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心理と戦術

レオ達の卒業条件は全ての生徒を相手にしなければならないと聞かされ


愕然とするクロードとリサだったが、そんな二人とは対照的になぜか嬉しそうなレオ


自分達の置かれている現在の状況を全く理解できていないかのような発言に


クロードとリサは睨みつける様に見つめた。


「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか⁉」


「そうよ、私達はたった三人でここに居る全員を相手するのよ


合格するには私達だけ十三チーム全てを倒さなきゃいけないの


そんな無茶苦茶って有り得ないじゃない⁉」


怒りにも似た言葉をレオに投げつける二人だが、当の本人はやる気満々で語り始めた。


「勇者カインは〈ジャメル森林の戦い〉ではたった一人で三百を越える魔族と戦い勝ち抜いたじゃないか⁉」


「いや、そんな伝説と比べられても……現実問題として知能の低い魔族三百体より


この学校で鍛え抜かれた者達十三チームに勝ち抜く事の方が厳しいかもしれないぞ⁉」


「そうよ、ただでさえ私達は人数が少ないのよ、それに後になればなるほど体力は消耗してくるし


私達の戦い方も研究され対策されてくる、どうしようもなくも不利なのよ

 

気持ちだけでどうにかなる問題じゃないわ」


常識的な見解を述べ反論してくる二人に対しレオは優しい表情でニコリと笑った。


「どうしたクロード、お前は入学時に俺に


〈この俺が人類を救って〈勇者カイン〉に続く英雄伝説になる、後で自慢になるぜ〉


と言っていたじゃないか、あれは噓だったのか?」


「そんな昔の事を……アレは単に意気込みだろ、それを……」


すると今度はリサの方を向いて口を開いた。


「リサだってずっと〈自分が一番になってみんなに認めさせる〉って息巻いていたじゃないか⁉


この試験をクリアすれば先生を含めここに居る全員が否応なしに君を認めざるを得ないぜ」


「それはそうかもしれないけれど……それはクリアできたらの話でしょ?いくら何でも無理よ……」


「いや、俺はそうとは思わない。俺達が力を合わせれば必ずできるさ


もし本当に達成不可能な試験ならボルド先生が卒業検定として出題する訳が無い


俺達ならできると考えたからこそのご指名だろ?先生の期待に応えてやってやろうじゃないか⁉」


何故かやる気満々のレオに半ば呆れ気味のリサ


もう何を言っても無理だと感じたのか今度はクロードに話しを振った。


「ねえクロードの方からもレオに言ってやってよ、こんなの無茶苦茶じゃない


ここはボルド先生に正式に抗議して試験内容の変更を要求するべきでしょ?」

 

するとクロードは少し考え込んだ後、何かを悟ったかのようにボソリと呟いた。


「やってみるか」


「はあ?」


クロードの言葉に驚きを隠せないリサは思わず素っ頓狂な声をあげる。


「いやいやアンタまで何言っているのよ、冷静になりなさい


そんなの無理に決まっているじゃない。この試験には私達の卒業がかかっているのよ‼」

 

「俺は冷静だ。よく考えてみろ、あのボルド先生が一度決めた事を覆すと思うのか?」


「うっ、それもそうだけど、でも……」


クロードはまだ納得のいっていないリサに近付き耳元で囁いた。


「この試験内容なら今度こそレオの本気がみられるぞ」


その言葉を聞き両目を見開きハッとするリサ、そして大きくため息をついた。

 

「わかったわよ、揃いも揃って本当に男って馬鹿ばっかり……


全くしょうがないわね、今回はアンタらに乗せられてあげる


卒業できなかったら何かおごりなさいよ」

 

三人の腹が決まり戦いに挑む心の準備は整った


その様子を静かに見守っていたボルドは口元を緩ませニヤリと笑う


「では試験を開始する、戦う順番は早い者勝ちだ。行きたいチームから名乗り出ろ‼」

 

ボルドが他のチームを促す様な発言をしたが


どのチームも躊躇して一番手を名乗り出ない、だがそれには明確な理由があった


レオはともかく常にトップ争いをしている二人クロードとリサの能力は皆が知っている


いくら人数で有利とはいえ軽々しく戦いを挑む事は避けたいというのが本音なのだ


何せ〈全チームを勝ち抜け〉という過酷な試練内容である


三人がいくら強いとはいえ人間の体力は無尽蔵ではない


徐々にスタミナも消耗するし戦い方も研究されてくる。


つまり順番が後になればなるほど有利なのだ


他の生徒にしてみればこの試験には人生がかかっていて誰しも甘い考えは持っていない


少しでも自分達に有利な条件で戦いたいという思いが


〈どのチームも名乗り出ない〉という珍現象を引き起こしていた。


「どうした、挑戦するチームはおらんのか?」


ボルドが催促する様に皆に呼びかける。だが誰も名乗り出ることは無く


皆が他チームを牽制する様に周りをチラチラと伺っていた。

 

