第百二十一話
御伽学園戦闘病
第百二十一話「六組」
転送された場所には既に通常時の十倍の霊がいる。しかもその全員が霊力が高く非常に好戦的だ、サポート役も同時に飛ばされたが最低限戦える者と一緒なので心配は無いだろう。
そんな中禁則地に一番近い場所に飛ばされたのはラック、水葉、灼の三人だ。ラックは霊力を足に送り込んで霊を捌いている、水葉も黒狐と刀で霊を殺し回る。灼は攻撃しつつも二人の隙を埋める様な形で動いている。
「なんだこの量!!いつもここら辺は多かったけど数が尋常じゃねぇ!!救援来ないと捌ききれないぞ!!」
「やばいね~」
「流石地獄の門って感じ。他の奴らは大丈夫かな」
そんな激戦を繰り広げている三人とは真反対の学園に一番近い三人は蒼、菊、漆、所謂スロースタータだ。菊はすぐに動物達を集める、漆も菊の仲間ではない生物たちをに命令して学園の周囲を援護させた。蒼はまだスイッチが入っていないようで屈んで頭を覆いガタガタと震えている。
「早く行くぞ!!」
菊がそう言うが蒼は動こうとしない。仕方なくスイッチが入るまでは学園周辺の霊を狩る事にした、害が無さそうな霊でも今は仕方ない。だがただ殺すだけじゃ勿体ない、霊が霊を喰えばパワーアップするのだ。
「クロ!」
「なんじゃ」
小さな狐が菊の目の前に現れた、菊はすぐに唱える。
『降霊術・唱・黒九尾』
すると小さな黒狐はみるみる大きくなり立派な黒狐へと変化した。そして指示を乞う、菊は島中にいる味方ではない霊を喰い殺せと指示を出した。
「御意。それでは行って参ります、姫もお気を付けて」
それだけ言って走り去ってしまった。次は蒼のスイッチを入れなくてはならない、どうにかしないとと奮闘するが中々立ち上がってくれないのだった。
一方火山にある三人が飛ばされていた。須野昌、礁蔽、光輝だ。礁蔽も多少は鍛えているので霊力を腕に流し込み弱い霊を殺す、少し強い霊は須野昌の相棒と須野昌本人、そして光輝が対応する。
「門が開くとこんなんになるのか」
「ほんま凄いな。ここはまだええけど禁則地の方とかわいでも分かるぐらいにはやばいで」
「俺も始めて見た、でもなんで開いたんだろうな。ふとして開くなら今までに何回も開いてそうなもんだけど」
「よう分からなんな。とりまわいらはここらの霊を殺しまくろか!閉門は他の奴に任せるで!」
「そーだな」
「そうだね。それじゃ引き続き殺すぞ!」
他の班は特に目立った行動は無かった。様々な場所に配置されて霊を喰いまくり殺しまくっていた。
そして島の外で暮らしている能力者も嫌な空気を感じ取っていた。東京にある能力取締課では出発の準備がなされていた。
「出陣は私とハンド、パラライズの三人だ!すぐに行くぞ!」
五人しかいない能力取締課を三人出動させる、本土で何かが起こったら大変だが今はそんな事態では無い、上司も許可を出したのでハンドが生みだした手に乗って凄いスピードで太平洋へと飛び出した。残った二人は情報を集める様指示を出されていた。
「どうするかな~」
「良いからさっさとやるよ、ライトニングが困っちゃう」
残りの二人は男女一人ずつだ。男の方は黒髪で短髪、結構若く大学生ぐらいの見た目、そしてパソコンをいじっている。[name ハック]、能力は『ハッキング』で機械ならば何でもハッキング出来て好きに操作できると言う物だ。だが反逆は起こさず大人しく能力取締課で働いている。
女の方は結構小さく中学生ぐらいに見える、背中に六つの羽の様な物が生えている。[name ファスト]、能力は『加速』、走り続ける程足が速くなると言う物だ。青天井の為なんでも出来てしまいそうだが体が追い付かず壊れてしまうのである程度でスピードは制御している。普段は移動役を担っているが今回は島が危険な状態なので情報収集を任せられた、と言ってもハックに言われた事をやるだけだ。
「ほんと人増やしてくんねーかな。俺だけでもこういうのは出来るけど同時に任務発生した時に対応できないせいで御伽の奴ら派遣しなきゃいけないじゃん、あの手続きダルいし」
「しょうがないでしょ、政府は私達の事信用して無いもん。いつ第二次戦争が起こってもおかしくない、一部の奴らはTISが脅威になりえるって事を理解してるみたいだしね」
「まぁでも御伽の教師なら勝てるんじゃねーの?怪物四匹ぐらいいるじゃん、教師だけで」
「[華方 薫][兆波 凪斗][大井 崎田][幸轍 絵梨花]の四人ね。薫と絵梨花なら佐須魔でも倒せるだろうけど凪斗と崎田は精々重要幹部ぐらいでしょ、数の差で押し切られる。学園の生徒をかき集めても倒しきれない、上にだって強い奴はいるからね」
「どうするかねーなんかあった時って非所属は動くかな」
「さぁ?そもそも私達は非所属なんてTIS含めて三組ぐらいしかしらないでしょ」
「突然変異体が動くかねぇ、今回は動いてるみたいだけどよ」
「そうなの?珍しい」
「…すっげぇな。TISも動き始めたぞ、地獄の門ってそんな大掛かりな事か?なんか死んだはずのルーズが学園の付近歩いてるし」
「え?」
「恐らくマモリビトと一緒に来たんだろ、とりま動いている団体は特定出来た。御伽学園戦闘員総員、TIS、黄泉のマモリビト、突然変異体、干支だ。俺ら含めて総勢六組か、報告しとく」
「おっけーじゃあ引き続き情報収集しよう」
「あいよ~」
