第百十四話
御伽学園戦闘病
第百十四話「到着」
康太はすぐに蹴りを繰り出す、フラッグは歪みで反射させようとしたが視界が固定されているせいで難しい。なのでどうにか服の切れ端や体の一部をくっ付けることが出来ないか模索してみる。
だが康太はどうやっても攻撃できない位置に立つのが上手すぎる、普段からこの戦い方をしているからであろう。
「何年間もこれで戦って来たんだ、あまり舐めないでくれ」
康太はそう言って攻撃を続ける。康太自身の攻撃はそこまで痛くないないのだが何度もくらっていると流石に痛んでくる、いい加減反抗しなくては残っている怪物達が来てしまうとどうにか策を練る。
破片を付けてその破片にエネルギーを付け傷をつけるというのも強いが康太みたいな敵には通用しない。ならば普通の歪みで反射させれるかと言うと不可能に近いし下手したら自分に当たるのでやめた方が良い。ならどうするか、それを今から考えなくてはいけないのだ。
「今の状況は非常に悪い、だが私は君に負ける程やわな生活はしていない」
そう煽るが康太は気にしない。エンマに言われた通り「周りの目をきにしない」、そうやって戦ってみようと思っていたのだ。だがあまりにも極端すぎる、話すら聞かないのは論外と言ってもいいだろう。
相手の事を気にしなさすぎだ、フラッグは既に考えがあった。
「すまないな」
そう言って正面にいた康太の霊に殴り掛かった、バックラーのダメージは本体に飛んで行くので回避させる。だがフラッグはそれを狙っていたと反射の歪みを発生させた。すると何も攻撃はしていない筈なのにエネルギー弾がフラッグ達の方を目がけて飛んでくる。
フラッグは当然見えていたが康太はフラッグの体のせいで見えていなかった。
「視線を合わせていれば、避ける事は出来る」
そう言って体を動かしエネルギー弾を避けた。だが康太は避けられず腹部に穴が開いた、すぐにタルベが駆け付けようとするが止める。その時の眼は覚醒の時の眼とはまた一味違う悔しさと怒りが混じり合った眼をしていた。
「バックラーや降霊術の霊は動くだけでも霊力が微量だが発生する。その霊力を跳ね返した。塵も積もれば山となる」
「日本語上手だなぁ、それもこれも復讐の為か!?」
「何故その事を」
「[兎波 生良]、あいつは今学園が保護している。そして多くは無かったがお前の事を語った、だから知ってるんだよ」
「生良!?あの子はまだ...」
「関係ない話をする気は無い」
そう言って再び殴り掛かった。だが力は物凄く弱まっているし話にもならない威力だ、もう終わらせようと思い再び霊に殴り掛かる。康太もさっきと同じ動きをさせて避けさせた、そしてフラッグは歪みを利用して反射させた。そしてさっきと同じように動いて避けようとする、だが康太はそこが狙いだった。
「僕のそばまで来い」
そう言った瞬間康太の相棒が康太の背中まで移動した。そして視線は強制的に移動させられる、一気に回って骨が折れたりはしない。ただ何事よりも優先されるのだ、顔を動かすのが。
そしてフラッグは顔を動かしそれと同時に体も強制的に動かされる、今気づいた。避けられない。
「何!?」
「これでおあいこだ」
フラッグの右肩が抉れた。そしてフラッグはバランスが取れず倒れる、康太は隙を見逃さず一瞬で顔面に蹴りを入れた。フラッグは鼻血が出る、そして当然追撃も貰う事になる。
康太は拳が抉っておいてくれた脇腹とフラッグが自爆した右肩を執拗に蹴る。フラッグは唸り声を上げ苦しむが康太は一向にやめる気配がない。
だがフラッグはこう言い能力を発動させた。
「私は絶妙に用心深いんだ」
その瞬間康太の足が引き裂ける。康太は叫ぶが今度はフラッグのターンなのだ、止めるわけがない。更に能力を増し立てなくなった。
何故こうなったのか、フラッグは拳に脇腹を抉られた際歪みで修復する前にガラス片を入れておいたのだ。そして康太が脇腹を蹴ったことによりガラス片が血によって靴に付着したので歪みで足を裂くことが出来たのだ。
「ま…じか…」
「すまないな」
そう言ってうなじにかか落としをくらわせようとした瞬間フラッグが吹っ飛ぶ。誰が来たのか理解できた、ルーズも理解した、来たのはそうニアだ。
ニアはフラッグを蹴飛ばし冷たい目で見下しながらこう言い放つ。
「いい加減にしてくれませんか?私達にこんな思いをさせた挙句能力者全体への風評被害、そして自分の息子がお世話になっている人への裏切り行為、とても大人とは思えません。正直言いますね、馬鹿なんじゃないですか」
「ニアか…」
「悪いですけどさっさと帰りたいので、私はまだ強くならなくちゃいけない」
ニアは殴り掛かろうとする、だがルーズが言霊でそれを止める。
『止まれ』
代償として右足の骨が二本折れた。代償が思っていたより大きい、ニアは何故か強くなっている。ルーズはそう確信した、そしてフラッグもルーズの表情と動作でそれを察知した。
「ニア、そいつは時空の歪みを発生させて反射とかしてくる、だから気を付けろ」
「はい、わかりました」
ニアは動く、凄まじいスピードで蹴った。だがフラッグは反射する、だがニアは床を強く蹴り跳びあがって回避した。すぐに次の攻撃に備えるがそんな必要はない、何故なら既に蹴られているからだ。
「何...」
「生き写し、見てきてよかったです。翔子先生が能力を発動している所」
「『覚醒能力』か」
「はい。ずっと大変でしたよ抑えるの」
そう言ってニアは右目に炎を点火した。その炎は赤くない、あまりの怒りからか一時的に強くなっている。そう、『碧眼』だ。
フラッグ以外の全員が驚く、ニアが覚醒している事にも驚いたし碧眼にも驚いた。一方フラッグは焦りを感じ始めていた、近付いてきている。怪物達が、急がなくてはいけない。だがもう間に合う訳がない、少しでもニアにダメージを蓄積しておかねばいけない。
「いくぞ!」
フラッグが動く、ニアの能力は見た後一回でも使うとまた見ないと使えない。なので今使えるのは歪みなのだ、そうなると起こる事は一つ。
「歪みで倒す!」
フラッグの歪みで発生したエネルギー弾を跳ね返した。そして跳ね返したエネルギー弾は跳ね返す時の霊力によって力が増して行く、フラッグもなんとか反応できて跳ね返すことが出来た。ニアもそれに応じて跳ね返す、最早ドッヂボール状態になったその時フラッグの体が後ろを向いた。
「これで…いいか」
「ありがとうございます、康太さん」
康太がひっそりと裏で動いていた。相棒を一気に移動させることで体を動かせなくする、フラッグは当然回避出来ない。
今度は左肩が抉れた、この時フラッグは痛みは感じなかった。何故ならばニアの圧と力の前に恐れおののき背筋が冷えていた。そのせいで感覚が無くなっていたのだ、宙に浮くような感覚だ。そしてその時フラッグの頭の中には『敗北』と言う文字が大まかな形だけ浮かび上がって来ていた。
それもそのはず勝てるわけがない、今のニアTISの重要幹部No.1になれるほどの実力を持っている、そして何より未知数のこれ相当の怪物がまだ後四匹も残っているのだから。
そして残りの三人はいつ目覚めるか分からない、あまりにも悪すぎる状況なのだ。だがフラッグは戦うのだ、ある目的のために。
第百十三話「到着」




