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成長と心境

三人が出会ってから三年の月日が過ぎた。


〈ボルド教室〉の厳しい訓練にも慣れてきてたくましく育っていった若者達


そんな中でいつもの訓練が終わった後、井戸の水で体を拭いているクロードがいた


日はもう既に傾いていてオレンジ色に染まった空がクロードの鍛え抜かれた肉体を赤く照らす


そんな彼の元に一人近づいて来る女性がいた、リサである


三年の月日でリサの体も女っぽくなり少女から成熟した女性へと変化していた


「ねえクロード、レオはどうしたの?」


「ああ、いつもの所だろ?」


体を拭きながらリサに視線を向けることなく素っ気無い口調で答えるクロード


それを聞いたリサは思わず軽いため息をついた。


「またボルド先生の所?相変わらずねぇ~毎日毎日よく聞くことがあるわね、ある意味感心するわよ」


「あそこまでいくと感心を通り越して呆れるけどな。そういうお前はレオに何か用事があったのか?」


「まあ用って程じゃないけれど……ちょっと新しい技を思いついたから練習台になって欲しかったのよ……


いないならしょうがないわね」


リサが首をすぼめ両手を広げるとクロードは視線を向けないまま何気ない口調で口を開いた。


「何なら俺が相手になってやろうか?」


するとリサは苦虫をかみつぶしたような顔で露骨に嫌そうな表情を浮かべた。


「アンタが相手?嫌よ。この技は来月の校内試験の試合で使おうかと思っていた技なの


だから、アンタに見せたら対策されちゃうじゃない。来月こそは私が一番になるのだから」


「お前、先々月俺を倒して一位になっただろ⁉」


「先月すぐアンタに取り返されたじゃない。三年もいて私が一位になったのはたったの三回よ


それ以外は全部アンタだったじゃない。もう時期的に勝ち越しは無理だから


せめて卒業前の最後の試験は私が一位をもらうわ。終わり良ければ総て良しってね」

 

何故か勝ち誇る様に言い放つリサ、そんな彼女を見てクロードはクスリと笑った。

 

「何がおかしいのよ、自分が負けるはずないとでも思っているの⁉」

 

「いや、そういう意味で笑ったわけじゃない。お前は変わらないなと思って……」

 

「何よその言い方?〈自分は成長しているのにお前はまだそのステージに居るのか?〉


みたいな上から目線は⁉気に入らないわね」


「別にそういう意味じゃない。ただ入学したころと違って最近は順位とかどうでもよくてな


レオを見ているとそんな事に執着している事が馬鹿馬鹿しくなってくる」


「まあね、レオは校内試験じゃ本気にならないから……」


「だからお前はレオを本気にさせたいのだろう?」


「うん、そうかもしれないわね……クロード、私はアンタには負けたくない


入学当初から貴方の事はライバルだと思っているし超えるべき相手だとも思っているから


ただレオには見て欲しい。私はこれだけ強くなったのよって、いつかレオを本気にさせたい」


「レオの相手か……俺は御免だけどな、アイツは何でも吸収してしまう


俺が必死で習得した技でもまるで息をするかのようにあっという間に盗んでしまう


何だか自分がしている事を否定されている気がしてな……


努力とか根性とか馬鹿馬鹿しく思えてくる事がある」


「わかるわ、クロード。貴方は天才肌を気取っているけど本当は努力家だからね」


「そういう所はわかって欲しくないのだよ、ちっとは気を使え


だがそこまでわかっていてレオの相手をしたいというのは中々の精神力だぞ」


「そうね、自分でも少し不思議なのだけれど私から盗めるものがあるのならば


ドンドン盗んでもらっても構わないわ。ううん、寧ろ吸収してもらいたいぐらいよ


なぜこんな気持ちになるのか自分でもわからないのだけれど……」


するとクロードがうつむいてボソリと小声で呟いた。


「そういう気持を何て言うのかわからない……か、全く嫌になるぜ、レオの奴には」


「えっ⁉何か言ったクロード?」


「何も言ってねーよ、レオが部屋に帰ってきたら伝えておいてやるよ」


「有難う、貴方も会ったばかりの時は嫌な奴だと思っていたけれど


結構お人好しだしいい奴よね、損な性格をしているけど


貴方のそういう所嫌いじゃないわよ、じゃあね」


リサは笑顔のまま手を振って寮へと帰って行った


沈む夕日に溶け込む様に去って行くリサの背中を見つめながら


クロードは誰にも聞こえないような小声で呟いた。

 

