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過酷な試練

最終試験の日は朝から校舎全体の空気が重苦しくピリピリとした緊張感が皆の肩にのしかかっていた


誰もが言葉少なくギラギラとした殺気を隠そうともせず険しい表情を浮かべている


それも当然で皆この日の為に厳しい訓練に耐え頑張って来たのである。


「諸君、ついにこの日が来た。全員が日ごろの訓練の成果を存分に発揮し


己の力を全て出し尽くし俺に見せてくれ。


昨年の【卒業検定】はあまりいい結果とはいえないモノだった


今年こそ皆が胸を張って卒業できるよう全力を尽くしてくれ、以上だ‼」

 

校長であるボルドが皆の前で挨拶をする。


この学校では入学後三年経過した後、全員が【卒業検定】を受ける事になっている


そしてこの試験に受かった者だけが晴れてここを卒業でき華やかな未来が待っているのである


だが合格できなかった者はまた一年後の試験に再度挑む事になり


受かるまで何年も挑み続けるという過酷な試練が待っている


そして七年間在籍しながらも卒業できなかった者達には〈強制退学〉となる厳しいルールがある


だからこそ皆死に物狂いで挑んでくるのだ。


この〈ボルド教室〉は入学すること自体狭き門なだが卒業するのは更に困難というサバイバルレースであり


卒業できるのと出来ないのでは正に天国と地獄なのである。

 

「さて今年はどんな試験が待っているのやら……」

 

クロードが余裕の口調で口走ったがその言葉とは裏腹に目はギラつき殺気立っていた。

 

「何よその不細工な殺気は、珍しいじゃないアンタがそんなに入れ込むなんて」

 

「そりゃあそうだろ。俺はこの日の為に三年間もここで鍛えられてきたのだ


何が何でも今年で卒業する。そういうお前はどうなのだ、リサ?」


「私はいい緊張感でこの日を迎えられているわ。


こういう状態の時が一番いいパフォーマンスが発揮出来るの、早く始めて欲しいくらいよ」


リサとクロードは程よい緊張感を保っていてすぐにでも〈戦闘準備OK〉といった面持ちである


しかしそんな空気や緊張感とは全く無縁の男がいた、そうレオである。


「いよいよだな、クロード、リサ、全員で卒業するぞ、頑張ろうぜ‼」

 

本来ライバルであるクロードやリサにもエールを送るレオ


しかしレオがこういう性格だとわかっている二人は苦笑いを浮かべ見つめ合った。

 

「他の人の発言なら気が抜けちゃうところだけど、レオはいつでも変わりないわね……


おかげでリラックスできたわ」


「全くだぜ、いい意味で力が抜けた。


よしぶちかますとするか、レオじゃないが全員で卒業するぞ‼」


「どうしたのよ、クロード、熱くなるなんて貴方らしくないわね


でも嫌いじゃないわそういう性格。直接対戦になったら手加減しないけど


私以外の相手だったらしょうがないから応援してあげるわ」


二人のおかげで少しリラックスできたリサは


そのお礼とばかりにニコリと微笑みクロードに向かってウインクをした


在学中のクロードとリサは上級生を含めても常にトップを争う成績であり


他の生徒の追随を許さない程の圧倒的な実力の差があった


だからこそ試験を受ける他生徒はなるべくこの二人に当たりませんように……と心の中で願っていた


「ああ頼むぜ、今年の試験はおそらく一対一の対戦にはならないだろうからな……」


クロードが何か確信めいた口調でそう言い切るとリサは不思議そうな表情を浮かべ思わず問いかけた。


「何でそんな事がわかるのよ?去年の試験は先生が指名した者同士の一対一の対戦形式試験だったじゃない」


「だからだよ、今年も卒業試験の内容が去年と同じだと思っている馬鹿な奴等が多すぎる


特に一期生の先輩方な、だからお互いの手の内を隠し合ったり色々探り合ったりしている


そんな状況であのボルド先生が去年と同じ試験内容を出題すると思うのか?」

 

クロードの指摘にレオとリサは〈あっ⁉〉と声をあげ顔を見合わせた。


「確かに、ボルド先生なら絶対変えてくるな」


「悔しいけどクロードの読み通りになりそうね。


今日に限っては正直貴方と当たりたくなかったし丁度いいわ


でも一対一じゃないならどんな試験内容になるのかしら?」


「まあその辺りは俺にも皆目見当がつかない


だが先生の事だ、とんでもない試験内容にしてくると思うぜ」

 

奇しくもその予想は的中する事となる。だがその内容はクロードの予想を遥かに超えたモノだった。


「皆よく聞け、これから一期生と二期生を含む今期の合同卒業試験を行う


今回の試験内容は〈チームバトル〉だ」

 

ボルドが試験内容を発表した途端、生徒たちがざわつき始めた


どうやら去年と同じ〈一対一の対戦バトル〉と思い込んでいた者が多かった様だ。


「全員静かにしろ。今回の試験〈チームバトル〉は五人一組でチームを組み


その勝敗で合格不合格を決定する。チーム編成はワシが独断で決める、質問はあるか?」

 

予想外の試験内容に戸惑う生徒達。すると一期生の一人がやや遠慮がちに手を上げた。

 

「あの……先生、一つ聞いていいでしょうか?


