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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第五章「黄泉の王国」
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第百十六話

御伽学園戦闘病

第百十六話「処罰」


エスケープチームと來花でフラッグをボールにサッカーをした。兵助は礁蔽に言われ傷ついている人達の回復に回った、だがフラッグによって消失した部位は回復術でも治らない。その事を伝えると紫苑がボロボロのフラッグにある頼みをする。


「ちょっと腕とか足無いとキモいから直してくんね?」


「分かった…少し待て」


フラッグは倒れているメンバーの方を向いて能力を発動した。すると全員の体が元に戻る、ただ意識は戻らない様だ。


「これでいいか」


「あんがとよ。んじゃ、やるか。お前の敗北は決まってるけどな」


紫苑はリアトリスを呼び出した。そして他のメンバーが準備できていないのに突っ込んだ。フラッグは歪みを発生させ距離を取ろうとしたが紫苑はリアトリスに掴まり目にも追えぬスピードで距離を詰める。


「リアトリス!一緒に!」


リアトリスは頷きながら同時に殴った。フラッグは一撃でも受けたら危ない状態なので歪みを発生させて回避を試みる。だが何故か後方で準備をしていた來花が引き寄せられた。


「どうしてお前が歪みで!?」


「そんなんも分かんねえのか?お前の視界がバグってることに」


そう言われると距離感が良く掴めない。これがリアトリスの力だとすぐに察知した。だが察知したところで歪みで逃げるのは難しい、だが唯一距離感が掴めなくても歪みを自分に発生させることが可能なのだ。

ただそれをする事により体の一部が歪みで消失するかもしれない。


「もう引けないのだ、やるしかないだろう」


フラッグは自分の真下、足元に歪みを発生させた。すると後方に瞬間移動し距離を取る事に成功する、そして肝心な下半身だが幸いなことに無傷だ。


「なーに逃げようとしてんだよおっさん」


すかさず近付きそう言いながら殴り掛かった。だがフラッグは目を瞑った。そして正確に攻撃の位置を特定し回避するだけではなく反撃も行った。

紫苑は何かあるのだろうと思いながらも引く事はせず追撃の蹴りを繰り出した。


「その気の緩みが命取りだ」


フラッグは目を開き紫苑に向かって歪みを発生させる、紫苑もリアトリスの能力が切れている事を察し回避しようとしたが片足を上げているせいで回避行動に移ることが出来ない。

その瞬間紫苑は左側に吹っ飛んだ。そしてフラッグも左に吹っ飛んだ。そして二人が居た場所には紫苑を吹っ飛ばす、フラッグを蹴る、着地する、と言う一連の動作を既に済ませているニアが立っていた。


「ニア~痛い~」


「危なかったので、すいません」


ニアは謝りながら壁によたれかかっているフラッグに蹴りをお見舞いする。今度は右方向に吹っ飛んだ。今度はすぐに立ち上がり反撃に繰り出そうとする、だが相手も準備が終わったころだ。


「こっちも少しは注意したらどうだ」


素戔嗚が斬りかかる。フラッグはサッと横に避けたが完璧に交わす事は出来ず右肩が斬れた。


「邪魔」


今度は素戔嗚を手で退かしながらオーディンの槍(グングニール)片手に蒿里が突撃して来た。素戔嗚はうろたえ体勢を崩した。蒿里は体勢を崩し自分の方によりかかって来た素戔嗚を蹴り飛ばしフラッグにグングニールを向ける。


オーディンの槍(グングニール)!」


フラッグはすぐに歪みを発生させグングニールを別の場所に飛ばそうとした。だが横からは右からはニアと紫苑、左には壁、正面には蒿里と素戔嗚と言う最悪の状況だ。だからと言って止まっていても死ぬ、向かう方向は一つ、上だ。

ジャンプながら足元を歪ませた。そして天井すれすれまで飛ぶ事に成功し回避は出来た、と思ったのも束の間正面かラックが跳んできている。


「上は俺がカバーする」


そう言ったラックはフラッグにかかと落としをくらわせ墜落させた。下では餓えて餌を待つ鯉のように四人が今か今かと待っている、流石にこのまま降りたら即死だろうと思い歪みで軌道修正を行った。

部屋の隅に追いやられていたので中央に瞬間移動した。そして少し息を整えようとした瞬間背後から鈴の音がする、本能的に危険な奴がいると判断し回避する。


「避けたか。まぁいい、後は頼むぞ自身像」


來花は自分では戦わず呪いで出した自身像に全て任せた。それによってフラッグの逃げ場は完全に無くなり戦うしかなくなった。だが戦っても勝てる未来は見えない、どうにかして一人でも戦闘不能状態に陥れるしかない。


