表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
117/556

第百十七話

御伽学園戦闘病

第百十七話「過去との決着」


紫苑はフリーズしてしまう。佐須魔は紫苑がどう動くかを観察している、來花は我関せずといった態度を取って普通に案内を受ける為扉の方へ向かって行った。刀迦は紫苑に近づき肩を掴んで無理矢理屈ませた、そして耳打ちである事を伝える。


「あいつは今ここでメイドしてる。私はここに住んでるから知ってるけど本性は隠してる、何してくるか分からないから一応気を付けておいてね」


「分かった…」


刀迦も扉の方へ向かう。特にアクションを起こすわけではないのだろうと察した佐須魔も扉の方へ向かった。紫苑は礁蔽達に呼ばれて案内を受ける。

豪華な部屋にグループの男女を分けて割り振られた。素戔嗚はここで分かれる事になりTISの部屋に入った。そしてTISの男部屋では叉儺と刀迦も集まり当然紫苑と飴雪の話になる。


「だるいな、もしかしたら殺すかもしれないし」


「あの餓鬼が人を殺す度胸があるとは思えんがな」


「叉儺は間近で見た事ないから分からないだけであの女結構ヤバイよ。あの時は來花の虎が全部食べたからよかったけどそこらの強い部類の降霊術師よりも強い霊が数体憑いてた。それほど危ない奴だ」


「ふーんそうか」


「とりあえず何かあれば私が行くから。この宮殿の住人だし」


「そういえば師匠はここに住んでるのですか?」


「そうだよ。便利だし特に敵対もしてこないからね。現世に行くってなったらどうせ佐須魔が無理矢理起こすでしょ」


佐須魔は頷き宮殿での生活に関して追及する。刀迦は朝から夜のルーティーンを説明した。朝は訓練、昼はロッドの誰かと訓練、夜は飼っている動物と戯れてご飯を食べて寝る、と言う感じだ。


「いいなー俺もそんな生活がしたい」


「佐須魔は充分そんな生活だろう」


「來花は分からないだろうけど[上(ジョウ)]のやつらに情報伝えるのも俺なんだよ?結構だるいんだよ。上のトップ三人は単独行動が好きすぎて全然集まってくれないし」


「そういえば今の上ってどんな感じなの」


長年黄泉の国にいた刀迦は重要幹部のメンバーすら把握できていない。だがそれはどうでも良くて上の方が気になるのだ、重要幹部は皆頭が良い意味でも悪い意味でも狂っているので聞いても面白くはない。それより真面目な奴がたまにいる上のトップの方がきになるのだ。


「まず一位が[霧島(キリシマ) 伽耶(カヤ)]だね。能力は『空気中の元素を自由に操れる』ってので研究者として重宝してる。地味に滅茶苦茶強いよ

二位が[語 汐(ユーシー]。中国だったかな?から来た奴。能力は麻雀がなんだかって言ってけど覚えてないや、すぐ遊びに行っちゃうからさ、真面目なんだけどねー

三位が[コールディング・シャンプラー]。能力は念能力で『触手』を出せるって奴。センスがあんまなくて戦闘面では微妙に使えないから遺体処理とかの雑用を任せてる、弱くはないからこの順位

と言っても正直大差は無いから思いついた順に言っただけなんだけどね」


「微妙だね」


「まぁあと半年もしない内に大会だからねー重要幹部を育てたいのさ、ここで勝って全滅させなければ全て終わり…最悪のパターンでも優勝はしなくてはいけない」


「來花起こしたり無茶するからでしょ」


「別にいいさ。勝てるからね」


「ふーん。そうだ、餌あげなきゃだから私行くね」


刀迦はペットの餌の為に部屋を出て行った。その後は特に話す事も無かったのでそれぞれダラダラしていた。

一方エスケープはお世辞にもあまり良い雰囲気とは言えなかった。素戔嗚、流、ニアの三人がいないのだ。無理もないだろう。しかも蒿里は別部屋だ。


「ねえラック、これからどうするの?」


「恐らくどこに配置されるかが発表される。それまでは待機だ」


「分かった。でも何もする事ないなあ」


「いつ襲撃されるか分からん。待機だ」


「しょうがないなー…じゃあ皆でしりとりでもしない?」


「俺はいいぞ、暇だしな」


「わいもええで」


「紫苑は?」


ずっと黙っている紫苑に話しかけるが反応はない。何か嫌な事でもあったのだろうかと訊ねても何も答えてくれない、そして紫苑は立ち上がり何も言わずに重い足取りで部屋を出て行った。まぁ精々体調が悪かったとかだろうと思いしりとりを始めた。

