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激戦の果てに

一方で三人の猛者と激闘を繰り広げていたレオ。中々決めきれない三人は焦りを感じ始めていた。

 

「どうなってやがる、こいつらバテバテのヘロヘロじゃなかったのかよ」

 

「まともな状態だったとしてもこちらは三人がかりだぞ、なぜ耐えられる」

 

三人がかりで攻めながらも決められないことに焦りを覚えていた


その時、もう一人が驚きの声をあげた。

 

「おい、お前等、トニーとメリンダがやられたみたいだぞ⁉」

 

「何だって‼」

 

それを聞いた二人も驚きを隠せず、一旦レオとの間を開けてトニーとメリンダの方へと視線を向けた


すると両ひざをついてうつむいているトニーと前のめりに倒れ込んでいるメリンダが目に入ってきた。

 

「馬鹿な、あの二人がこんな速く敗れるなんて」

 

「ヤバいぞ、これで向こうとこちらは三対三になってしまう、俺達の数的優勢が……」

 

すると最初に声を掛けた男がニヤリと笑った。

 

「いや、そうでもない、どうやら向こうのリサとクロードも動けないみたいだぜ」


一瞬、焦りと戸惑いを見せていた三人だったが現状を把握した途端サディスティックな笑みを浮かべて大きく頷いた。

 

「それじゃあ目の前に居るコイツを倒せば俺達の勝ちって事だな」

 

「そうだね、だったらあいつらが復活する前にさっさとコイツを片付けるか」

 

「数的有利を生かすために三人で囲むぞ、そして確実に倒すぞ‼」

 

三人の一期生がレオを取り囲む作戦を実行しようとした時、レオは嬉しそうな表情で小さく呟いた。

 

「そうか、二人とも勝ったのか、じゃあ俺も頑張らないと……」

 

そして次の瞬間、レオは地鳴りのような大声で叫んだ。

 

「おおおおおおお――‼」

 

両手で剣を握り締めながら大地が割れるかと思う程の大きな声で雄叫びをあげるレオ


その迫力に押され一瞬動きの止まる三人


それを見たレオは自分を包囲しようとしていた一人に向かって猛然と動き出したのだ


その姿と動きはまるで獲物を狩る野獣の様であった


意表を突かれたその男は慌てて剣を構える。

 

「ちょっ、ちょっと待てよ、もうヘロヘロのはずじゃあ……」

 

そう口走った時にはレオはもう目の前で剣を振り被っていた


相手も大上段からの剣撃を受け止めようと咄嗟に剣を構えるが


レオはそれを見ても躊躇する様子もなくその勢いのまま凄まじい一撃を振り下ろした


唸りを上げて放たれたレオの剣は、一期生の構えた剣ごとへし折ると相手の右肩へと剣の刃がめり込んだ。

 

「ぐはっ‼」

 

凄まじい一撃を食らった一期生の一人はそのまま気を失い崩れる様に倒れ込んだ


するとそれを確認する事も無くクルリと反転したレオは次のターゲットへと向かった


その動きには一切の迷いも戸惑いも無い。


ギラリと光るその眼に映った獲物を瞬時に捕らえると狙いを定めた一本の矢の様に、まっすぐ標的に向かって行った。

 

「しまった、狙いは俺達が奴を取り囲むために散会した一瞬の隙をついて……


このままでは各個撃破されるぞ⁉︎」

 

気づいた時にはもう遅かった。猫科の肉食獣の様にしなやかな動きで一瞬のうちに目の前に現れたレオは


何の躊躇もなくすかさず剣を振り上げた。その時点で既に勝敗は決した


捕食者と獲物の関係の様に成すすべなく蹂躙される一期生の男


もう一人が助けに駆けつけようとした時にはもう決着がついていた。

 

「どうします、まだやりますか?」

 

レオは〈もう勝負は見えたでしょう?〉とでも言わんばかりに問いかけた。


最後に残った一期生は歯ぎしりしながらレオを睨みつける。

 

「まだだ、まだ俺が残っている、例え一対一でも勝つ、ナメるな、二期性が‼」

 

吐き捨てる様に言い放ったその男は全身全霊を込め気迫のこもった一撃で挑みかかるが


勝敗の行方を変えることは出来なかった


そもそも三対一でも勝てなかった者が対等の一対一で勝てるはずもなく


レオは手加減する余裕すらあった。


こうして勝負はアッサリと決着しレオ達三人の完全勝利という形で幕を閉じたのである。

 

「ふう、ようやく終わった……」

 