「なら一番遅い君だな」


フラッグは蒿里に向かって能力を発動、しようとした。出来なかったのだ。背中からとても大きな衝撃が加えられ吹っ飛んだからだ。


「お!来たな!流!」


礁蔽が声をかけても無反応だ。そして流が居ると言う事は同じチームの佐須魔もいる。


「あれ?來花は戦ってないのー?」


「自身像に任せている。あまり肉弾戦をすると腰がな…」


「あーはいはい。ルーズはなんで突っ立ってんの?とりあえず終わらせていい感じ?」


「ルーズはあまりに高度な戦いに付いて行けていないだけだ。後戦いは終わらせていいぞ」


「よっし、じゃあ俺も参加するか」


佐須魔も指をぽきぽきと鳴らしながら戦闘に参加した。フラッグはこの時点で諦めに近かった。自分とは埋めようにも埋められない差がある敵しかいないからだ。

降伏しようか、脳裏にその考えが過ぎるがもう引けない場所まで来ているのだと自分を鼓舞し戦闘を再開する。


『降霊術・唱・犬神』


素戔嗚は犬神を召喚し更に攻撃頻度を増やしていく。


『降霊術・唱・猫神』


今度は佐須魔が猫神を召喚した。もうフラッグは前後左右全方位を囲まれている。エスケープチームと三獄二人は勝ちを確信していた、その結果が覆る事は無いだろう。だが最大限の抵抗をして華麗に散るまでだ。


「行くぜ!!リアトリス!!」


紫苑のその一声で全員が動き出した。全方向から飛んでくる攻撃を歪みを駆使して回避をするが逃げ出す事は出来ず朝からの連戦の疲れか隙を作ってしまった。

その隙を見逃すわけも無く流、ニア、ラック、紫苑の体術が上手い四人が同時に蹴りをぶち込んだ。痛すぎて逆に何も感じない、すぐに歪みで抜け出したが移動した先には素戔嗚がいて斬りつけられた。

再度逃げ出すと今度は目の前に佐須魔がいる。ニタニタと笑いながら身体強化を発動して殴って来た。バックステップで避けた先には蒿里のグングニールが飛んできている。

流石のフラッグでも霊力が底を尽きた。歪みを発生させる事も単純な回避をする事も出来ずグングニールに体を貫かれた。


「ク…ソ…」


フラッグはへたり込んだ。完全に戦意を喪失したフラッグを見た礁蔽は皆を止めた。


「もう終わりや!無駄に戦う必要はない」


全員大人しく武器をしまい休憩を始めた。ただニアと流の二人は何も言わずに部屋を出て行ってしまった。ルーズが引きと止めようと肩を掴んでも払われてしまう。

兵助はルーズを励ます。そして戦闘が終わってから少しすると一人の男が部屋に入って来た。


「お疲れ」


「エンマ…か…」


「いやー派手にやってくれたよねー」


「…」


「まぁいいや。とりあえず皆お疲れ。兵助はフェリア優先で回復よろしくー」


「分かった」


兵助は指示通りフェリアを一番最初にして回復術をかけはじめた。そしてエンマはゆっくりとフラッグに近づいて行く。


「さて、話をしよう」


「お前に話すことは無い…」


「話してもらわなきゃ困るよ、それとも行くかい?『地獄』」


エンマは俯いているフラッグの顎を持ち無理矢理顔を上げさせて目を合わせた。その目は生物とは思えない程禍々しい力を放っている、フラッグは観念して話す事にした。


「戦争が始まっただろう…お前は市民を使ってしっかりと戦略を立てて敵国を落とすと言っていた。だが私は賛成できない、市民を使うなど言語道断。それならば私がこの国を乗っ取りそのまま降伏して敵国を内側から腐らせて行こうと考えていた」


「うーん…でもさやってる事同じじゃん」


「は?」


「戦いたくないって要は人を死なせたくないって事でしょ?なのに敵国の人は死んでも良いんだ、僕はそれこそ愚行だと思うよ。僕は能力者戦争で数えきれない量の無能力者を殺してきたから分かるんだ。

無能力者でこちらに害を与えてこようが人は人だ。殺すなとは言わない、あまりにも酷く辛いのだったら寧ろ殺してしまった方が良いと思う。だが差別を行わず何もしていない市民を巻き込むのは違うだろ」


「だがお前は…」


「大丈夫さ。本来はお義母さん達と一緒に少し無理をして戦うつもりだった。だけど今は強い子達がこんなにいる、これも君のおかげだ」


「どう言う…」


「君が乗っ取ってくれたおかげでこの子達を連れて来ることが出来た。これなら一日で決着ついちゃうかもね!」


エンマはそう嬉しそうに言う。その態度にフラッグは違和感と少しの恐怖を覚え何故そんな態度を取れるのか訊ねる。


「約百年前、能力者戦争当時の事だ。僕はとてもカッコ良く、そして可哀そうな男に出会った。そいつは寝る間も惜しんで集めた仲間を一人の裏切りによって殺された。そしてその裏切った奴は命は保証してやると言う契約だったが結局殺された。そんなこんなで一日にして全てを失った男がいた。挙句の果てに日本に居た想い人も死んだ。

