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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第六章「地獄の扉」
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第百二十三話

御伽学園戦闘病

第百二十三話「(せいぎ)への肯定」


水葉と香奈美は禁則地を区切る鉄柵の場所でバッタリ合流した、そして話しながら移動を始める。二人共鳥神が狙いだと言い全く同じ考えをしていた事に香奈美は何か変な感情を覚えた。ただ今はそんな事を追及している暇は無い。

香奈美は鳥霊を呼び出し、水葉は剣で切り裂いていく。次第にとんでもない量になって行き捌ききれなくなって来る。水葉は霊力の消費は増えるが致し方なく降霊術を使う、そして霊力消費が多少少ない面で償還を行った。


『降霊術・面・黒狐』


水葉は黒狐の体毛の中にダイブした。そして香奈美も共にダイブし二人を乗せた黒狐は正面の霊達を無差別に喰いながら進んでいく。そしてあっという間に到着した。

ほんの少し前で神々しい鳥神が宙を舞っている。規格外のサイズに圧倒されるもすぐに動き出す、香奈美は鳥霊に指示を出す。水葉も黒狐に指示を出してから剣を握って動き出した。


「お前は水葉を乗せて鳥神の元へ行かせたり落下したりした時にカバーしてやれ!それ以外の攻撃は随時私が出す!」


「黒狐は普通に攻撃して、妖術は好きに使って良いからね。私は霊力いらないから」


二匹は従順なのでしっかりと指示に従い攻撃を始める。水葉は鳥霊から鳥神に乗り移って剣を突き刺した。飛ばされる直前に霊力を込めていたはずなのだが全く霊力が雨後っていない時の動作、そうすり抜けたのだ。

水葉自体は霊力が通っているのですり抜けないが剣は何故だがすり抜けてしまう。二人共何故効かないのか瞬時に察した。


「霊力が少なすぎて全く霊力が通っていない剣と同等の扱いにんまってしまっているのか…水葉!剣に霊力を込めろ!!」


「お姉ちゃん忘れたの!?私霊力流すのは苦手だから出発前に紫苑にやってもらたの!だから出来ない!お姉ちゃんも苦手でしょ!!無理だよこれ!!」


水葉は香奈美の鳥霊に飛び移って距離を取った。今度は黒狐、鳥霊による妖術での攻撃を試みる。


妖術・妖水鎌(ようじゅつ・ようすいれん)


水葉がそう唱えると黒狐は鳥神に向けて手を振った。すると爪から水の鎌の様な物体が飛んで行く、そして鳥神の羽にぶつかった。遂に攻撃手段を見つけたかと思ったが全く効いておらず二人と二匹の方を見る事すらない。


妖術・匆匆焔澪(ようじゅつ・そうそうえんれい)


香奈美が妖術を発動した。すると鳥霊は鳥神より何倍も高く飛び上がった、そして眼から涙を一滴落とす。その涙は落下していくと共に菫色(すみれいろ)の炎を纏って行く。遂には鳥神に直撃した。

鳥神はどうなったか。無反応だった。香奈美の霊力の二割を使って撃った妖術でも無傷の様だ。流石は神格、文字通り格が違うのだ。


「ハハ…こりゃ無理だな」


「そうだね。薫とか絵梨花嬢待つしかないね」


二人が諦めモードに突入し一度場を去ろうとしたその時一人の男が現れた。白髪でそこそこ長い髪を後ろで結んでいて煙草を吸っている男だ。


「もう諦めんのか?」


「誰だ!?」


香奈美が警戒しながら訊ねる。男は呆れて両手を上げながら自己紹介をする。


「[霧島 透]、外で暮らしている所謂非所属だ。能力者が産まれるルーツとかを研究している。んで研究材料になりそうだし始めて見るから地獄の門を見に来た…んだけどなんか鳥神がいるな。あいついるのかよ」


霧島は誰が鳥神を持っているかを分かっているかの様な口ぶりだ。香奈美は雑魚霊を殺しながらその事を訊ねる。だが霧島は答える気は無いようでさっさと地獄の門へと向かおうとしてしまう、水葉が通せんぼしてそのまま追及する。