去年は〈一対一の対戦形式〉だったのにどうして今回はチーム戦なのですか?」

 

質問を受けたバルドはいぶかし気な表情を浮かべやや不機嫌そうに答えた。


「ここを卒業した者には同時に〈国軍少尉〉の階級を授けられいきなり小隊長としての任務を受ける場合もある


ただでさえ魔族との戦いは一対一より集団での戦いが多いのだ


それを想定した場合、チーム戦の方がより実践的といえるだろう、わかったか?」


有無を言わせぬボルドの態度に納得せざるを得ない生徒たち


〈当てが外れた〉と明らかに落胆する者も少なからずいたがそんな事はお構いなしに話を進めた。


「じゃあチーム編成を発表する。まずは一期生から、トニー、メリンダ、サム、ドナルドジャック


次のチームはブラウン、サニー……」

 

ボルドが次々とチーム編成の名前を上げていく。


このチーム構成によって自分達の運命が決まるといっても過言ではない


それ故に全員が固唾を飲んで聞いていた。

 

「続いて二期生、ボブ、メルダ、ボスコ……」

 

二期生の番になりレオが何気なく言葉を発した。

 

「中々俺達の名前出ないね、一緒のチームに慣れるといいのだけれど……」


「そうね、同じチームとしてなら心強いわ。そうなれるといいけど」

 

レオとリサがそんな事を話しているとクロードが険しい表情で口を開いた。

 

「お前らは能天気だな……変だとは思わないのか?俺は何か嫌な予感しかしないぜ」

 

それを聞いたリサはムスッとした顔を浮かべすぐさま問いかけた。

 

「何が変なのよ、別にチーム戦が試験として採用される事も変じゃないし


成績上位の貴方達と組んだ方が有利なのは疑いようもないじゃない」


するとクロードは軽くため息をついて再び語り始めた。


「俺が言っているのはそういう事じゃない。チーム編成の人数の事だ」


「チームの人数?それがどうかしたのかクロード?」


クロードはレオの素朴な疑問に対し静かに答える。


「いいか、一年目、つまり一期生の入学者は全部で三十七人だった


そして去年卒業できたのは僅か二名、だから今回試験を受ける一期生は三十五人という事になる……」


「そんなの当り前じゃない、三十七引く二は三十五って……あっ⁉」


何かに気づいたリサだったがレオはまだ気づかない。


「えっ⁉何だよ、一体どういう事だ、勿体ぶらずに教えてくれよ」


自分だけがわからない事にモヤモヤするレオ。それを察したのかクロードは淡々と説明を始めた。


「いいかレオ。一期生は三十五人、つまり一チーム五人編成だと七チーム出来る


だが 俺達二期生は全員で三十三人。つまり五人編成でチームを組んでいく場合


一チームだけ三人という事になってしまう……」


ようやくクロードのいう事が理解できたレオ、そしてその危惧は現実のものとなる。


「最後にクロード、リサ、レオのチームだ、以上‼」


ボルドがチーム編成を発表し終わるとすかさずリサは挙手をして質問した。


「先生、私達だけ三人しかいないのですが、どういうことなのでしょうか?」


「どういう事も無い、そのままだ。お前らは三人でチームを組んでもらう、以上だ」


まるでそれが〈当たり前〉とでもいう口調でキッパリと言い切った


逆に質問したリサの方が唖然としてしまう、だがその後のボルドの発言は更にレオ達を仰天させた。


「これからチーム戦で戦ってもらうが合格の基準はたった一つ


クロード、リサ、レオのチームに勝ったチームの者達は全員合格


つまり卒業だ、わかったな?」


その瞬間、そこにいる全生徒の視線がレオ達に集まった


殺気、嫉妬、怒り、焦燥、希望、色々な感情が混じり合った眼差しがレオ達に突き刺さる


あまりの事に一瞬呆然としてしまったレオ達。さすがのクロードも戸惑いを隠せなかった。


「ちょっと待ってください先生。ただでさえ俺達は人数が少ないのですよ


いくら何でも酷すぎます。よって試験内容の変更を要求します‼


大体その試験内容だと俺達の合格基準は、一体どうなるのですか⁉」


珍しく感情的になるクロードだったがボルドは表情を変えることなく言い切った。


「試験内容の変更はない、お前らの合格基準?簡単な話だ、全チームを倒せ


それ以外は認めないからな、以上だ‼」


有無を言わせぬ態度でそう言い放つとクルリと背中を向け立ち去った


さすがのクロードも大きく口を開けたまま言葉を失ってしまう。


「何よ、それ……滅茶苦茶じゃないのよ……」


リサも怒り交じりの眼差しでボルドの背中を見つめる


だがそんな状況で一人目を輝かせている者がいた、そうレオである。


「面白いじゃないか、やってやろうぜ⁉」


はやる気持ちを抑えきれないようになぜかワクワクしているレオであった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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