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それぞれの思惑

「では両チーム準備はいいな、始め‼」


ボルドの開始の声が高い空に響き渡る。


全校生徒が見守る中でいよいよ始まった運命の〈卒業検定〉


だがレオ達と相対したチームはいきなり戸惑う事になる。


「なんだ、ありゃ?たった三人しかいない癖に縦向きに布陣したのか」


「【長蛇の陣】だと?アイツら一体どういうつもりだ⁉」


クロードの作戦に戸惑いを隠せない対戦チーム


メンバーが動揺している中でリーダー格の男が仲間に向かって叫んだ。


「慌てるな、アレは突撃隊形だ。数的な不利を一か八かの一点突破で崩そうという意図だろう


慌てずに落ち着いて対処すれば問題ない、昔から奇襲に対しては正攻法と定石で決まっている


あんなヤケクソな玉砕戦法に付き合う必要はない、ペースを乱されずに普通に戦って普通に勝つぞ‼」


相手チームの指揮官は浮足立ちそうなメンバーを立ち直らせ見事に対応したかに見えたが


それこそがクロードの作戦にまんまとハマっている事に気づいていない。


そんな様子を見ていたリサが思わず笑みを浮かべた。


「いい感じで騙されてくれているわ、ここはそう見せかけた方がいいみたいね」


「確かにそうだな、常に〈行くぞ、行くぞ〉と見せかけて相手の足を止め


一人一人を確実に各個撃破するのが最良と見た、同人数であれば俺達が負けることは無いからな」


クロードもリサに続いて込み上げる笑いを押さえながら大きく頷いた。


「チーム戦に見せかけた個人戦か……しかしよくこんな事思いつくな


クロードは、本当に仲間で良かったよ」


「レオの言う通りよ、相手が戦術を知っている者だからこそ引っかかる策という訳ね


本当にアンタらしいイヤラシイ作戦、でも悪くないわね」


リサとレオがクスリと笑った。


「無駄口はここまでだ、この作戦はレオの踏ん張りとリサの見切りが重要なのだからなさあ来るぞ‼」


相手チームは突撃に備えて待ち構えていたのだが


レオ達がなかなか来ないのでジリジリと接近してきたのである。

 

「あいつらはいつ突撃してくるかわからんぞ、各自陣形を崩さず持ち場を離れるな‼」

 

警戒しながら少しずつ近づいて来る敵チームを十分に引き付けると、ここぞとばかりにクロードが叫んだ。

 

「行くぞ、レオ、リサ、突撃開始、敵陣を中央突破する‼」

 

「OK‼」

 

「了解‼」

 

相手チームは想定通りの作戦で守りを固めた、だがこのクロードの号令は勿論ブラフである


突撃してきたのは先頭のレオだけであり、後ろの二人は素早く左右に分かれ


右端と左端に居た生徒に襲い掛かったのである


完全に意表を突かれた両翼の生徒はあっという間にリサとクロードに倒された。


「ちくしょう、謀られた‼」


相手チームのリーダー格の男がそう叫んだ時には既に後の祭りであった


数的な優勢を保てなくなった相手チームはその流れのまま一方的に蹂躙された


勝負はものの五分で決着がついたのである。


「よし、次のチームはハドソン、ミランダ、リック……」


ボルドが次のチームを指名するがレオ達の初戦の印象に余程衝撃を受けたのか


警戒するばかりで完全にクロードの術中にはまっていた


迷いや動揺は思考を鈍らせ動きを重くする


完全なペースをつかんだレオ達はほとんど一方的に敵チームを蹂躙していった。

 

四チーム目になると相手もクロードの作戦に気づき始める。

 

