第百六話
御伽学園戦闘病
第百六話「親戚」
菊は一発直撃させてリードを取った。フラッグはすぐに体勢を立て直しどうにかして四肢を消し飛ばせないか行動した瞬間次の攻撃を受ける。
次は叉儺が動いたのだ、フラッグは狐にタックルされて吹っ飛んだ。宮殿の壁にぶつかり壊れそうになったが一瞬で再生する、フラッグはもう反射で倒すしかないと思い背中から攻撃されないため壁に背中をつけてから構える。
「クロ!速攻決めるぞ!」
「承知」
『女神に仕えし霊が一匹黒九尾 我が名は黑焦狐 姫君の名は松葉菊 其方の記を辿り蠱無しとあれば力を頂戴致したい 欲するは力 与えるは霊魂 力戴く女神の名こそ奏多姫 我の力を信じよ 女神の血を引く姫名の下に 猫神の技を卸したまえ』
その瞬間黑焦狐の姿が変化していく、耳や骨格が猫のようになって行く。そして少しだけ面影を残しながら完全に猫へと変化した。
そして物凄いスピードでフラッグに突っ込んで行く、フラッグはあまりのスピードに反射をすることが出来なかった。
振り上げられた鋭い爪はフラッグの左半身を切り裂く、流石のフラッグでも厳しいかと思われたがすぐに時空を歪めて体のパーツの位置を戻した。
「おいおいマジか!これでも無理なのかよ」
「あまり焦らず堅実に攻めて行きましょう。あくまで私はサポートとお父様に言われておりますので」
「なんじゃお主は戦わないのか」
「えぇ。ただ最大限のサポートはしますよ」
そう言いながらフェリアは下部である蜜蜂を大量に放出する、そしてその蜜蜂達はフラッグめがけて飛んで行く。すぐに菊も攻撃するよう命じる。そして叉儺も噛みつくよう指示を出した。
三人の霊に一斉に攻撃されたフラッグはどうしようもなくなってしまう。このままでは敗北だと思ったフラッグは最終手段を取る、それは覚醒ではない逃走だ。
フラッグは唯一再生されないガラスを蹴破り宮殿から逃げ出した。菊達は霊に追いかけるよう命じ僅かな休息を取ることに決めた。
「これは追ったほうがいいのか?」
「いえ、彼は必ず帰って来ますよ。それまでしばし休憩としましょうか」
「作戦でも立てるのか?妾は従わないが」
「いや、そんな決められた風に戦闘するのは大っ嫌いだからやらない、フェリアもそれでいいだろ」
「はい。私も自由にやりたいので」
満場一致で自由に戦う事になった。そして何事もないまま五分が経った、その瞬間三人の正面にフラッグが現れる。フラッグは不意を突いて殴る気だったが菊と叉儺が反射的にぶん殴る。フラッグは吹っ飛び横たわった。
「きっもちわりぃ!マジで反射的に殴ったわ!」
「流石に気持ち悪かった…妾も不意に拳を突き出してしまった」
二人はすぐに霊達が帰ってきていないか見渡すがどこにもいない。フラッグは上手く撒いてから帰って来たのだろう、だが叉儺はこういう時の為に日頃から訓練されている、あまり得意ではない体術でフラッグに攻撃する。そして菊も薫達に扱かれている、一般人より多少できる程度だが二人でかかれば充分だ。
「肉弾戦で私に勝てると思うわないほうがいい」
「知るかよ!だっせぇ逃げかたしたくせによく言うわ!」
菊が殴りかかるとフラッグは能力を発動した。菊の腕が取れると思ったその時フラッグの背後に猫状態から戻った黑焦狐が立って圧を放っている。
すぐに避けようとしたが回避には失敗した。フラッグは噛みつか右脇腹を持っていかれた。しかも黑焦狐が飲み込んだせいで時空を歪めて無理矢理接着する事も不可能となった。遂に大打撃をぶち込む事成功する、だがこれだけでは終わらずまだまだ攻撃を続ける。
「まだまだやっちまえ!」
