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【完結】御伽学園戦闘病  作者: はんぺソ。
第一章「始まり」
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第十話

御伽学園戦闘病

第十話「不意打ち」


思考が巡る、そよ風の音が耳に入り込んでくる。どうやら学園には連れて行かれていないようだ。流はゆっくりと重いまぶたを開けた。テントの中でも分かる程明るい、どうやらもう朝だ。目を擦りピントを合わせる、すると横で本を読んでいたニアが驚いたように話しかけて来る。


「流さん!起きたんですね!」


「おはよう…」


「そんな体を動かさないでください、怪我は治ってないんですから」


まだ怪我は治っていない、その証拠に体を起こそうとすると至る所から痛みを感じる。体を起こす事は諦め再度横になりここはどこなのかを訊ねてみるとここは火山付近の林らしい。前に蒿里のスマホのMAPで見たことがあるから分かるが何故か道を戻っていた。


「え?戻ってる?」


「はい、そろそろラックさん達が来るのでその時に説明しましょう」


ニアは昼食を作ると言ってテントを出て行った。

流は改めて状況を整理する。まず半田達に勝利した、そしてそのまま倒れてこのざまだ。何も分からない、とりあえずラック達が来るまで大人しく待つ事にする。ただ流の頭の中では美久達が言っていた『守護霊』と言う言葉が妙に気になりずっと頭の中で反響している。

するとラックがテントに入って来る。


「おはよう、立てるか?」


「おはよう。ちょっと待ってね」


流はどうにか体を起こしテントを出る、そこには蒿里と素戔嗚もいた。流を見ると物珍しそうにジロジロと見つめて来る、流は何故見つめて来るか聞くと丸々一週間寝たきりだったらしい。それを聞いた流は恐る恐る訊ねる


「もしかして僕のせいで戻ったの…」


「それもあるが俺らの傷も酷かったから一度引いただけだ、気に病む事じゃない」


「うん…そういえば守護霊って何?」


「急になんだ?守護霊っていうのは凄まじい怨念や思念そして怒りやストレスによって生み出された霊の事だ。その霊は主人を守ることに専念する事から『守護霊』と名が付いた。守護霊は攻撃性がない奴が多いが主人に敵対している奴に攻撃、威圧はよくする。並みの霊使いなら見ただけで吐き出すし失神するだろう、怨念の具体的な量だと十万人は絶対に呪えるな“一瞬”で。こんな感じだがなんでそんなこと聞いて来たんだ?まさかお前が守護霊を持っているのか…いやそんなことはないな」


「…そうだよ」


流の返答にふざけるなと返すが流は本当だと言い張る。ラックは黙って考え込み数十秒後に舌打ちをしながら「そう言うことか」と非常にイラついた顔をしていた。ラックの嫌な雰囲気もあり誰一人として探りを入れる事は出来なかった、ただ流はもう一つ引っかかっていた事があったのでこの際聞いてみる事にした。


「竹山を殺した理由って何」


「少し長くなるぞ」


「うん」


「まず俺らの目標から話さなければいけない。俺らが動いている理由はある一つの集団を潰すことだ、その団体は[TIS]読み方はティス、名前の由来に関しては誰も知らない。そいつらは能力者集団で能力を使って銀行強盗や区域の支配等結構好き放題している。そして兵助もそいつらにやられた、前大会での試合中にな。前大会に出た四人は最初からこいつらを壊滅させてやろうと考えていた…だがとんでもない壁にぶつかった」


「壁?」


「相手のTOP層のことだ。俺らは弱者としか戦わず強い奴らを避けている節があった、ちなみに俺らと言っているがこの壁に当たったのは蒿里、礁蔽、素戔嗚、兵助だ。TISは下、上、重要幹部、TOP三人で構成されている。そして壁と言うのはTOP三人のことだ。その三人、と言っても大会に出てきたのは二人だがあいつらは人間の域を超えていた。あいつらに勝てるような存在は非常に少ない。素戔嗚、蒿里、兵助は一撃、礁蔽は遠距離から三発だ。しかもその三人の中で一番弱いやつと戦ってその有様、そしてそのTISに竹山が加入していたからタイミングも良かったしお前の加入試験として使ったってだけだ」