「相手は突撃と見せかけてこちらに防御意識を植え付け、左右に分かれての各個撃破を狙う作戦だ


中々に奇抜な策だが知れてしまえばどうと言うことは無い、左右の警戒を怠るなよ


俺達の方が数的に有利なのだ、常にニ対一、三対一の状況を作り出し的確に対応する事だ、俺達が止めるぞ‼」


対戦相手も五チーム目になり、ようやくクロードの策に対応し始めた

しかしそれすらも作戦の内なのである。


相手チームの気配を感じ取ったリサがニヤリと笑みを浮かべて二人に小声で話しかけた。


「いい感じで引っかかっているわね、じゃあ作戦の第二段階と行きましょうか?」


「ああ、頃合いだと思っていたぜ」


「よし一気に決めるぞ、二人とも‼」


ボルドの開始の合図が広い校庭に響き渡る、五回目ともなればレオ達に迷いは無い。


「よし行くぞ、レオ、リサ、突撃開始、敵陣を中央突破する‼」


「OK‼」


「了解‼」


先程と同じ号令、同じ展開、相手チームのリーダーは思わずニヤリと笑った。


「その号令が嘘だって事はもうバレバレなのだよ⁉何度も同じ手に引っかかると……」


しかし今回はその勢いのまま突っ込んできたのである、三人がまるで一本の矢の様に敵陣に突撃していく


「ちょっ、ちょっと待てよ、話が違う……」


完全に裏をかかれた相手チームは陣形を崩され、あっという間に蹂躙された


だがどの試合も見た目ほど楽勝ではなかった。


相手の意表を突き動揺している内に倒さねばならない


この学校で鍛え抜かれた生徒たちを相手にそれをおこなうという事は想像を絶するほど気力と体力を必要とした


特に先頭で戦っているレオは常に二人、三人の相手をしており


レオが二、三人を相手に時間稼ぎをしているその間に


リサとクロードが一対一に持ち込んで相手を倒していくという作戦だからである


それからの戦いも相手の出方によって変幻自在に戦い方を変え次々と相手チームを倒していった。


「ハアハアハア、後、何チームなのよ?」


「フウフウ、あと、一つだ、ここでひと踏ん張りだ」


「ゼエゼエ、ようやく、最後かよ、せっかくここまで来たのだ、勝つぞ」


既に日も傾きかけ空が赤みを帯びてきていた


多少のインターバル休憩はあったものの午前中から戦い詰めのレオとリサ、クロードの三人


全身は汗でビッショリと濡れ息を荒げながら疲労困憊といった様子である


何せ倒しても倒しても次々と元気な対戦チームが現れるのだ


常に全神経を集中し全力で対峙しなければすぐにでも負けてしまう


気を抜いている暇など無かった。だが人間の集中力と体力には限界がある


もう既に限界を越えているといってもいい状態のまま最終対戦へと挑む三人だが


もはや気力だけで立っている様な状態である。


敗退したチームの者達は今期の卒業が絶望的になってしまった為


完全な傍観者としてこの戦いを見守っていた


そして挑戦するチームが次々と敗れていき、残りのチームが少なくなっていくほど


〈こうなったら三人に頑張って欲しい‼〉というムードに変化していった。


「こうなったら俺達もお前らを応援するぞ、このまま突き進め‼」


「私達に勝ったのだから他のチームに負けたら許さないわよ‼」


「勝てよ、ここまで来たら絶対に勝て‼」


限界寸前の三人に対し全生徒による怒涛の声援が後押しする


だが当の本人達は何が何だかわからず困惑しながら辺りを見回していた。


「何?何で私達にこんな声援が?」


「訳わかんねーな、だが、応援にはキッチリ応えてやろうぜ」


「うん、ここまで応援されて負ける訳にはいかないね、行くぞ、リサ、クロード‼」


レオが二人にそう告げ先頭で歩いて行く


そんな背中を見せられリサとクロードは顔を見合わせると小さく頷いた。


「結局、レオに引っ張って行ってもらった形ね」


「ああ、もし今回このまま勝ち続けて卒業できた場合、MVPは確実にレオだな」


最終決戦へと挑む三人だったが最後のチームとして立ちはだかったのは


先輩である一期生の中でも最有力のチームであった


他のチームが実力的にバランスの取れているチーム構成なのに対して


このチームのメンバーは前年惜しくも卒業を逃した実力者揃いであり


他のチームとは明らかに力一つ抜けていた。


そんなただでさえ強敵で苦戦は必至という相手だと言うのに


ボルドはワザワザ限界寸前の最終戦にぶつけてきたのである。


最後に挑戦するチームのメンバー達は決戦の舞台である校庭の真中へゆっくりと歩みを進めていく


だが彼らを見つめる周りの者達はそんな彼らに冷ややかな視線を送っていた


そして対戦相手である三人には大きな声援を送っているのである


そんな完全なアウェーともいえる雰囲気の中で彼らはヤレヤレとばかりに苦笑した。


「何だよ、コレは、俺達完全な悪者じゃないか⁉」


「まあ自分達が卒業試験に落ちたモノだから、他の人にも落ちて欲しいという心境じゃないの?」


「嫌だ、嫌だ、浅ましいね~負けたのは弱いから、それだけだろ」


「正直俺達五人が組んだら負けるはずがないからな


ボルド先生がどんな意図でこんなチーム編成をして


ワザワザ最終戦に選んだのか意図が全くわからん」


「別にいいだろ。楽をして勝てるのに越したことは無いしこれで卒業とか普通に美味しいだろ


相手側に期待しているみんなには悪いけどチャッチャと決めてしまおうぜ」

 

もはや勝ちを確信しているメンバー達は目の前の疲労困憊のレオ達を見て思わず笑みがこぼれた。

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