そんな状況狂ってしまってもおかしくない、だがその男は教えてくれたんだ。「進むしかないから何事もポジティブに受け取るしかない、ラッキーだって。そうしないと勇敢な英霊達に持っていかれるぞ」ってね」


エンマがそのまま能力者戦争の話を始めようとしたのでラックが止めに入る。


「んな話は聞き飽きた。こいつの処遇はどうすんだよ初代地獄にでもぶち込むのか?」


「なんでそうなるのー?でもどうしようかなー…まぁ僕の執事でもしてくれれば良いよ」


その適当かつ軽すぎる刑にその場の全員が「え?」と声を漏らす。エンマは何故そんな反応をしたのかと言う意味での「え?」と言う言葉を漏らした。


「だって悪い奴じゃないっぽいしー地獄に送る必要はないかなーってさ」


「だが私は…罰せられるべきだ」


「良い事を教えてあげよう。痛みが生む物とは一時の安心感と自尊心だけだよ?罪は償えない、根本を変えなきゃいけないからね。でも君の根は腐っているどころか光っているぐらいだ。そもそもここは現世とはルールが違う、更にここは僕の国[黄泉の(アルデンテ)王国]だからね。気に病むことは無いよ」


フラッグは少し不満そうだが納得したようだ。そしてエンマはフェリアが起きるのを傍で待っている。

その間紫苑は佐須魔と來花の二人に話を持ち掛ける。


「なぁお前ら」


「どうしたー?」


「あと半年もしない内に大会とか言うゴミカスクソ行事が行われるだろ?お前らどんなメンバーで出るんだよ」


「まだ正確には決まってないんだよねー俺と來花は確定してけど。まだ未熟な奴が多いしもしかしたら最低人数の七人で出るかもしれないなー」


「まじ?TISも落ちたな」


「は?」


佐須魔は冗談交じりだが確実に殺意を向けて紫苑を睨んだ。紫苑は戦闘をするわけでは無いだろうと思っていたので止まらずに喋り続ける。


「と言うかおっさんはどうなったんだ」


「お前が保護された時の?」


「そう」


「普通にTIS本拠地にいるよ。会いたかったら来ると良い、場所は絶対教えないし侵入してきたら殺すけどね」


「そうかそうか」


二人が楽しく話し行き過ぎた話しをしている時は來花が止めていた。他のメンバーも雑談をしていた。すると誰かが大きな音を立てて扉を開ける。

立っていたのは少女の様だ。と言うのも何か大きな被り物の様な物をしているのだ。そして巫女服を着ている。

その少女は何も言わずにエンマの元へ寄って行く。そしてエンマの耳を掴み引きずって部屋を出て行った。


「なんやあれ…」


困惑していると気絶していたメンバーの一人が目を覚まし説明をする。


「ロッド和五代目?六代目?忘れたけどそんぐらいの奴で名前は[雅羅挐]。あの仮面はちょっと人には見せられないパーツが顔にあるから着けてる、私は見た事あるから知ってるけど顔は結構可愛い」


そう説明したのはロッド和の現在の姫[松葉 菊]だ。菊は伸びをしてから立ち上がり雅羅挐とエンマが向かった方へ歩いて行った。

菊を皮切りにほぼ全員が目を覚ました。すると個性のぶつかり合いで場は滅茶苦茶になり収拾がつかなくなってくる。そんな所でフェリアがおもむろに咳ばらいをした。皆静まり返りフェリアの方を向く、フェリアは口を開き今後の説明を始める。


「明日または夜からかもしれませんがいつ大規模な戦闘が起こってもおかしくありません。皆さんは宮殿で泊まっていただきますが何かあった際には叩き起こされて強制出動なのであしからず。それでは私もお父様の所へ行ってまいります。部屋への案内は少し待っていてください」


フェリアはそう言うと部屋を出て行った。すると速攻で騒ぎが始まる、見かねた來花とルーズが落ち着かせる。

そして生徒会は生徒会、エスケープはエスケープ、TISはTISでグループ分けして部屋の隅っこの方へ固めた。すると喧嘩が無くなったので案内役が来るまで待つことになる。

何の変哲も無い会話をしていると案内役が来たのか扉がノックされる。そしてメイド服を来た女性が扉を開けた。


「大変お待たせしました。それでは行きましょう」


メイドはニコッと笑い案内をしようとする。だが全員の中でたった六人が動きを止めた。レアリー、來花、叉儺、佐須魔、刀迦、そして紫苑だ。

レアリーは紫苑の記憶を読んだことがあったので知っていた。叉儺は話を聞いて顔を見せられた事があったので知っていた。そして残りの四人は直接会ったことがあったのだ、その四人が会ったことがある女性、一人だ。

紫苑はたまらず口を開く。


「飴雪…?」


その人物とは紫苑の幼少期を破壊し島に送り込む原因となり、紫苑の人生を狂わせ、トラウマを植え付けて性癖さえも曲げた女、[空十字 飴雪(クウジュウジイユキ]だったのだ。



第百十六話「処罰」

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