紫苑はトボトボと歩き続ける。向かう先は無い、だが匂いで分かるのだ。妖艶かつ重苦しく、癖になる匂いだ。その匂いを辿り続ける。するとある扉の前で匂いが絶えた、顔を上げるとそこはメイドの部屋の様だった。


「…」


嫌な予感と少量の涙が溢れて来る。だがここで日和っていては成長は出来ない、今紫苑の心の妨げになっているのはこの女だ。過去の恐怖を打ち砕き前に進む時なのだ。流やニアに何があったかは知らないが確実に何かを観て成長することを決めたのだ、今一番弱いのは紫苑だ。足を引っ張らない為にも、進むのだ。


「入…るぞ」


返事は無かった。だが鍵が開く音がした。息を整えゆっくりと扉を開いて行く、すると部屋の中を見渡す事が出来るようになったその瞬間腕が引っ張られ部屋に引きずり込まれた。

そして部屋の中央に押し込まれ部屋の鍵を閉められた。そしてメイド服の飴雪はゆっくり、ゆっくりと近付いて来る。


「来るな…近付くな!」


紫苑がそう言っても聞かず微笑みながら近づく。そしてへたり込んでいる紫苑に乗っかかり逃げられないような状態を作り上げた。

紫苑の両頬を支え目と目を合わせて数秒間そのままだった。そして口を開く。


「久しぶり、紫苑君」


その一声一声に魅入られて行く。引き込まれるような眼と綺麗で脳がとろけて行く声、そして現世でも見た事のないような綺麗な顔。紫苑は数年前のあの恐怖が鮮明に蘇って来た。汗が滝のように流れ言葉を放つことも出来ない、そしてあの時のようにおかしくなってしまいそうになったその時だった。


「やっぱりね、あんたは駄目だ」


飴雪の背後から声がした。それは刀迦の声だった。刀迦は飴雪のうなじに刀を突き立て紫苑から離れる様脅す。飴雪は仕方なく紫苑を放した。


「邪魔だよクソガキ」


飴雪は刀迦を睨みつけ怒りを露わにする。刀迦は変わらず刀を向け続ける、飴雪はもう殺す覚悟で刀迦に襲い掛かろうとした。だが紫苑が大きな声を上げて引き留める。


「飴雪!!話を聞いてくれ!!」


紫苑が話しかけると目を輝かせながらいつもの雰囲気に戻り何の話かワクワクしながら待っている。


「なになに!?もしかして結婚...」


「真剣に聞いてくれ」


その目と口調から本当に真剣な話なのだと感じた飴雪は静かになり紫苑の話を聞く事にした。話を聞いてくれると分かった紫苑は恐怖が残るが刀迦を退出させてから話しを始める。


「俺はもうあんたには頼らない…だから邪魔をしないでくれ。俺の成長の邪魔を」


「どう言う事」


「あんたがやった事のせいで俺は未だに中学生以下の幼女しか愛せない、特殊性癖に成り下がった。それだけならまだ何とかなったかもしれない、だがいつも心の奥底であんたの声が聞こえるんだ…あの時の叫び声…ずっと…ずっと耳と頭、心の中から離れないんだ…その声がいつも俺を縛り付ける、いつも妨げる…もう成長しなくちゃいけないんだ、だから…話をつけよう」


