第百十三話
御伽学園戦闘病
第百十三話「八匹」
ルーズは言霊を駆使して攻撃を続けていた。そんな中変わり果てているがニアと思われる霊力反応がした。その瞬間フラッグとルーズは手を止め互いに顔を見つめる、そしてニアがいる方向を向く。
「ニア…だ」
「そう…だな」
タルベと康太は感じる事が出来ず何故二人が動きを止めたのか理解できない、すぐに攻撃を再開するよう言うがルーズは動かない。だがルーズに起こされた拳も微かに感じ取りそうになっていたが今はフラッグを倒す事に専念していたせいで霊力を感じる事が出来ず今も殴りかかっていた、フラッグは一旦ルーズを置いて拳との戦闘を再開する。
「オラぁ!!」
拳の凄まじいパンチをくらいそうになったフラッグは体を歪みで移動させ回避をした後一気に距離を詰めて反撃をした、だが身体強化を使っている状態の拳の体は鋼鉄並みに硬いので全く効いていない様子だ。
だが攻撃を続ける、拳は痒くもない攻撃をされ続ける。そんな弱いフラッグを殴って吹っ飛ばした、だが何か違和感がある。何故今まで一発も受けたがらなかったフラッグが無抵抗で殴られ吹っ飛んだのだろうか、深く考えてもしょうがないと次の攻撃を行う。
「それだ」
フラッグがそう言うと拳の右手から血が噴き出した。訳が分からず困惑しているとフラッグは殴り掛かってくる、流石にこの仕組みは解明しなくてはいけないと理解した拳は先ほどよりも少し防御に特化した体勢を取る。
ただフラッグはそんなの気にせず先程と同じ腹部を殴る、拳は何故全く同じ個所を攻撃したか考える。勿論腹部はがら空きだ、だがそんな事を言うと顔面はもっとがら空きだ。拳は腹部を攻撃する事に何か意味があるのではないかと考えた。
「ならこれだ!!!」
そう叫びながら自分の腹部をぶん殴った、流石の拳でも自分の力で殴られると相当痛いし血も出てくる。フラッグは驚き少し距離を取ったが今回は血が吹き出ない、やはり何か腹部にあるものを媒体として攻撃を行っているのだろう。
拳はそう考え腹部にさえ注意すれば大丈夫だと感じ気を緩め特攻を仕掛けた、だがあまりにも迂闊だ。フラッグの能力は『歪み』だ、なら先程の攻撃は歪みを利用しただけのはずだ。だが拳はそこを考えられずにいいた、拳は止めてくれたり指示を出してくれる人間が傍にいないと訳の分からない拳流の叩き方をはじめてしまうのだ。
「こんなものか」
フラッグは能力を発動する、すると今度は腕ではなく体全体から血が吹きだした。だが拳の戦い方はそんな事で止まるようなものじゃない、拳は血をまき散らしながら突っ込みフラッグに大きな一撃をかました。
フラッグは少し揺らめき口から血がツーっと垂れてくる、拳は自分が優勢だと気付くや否や猛攻を仕掛ける。何も考えていない、拳らしいと言えば聞こえはいいがただの特攻だ。
しかもまだフラッグがやってきている攻撃の仕組みは解明できていない、そんな状態で突っ込んだらどうなるかなど考えなくてもわかるはずだ。だが拳には分からなかった、完全に起こす人間を間違えた。
「悪いな、二度目の睡眠だ」
そう言うとフラッグは今までで一番霊力を込めて能力を発動した、その瞬間拳は後方に吹っ飛び扉を破って姿を消した。
「あれはただ服の糸や髪などの小さい物を歪みによってエネルギーを増大させ勢いを増させただけなんだがな」
そう勝手に開設するフラッグの脳天にある人物のかかとが降ってくる。それはタルベだ。タルベは隙だらけのフラッグの頭にかかと落としをくらわせたのだ、だが今までのタルベならこんな動きは出来なかった。だがある程度の身体能力は必須になりそうだったので薫や兆波に頼んで必死に特訓したのだ、その成果か一般人より数段強くなることが出来た。
そんなタルベのかかと落としを隙だらけの後頭部にくらったフラッグはくらった箇所を抑えタルベを睨む、それにムカついたタルベは再び蹴りを入れようとする。
だがそれを康太が止めた、康太は既に霊を出してフラッグの視界に収めさせていた。そしてタルベには怪我をしている奴らの治療に行かせ自分は待ちに待った戦闘を始める、その際一言こう言った。
「盛り上がってるとこ悪いけどこのパーティーの主役は僕だ」
フラッグは感じた、覚醒などの強さではない。心の強さを感じた。もしかしたら他の誰よりも厄介かもしれない、そう思いながら拳を康太に向けるのだった。
一方流と佐須魔はニアと少し話をしていた。どんな事をやっていたのか等だ、そして[南那嘴 智鷹]の事を口に出そうとした瞬間佐須魔がニアに触れ星の数ほど持っている能力の内から記憶操作を発動しニアの記憶を消そうと手を近づける。だが流が腕を掴みそれを止めた、佐須魔は「まぁいいけど言いふらさないでくれよ、あいつ今外の世界のコンビニで店長してるんだから」と言って記憶操作は諦めた。
「そんな外で堂々と動いて良いのか?」
「大丈夫だよ、顔を知ってるのは今もTISにいる奴しかいないから、あの刀迦ですら知らない」
「そうか」
そう話す二人にニアが「何故そんなに仲良さげなんですか」と訊ねる、すると佐須魔は流がTISに入りたいと言ったこと背景描写も細かに自慢も交えながら説明した。ニアは自慢の場所は全く効いていなかったが流がTISに入ると言う事を聞くと流の眼を見る、アリスの件で眼を見れば大体分かるのだと知っていたからだ。
そしてニアは流の目からある感情を受け取った、するとニアは悲しそうにしながら走って宮殿の方へ走っていった。流は止めなかった、寧ろ自分の意思を理解してくれたことを内心喜んでいた。
佐須魔は少し気になって流の心を読んでみる、すると流の心は曇っている。いや霧がかかっている、佐須魔でも覗くことが出来ない心の内。そんな物を持った少年がTISに来ると思うと佐須魔は笑いが止まらなかった。
「きもいぞ」
流のその言葉に少しショックを受けながらもとりあえず宮殿へ向かうことにした、そして集うことになる。未だ外に残っている怪物達八匹が。
第百十三話「八匹」