「嫌いじゃない……か」


クロードは立ち去ったリサの方向に沈む夕日を無言のままずっと眺めていた。


 

「遅かったじゃないかレオ。こんな時間までボルド先生に聞いていたのか?」

 

部屋に戻ってきたレオにやや呆れ気味の口調で問いかける。

 

「ああ、今日は色々聞くことがあって。聞いたことを全て細かく教えてくれるから凄い勉強になるぜ


クロードもドンドン聞きにいけばいいと思うぞ⁉」


「俺はいいよ……て、いうか訓練授業が終わってまでボルド先生の所に聞きに行くのはお前ぐらいだろ?


しかも毎日毎日、よくそれだけ聞くことがあるな?感心するぜ」


「教わった事を自分なりに解釈するとどうしても疑問がわいて来るのだよ


それに実戦となれば色々な場面を想定し迅速に行動しなければならない


教科書通りにはいかないからな。だから色々と聞く必要がある、感心される事じゃないよ」

 

「感心するっていうのは皮肉で言ったのだ。何でもかんでも額面通りに受け取るな


逆に毎日お前の相手をさせられるボルド先生が気の毒になって来るぜ」


「そうかな?ボルド先生も嬉しそうに教えてくれるぜ、考えすぎだろう?」


「まあ世の中では〈馬鹿な子ほどかわいい〉って言葉もあるしな」


「ひでえな、その言い方は。それじゃあまるで俺が馬鹿の無神経みたいじゃないか?」

 

「それじゃあまるで違うみたいじゃないか?」


「ハイハイ、どうせ俺はバカですよ……全く、三年間でその口の悪さも慣れたよ」

 

口喧嘩での負けを認めたかのように両手を上げるレオ


この三年でレオもたくましく成長した。


細くてチビだった体も今ではクロードよりも背は高く185cmほどになっていた


訓練により引き締まった筋肉質の体と精悍な顔つき


以前の子供っぽさは完全に消え去り年齢より大人びて見える程であった。

 

「そういえばリサがお前を探していたぞ」

 

「えっ、リサが?なんだろう……」

 

「何か新しい技を考えているから練習に付き合って欲しかったみたいだぜ」

 

「なるほど、そういう事か。リサの技は勉強になるからな


だったら明日の朝一にでも会いに行こうかな?」


「朝一は止めておけ……」


「どうしてだよ?」

 

「朝一はリサ目当ての男どもがウジャウジャいる可能性があるからな


そんな中にお前みたいな能天気馬鹿が行ったら話がややこしくなる」


「なんだよ、それは?リサ目当てって……みんなそんなにリサと戦いたいのか?」

 

その言葉を聞いて大きくため息をつくクロード。

 

「だからお前は能天気馬鹿っていうのだよ……リサは最近グッと女っぽくなっただろ


それ目当てで交際を申し込む男が後を絶たないのだよ。上級生の中にも大勢いるのだぜ」

 

「へえ~リサがそんなにもてるとは知らなかった……


俺にはそんなに変わったとは思えないのだれけど……


でもこの学校は男女の交際は禁止だろ⁉バレたら停学モノだぞ」


「それでも付き合いたいって馬鹿が大勢いるのだよ、逆に何にも気づかない馬鹿もいるけどな……」


「それ俺の事か?本当にクロードは口が悪いな、そこは直した方がいいぜ


お前は本当は悪い奴じゃないのだから」


「お前にしかこんなこと言わなねーよ。


本当はレオにはもっと言いたいことが山ほどあるのだけれど


それを言わないでおいてやるのだからせめて悪口ぐらい言わせろ」


「何だか訳がわからないな。まあ熱い友情と思って有難く受け入れるよ、クロード」


二人はいつもこんな調子のやり取りを交わしていた。


三年前からレオの同部屋の人間を無理矢理追い出して同部屋に入ったクロード


それ以来三年間ずっとレオとクロードは同部屋でこんなやり取りばかりしている


こうして月日は流れあっという間に三年間という年月が過ぎた。


こうしてレオ達三人はいよいよ最終試験に挑むことになる。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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