしていると声を聞いたのか素戔嗚が目を覚ます。寝起きの素戔嗚に朝食を食べたら学園に行くと伝えた、素戔嗚は分かったと頷き流の方を見てから


「にしても流の霊力が少なく見えるが」


と流を見つめる。流はそんな事が出来るのか聞くと素戔嗚は「降霊術士の最強格だからそれぐらいは出来る」と鼻高々に答えた。流は昨日スペラと寝たと言うことを説明すると「今日からは出来るだけ温存しよう、数日後には沢山使うからな」と一応言っていく。

流は霊力の量まで分かるのかと驚いているとニアがキッチンから出てくる。三人分の白米と味噌汁、そして焼き鮭を持ってきた。

ニアは食べないのか聞くとニアは「蒿里さんが起きてから一緒に食べる、私はもう少し寝ます」と言い残し自室に戻って行った。

三人はあっという間に完食した、食器をシンクに持って行って水に漬けてからラックと素戔嗚は基地にある私物をまとめ外に出る。時刻は六時半、外は既に明るく朝特有のいい匂いが漂っている。学園に向かって歩いていると前方に見覚えのある水色の髪の人物がいる。


「あれは!おーい!会長と水葉ー!」


それは会長とその妹の水葉だった。会長は車椅子に乗って水葉に押されている。


「素戔嗚にラック、流もか。朝早いな」


「あぁ、今から能力館に行って少しでも流の体術を鍛え上げるんだ」


「そうだ!折角なら水葉も一緒に訓練させてくれないか?水葉は結構体術が出来るから良い訓練になると思うのだが。体を慣らしておいてほしいしな」


素戔嗚がいいのか?と聞くが水葉は黙って頷く。流は水葉の強さを知らないので勝てるレベルだと嬉しいなと思う感情二割恐怖八割と言った所だった。とりあえず学園に行こうと再び歩く。少し進んだところで会長が深刻そうに口を開く


「この前はすまなかったな…礁蔽と紫苑に傷をつけておきながら何も出来ないとは…」


「いいんだよ、操作されてたならどうしようもない。それより今のお前は持ち霊もいない状態だ、まず自分の心配をしろ」


「そう言ってくれると心が軽くなるよ。そう言えばお前らはチームで動くんだろう?」


「あぁ地下に行く」


「気を付けろよ二人が地上で一人が地下というのもおかしくは無い」


「それがほぼ確定しているから今から流を鍛えるんだ」


そんな話をしていると左側の道から声が聞こえてくる。そちらを見ると一人の女子が五人に向かって手を振りながら走って来ている、その後ろには先日会議にいた[駕砕(ガクダ) (ケン)]と姉の[駕砕(ガクダ) 真澄(マスミ)]もいた。


「かいちょー!おっはよーございっまーす!」


(アン)か、おはよう」


「お!ラック先輩達もいるじゃねぇか」


ラックと素戔嗚の二人も挨拶を交わした。その(アン)と呼ばれている女の子は初対面の流をジーッと見てから初対面なので自己紹介を始めた。


「はじめまして[駕砕(ガクダ) (アン)]って言います!真澄(マスミ)お姉ちゃんの妹で(ケン)の姉です。二年生なので先輩です!よろしく」


「よろしくお願いします」


色々な雑談をしていると学園に着く。まだ普通の生徒達は来ていないが数名の生徒会メンバーは既に登校してきている。会長はメンバー全員に挨拶をされ楽しそうに会話をしていた、どうやら会長はしっかりと信頼されている仲間の様だ。そんな会長が流達を襲ったと言われた時の衝撃は凄まじかった事だろう。

丁度話していた(カゲ)に会長を頼んで四人は能力館の方へ向かって行った。流はなにも学校の構造知らないのでアヒルの子の様にひたすら後ろを着いて行く。

能力館と言われている場所は完全にただの体育館だ、ラック達は土足で入って行ったので流も外靴のまま入館した。

辺りを見渡すと色々な設備がある。的やカカシ、筋トレ道具や肩そうなボールなど本当に様々なものがある。入ると早々


「まず水葉と戦ってみろ」


そう言って素戔嗚とラックは遠くへ離れた。軽く準備運動をした二人は言われた通り流と水葉は戦闘体勢に入った。


「ラック、二人の戦いを見てどうするんだ?」


「あいつは半田を物理で圧倒したらしい、多少の実力はあると思っているからまず今の実力を測る」


そう話していると水葉が初めて良いか訊ねる、ラックはどんな怪我をしようと治るから安心して戦え、そして霊や刀剣も使用禁止の肉弾戦だと伝えた。流も把握して準備万端の合図を出した。