菊がそう言うと黑焦狐は更に噛みつこうとする、だがフラッグがそれを受け入れるわけもなく攻撃を反射させて菊にそのダメージを向かわせた。だが菊はその反射したエネルギーを察知し回避する、フラッグは反射が効かないとなると負ける可能性が強くなってくるので早めに菊を始末しようと決める。
「光線!」
「承知」
『女神に仕えし霊が一匹黒九尾 我が名は黑焦狐 姫君の名は松葉菊 其方の記を辿り蠱無しとあれば力を頂戴致したい 欲するは光 与えるは霊魂 力戴く女神の名こそ黄粉姫 我の力を信じよ 女神の血を引く姫名の下に 黄に輝く光線を卸したまえ』
そう言い終わった瞬間黑焦狐の口が光り出す、そして口を開いた瞬間極太のビームが放たれた。流石にこれはヤバイと思ったフラッグは逃げようとするが今逃げても結果は変わらないだろう、だったら賭けるしかないと判断し反射を試みる。
だが力が強すぎて無理だと思われた、だがフラッグは押されているうちに後ろに下がることで段々威力が落ちてきていることに気付いた。すぐに最後方まで下がると軽々と跳ね返すことが出来た。すぐに跳ね返してビームを三人に当てる。
「いってぇ!!!」
菊のその声さえもかき消され光線も止まった。勝ったかと三人を見てみると全員傷だらけでぼろぼろになりながらも立っている。
菊は思った、後一発で決めなければ負けだ。せめて近付いてきている須野昌にバトンを渡さなくてはと思いある事をフェリアに聞く。
「現世じゃ出来なくてもここでなら…出来るよな」
「は…い…」
「じゃあ最後の力を振り絞ってやろうぜ」
「分かり…ました…」
「やるぞ!黑焦狐!」
黑焦狐は頷き今出せる全力で祝詞を唱える。
『女神に仕えし霊が一匹黒九尾 我が名は黑焦狐 姫君の名は松葉菊 其方の記を辿り蠱無しとあれば力を頂戴致したい 欲するは蜂 与えるは霊魂 力戴く女神の名こそフェリア・アルデンテ・ロッド姫 我の力を信じよ 女神の血を引く姫名の下に 忠実なる軍蜂を卸したまえ』
その瞬間フェリアは姿を消したかと思ったら菊の背後に浮いている。そして半透明で異様な霊力を発している。そして黑焦狐が合図を出した瞬間大量の蜂達が現れフラッグを襲う。そのスピードは凄まじく目で追えない程だ。
術を発動したはいいものの菊はもう限界だ、菊が倒れても黑焦狐が倒れてなければ術自体は発動できる。だが威力は格段に下がる、どうにかして菊の意識を保たなければならない。だが相当のショック化衝撃を与えなければ倒れてしまうだろう。叉儺は今回もサポートに回ることを嫌がったがやむを得ない、狐に腕を嚙み千切らせた。そしてダラダラとたれる血を無理矢理菊に飲ませる。すると菊の目はガンギマリのように変わりフラフラしてたのも嘘のようにピンピンしている。
「妾がよくやる方法じゃ…佐須魔に頼んで血に多量のカフェインを含ませておるんじゃ…ただ続くのは三十秒程度…後はなんとかしろ…」
そう言いながら叉儺は貧血で顔を真っ青にしながら気絶した。菊は血を飲んでしまった事とカフェインを含ませたという馬鹿みたいな話を聞いて少しだけイラついてくる、なのでもう一発大きなのをぶち込んでやろうか悩んでいた。だがそんな余裕は無い。効果は三十秒程度だと聞いたフラッグは時間を稼ぐため肉弾戦をしかけてくる、すぐに黑焦狐に任せようとしたが間に合わなかった。
効果がパタリと止み一気に視界がぼやける、だがなんとか間に合った。バトンは繋ぐことが出来た。一緒に倒れたフェリアと菊を腕に抱え到着した。
「後は…頼んだ…」
「お疲れ、お嬢さん達」
須野昌が到着したのだ。ただ須野昌はおかしかった、違和感がある。喋り方や立ち振る舞い、声色からある事に気付ける。
今の須野昌は誰かと混ざっている。
第百六話「親戚」