「紫苑君…何を言ってるの?」


飴雪は紫苑を嘲笑う為にそんな対応を取った訳ではない。本当に分かっていないのだ、飴雪は人の気持ちなんて考えられない頭のおかしい女なのだ。


「勝手にあなたが覚えてるだけでしょ?私は何もしていない、あの時は感情が高ぶり過ぎて酷い事しちゃったけど今は反省してるし。君も忘れればいいじゃない」


「忘れれるわけねぇだろ…あんな事…」


「じゃあ私が忘れさせてあげる。上書きしちゃえばいいもんね」


微笑みながら近寄る、だが紫苑は勇気を振り絞って伝える。


「俺はあんたとの関係を断ち切りに来たんだ!もうあんたとは...」


そう言いかけた所で飴雪は距離を詰め紫苑の眼前ぜゆっくりと口を開き落ち着く声で諭して来る。


「いいんだよ、もう苦しくない。ここにいて私と一緒に暮らせば、楽しいことだらけだよ。もう苦しい思いも、上辺だけの仲間なんかに気を使わなくても...」


「お前今何つった」


「だから苦しい思いを」


「その後だ」


「上辺だけの仲間。あんな能力者なんかとつるまなくても良く...」


「いい加減にしてくれ、俺がどうなろうが俺の勝手だがあいつらの悪口は言うんじゃねぇよ。あいつらがどれだけ俺に尽くしてくれたと思ってんだ。あんたが植え付けた恐怖を無理にでもかき消してくれたんだ、けどもう俺も限界なんだ」


「なんで?なんでそんな事言うの?私は紫苑君の為を思って言ってあげてるんだよ?なんでそんな突き放すの?なんで?ねぇなんで?」


飴雪は怒りではなく疑問を表に詰め寄る。紫苑はもう覚悟を決め一気に話を進める事にした。近寄られて催眠のような声を耳元で囁かれても折れず自分の意思を貫き通す。


「俺には家族がいる。仲間じゃない、家族だ。礁蔽、蒿里、ラック、流、兵助、そしてニア、勿論裏切った素戔嗚もだ。あいつらにもう迷惑はかけたくないんだ!あいつらも今は苦しい状況だ!今まで支えられてきた分俺が支える!それだけの事だ、その為にはあんたとのわだかまりを解消しなくちゃ...」


「本当に…駄目な?私は紫苑君と一緒にいたいだけなのに…」


飴雪は泣き出してしまう。紫苑は飴雪と言えど心が痛み妥協で終わらせる事にした。


「分かった。じゃあ俺が黄泉に居る時は一緒にいてやる、まぁ関係性を見直したかっただけだしな」


「ホントにありがと!!!」


飴雪は紫苑に抱き着き押し倒した。紫苑はいつものダルそうな雰囲気に戻り飴雪をどかしながら独り言を垂れる。


「正直初めて見た時の衝撃は今でも忘れられないんだよ。初恋だったんだよ、あんたが」


「ほんと!!!???」


飴雪は大興奮だ。紫苑は覆いかぶさって来る飴雪を交わし立ち上がった。そして「今回は戦争をしなくちゃいけないから我慢してくれ」と忠告してから部屋を出て行こうとする、だが飴雪が離そうとしない。

紫苑は仕方なく何があっても他の奴に攻撃しないと言う約束をしてから一緒に部屋に戻った。

部屋には蒿里が来ていて大人の女性を連れた紫苑を見て目を見開き硬直する。すぐに正気を取り戻し目を擦って事実か確認する。


「紫苑…あんた…成長したのね」


「違うわ」


「なーんにも違くないよね、紫苑君。大人になったもんね」


その発言で兵助、礁蔽、ラックの男陣が目を見開きどういうことか説明を求める。礁蔽だけは過去の事を知っていたのでまず過去の事の説明から始めさせた。

全て説明すると一割ぐらい納得できない部分があったが全員納得してくれた。そして紫苑はTISの奴らに説明をしなければいけないと部屋を出て行こうとしたその時他のメイドが扉を開け叫んだ。


「敵襲です!!!」


急いで全員が玉座の間に集められる。エンマは全員が揃った事を確認すると急ぎ足で説明する。


「今はフェリアと雅羅挐で応戦している。だが今から組み分けを発表したらすぐにその場へ向かう。ぶっつけ本番で悪いが頼んだよ!振り分けは莉子ちゃんに教えてある、今から所属位置にテレポートされるだろうから身構えろ!!」


全員言われた通り身構える。エンマは莉子に合図を出してから宣言した。


「開戦だ!!!」



第百十七話「過去との決着」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