「始め!」


その瞬間構えている流に一瞬で水葉が突っ込む。そのまま水葉は流のお腹にパンチを入れた、流は目で追えずいつの間にか後ろに吹っ飛んでいた。流はゆっくりと立ち上がる


「まだ出来る」


立ち上がった流に水葉はまた瞬足で近付き殴ろうとしたが流は同じ手は通じないと言わんばかりに左側に避けた。水葉の拳は後方数センチ先にあった壁に当たりその壁にはヒビが入った。水葉はスカした後すぐ蹴りを入れようと足を上げた、流はそれを見て蹴りが来ると予測し顔の部分を手で覆う。流が読んだ通り水葉の足は覆っていた腕の部分に直撃した。ガードをしたとは言え流の腕は紫色に腫れていた。水葉は二メートル後ろに下がった。


「どうすればいいんだ…身体能力では完全に負けてる…身長も同じぐらいだから体格差も無いどころかこちらの方が有利まであるのに…とりあえずガードして隙を見つけるしかない…」


「何ボソボソ言ってんの」


水葉は先ほどと同じく流に突っ込んで来た。流はまたガードの体制に入ろうとした、だが水葉も流と同じく学習するのだ。水葉は一瞬にして流の後ろに回り込み流の背骨を殴ってから背中を蹴飛ばした。流は押し出された声にならない声を出しながら吹っ飛び転がった。

水葉はもう終わったかの様な体勢を取っていたがそれが甘かった、流が立ち上がり水葉の方に拳を構えながら走り出した、水葉のすぐそこまで来た所で水葉は流に足払いを行い転けさせた。


「うわ!」


流は前方に倒れ、水葉は避ける様に横に移動する。だが流は今までより数倍ゆっくりと立ち上がった、顔を上げた流の眼は先程とは全く違い、殺気が(こも)っている鋭い目をしていた。その殺気がある眼のまま水葉の方に突っ込む、水葉は何かおかしいとすぐに攻撃体勢を解き防御体勢に入った。流は拳をガードしている水葉の腕にぶち込む、あまりのパワーに水葉のガードは意味を成さず大きな音を立てながら後ろに転がった。だが流はお構いなしに怯んでいる水葉に向かって拳を振り上げた、本気でヤバイと思い逃げようとしたが時既に遅く拳が降り下ろされた。だがその拳当たらない。


「もういい、お前の勝ちだ」


そう言いながらラックが流の腕を掴んでいた。勝ちと言われた流は死んでしまったかの様に力が抜けて倒れる。水葉は青ざめ息を切らして今のは何だったのかをラックに聞くがラックも初めて見たと言って珍しく冷静さを欠いている。


「俺が見た感じではモードに入った瞬間に霊力のオーラが強くなった。霊は使わないルールだから身体強化としか思えんが流は身体強化を持っていない、火事場の馬鹿力と考えるしか…」


「おい!すごい音がしたがどうした!」


大きな音を聞きつけた薫が駆けつけた、ラックは何が起こったかを説明した後水葉と流を保健室に連れて行くと言って流をお姫様抱っこして運び始めた。素戔嗚にはより詳しく状況を説明しておけと指示を出して水葉と共に能力館を出ていった。



[ラック,水葉視点]


保健室へ向かうために廊下を歩きながら水葉に暴走状態の流はどんな感じだったのか聞いてみると


「ひたすらに殺気が凄かったそれまでの躊躇がある感じが全く無くてひたすら自分を守る…というか殺すって意志が見えた。あと何でか怖くて動けなかった」


ラックは少し悩んだ後にもう一度能力診断をした方がいいと呟く、水葉は診断とは何か聞く。ラックは自分が引きこもって作った手形をかざす機械だと説明した。

水葉もしやと思いながらそれのせいで留年したのかと聞く、ラックは何故か自慢気に「そうだぞ」と答える。水葉は少しドン引きしながら一回目の診断は何と出たのかと聞く


「キラー系の念能力、強く殺すと思ったものを殺す」


「強いじゃん」


「だが代償もとてつもなく大きい。でも流はスズメの霊と契約した、だから複数持ちなんだ。三個以上能力を持っているということになるな」


「まぁどちらにせよ本人に聞くしかないね」


話に区切りが付くと同時に保健室に着く、中に入るとカルムが机に座って事務作業をしていた。二人が入室すると怪我をしている流と水葉を見て駆け寄ってくる。

ラックが状態を説明すると先に怪我の浅い水葉を治療する事になった。怪我している所に手をかざし能力を発動した、すると一瞬で傷が塞ぎ完治した。


「ありがと」


「いえ、じゃあ次は流さんですね」


カルムはソファに寝かされた流に手をかざし能力を発動する。治療しながらどちらかが勝ったのか聞き水葉が負けたと聞かされたカルムは凄く驚いた様子だ。驚きながらも治療を続け完治する、ラックが「水葉はもう行っていい」と言うが水葉は本人からどうやってああなったのか聞き出すと言って滞在する事になった。ラック、水葉、カルムは流が起きるのはただ待っていた。



[素戔嗚,薫視点]