軽くため息をついて剣を鞘に納めるレオ。


その瞬間まわりから凄まじい歓声と称賛の声が上がった。


「スゲーよ、アイツら、本当にたった三人で全チームを倒しちゃったぜ⁉」


「ヤベーよ、鳥肌モノだぜ」


「もしかして私達歴史的な瞬間に立ち会ったのかもね」


皆の興奮が収まらない中、レオはゆっくりとリサとクロードの元へと歩き始めた。


未だ片膝をついたまま立ち上がれないクロードにゆっくりと近づき微笑みながらそっと右手を差し出した。


「お疲れ、立てるかクロード?」


その優しい表情を見てクロードは思わず軽くため息をつく。


「ったく、本来はお前が一番バテバテになっているはずなのに


どうしてそんなにピンピンしている?この体力馬鹿が」


「仲間を気遣い優しく手を差し伸べている人間に対して


その言葉はないのではないか?随分と酷い言われようだ」


二人はそんな会話を交わしクスリと笑うとガッチリと握手しレオがグイッとクロードを引き上げた


だがクロードは疲労により膝が揺れまだ上手く歩けないでいる、それを見たレオは無言で肩を貸した。


「悪いな、レオ。だが俺よりもあそこで大の字になっている姫君を先に手を貸してやるべきじゃないのか?」


「それは少し考えたが、リサはもう少し寝ていたほうがいいのかな……と思って」


「確かに、我らが姫君は俺達が手を貸そうとすると〈手助けはいらない一人で歩ける〉


とか言いそうだからな。だがもう日も傾いてきたしあのままずっと地面に寝かせている訳にもいかないだろ


時間的に冷えてくるから風邪を引くし、さっさと回収してボルド

先生に卒業証明をもらうとするか」


二人は肩を組みながらゆっくりとリサの元へと近づいていった。


地面で動けないでいるリサの顔を覗き込む様に話しかけるレオ。


「大丈夫かリサ?もう少しそのまま休んでいたいのだろうけど


いつまでもそんな所で寝ていると体に悪いからな、立てないのなら手を貸すよ」


優しく語りかけるレオに無理矢理体を起こしながら強がるリサ。


「大丈夫よ、一人で歩けるわ。


そもそも貴方が一番大変だった癖に何でそんなに元気なのよ?納得いかないわね」


すると横のクロードが大きく頷きながら口を挟んできた。


「それには全く同感だ。こいつの身体能力は規格外だからな


俺たち人間と一緒にすること自体、間違いなのかもしれん」


リサとクロードは〈その通り〉とでも言わんばかりに笑った


レオは納得いかない様な表情でため息をつく。


だがリサも自力で体を起こしたまでは良かったが疲労で立ち上がることはできないでいた


そんな様子を見てクロードは含みのある笑みを浮かべる。


「どうしたリサ、一人で歩けると言っていなかったか?何ならレオに〈お姫様抱っこ〉でもしてもらうか?」


まるで心を見透かしたような言葉にりさの顔は夕陽の様に真っ赤になる。


「な⁉な、な、何を言っているのよ、馬鹿じゃないの?」


照れながら否定するリサに対し、レオが普通に問いかけた。


「そうして欲しいのならするけど、どうする、リサ?」


「いいわよ、そんなことしなくても‼︎」

 

リサは疲れ切った体を無理矢理引き起こし、立ち上がる


レオはリサとクロードに肩を貸しながらゆっくりと歩き始めた


そんな三人を見て周りからは自然と拍手が巻き起こった


牛の歩みのごとき遅い速度でようやく自分の所までたどり着いた三人を嬉しそうに見つめているボルド


「三人ともご苦労さん。まあ確率としては五分五分といったところであったがよく頑張ったぞ


これでお前らは胸を張って卒業だ、文句をいうヤツもいないだろう、おめでとう」

 

そんなボルドの言い回しにどうにも釈然としないクロードとリサ。

 

「ボルド先生、一つ聞いていいですか?なぜ俺達だけこんな過酷な試練を与えられたのでしょうか?


