第百二話
御伽学園戦闘病
第百二話「II」
刀迦が刀を抜きながら走り込み刀を振った。フラッグは時空を歪め回避しようとしたが胴体が切れる、英二郎のように必中なのかと思ったが刀迦は「時空を歪めらる前に切っただけ」と説明した。
水葉達はとっくんべやにて行われた先日の模擬戦で刀迦が手早く攻撃してくるのは知っていたが思っていた以上に強い、しかも一撃が軽いわけでもない。これこそが重要幹部No.1の実力だ。そんな刀迦は床に横たわっている英二郎を見ると邪魔と言って蹴飛ばした。
「何してるんだ!」
「覚醒すらしてないような奴に負けた。一応弟子なのに、こっちが恥ずかしいよ」
刀迦はそう言いながら小さな手で刀を握りフラッグに攻撃する、このまま刀迦に任せっきりではつまらないと水葉も中剣を抜き同時に攻撃を始めた。刀迦は水葉は邪魔になるだろうと思っていたが実際はそんな事はなく充分着いて来れている、刀迦は少し驚くが張り合う様にスピードを上げる。
だが水葉は張り合わず自分なりに力を調整して刀を振い続ける、だがその攻撃は刀迦が少し無理してスピードを上げ火力が下がっている時と同じぐらいだ。やはり最強とは差がある。
フラッグが反撃で時空を歪ませようとする、だがそれをすぐに察知し伝える者がいる。
「歪み、来ます!」
レアリーだ。レアリーは心を読む事が出来るので何を使ってくるかも丸分かりなのだ、すぐに距離を取って回避に成功した。フラッグはこのままでは一方的にやられて終わりだと思い腕を消し飛ばす事にする、だがレアリーがそっくりそのまま口に出しどこにどう歪ませてくるかも的確に伝えてしまうせいで小指たりとも触れる事が出来ない。早めに大きなのを一発くらわせなくてはまずいと部屋全体を歪ませた、だが今度は香奈美が動く。
「そう言う厄介なのは私がやる」
香奈美は新しくなった鳥霊を召喚しその攻撃を妨害した、フラッグは香奈美を倒せば何とかなるかと考えたがそもそも香奈美に手を出している余裕なんて無い。先に倒さなくてはいけないのは水葉でも刀迦でもなくレアリーだ、レアリーのせいで攻撃が全く当たらない、ならばレアリーを先にやれば攻撃は当たるのではないかと言う安直な考えだ。
だがそんな事許すわけが無い、刀迦と水葉は猛攻を続ける。フラッグは回避しつつどうにかしてレアリーに攻撃出来ないかとよそ見をする、その隙を突き刀迦が腹部に突き刺した。
「よそ見なんて余裕なんだね」
刀迦は更に三回突き刺した、フラッグは一度距離を取ろうとするが水葉が逃さず追いかける。水葉は斬ろうとするがフラッグは歪みを発生させる、すると今度は刀迦が斬りつける。
完全に封じ込まれた、なす術もなくただひたすらに攻撃を受け続けるしか無い。だがフラッグがそう簡単にやられるはずがないのだ、フラッグは呟く。
「本気で行こう」
その瞬間フラッグの左眼に赤い炎が燃え上がる、刀迦はすぐに距離を取り攻撃をやめたが水葉は能力が分からないので攻撃を続ける。刀迦が止まるよう言った時には一足遅かった。水葉が斬った痛みは全て刀迦に向かった、どう言う事だと香奈美がレアリーに聞くがレアリーは「歪みとしか出ません」と言う。
そう、フラッグは『覚醒能力』ではなく単なる強化なのだ。そして強化されるのは能力、『歪み』だ。強化後はノーモーションで発動できる様になる、なのでいつ歪まされるか分からない状況で戦うしか無いのだ。
「いいから下がって!」
刀迦の指示に従い一度距離を取る、だが今度はフラッグが距離を詰めてくる。水葉は反射で斬ってしまった、勿論その攻撃は刀迦に行く。刀迦は非常に脆い、第二次成長が来ていないのもあり攻撃の力強さに比べて非常に貧相なものだ。そのせいで二回も刀で斬られるとしっかり動けなくなってしまう、刀迦は床に膝をつけた。水葉は謝ってから剣をしまった。
「でもどうすれば良いの?攻撃したらダメなんでしょ」
「フラッグの覚醒は時間が短い、だから耐え切るしか無い」
そうは言うもののそんな事不可能に近い。どうすればフラッグを倒せるか考える、だがどんな方法を使っても歪みで跳ね返されて意味を成さないだろう。覚醒しただけで形勢が一気にひっくり返された、ただそれだけでは終わらずフラッグは攻撃を続ける。不意に時空を歪ませ刀迦の左腕を飛ばした、そしてそのまま右腕も飛ばす。刀迦はもうどうにもならないだろうと自分でトドメをさすのは諦め口で刀を咥え鞘へ納めた。
水葉は部屋を駆け回り歪みで体を飛ばされるのは回避する、だがたまに行ってくる物理攻撃に反撃できず少しづつだが体力が削れて行く。そしてフラッグが歪みを使用して一気に距離を詰める。
「終わりです」
そう言いうなじに回し蹴りをくらわせた、水葉はパタリと倒れ気を失った。刀迦はもう負けだろうと思い気絶しているメンバーがいる場所へ向かい座って休憩をとり始めた。
だが香奈美は諦めない、後三十秒稼げれば良い。
「痛いと思うが良いか?二人とも」
「良いよ」
「はい。大丈夫ですとも」
香奈美は最後の悪足掻きで妖術を発動する。
『妖術・戦嵐傷風』
その瞬間部屋に暴風が発生する。そしてその暴風で吹き起こされる痛みは全て香奈美、刀迦、レアリーの三人へと向かう。全員絶え間ない痛みに悶えながらも耐え続ける、そして一分程経った頃暴風が止む。それと同時にフラッグの覚醒も終わった。
風が消えた先には気を失ってる三人と狐が二匹佇んでいた。そしてその内の一匹は口を大きく開き光線を発射した、あまりの早さに歪める事を忘れてしまう。そして光線が終わると声がする。
「一発目!」
そこにいるのはそう、菊達『V』だ。バトンは繋がれ続ける、フラッグはどんどん追い詰められるのだ。
第百二話「II」