ハックが報告した通り六組が動いている。突然変異体は島では暮らさない非所属の団体だ。東京、といってもほぼ山梨なのだが。その山奥の屋敷に住んでいる少数のチームだ。リーダーが研究者で能力の発生等の研究をしているらしい。そして今回動いているのはそのリーダーだけだ、それも助けに行くと言う理由では無く地獄の門が開いているのを見て研究材料にしたいから、と言う理由だ。だがリーダーは強い、相当心強い助けになるだろう。
「学園行くの久々だな、薫が節操無くなった時以来か。まあどうでも良いな、研究材料だけ採取して帰るか」
そう言いながら宙を舞い海を越える。すると少し遠方で同じように海を渡っている者を見つけた、大きな龍に二人の人間が乗って空を飛んでいる。見た事のある二人だったので少しづつ距離を詰める。そして話しかけた。
「何してんだシウ、桃季」
「透さん!俺らは干支神持ってる子を引き取る日だったのに...お察しって感じです」
「そうか」
「透さんは何故?」
「地獄の門開くの始めて見るんだよ、だから研究材料として見に行く。もうちょいで掴めそうなんだ、能力者が産まれる仕組みを」
「本当ですか、楽しみにしてますよ。それじゃあ俺達は急ぎなので!お先に!」
龍は一気にスピードを上げた。突然変異体のリーダーは置いていかれたが気にせず学園へ向かう。その二組はそこまで重く考えていなかったがTISはもう最悪だった。
「やらかしてくれたね~ホントに」
佐須魔が学園に向かう為メンバーを選んでいる、來花は確定しているのだが他を誰にしようか迷っているので、霊が強く一掃出来て更にやらかした奴を止めれる力を持つ者安直に叉儺でも連れて行こうかと思ったその時一人の男が名乗り出る。
「佐須魔様、俺を連れて行ってください」
そう言ったのは他の誰でもない裏切り者[杉田 素戔嗚]だ。
「俺なら霊もやれるしあいつも...」
「おっけー行こうか。じゃあ後一人、行きたい人は...」
「はいはいはいはい!!!俺!俺行く!!!」
元気そうに手を上げているのは工場地帯で蒼や須野昌と戦った[空傘 神]だ。呪い使いの中ではトップレベルに強く圧倒的王者である來花の次に並ぶレベルの実力者だが頭が悪いのでそこまで強くない。
「分かった。じゃあ今回は俺と來花、素戔嗚、神で行こうかな。他に誰か行きたい人いるかい?人数は何人でも良いけど」
「それじゃ私行きたい!最近霊喰わせてあげれなかったし!」
最後の一人は頭に猫の仮面を着けていて巫女か巫女じゃないのかよく分からない服を着ている女だった。神はクリーム色でとても美人だ。
「リイカも来るのね、じゃあ五人で行こうか。早めに行かないとエンマに裁かれてちゃう」
佐須魔はゲートを生成した。そして待機のメンバーに暴れないよう注意してからゲートに入った。続いて來花、神、リイカ、素戔嗚と言う順で入って行き。素戔嗚が完全に姿を消したところでゲートは消えた。そして五人はそれぞれ違う場所に飛ばされた、ただそれぞれ霊力が強すぎる面子なのですぐに何処にいるかなんて分かる。佐須魔は島の中心、火山の上空に飛んでいる。そして生徒達がどんな風に動いているのかを観察していると背後から途轍もない殺気を感じた。
「そんな怒らないでよ~今回はこっちの失態だから尻拭いしに来ただけだよ」
「黙れ、俺らがやる。お前は帰れ」
佐須魔は笑いながら振り返る。そこには刀を突き立て宙に浮いている薫がいた。
「はぁ…ほんとめんどくさいな…まだ分からないのかい?この門を開けたのは僕じゃない、薫だって分かってるだろ?じゅ...」
「黙れ!!分かっている!!だからこそ邪魔をするなと...」
「あいつはスパイだ、ただ精神がちょっと不安定な所があってね。爆発しちゃったみたいなんだ。だから俺らが回収して帰る、それでいいだろう?」
「…一つ聞かせろ。あいつは、最初から…裏切る予定だったのか」
「うーん微妙だね。指示が無い時は好きに動いて良いとは言ったけども大会の時に裏切らせる気だったんだけどね」
「分かった。さっさと帰ってくれ」
薫はとても辛そうな顔をしながら地上に戻った。地面に刀を突き刺し今までの行動を考え自分を責める、だがすぐに立ち上がり市民や霊を殺している生徒達の助けに戻る。佐須魔もそれを見てすぐに引き上げてやろうと気持ちになった。辺りを見渡し何処に犯人がいるかを特定した。その犯人は地獄の門の隣で座って俯いていた。そしてやってしまった事への後悔、罪悪感に苛まれこう呟く。
「私は悪くない、何も間違ってない。全部あいつが悪いんだ…だから。私は何も間違ってない…だって私は、最強だもん」
だがその自己暗示も長くは続かなかった。それは何故か、簡単な事だ。最強が何人も襲い掛かって来るのだ、その子を捕まえる為に。だがそいつも弱くは無い、対策の為ある霊を呼び出した。
『降霊術・唱・鳥神』
すると超巨大な鳥が現れた。遠方からでも何か分かる程の大きさだ、それを見た二人の生徒が指示を聞かず勝手に動き出す。その一人は姉があいつに痛い目を見させられたから、そしてもう一人はあの鳥神に殺されかけたからだ。そう、香奈美と水葉だ。二人は無心で鳥神の元へ向かう、因縁の相手を殺す為に。
一方その主は逃げ出した、鳥神を置いたままにして。全ては他人のせい、そう思って、逃げ出したのだ。
第百二十一話「六組」