「大体理解出来たよ、ところでそのTOP三人ってどういう人?」


「そのうち必然的に知ることになるし今はいいだろう」


「分かった」


「TISは許しません。絶対に壊滅させます」


ニアは普段見せない怒りの表情を包み隠さず露わにする。それを見た蒿里は「壊滅させるのは後なんだから笑って笑って」と言ってニアの口角に指を当てグーっと笑わせた、ニアもそうですねと言いいつも通りのニアに戻る。学園までは後丸々三日以上はかかるだろう、それに加え生徒会のことも考えればここから一週間は必要かと思われる。守護霊の事や優秀と言われている生徒会が何故認識の違いを起こしているのかも知りたい。流の頭に一つ疑問が浮かぶ、何故頭の中に理事長の顔が浮かんでくるのだろう。

途端に半田と遭遇した時の頭痛に見舞われる。流はあまりの痛さにうずくまる、ラックは流の駆け寄り声をかける


「おい!どうした!流!」


「あた…まがっ…痛っ…い」


「っ!数秒で治る、耐えろ!」


言葉の通り頭がかち割れそうな痛みをうずくまりながら耐えた、実際は数秒だったのだろうが流からしたら何十分にも感じた。

その瞬間脳内がフワーッとした。それは麻薬などの禁断症状などで出る感覚ではない、本当に脳みそが浮いているような感覚なのだ。今までも数回起こっていた、だがその記憶は頭痛の痛みの感覚と共にすぐに消えてしってどうすればいいか分からない。何が何だかわからない、すると頬に何かが伝った。触って見ると指に水がついた、どうやら泣いているようだ。


「どうしたのだ!?なぜ泣いている」


「いや…僕にも分からないんだ…何が何だか…」


ラックはまだ寝起きで疲れているのかもしれないからテントの中で休めと流をテントに戻した。流は一度寝て忘れようと目を閉じる、すると脳内で何かが再生される。さしずめ夢であろう


そこは見覚えのあるような場所、だが正確には分からない。何故なら視界がボヤけている、そう思っているとその視点の人物が喋り出す。どうやら小学校中学年ほどの男の子のようだ、隣には妹らしき女の子もいる。正面には父と母と思われる人物達が相槌を打って楽しそうに談笑している。ただその人達の顔をよく見ようとしても黒く塗りつぶされていて顔は分からない

何事もなく二分ぐらい経つ、どこからともなくこの子ではない少年の声が聞こえる。そして視界の中に四人の人が現れた、だがその四人も例外なく顔は不明だ


「お、やっと見つけたー。じゃ早速終わらせよ」


「…お前!」


父が立ち上がり子供達の前に立つ、だが現れた少年は父を突き飛ばしこちらに近付いて来る。夢と言えど怖いものは怖いのだ、流は同期と汗が止まらなかった。


「逃げて!―― ――!」


母がこの子と妹を押して逃そうとする、だが少年は「お前もだ」と言いながらこの子の顔を鷲掴みにした。

視界が手で覆い尽くされた所で流は飛び起きる


「うわぁぁぁ!!!」


汗をかき心臓の鼓動も速くなっている。急に叫んだ流を見て隣にいたラックが驚きながらどうしたのか聞いて来る。流は変な夢を見たと答えて少し散歩に行って来るとテントを出た。

空には満天の星が浮かんでいる、何分か星を眺めてから山の方に歩き始める。


「少しスズメと遊ぼうかな」


『降霊術・唱・鳥』


唱えるとスズメが飛び出して来る、流は少し戯れた後そろそろ名前をつけてあげたいなと思いスズメの名前を考え始めた。


「うーん…何がいいかな。スズメか…スズメは英語でスパローだったよな…でもちょっと直球すぎるな…少し可愛くして『スペラ』!とかどう?」


流が聞くと喜んで羽をバタバタさせている。流はこの名前で良いのだろうと思いスズメの名前を[スペラ]に決定した。


「よし!スペラこれからよろしくね。」


スペラ鳴き流の周りを飛ぶ、流はルーズがいなくなった時の事を何か知らないか聞くがスペラは首を横に振る。そのまま話をしていて生徒会の事になる


「前の三人みたいな人が襲ってきたら僕たちもう無理かもしれないね、スペラ」


そういうと同時に


「そんなことないと思うよ」


後方から蒿里の声が聞こえる、流は振り向いて何故そんな自慢気に言うのか聞く。蒿里は「素戔嗚の本気、しらないでしょ」と流をからかうように口に出す

流はあのポチが毛むくじゃらになるやつかと思いその事かと訊ねるが蒿里は流の隣に座ってから話を続ける


「あれはまだ本気じゃない、まだまだ素戔嗚には力が秘められてるよ」


「上には上がいるんだね」


「もっちろん!でも素戔嗚でも勝てない人はいる、数少ないけどね。人生で一回も負けない人なんていないよ、素戔嗚なんてたまに私にも負けるからね」


「蒿里ってやっぱ最強なんじゃ…?」


「違うよ、私は能力の扱いが難しいやつが多い。だからどうにかしてこちらの策に()めなきゃいけない、どこまで複雑に、入念に、細い糸を張り巡らせて誘導するか、それが出来れば誰だって素戔嗚ぐらい勝てるよ」