「ったく、しょうがない奴等だな。お前らがそのつもりなら条件を変えるぞ


どこかのチームがレオ、クロード、リサの三人を倒した時点でこの試験は終了とする」


その瞬間、全員の目の色が変わった。


こうなると事実上卒業できるチームはたったの一チームのみという事になる


先程までとは打って変わって誰もが我先にと恥も外聞もなく名乗りを上げ始めたのだ。


「現金な奴等だな。まあいい、戦う順番は俺が独断で決める、それでいいな、じゃあ最初のチームは……」


まずは最初に対戦する相手は先輩である一期生のチームだった


呼ばれたチームはそそくさと前に出てきて対戦の準備を始めた


本番直前となって否が応でも緊張感が高まっていく


対戦相手の者達の顔が険しく強張り、この試験に懸けるただならぬ意気込みが伝わってくる


順番を待つ他の者達も複雑な表情を浮かべジッと行く末を見守っている


何せ前のチームが勝利してしまえば自分達には順番が回ってこない内に


試験終了という悲惨な目に合ってしまうからである


一方でレオ、クロード、リサの三人は誰が言い出した訳でも無く自然に身を寄せ合うように集まると


他の生徒達に聞こえないような小声で話し始めた。


「さて、これからどう戦う?」


「作戦は全てクロードに任せるよ」


「そうね、戦術、戦略部門ではクロードの右に出る者はいないし、私もそれでいいわ」


二人の意志を受け軽く頷くクロード


「わかった、じゃあ基本的な作戦だ。レオが先頭で相手を迎え撃つ


リサがその後ろでレオが抜かれた場合のフォローと攻撃に転ずる時のアタッカー


そして俺が後方支援と作戦指示をおこなう。


序盤は守りに徹して相手に隙が出来たら一気に攻めに転じる作戦だ、それでいいか?」


「〈カウンターアタックフォーメーション〉か、それでいいぜ」


レオは二つ返事で引き受けたがリサが戸惑いながら口を挟んだ。

 

「ちょっと待ってよ⁉」

 

「何か俺の作戦に不満か?」

 

「いや、私はいいけど、こっちはただでさえ少ない人数なのに縦に陣形を取ったら


レオが一人で敵を受け止める事になるじゃない


これじゃあ〈カウンターアタック〉をかける前に自陣が崩壊するわよ


そもそも少人数が縦に陣形を取る場合って敵陣に一点突破

を狙う突撃隊形のはずでしょう?


何で〈カウンターアタックフォーメーション〉なのにこの陣形なの?」

 

リサの質問に不敵な笑みを浮かべるクロード


「おそらく敵もそう思うだろう、だからこそ有効なのだ


今回の試験には卒業がかかっている、皆何が何でも勝ちたいはずだ


だから〈相手も奇抜な作戦はしてこないだろう〉という考えに陥りやすい


だからこそ奇策が有効だ、相手を惑わせ全力を出させない


これこそ戦いの真理といえるだろう。だが奇策である以上当然リスクはつきものだ


リサの指摘通りこの作戦のキモは〈レオが踏ん張れるか?〉の一点にかかっている。


だができるよな、レオ?」


「ああ、俺がやろうと言い出したからな、必ずやり遂げてみせる、任せてくれ‼」


 レオとクロードは笑顔で同時に右拳を突き出すと空中でチョンとぶつけ合った。

 

「何だか男同士でわかり合っちゃって、私はのけ者みたいじゃない、まあいいけど……

 

でもクロード、その奇抜な策も二、三度見られたら作戦が〈カウンターアタック〉だとバレない?」

 

その疑問をまるで〈待っていました〉とばかりに得意げな表情で説明し始めた

 

「その時は試合開始早々敵に突撃するまでの事、元々こっちは突撃隊形だからな


攻めてこないと油断している相手に意表を突いた場合、その効果のほどは覿面だろうからな


喧嘩は〈先手必勝〉と言うだろ?ゴングが鳴ったと同時に相手に突撃し猛ラッシュする喧嘩殺法


〈ゴングアンドダッシュ〉作戦とでも名付けるか」


その作戦を聞いたリサは目を閉じゆっくりと首を振った。


「団体戦でアンタとだけは戦いたくはないわね、どんな育ち方をしてくればそんな嫌らしい作戦を思いつくの?


感心を通り越して呆れるわ……でも試合開始前に相手が油断しているのかどうかはどうやって判断するの?」


「そこはリサ、お前に任せる」


「は?」


「聞いていなかったのか?試合開始前、相手の気配を探り


どちらの作戦を取るかお前に委ねると言っているのだ


敵の気配を探るという点においてリサより優れている者はいないだろうからな、任せたぞ」


その言葉を聞いてリサは思わずゴクリと息を飲んだ。


「正に適材適所という訳ね……最初の選択を間違えたら終わりじゃない


責任重大ね。でもいい作戦だわ、任せて頂戴」


力強く頷くリサ、こうして心が一つになった三人は腹をくくり戦いへと挑むのであった。


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