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限界の戦い

卒業試験も佳境に入り何とか最終戦まで辿り着いたレオ達


しかし体力的にも限界寸前のバテバテ状態のレオ達を見て


相手チームのリーダー格のトニーが余裕の言葉を投げかけた。

 

「お前らはよくやったよ、できればちゃんとした状態のお前らと戦いたかったが


これもボルド先生の指示なんでな悪く思うなよ


だが来年にはお前らは卒業できるだろう、この俺が保証してやるぜ」

 

完全に上から目線で言い放ったトニー、だがレオ達はフッと笑い静かに反論する。

 

「お気遣いのほどは感謝します先輩。でも俺達は〈今年〉卒業する予定なので」

 

そう言うとレオは不敵な笑みを浮かべた、そしてリサとクロードも続く。

 

「そうね、先輩方こそ〈来年は〉卒業できるといいですね」

 

「確かに、去年卒業し損ねた先輩方に保障されても説得力が無いですし


もう一年だけ頑張ってくださいね、先輩方」

 

体は完全にバテバテだが闘志はまだ衰えておらず、ギラついた目で言い返すレオ達


終始余裕の態度だったトニー達の表情が急に強張り敵意に満ちた視線でレオ達を見つめた


そしてしばらく無言のままのにらみ合いが続き険悪な空気が周りに立ち込める


「いい気になるなよ。少しは手加減してやろうと思ったが止めだ


徹底的にぶちのめしてやる。今の発言死ぬほど後悔させてやるからな‼」

 

そう言い放ちクルリと背中を向けたトニーだが、その背中にクロードが話しかけた。


「俺達はちゃんと手加減してあげますから安心してくださいね、留年した先輩方」


背中を見せたまま振り向くことは無かったが、明らかに怒り心頭で背中を震わせているトニー


そのまま仲間の所へと戻り作戦を話し始めた。


「あ~あ、あんなに怒らせちゃって、大丈夫なの?


まあアンタの事だからこれも作戦の内なのだろうけどさ……」


「そういうリサも乗ってきたじゃないか、いい挑発だったぜ」


「あれは売り言葉に買い言葉と言うか……だって余裕ぶってさ


私達を見下す様なあの発言は正直ムカついたのだもん‼


で、わざと先輩達を怒らせたのには、どういう意図があるのかしら?」


「俺も単にムカついただけだ」


「えっ、そうなの⁉」


「冗談だよ。先輩方を挑発した本当の狙いは怒らせて短期決戦に持ち込む作戦だ


正直今の俺達にとって、じっくりと消耗戦に持ち込まれて体力勝負に持ち込まれる事が一番キツイからな


残り少ないスタミナで一気にカタを付けたい」


「なるほどね、ちゃんと理に適っているのね。さすがクロード、性格悪いわ~」


「何だよそれは、ムカついたのは本当だからな。憎まれ口にも力が入っただけだ」

 

その言葉にクスクスと笑うリサ、そしてレオが最後に口を開いた


「これで最後だ。先輩方には悪いが勝つぞ、勝って三人で卒業だ‼」


「そうね、三人で卒業しよう」


「ああ、悪くないな」


こうして三人は最後の対戦へと向かう。


相手チームの一期生のメンバー達は先程までの余裕は何処かへ消え去り、敵意むき出しの目でレオ達を睨んでいた。


「双方準備はいいな、では始め‼」


ボルドの開始の合図と共にトニーが叫んだ。


「まずは先頭のレオを潰せ‼アイツさえ潰してしまえば一気に押し切れる


俺達を馬鹿にした事を死ぬほど後悔させてやれ‼」

 

相手チームの指揮官トニーの号令と共に三人の一期生がレオに向かって襲い掛かる。

 

「行くぞ、二期生、一分でカタを付けてやる‼」

 

「何をされたのかわからない内に飲み込んでやるぜ‼」

 

「最後は格の違いを見せてやるぞ、二期生坊主‼」

 

それを見たクロードは思わず眉をひそめた。

 

『マズいな、さすがに俺達の基本戦術を見抜かれている


レオが支えられないと一気にいかれてしまう……


この消耗しきった状態でレオが耐えられるか⁉』

 

そんな心配を払拭するかのように獅子奮迅の戦いを見せるレオ


二期生三人を相手に一歩も引かず対等に渡り合っていた。

 

「たった一人の二期生相手に何をてこずっている、サッサと潰せ‼」

 

思惑が外れたトニーが苛立ち交じりで檄を飛ばすが三人の一期生は次第に焦り始めた。

 

「何で倒せない、こっちは三人がかりだぞ⁉」

 

「何なんだよ、コイツ、いいから倒れろ‼」

 

「さっきまでバテバテだっただろうが、何で耐えられるのだ⁉」

 

二期生三人による嵐のような攻撃を全て受け止め渡り合うレオ。

 

「凄い……レオ、貴方は……」

 