「誰が鳥霊と契約を結んでいるか知ってるの?答えて」


霧島の喉元に剣を突き立てながらそう言う。霧島は仕方なく答える。


「鳥霊使ってるのはTIS重要幹部現最強、刀迦がいるならば二位。名前は...」


そこまで言った所で遠方から叫び声が近付いて来る。霧島は口を閉じそちらを見る、二人もそちらを見ていつでも攻撃できるよう準備をしておく。

そしてすぐにその正体が判明する、三人の真横を二人の男が通った。片方はとんでもない力に押されながらも剣で防御している、もう片方はバックラーの相棒と共に殴り掛かって押しに押している。そう、素戔嗚と紫苑だ。

叫び声の正体は紫苑が怒りに任せ動いているので雄たけびを上げていたからだ。


「やめろお前ら!!」


香奈美が怒号を浴びせると二人は戦闘をやめた。


「なんでだよ!こいつはニアを!」


「今はそんな事をしている場合ではない!この鳥神を殺すか地獄の門を開いた犯人を捜すかに徹底しろ!住民に被害が出るんだぞ!!それが嫌なら学園で大井先生を共に護衛でもしていろ!!!」」


そこまで説教したら紫苑は不満そうにしながらも素戔嗚から目線を外した。素戔嗚も安心した様で刀を鞘に納めた。

水葉は再び霧島に犯人の名前を聞く。


「名前か、あいつの名前は...」


その瞬間頭上に舞っていた鳥神が急に動き出した。耳が張り裂けそうな咆哮をしてから攻撃を始めた。羽をバサバサと扇ぎ始めた。すると何十本も羽根が落ちて来る、その羽根は霊力を纏っている事に気付く。全員直ぐに霊を戻し何処かに逃げようとしたその時上斜め後ろから聞きなれた声が聞こえる。


『|弐式-弐条.封包翠嵌(にしき-にじょう.ほうほうすいがん)』


太陽神ラーの頭に乗りながら術式を唱えている薫だった。その術式は小さなオスのカワセミが出て来てどんな術も喰ってくれると言う術式だ。なんでも喰ってくれる代わりに霊力消費が激しいが大井の霊力補充チョコレートがあるので気にする事は無い。


「大丈夫か」


「はい、薫先生は大丈夫ですか?」


「俺は大丈夫だ。早く捜しに行くぞ」


「分かりました!」


水葉、香奈美、紫苑は薫に付いて行く。素戔嗚はいつの間にかいなくなっていた。霧島は単独行動をするようで勝手に何処かに行ってしまった。

三人は薫に付いて行くようにして進み続ける。そして地獄の門のすぐそこまで到達した、とんでもない霊力と圧、それらが混じり合いとても嫌な雰囲気となっている。


「ここら辺にいてもおかしくはない筈なんだが…とりあえず霊は俺のラーで殺す、お前らは霊力を温存しておけ」


四人が到着してから本当に数十秒しか経っていない、そんな時だった。少し遠くから何か強い霊力が近付いて来ている事に気が付いた。だが知っている霊力だったので味方だろうと思って待っている。

やはり味方で菊、漆、礁蔽、兵助、そして神を乗せた黑焦狐だった。


「何してんだお前ら」


「菊こそ何してんだよ。霊殺してろよ、別に良いけどよ。んでなんで呪いの塊がいるんだ」


「なんかどうしても来たかったらしい、敵意は無いし何かあった時に役立ちそうだから連れて来た。人質にも成りえるしな」


「まぁ良いか。んで礁蔽と兵助はなんで来たんだ?お前ら下手したら死ぬだろこんな所」


「いや…わい誰が犯人か察しがついたんや…だから来た。しっかりこの目で見届ける為に」


「僕もそうだ。昔からの仲間だからさ」


薫は納得した様で何も文句は言わなかった。そしてどうやって犯人を捜すかの話になった、どうやっても運に任せる形になってしまいそうだ。そう思っていた時だった、地獄の門の目の前に佐須魔と來花が着地する。


「やっほ~」


「まだ見つからないのか」


「ん?何言ってるの?いるじゃん、後ろに」


佐須魔は笑いながら皆の後方を指差した。振り向くと確かにそこにいる、薫以外全員驚愕する。兵助と礁蔽は予想が当たっていた事にとてもやるせない気持ちになる。そしてその娘は口を開き自分の名前の由来を話しながら佐須魔の方に向かって歩き出す。