素戔嗚は朝会長と水葉と遭遇した所から事細かに説明をした。薫は数分悩んだ後一つの考えを提唱する


「自分では気付いていない持ち霊が危険を感じ憑依して力が増したと言うのが一番納得いくが…」


「憑依は無理だと思うが…万が一そのケースだった場合はどうすれば暴走しない?」


「対策は流を生命の危険が感じない様にするしかないな、だが今回の襲撃でお前らが戦うことはほぼ確定だ。となると流が暴走する可能性は十二分にある…まぁ暴走しても理性自体はあるかもしれない、結局は本人から聞かないとどうにもならないな」


「暴走した時の強さが不明なのは怖い、今回はラックが簡単に止めたとはいえもっと力を秘めている可能性がある…なぁ薫」


「ん?」


「この二日間の訓練、基礎か暴走の制御の訓練どちらがいいと思う?」


薫は少し悩んでからどちらもやろうと言った。素戔嗚はどうやってやるのかを聞こうとすると黙らせる様に薫は説明する


「今回の訓練は俺が付きっきりで見てやる、だから普段は体術をやる。だが本気やるなら殺す手前まで追い込む事ぐらい簡単に出来る、そこで暴走したら制御訓練を行う。あとスペラを常に出しておいて香奈美に鍛えてもらうってのはどうだ?基礎しかやらないなら霊力は使わないだろうし何もしないより持ち霊を鍛えた方が戦闘時に役立つんじゃ無いか?」


「うーん…だが本番で霊力が足りなくならないか?」


「俺の霊力分ければいいだろ。香奈美には俺から許可を取る」


「それなら大丈夫だな。香奈美に関しては頼む」


ある程度話がまとまったので二人も保健室に向かう事にした。保健室では眠っている流を三人が囲んでいると言う妙な状況だった、素戔嗚は薫と話し合った事をラックにそっくりそのまま説明した。ラックは文句無いが薫が教師としての仕事をしなくていいのか訊ねるが薫は元々事務的な仕事は翔子に任せているし授業はもう一人の先生に任せるから大丈夫だと、すると話を聞いていた水葉が恐る恐る小さな声で言う


「私も…一緒に…」


「いいのか!?」


「うん。やれたままは嫌だしお姉ちゃんが協力するなら私も協力する、私は体術も十分出来るし霊も上級だからお姉ちゃんの方に行っても出来るし…やりたい。あんたらで重要幹部一人対応してくれるならありがたいし」


素戔嗚に感謝の言葉を沢山投げかけられた水葉は照れてマフラーに顔を埋めた。やる事もなかったので薫達に野宿生活の時の話をしていると流が唸りながら目を覚ました。流周囲を見てから呟く


「ここは…保健室…」


ラックがどこまで記憶があるか訊ねると水葉に蹴られたところから記憶が無いと言う、その場にいる全員が暴走だと確信した。流は訳が分からず頭に?を浮かべていたのでラックは全てを説明した。流は毎日の様に瀕死に追い込まれると聞くと恐怖で少し震えていた。

ただ流は頭が痛いとの事なので今日は帰る事になった。素戔嗚、ラック、水葉は薫に体術訓練をしようかと笑顔で言われ冷や汗をかいている。

薫は流を見送る為一緒に保健室を出た。廊下を歩きながら会話をする


「お前の能力は結構危険だ。何か違和感あったら直ぐ俺に言え、夜でも俺は学生寮にいるからチャイムを押してくれればすぐに対応する、それも出来ない程の緊急事態だったらどんな形でもいいから俺を呼べ。どんな時でも駆けつけてやる」


「はい。わかりました」


「ところで水葉はどうだった?」


「強かったです、僕はまだまだだなって」


「そりゃぁあいつに体術を教えたのは俺だからな」


「そうなんですか」


「あぁ。本来なら体術はもう一人の訓練をしている兆波(チョウナミ)先生に任しているが水葉は直接俺に教えて欲しいと言ってきたから一ヶ月であそこまで育ててやった。本人曰く地獄だったらしいけどな」


たった一ヶ月であそこまで強くなったと聞いて流も頑張ろうと再度気合いを入れた。薫は「そのいきだ」と元気そうに背中を叩いた。

そんな話をしていると昇降口に着く、流は一人で帰れると言って靴を履いた。薫は流が見えなくなってから三人の体術訓練の為保健室へと戻って行った。

流はまだ朝の十時だが帰路に着く、すると帰り道に見た事のない種類の黒い蝶が肩に止まってきた。流はそこまで生物に好かれないが妙に馴れ馴れしい蝶だ。

礁蔽の部屋に着き鍵を開けると蝶は飛び立ってしまった。流はただいまも言わずシャワーを浴びて死ぬように眠った。



諏磨(スマ) 香澄(カスミ)

能力/降霊術

二匹の銀狐を召喚し戦う

強さ/街一つなら簡単に壊せるレベル


第十三話「謎の力」

2023 4/18 改変

2023 6/18 台詞名前消去

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