できれば納得のいく説明をしていただきたいのですが」


クロードの言葉に大きく頷くリサ。


二人は卒業できる嬉しさよりもその事に対する憤りを感じている様子であった。


「理由?理由か……まあ有り体に言えば〈レオの本気が見たかった〉という事かな?」


アッサリと、まるで〈それが当然〉とでも言いたげな口調で言い切るボルド


逆にクロードとリサは唖然として一瞬言葉を失った。


「ちょっと待ってください先生、それじゃあ私とクロードは(完全なとばっちり)ではないですか⁉」


「まあとばっちりといえばとばっちりだな。お前らはいつもつるんでいるし連帯責任と思って諦めろ


一応別の理由もあるにはあるが……お主らもレオの本気というヤツを見たかったのだろう?」


「うっ、それはそうですが何もこんな大事な場面でしかもこんな形でやらなくてもいいじゃないですか


俺達は卒業がかかっているのですよ」


「そうですよ、もしダメだったらどうするつもりだったのですか?」


「ダメだったら来年受けなおす、それだけの話だろうが」

 

実にアッサリと言い放ったボルド、もはやクロードとリサは呆れて溜息しか出ない


するとレオが不思議そうな顔で問いかけてきた。

 

「あの~さっきから俺の本気とか何とか言っているけど、俺はいつも本気だぜ⁉」

 

その言葉に瞬時に反応したのはリサであった


鋭い目つきでレオを睨みつけると両手でレオの胸倉を掴み、声を荒げて詰め寄った。

 

「アンタがそんなだから私達がこんな目に合うじゃないのよ、話がややこしくなるから黙ってなさい‼」


「あ、はい、スミマセン……」


リサの迫力に圧倒され思わず謝罪するレオ。そんなやり取りを見てボルドは突然吹き出し大声で笑い始めた。


「ワッハッハ、色々あったが結果的にはレオの本気が見られたしお前らも無事卒業できた


〈結果良ければ全てよし〉という言葉もあるだろうが」


「〈物は言いよう〉という風にしか聞こえませんが……で、先程言っていた【別の理由】とやらを伺いましょうか」


クロードはもう諦めた様な表情で気だるそうに問いかけた


「うむ、ここを卒業した者は軍人として国軍に所属する事になり


正式に【国軍少尉】の階級が与えられることは知っておるな?」


「ええ勿論、その為の卒業ですから、それが何か?」


「うむ、【国軍少尉】というのは同時に軍の【小隊長】の地位を得るに等しい


現に昨年の卒業した者は軍に組み込まれ【小隊長】として頑張っておる


だが今回、ワシの脳裏にふとある疑問が浮かんだ


それは〈お前ら三人を軍隊などという堅苦しい枠に当てはめて本当に良いのであろうか?〉とな」


そんなボルドの言葉に思わず顔を見合わせるレオ達


「先生、おっしゃっている意味がわかりません。


それは私達が〈軍隊に向かない〉という意味でしょうか?」


リサの質問に大きく頷いたボルド


「うむ、向かないというより〈勿体ない〉といった方が適切かな


お前らの長所は軍隊という枠組みに組み込まれるとスポイルされてしまう


つまり個性が死ぬという事だ、軍隊という組織には個性など必要ない


統率を取る為にはそんなモノ寧ろ邪魔ともいえるからな」


そんなボルドの説明を黙ってジッと聞いていたレオだったが、堪りかねたかのように思わず質問した。


「それで先生、〈俺達が軍隊に向かない〉という事はわかりましたが

結論的に俺達にどうしろとおっしゃるのでしょうか?」


話が見えない三人は不安げな表情を浮かべるが


ボルドはニヤリと含みのある笑みを浮かべ、ようやく本題を話し始めた。

 

「前置きが長くなったが結論を言おう。


実はお前等三人には特例として【独立特殊部隊】という形で


〈ベルバッハ国軍最高司令長官〉に推薦しようと思っておる


堅苦しい軍隊の中で型にはめられるより余程お前らの良さが生かせるだろうからな


そして階級的に は【国軍中尉】に任じてもらうように進言するつもりだ


勿論その推薦が受理されるとは限らぬが、恐らくワシの進言ならば受け入れてくれるのだろうて」


ボルドの説明を聞いて呆気に取られるレオ達


あまりの事にリサはその場でへたり込みクロードは呆然自失委といった感じで立ちすくんでいだ


レオは無言のまま喜びをかみしめる様に目を輝かせている


だがそれを聞いていた周りの者達が一斉に湧き上がった。


「凄えじゃん、いきなり一階級特進の上に【独立特殊部隊】とか⁉」


「これってとんでもない事よ。三人とはいえ軍隊で自由裁量権が与えられるなんて


佐官クラスの待遇じゃない。それが卒業したての者に与えられるなんて異例中の異例よ‼」


「やべー鳥肌立ってきた、俺達本当に歴史的証人って奴になったのかも⁉」


「私達が負けたのも仕方がないわね、素直に彼らを応援しましょう」


呆然とするレオ達を尻目に異常なまでに盛り上がる他生徒達


そのざわつきはいつしか大きな拍手へと変わり盛大な喝采の中でレオとクロード、リサは卒業を果たした。



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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