「いや…僕は素戔嗚には絶対勝てないよ…僕はエスケープチームで一番弱い、だからこそ足手まといにならないようにしなきゃいけないのに…ずっと足手まといになっちゃって…どうすればいいかよくわからないんだ」


「何言ってるの?流は半田達をやったじゃない。」


「やったんだけど…僕がやったと言うより守護霊?がやってくれたから」


「でも半田は流がやったんでしょ、それなら十分すごいよ!ところでさホントに守護霊が憑いてるの?」


「うん。なんか女の人っぽい霊が急に出てきて男の子と霊使いの人が急に吐いて倒れちゃったの」


蒿里は少し考え込んでから何かに納得したように頷いてご飯があるから早く帰ってきてね、そう言いながらテントの方へ戻って行った。

素戔嗚でも負けることはある。流は力で言えば戦闘役ではないニアの次に弱いだろう、だから頭脳戦を仕掛けて活躍しようと思ったが状況を飲み込むことが上手いラックと素戔嗚がいる上に紫苑と礁蔽は未知数、だから戦略派として活躍しようにも既に満席と言ったところだろう。

となると流は単純な火力要因として活躍しなくてはならない、だがラックはルーズ戦でも見せた通り能力ととんでもない身体能力で肉弾戦も満席。となると紫苑がいない今は素戔嗚一人じゃ対応しきれない霊使いが来たときに霊を共に戦えるようにしなくてはならない、だがスペラはただのスズメ、だからと言って流には持ち霊を変更すると言う考えはなかった。

ため息混じりに呟く


「このチーム欠点ないじゃんか…」


「そうでしょう、ほぼ完璧なチームですよ」


ニアが話しかけて来る。ご飯ですよと立つよう手を差し伸べてくる、流は手を取り立ち上がって二人でテントへと向かう。

道中ニアが話を切り出す


「さっきのお話ですが唯一足りていない要員がいるんですよ」


流はキョトンとして何要員が足りていないかを考える


「攻撃要員でラックさん、素戔嗚さん。妨害要員で紫苑さん。サポート要員で私。移動要員で礁蔽さん。今はいませんが回復要員で兵助さん。あと一つ枠が空いている場所があります」


流は今までの戦闘でどんな奴がいたかを思い出す、このチームに足りていないものは何か考えた。生徒会で大きな印象があったのは[諏磨(スマ) 香澄(カスミ)]の特殊な技、そして[拓蓮(タクレン) (シャク)]と[麻布(マフ) 康太(コウタ)]のタンク二人、流は閃く


「タンク!」


「正解です。エスケープチームにはタンクがいないんです、いるかどうかで結構変わります。康太さんや灼さんがやったように引きつけている間に攻撃する、そんなことが出来ますからね!」


「でも僕はタンクになれるような能力じゃないし…」


「すぐにでもならなくてもいいんですよ、兵助さんを取り戻してからが私たちの本領発揮です。ですから取り戻すまでにどうすればタンクとして行動できるかを考えとくと良いと思います、多分素戔嗚さんやラックさんならそれを言わなくても察してくれると思いますし。と言っても私に強制する権限なんてありませんから流さんが好きな戦い方をすれば良いと思います。みなさん各々で好きな戦い方をしますしね」


テント前に戻るとメンバーは全員食べ終わっていた、ラックは手を振りながら流に


「遅いぞ、もうみんな食べ終わった。タンクをしてくれるのは嬉しいが、また倒れたりしないでくれよ」


と言った。流は心を読まれたので驚愕し動きを止めた。ラックはさっさと食えとカレーを突き出して来る。流も気にしない事にしてカレーを完食した。

食べ終わる頃にはラックはテントに戻っている、流は一つ気になった事があったので聞きに行く事にした。


「おーいラックー」


流はテントの外から話しかける。そのテントには月光で影が映し出されていた。ラックはテントに映し出されている影の方を向いて話す


「僕が眠ってた一週間の間になんで生徒会から攻撃が無かったの?」


「生徒会の戦闘役を俺らでボコボコにしたからもうメンバーが少ないんだ。だがまだ人数はいるから油断は出来ない」


流はやっとこの戦闘漬けだった野宿生活も終わるのかと歓喜の声を漏らした。ある程度心を落ち着かせタンクになれるかどうかの話を切り出す、その瞬間ラックは黙り込んだ。流がどうしたのか聞くと妙に強張った声で流に聞く