「中国のある山、そこは地獄を(まつ)る祠があったとされている山。その山の名前だけで地獄と言われることもある。私はそこから(ちな)んだ名前なの。その山の名前は[蒿里山]。だから蒿里って言葉だけでも黄泉の国って意味を持つの。

私は何個も能力を与えられた、無理矢理ね。その時に記憶も焼き切れたから佐須魔が付けたの。最初に注入した能力から連想される名前、『地獄の門』って能力から連想される名前」


そいつは佐須魔の元まで到達した。そして振り向き皆の方を向いてから言う。


「それが私の名前、蒿里」


判明した。地獄の門を開きこんな事態に陥らせたのは他の誰でもない、エスケープチーム初期メンバーの一人[樹枝 蒿里]だったのだ。


「やっぱそうやんか…なんで…なんで話してくれなかったんや!!素戔嗚みたいに少しでも気持ちを楽に...」


「私は記憶が無い。最初から[樹枝 蒿里]として認識しなくちゃいけなかった。話す事なんて何もないの、話してもどうにもならないの。昔からの記憶があってTISに入っている事に少しでも葛藤できる素戔嗚とは違ってさ、私は根っからのTIS初期メンバーなの。そう生きるしか…無いの」


とても辛そうにそう言う。笑っているが目には光が灯っておらず言動の節々から怒りや悲しみなどの負の感情を感じ取れる。


「でもっ...」


礁蔽が再び声をかけようとしたその時突き飛ばされ転ぶ。誰が突き飛ばしてきたのか確認するとそこには素戔嗚が立っていた、そして素戔嗚は刀を抜き蒿里の心臓部に突き立て問い詰める。


「何故命令では無い事を行った」


「殺したいなら殺せばいいじゃん。私は良いよ?さっさと終わらせてよ」


「はいはいやめてやめて」


佐須魔が間に入って喧嘩を止めた。そんな最中兵助は足を突き出し二人の傍へと向かう、倒れている礁蔽も起き上がらせ共に近寄った。

そして二人に向かって言葉を贈る。


「僕は二人がTISでもそれで良いさ、だって数年前からの友達って事には変わりないだろ?大会では敵対する事になるかもしれない、でも僕は良いよ。エスケープに、学園に縛り付ける気になんてない。好きに生きたらいいんだ、僕にTISを抜けさせる権利なんて無い。蒿里が行きたくないって言うならここに残れば良い、薫や翔子、絵梨花に兆波。みんなが奮闘して護ってあげるさ!逆に行きたいのなら行けばいい、僕は止めないよ」


兵助もショックを受けているだろう、だが二人を励ますような言葉を放ったのだ。その言葉を聞いた蒿里の目には一瞬だけ光が灯った、だが一瞬にして消えてしまう。

そして二人は決断した。


「俺は行く、俺の居場所はここでは無く、TISだけだけなんだ」


「そっか。頑張ってね、蒿里はどうするんだい?」


「…私は…行くよ…残れれないもん。もう…」


「うん、分かった。元気にしててね」


兵助は最後まで笑顔を崩さなかった。佐須魔はゲートを生成した。そして入るよう指示を出した、來花と神は一足先に帰って行った。


「話付けて来たわ、私も帰るね」


ある場所である者と話をしてきたリイカもゲートの中に入って基地に戻って行った。残されたのは佐須魔と素戔嗚、蒿里の三人。佐須魔は話が付いたなら帰ってくるよう言ってからゲートに入って行ってしまった。

素戔嗚も続いて入ろうとする。


「絶対…絶対連れ戻すからな!わいはお前らの事、ぜっっったい!!連れ戻すからな!!!」


礁蔽がそう叫んだ。素戔嗚と蒿里は少しだけ哀しそうな目をして少しだけ礁蔽の方をみてからゲートに入って行った。それと同時にゲートは消失しTISは島から出て行った。

数人は未だショックによって固まっている。紫苑も理解が追い付かず硬直状態だ。そんな空気間の中ある者が降り立った。


「さぁ、お片付けだよ。子供達」


黄泉のマモリビト、エンマだ。そして触手に掴まるようにしてルーズもいる。二人は地獄の門を閉じる為現世にやって来たのだ、今回の緊急事態は想像より早く片付きそうだ。

一人の能力者(にんげん)を手放す事となって。



第百二十三話「(せいぎ)への肯定」

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