その凄まじい戦いぶりに思わず見とれてしまうリサ。


「何をやっているリサ、ボーっとしている場合じゃない


レオが支えてくれている内に俺達が残りの奴らを倒すぞ‼」


「ハッ、そうね、そうだった、レオの為にも早く倒さないと」


リサとクロードがトニーを含む二人の二期生に挑みかかる


しかし連戦による疲労で従来の動きは鳴りを潜めていた


特にリサは動きの速さが最大の特徴なのでその速さが鈍ると苦戦は免れない


だが気力を振り絞り最後の戦いへと挑んだ。


「くっ、体が重い、全然思ったように動かない、まるで自分の体じゃないみたい


でもレオがあんなに頑張っているのに私だけ泣き言何か言っていられない、勝つのよ‼」


リサが一期生の女性剣士メリンダの方へ猛然と挑みかかる


疲労困憊の体に鞭打って気力で向かって行った。


「何よその動きは、アンタは速さが売りなのにもう見る影もないじゃない


そんなので私に勝てるとでも思っているの?」


リサをあざ笑うかのように剣を構えて待ち受けるメリンダ


目の前まで来たリサは素早くサイドステップで側面に回り込もうとするが、その瞬間足がもつれバランスを崩した。


「しまった⁉」


「何よ、それ、もらったわ‼」


目の前で自滅に近い姿をさらすリサを見てここぞとばかりに剣を振り被るメリンダ


だが次の瞬間、リサの目が怪しい光りを放ち凄まじいスピードでメリンダの懐へと飛び込んだのである。


「何よその動き、もう疲れで鈍っていたはず……はっ、まさか今のはワザと⁉」


気づいた時にはもう遅かった。


剣の間合いより更に踏み込んでいたリサはメリンダの腹に強烈な一撃を加えたのである。


「ぐえっ‼」


腹を押さえながら前のめりに倒れるメリンダ


呼吸もマトモにできないのか涙を流しながら口をパクパクさせそのまま地面にうずくまった。


「ハアハア、正真正銘これで最後の体力よ、この一瞬に残りの体力をつぎ込んだというだけ


本当にもう〈すっからかん〉……長期戦になったら勝ち目がないからね


ワザと隙を作って攻めを誘発させたのよ。虚をもって実を制する


〈ニンジャマスター〉だった父の口癖よ、よく覚えておいて」


そう言ってリサはその場に大の字になって倒れ込んだ。


そんな二人の戦いを見たトニーは驚きと焦りを隠せなかった。


「馬鹿な、あんなバテバテの二期生にメリンダが負けるとか……


一体何が起こっている⁉」


驚愕の表情を浮かべ動揺するトニーにクロードが挑みかかる


クロードの強烈な一撃を受け止め、〈つば競り合い〉の形で剣越しに顔を接近させる両者。


「あ~あ、これじゃあ計画が台無しですね先輩、三人がかりでバテバテの後輩を倒せないボンクラ共に


本来は戦いを長引かせて体力勝負に持ち込む予定のメリンダ先輩は一瞬で無様に負けるとか……


これはもう作戦立案の時点で既に間違っていたという事ではないですか?


結果的に戦士としてだけではなく、作戦参謀としても無能という事を


証明してしまいましたねトニー先輩。こりゃあ来年も卒業は無理かな?」


戦闘中に次々と挑発的な言葉を投げかけるクロード。


「黙れ、クロード。それ以上俺達を愚弄すると許さんぞ‼」


興奮気味に激怒するトニー。顔を真っ赤にして怒りに震えながら剣を持つ手に力を込めた


だがクロードは更に挑発を繰り返す。

 

「許さないとか、何を言っているのですか、〈愚弄〉って言葉の意味知っていますか?

 

俺は事実を列挙しただけであって虚言を吐いたわけではないですけどね


そんな調子ではいつまでたっても卒業できませんよ、そして待っているのは強制退学です、フフフ」


ニヤつきながら徹底的に馬鹿にしたのだ、そしてついにトニーの怒りが爆発した。

 

「黙れ、黙れ、許さん、絶対に許さん。殺してやるぞ、クロード‼」


感情に任せ吐き捨てる様に叫んだ。


そんな相手の攻撃を受け止めるべくクロードは体勢を低くし受け止める構えを見せる


トニーは剣を高々と振り上げ渾身の力で剣を振り下ろした。

 

「死ね、このクソ野郎が‼」

 

唸りを上げてクロードの頭上に振り下ろされる剣撃


その勢いは受けた剣ごと叩き折るつもりで放たれていた


だがその瞬間、クロードはスッと剣を引きトニーの攻撃を受け止める事をせず体ごとかわしたのである。

 

「なっ⁉」

 

完全に意表を突かれ思い留まろうとするがもう振り下ろされた剣は止まらなかった


渾身の力を込めた一撃はもう誰もいなくなった地面に突き刺さったのである。

 

「クソっ‼」

 

気づいた時にはもう遅かった。地面に突き刺さった剣を引き抜こうとした瞬間


クロードの剣がトニーの首元に突きつけられたのである。

 

「ゲームオーバーです、先輩」

 

悔しさをにじませその場に膝から崩れ落ちるトニー


だがそんなトニーにクロードは意外な言葉をかけた。

 

「今までの失礼な発言、申し訳ありませんでした。


もう俺には先輩とまともに戦う力は残っていないので


これしか勝つ方法が思いつかなかったのです、本当にすみませんでした」


そう言ってクロードは素直に頭を下げた。


見事に術中にはまった事を理解したトニーは言葉を失い、唇を噛みしめ無言のままうつむいた。

 

「早くレオを助けに行かないと……」

 

トニーとの決着をつけたクロードはレオの助太刀に向かおうとするが


疲労の蓄積により膝が揺れ、足が動かない。そんな自分の体に怒りすら感じるクロードだったが


意志と肉体は反比例するようにいう事をきかないのである


そしてふとリサの方に視線を移すがリサもまた体力の限界を迎えていて


地面に大の字で倒れ込みながら動けないでいた。

 

「くそっ、こんな時に……すまないレオ」

 

クロードは片膝をつきながら絞り出すように呟いた。


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