「あと気になっていたんだがなんで俺がいない方を向きながら話しているんだ?」


「え?だって…」


既に手遅れだった、流は何者かに殴られ吹っ飛ぶ。ラックはすぐにテントから出て流がどうなったかを見る、どうにか大丈夫そうだが敵襲だ


「よし、まず一人」


そう言ったのは緑髪でパーカーにスウェットを着ている男だった。


[穂鍋(ほなべ) 光輝(こうき)]、身体強化か」


「よぉラック、色々と手違いはあったらしいがお前らを連れ戻すという目的に変わりはねぇ。観念しな」


ラックはすぐさま戦闘体勢に入った。すると隣のテントから素戔嗚が出てくる、そして一瞬で状況を把握して狐霊を呼び出した


『降霊術・唱・狐』


灼の時にも召喚された狐霊だ、だが光輝は狐霊の様子を見ることもせずただ突っ込んでくる。素戔嗚は


『妖術・反射』


と唱えると正面にバリアが現れる。光輝は構わずバリアを殴る、すると物凄い音がした。素戔嗚は反射して光輝にダメージが行ったかと思い光輝を見てみたがそうはならなかった、反射したはずの力の塊が跳ね回っている。“力”が一つの球体になり何かに当たって跳ね返っているのだ。


「は!?こんなん見たことないぞ!」


「なんだこれは!ならば刀で…」


素戔嗚は腰に付いている刀に手をかける、だが素戔嗚は判断を間違えた。

ラックの「後ろ!」と言う声と同時に素戔嗚の腹を跳ね返っていた球体が貫き素戔嗚の腹部には穴が出来た。素戔嗚は呆気なく血を吐いて倒れる。

光輝は身体強化のはずだ、と言う事はこの見知らぬ能力は他の人物の能力という事になる。まずこの能力使いを倒さなくては話にならないと思いメガネを外して周囲を見渡す。すると腹部に違和感と生温かさを覚えた、まさかと思い顔を下ろし自分の腹を見てみると素戔嗚に出来た穴よりでかい、ソフトボール程の風穴が生成されていた。


「攻撃じゃなくてもエネルギーとして跳ね返るのかよ…」


「気付くのがおせぇよバァカ」


「はは、最近負け続き…だな」


ラックは膝から崩れ落ちた、光輝はラックが完全に活動を停止したのを確認してからテントの方へ歩きながら話しかける。


「案外チョロかったな。あとは三人をやれば終わりだ、行くぞ。」


「うん」


「やっぱり理事長は人選が上手いな。なぁ[真田(さなだ) 胡桃(くるみ)]ちゃん」


「ちゃん付けするな、気持ちが悪い」


テントの裏から赤髪で右目に眼帯をしているブレザー姿の女が出てきた、光輝はそいつを[胡桃(クルミ)]と呼ぶ。テントに近づいていくと蒿里とニアがテントから出て来る。


「悪いね、私はニアと流を守らなきゃいけないんだ」


「お、さっそく出てきたな。やるぞ胡桃」


胡桃は言われた通り能力を発動した、光輝は身体強化を発動して蒿里達の動向を伺う形となった。胡桃は後方のサガって行った。

ニアは蒿里の近くに立って能力を発動した、すると周囲に半円状のドームのような物が発生する。蒿里は遠距離からの攻撃なら大丈夫だろうと思い唱える


人術・捻渦(じんじゅつ・ねんか)


本来なら時空と共に体が捻れてダメージが入るはずなのだが光輝は捻れるどころかピクリとも動かなかった。なぜなら光輝には当たらないからだ。何か音がして見てみるとそこには跳ね回っている球体があった、二人は困惑しラックと素戔嗚はこれにやられたのかと思いどうにか対処しなくてはと動こうとした時だった


「二枚抜きだ」


蒿里達は光輝の方を見る、光輝はいつの間にか懐まで潜り込んでいた。そのまま二人の腹を殴る、力の球体になると思いきや二人は普通に吹っ飛ぶ、もう大丈夫だと光輝が言うと胡桃が出て来た。


「ナイスタイミングの解除」


「ありがと」


「じゃあ後新人は完全にやれたか確認してなかったし…」


そう言って流がいる方向を向く、するとそこには息を切らしながらフラフラになって立つ流の姿があった。光輝はめんどくさそうにため息をついてから「来いよ」そう言って戦闘体制に入った。胡桃は能力を発動してから再び後ろに下がった。流は今までにないピンチに焦りながらも冷静に呼び出す


『降霊術・唱・鳥』


スペラを召喚した。スペラは元気よく宙を舞っている、光輝はどうせ勝手に自爆すると思い動かない。流はある考えの元スペラに指示を出す。


『妖術・上風』


スペラは羽根をクロスさせて風を切り裂いた。その瞬間その風は霊力の球へと変わり周囲を跳ね回った、光輝はその球を凝視して絶対に当たらない様に努める。

だが流はスペラに限界まで『妖術・上風』を行えと指示を出す、訳のわからない指示に光輝は混乱しながらも最悪一発くらいならくらってもどうにかなると流の様子を伺う。スペラは何度も風を起こした、その風は全てエネルギーの球に変換され周囲を跳ね回る。

スペラは追加で七個のエネルギー弾を発した。だが最初に発したエネルギー弾が流の脇腹を貫通した、あまりの痛みに涙を流しながらも怯む事なく立っている。


「なんでそんなことしたんだよ!」


「数打ちゃ当たる、だろ?」


「そんなわけねぇだろ!」


怒り狂った光輝は殴りかかって来る、流は火事場の判断力で避け続けた。何度も殴られそうになりながら交わしている時流が口角を上げながら呟く


一発目(ヒット)


その声と同時にエネルギー弾が流と光輝のそれぞれ左肩に一つずつ当たった。エネルギー弾は消滅しる、流は計算通りと言わんばかりに笑い光輝は今負けたら終わりなのにこんな身を捨てた戦い方が出来る流に恐れを超えて尊敬の念まで感じていた。


「大丈夫!?」


「勝てるからお前はすっこんでろ!」


光輝が殴りかかるが流はフラッと(かわ)す、だが避けきれず切れてしまったのであろう、額から血が出てきた。光輝は絶好のチャンスと立て続けに殴りかかる、だが流は再び微笑み言う


二発目(ヒット)三発目(ヒット)


その言葉と同時に二人の片足のふくらはぎに球が貫通した、光輝は完全に嵌められている事に気付いたが今更引く事は出来ない。立つのがやっとな足を使って流に殴りかかる、五回のパンチをしたが全て避けられ追撃を入れようと拳を振り上げると両者の後方からエネルギー弾が跳んでくる。


「気付かなかったか?スペラが打ったエネルギー弾は合計八個、一つは最初に僕がくらい残り六個は同時にくらった。ならば残り弾数は“一”のはずだ!」


光輝はまさかと避ける体制に移ろうとしたが流が光輝を掴みそれを阻止する。光輝は死なば諸共の流を振り解こうと必死だ


「それは僕の『インストキラー』のエネルギー弾だ。ラックの能力は霊力の消費が多い、そして素戔嗚とラックの弾の威力は明らかに違った。だから僕は霊力消費が多いと跳ね返った時のダメージも高いと考えた!インストキラーの反動は即死レベルのダメージだ!誘導してやったよ!お前は張り巡らされた糸に気づく事が出来なかったんだ!」


「うわあああああ!!!」


その瞬間流と光輝にエネルギー弾が直撃した。流は小さな穴で済んだが光輝は比べ物にならない程大きな穴を空けて白目を向いて気絶した。そして流は胡桃がいる方向へと歩を進める


「…うそ…でしょ…」


流が胡桃を見つめる。その眼は光り輝き、鋭い眼光で見つめる獣のような状態だった。頭からは血を流し、息は荒い。流は右目の眼帯を見て一つの推測を立てた。


「恐らくだが君の目は能力を理解していない頃に自分のエネルギー弾が当たって失明したんだろう。だったら同じ真似をしないため領域内には入りたくないはずだ、だったらすぐそこまで近付けば君は無力だ。どうだ?合ってるだろ?」


胡桃は返事もせずにガタガタと震えている、流は胡桃のうなじに手刀を打ち込み気絶させた。やっと役に立てたと喜んでいる流に霊力の欠如による大きな疲労が襲いかかる。だがメンバーをどうにかしなくてはとゆっくり時間をかけやっとの思いでテントに運び込んだ。

応急処置をしなくてはと思いながらも疲労には勝てず流は気を失った



葉月(ハズキ) 半田(ハンタ)

能力/念能力

触れている者の能力が発動出来ないようにする

強さ/サポート系のため不明


第十話「不意打ち」

2023 4/17 改変

2023 6/2 台詞名前消去

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